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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第1章
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第6部 理想郷のあれこれ《2》

「きょうは、おねえしゃんに、ありあと、の、あくちぇちゃりー、つくりましゅ!」


 そうです、今日はお姉さんに “いつもありがとう” の気持ちを込めて、アクセサリーを作るのですよ! 小さな手で握り拳を作り、声高らかに宣言すれば、キャメリアとぺルルが “はい、頑張りましょう” と言ってくれます。頑張るのー♪

 とはいえ2歳の手、難しいことはできません。もう少し大きければ、ビーズでアクセサリーとか作れたかもしれないけど。まぁ、しかたない。

 そのぶん、キャメリアとぺルルにお手伝をしてもらいますよ。まずキャメリアとぺルルには、100均で買った手にぴったりフィットする薄手袋をつけてもらいます。使用するレジン液が、手についてはいけないからね。

 えっ、私。2歳に合う物がないので素手ですよ、素手。念のため手洗い用の水を用意してもらい、バルコニーの近くで作ります。用意するのは、すべて100均で買った物ですよ。昨日買ってきた商品で何ができるのか、キャメリアとぺルルも瞳をキラキラさせて見つめています。

 まず、花柄のステッカー、クリアUVレジン液ハード、シリコンマット、蝶バネイヤリング丸皿付、カニカン・丸カン・アジャスターのセット、アクセサリーチェーン。これに、爪楊枝、ピンセット、ハサミ、ニッパーなどなど。


「はじめましゅ!」


 用意してくれた私の身長にあった作業台の上にシリコンマットを置いて、その上にステッカーの中から気に入った花を九枚置きます。そしてその花の上に、しょ〜っと、しょ〜っと、じゃなかった! そーっと、そーっと、レジン液を少し盛り上がるくらいのせますよ。ボトルに入ったレジン液だから、チューブの物よりうまくのせらるはず。

 そーと丁寧に中心部にレジンをのせて、キャメリアとぺルルに爪楊枝で花の輪郭部分まで伸ばしてもらい、バルコニーの陽当たりのいい場所で数分放置します。

 硬化したら静かにはがして裏返し、裏面にもレジンをのせたらまたバルコニーで数分放置。

 レンジがはみ出しているところをハサミで切ってもらい、二つはイヤリングとして使い、五つはネックレスにしますよ。

 蝶バネイヤリングの丸皿のところに接着剤をのせ、レジンでコーティングした花を固定。その後、裏の金具と花の裏の出たところにレジンをのせ、バルコニーで放置。接着剤とレジンでダブル固定できたら、イヤリングのできあがりです。

 そして、五つの花はバランスよく横にならべ、少しずつ重ねて置き、重ねたところにレジンを塗ってバルコニーで放置します。硬化して接着できたら、フレークチップで花を飾り付け。

 でも、ここからは細かい作業が続くので、幼児の手には無理。キャメリアとぺルルにお願いしますよ。

 フレークチップを置きたい部分にレジンをつけて、その上にフレークチップをのせたらバルコニーで放置。硬化したら、ハンドドリルで両端に穴をあけます。

 アクセサリーチェーンを半分の長さにニッパーでカットしたら、丸カンを使ってドリルで穴をあけた場所とチェーンをつなぎます。両方にチェーンをつけたら、花とつながってないチェーン方の先に、丸カンでそれぞれカニカンとアジャスターをつけたら、ネックレスのできあがり。

 その間、私はキャメリアとぺルルの作業を見ながら、残った二枚の花を用意していたヘアピン金具二つに接着剤で固定。

 できあがったイヤリングとネックレスは、その名の通りの使い方ではなく、イヤリングは洋服の襟やポケットに飾りとしてつけてもいいし、パンプスやシューズの飾りにしてもいい。ネックレスはバッグチャームにしてもいいと思う。使い方は色々ですなのです。

 これを小さなプレゼント用の箱にいれ、ワンタッチのフラワーリボンをつけたら完成です!


