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1話 まさかの夢オチ?

「楓ちゃん、こう君となんてどうかしら?」


 と、私の前に化粧のどぎつい60代女性がにっこり微笑みながら言う。

 その隣にはやや小太りの40代くらいの男性が座っている。


 ここはちょっと洒落た喫茶店。

 母方の親戚に、母の遺品が見つかったと呼び出されたのだが……何故かついてみれば、母方の親戚の子供とのお見合いがセッティングされていたのである。


 ああ……宝くじが当たるとどこからか情報が漏れるとは聞いたことがあるが。

 誰にも話していないのに情報が漏れたのだろう。

 こいつら絶対私の当てた6億円目当てだよ。


 でなければ母の葬式や法事などにも現れなかった母の姉がいきなり連絡をとってきてその息子と結婚なんてさせようとしないはず。



 VRMMOのゲームの世界にに転移しちゃいました✩世界を救いました✩とかいう恥ずかしい夢を見てからはや3ヶ月。

 なぜかあれからゲームの中にカンナちゃんはログインしてこず、私もなんだかやる気がおきなかったためほぼゲームにログインしなくなっていた。

 いや、だってさ。なんか虚しいじゃん?あんな夢見たあとゲームとか。

 夢の中で一緒に旅したNPCのコロネに会ってみたけど、好感度をあげたおかげで変態的対応ではあるけど結局は『いくら猫様でもここから先は通せません』みたいなこと言うだけだし。


 世間は12月でクリスマスということで浮かれている中、私はぼんやりと積んでいたゲームやらをやって無気力に生活してきたのだが……。


 どこからか宝くじにあたった情報が漏れたらしく、何故か40代の男性と結婚させようと叔母にいきなり呼び出されたのだ。


 いや、ない。流石にない。

 確かに彼氏いない歴の長い私でも、これはない。

 相手にも選ぶ権利があるように、私にだって選ぶ権利はあるのだ。

 なぜ会話中目もあわせず、ずっと母親の隣でお見合い話をぶすっとした顔で聞いているだけの相手と結婚しなきゃならんのだ。

 時々こちらを値踏みする感じの視線がものすごくイライラする。

 普通母親が初対面の相手との結婚話なんてしだしたら止めるだろ。

 それすらしないってどんだけ母親依存症やねん。


 そもそも母の遺品があるとか騙し討ちみたいな呼び方をされたため、好感度なんてマックスでマイナスに振り切れている。


「で、どうかしら楓ちゃん?試しに今日のクリスマスイブにデートでも。

 予定もないみたいだし」


 と、叔母。

 なんでだよ。予定がなくてもお断りだわ。てか予定がないの何で知ってるし。

 どうせクリスマスイブでも独り身ですよ。おおきなお世話だ。

 私がガツンと何か言おうとしたそのとき。


「それは困りますね。楓は私とこれから出かける予定なのですが」


 唐突に、後ろから声が聞こえる。

 そう、ものすごく聞き覚えのある声が。

 

 私がおそるおそるそちらに振り返れば……茶髪がかった金髪の精悍な顔つきの中年イケメン。

 私がゲームの世界で一緒に旅をした、変態エルフ事、コロネ・ファンバードが立っていたのだ。

 格好も怪しさ満載のマント姿ではなく、普通にこちらの服を着用している。ちゃっかりそこそこいいブランド物だ。

 ……うん、ゲームの世界では自分でモデリングできるということもあって美形ばかりだったので、特に目立つこともなかったが、現実世界でこのイケメンは物凄く目立つ。

 やばい、背景に星が輝いていてもおかしくないほど目立つ。

 気付かなかったが、喫茶店のお客の女子の視線はコロネの方にむいていた。


「コ、コロネ……?」


 私がおそるおそる名を呼べば

 コロネがニッコリ笑って私の肩に手を廻し、さりげに自分に引き寄せる。


 ええええ!?なんだこのシチュエーション!?


 ちょ、いきなり展開すぎて意味不明なんですけど!?

 私の記憶が正しければ、うちのヘタれコロネはこんな積極的な事が出来るタイプではなかったはずだ。


「楓の母親の遺品を貰い受けるということで、こちらに時間を裂きましたが、大分話が違うようですが?」


 コロネがジロリと、叔母とその息子を睨みつける。

 その眼光は鋭く、マジ怖い。


「ま、まぁ、彼氏がいるなんて話探偵はなにも……」


 そのせいか、誰も聞いてない事まで白状しだす。

 ……てか探偵まで雇ってたのかよ。

 どんだけ人の宝くじのお金あてにしてるんだか。


「遺品を持っているのか持っていないのか、はっきりさせていただきたいのですが