「できまちた!」


 エヘン、と胸をはって言えば “可愛くできましたね” “すごいです” と、キャメリアとぺルルの声がしました。


「がんばりまちた」


 一人ご満悦に呟くと、私は一緒に作っていたヘアピンを、お手伝いをしてくれたキャメリアとぺルルに差し出しました。


「いちゅも、ありあと」


 大きくなったら、ビーズアクセサリーとか作ってあげるからね。なんなら、お嫁に行く時にはウエディングドレスだって作っちゃうからね! でも今は、これで我慢してね。

 二人はびっくりして、私の手を見ると目を見開き “私達にでございますか” と、言った。


「あい!」


 そーだよーと私が言うと、感極まったように “お嬢様!” と二人に抱きつかれました。とても喜んでもらえたようです。

 使用人達のお給料は高くない。むしろ少ない。そう、少ない! 聞いた時は “ブラックか!” と思ったけど、住む所と食事、安定した雇用が確保されているのだから当たり前なんだって。使用人の仕事は、長時間労働のわりに僅かな金額にしかならないのだ。

 その中で、使用人では高給と言われるお給料をもらえるのは、執事(バトラー)女中頭(ハウスキーパー)料理(クック)長、従者(ヴァレット)やレディースメイド、うちにはいないけど乳母(ナース)など、ほんの一握りの上級使用人と言われる人達だけ。

 この下に従僕(フットマン)やチェインバーメイド達がいて、そのさらに下にほかの使用人達がいる。

 レディースメイドなら女主人の着古した服などをもらえることもあるけど、普通はアクセサリーの一つも持ち得ないのだ。

 それでも、一生仕えて老後を迎えれば年金と家、身よりのない寝たきりの人には介護も与えられるから、多く人が何代にも渡って仕えてくれるんだって。

 そんなメイドのキャメリアとぺルルには、100均のレンジで作ったヘアピンだって初めてのおしゃれ用品なのだ。

 よーし、私が大きくなったらアクセサリーとか作ってあげるからね! そして少しでもホワイトな職場にしてみせますとも!







「ふぉ!」


 厨房近くにくると、お好み焼きの匂いがしてきました! すでに試作品ができあがっているようですよ。

 私は、“わ〜い♪” と厨房に向かって駆け出します。そう、駆け出したんですよ、たぶん……。ぽてぽてと軽〜い足どりで


「くっくちょ」


 と声をかけて、厨房の扉から中をのぞきこみます。


「お嬢様、一応作ってみたぞ。どうだ。」


 料理長に椅子に乗せてもらい、テーブルの上に置かれたできたてのお好み焼きを見ました。

 うん、見た目は紛れもない美味しそうなお好み焼きです。しゅてき! いや素敵! 料理長が切り分けている様子を見ると、フワもち感がありそうな気がします。


「さぁ、食べてみてくれ」

「あい、いただきましゅ」


 “あ〜ん” と口をあけ、“あむっ”と食べますよ。むきゅむきゅと噛むと、口の中に懐かしいお好み焼きの味が。美味しくて、思わず両手が上下にパタパタ動いてニッコリしちゃいました。


「おいちぃ♪ むこうのあじ。くっくちょ、てんちゃい!」


 作り方は、お好み焼きのたれのパッケージを見ながら料理長に説明しただけなのに、一度も見たことも食べたこともない料理をここまで作れるなんて、さすが料理長です。素晴らしいです!

 青海苔は買ってなかったから、焼いたお好み焼きの上にたれとマヨネーズをつけ、鰹節をのせてるだけだけど、大変美味しゅうございました! さぁ、皆も食べてみて〜♪


「うん、旨いな」

「お嬢様、これ美味しいですよ」

「わぁ〜、フワフワでもちもちです」

「こんなの初めてです」


 料理長やピーノ、キッチンメイド達も一口ずつ食べて好評ですよ。今日のお昼はお好み焼きですね。お母様やお祖父様達も喜んで食べてくれるでしょう。たれは全部使っちゃっていいから、皆もお昼にお好み焼きを食べてね!


次回投稿は9日か10日が目標です。

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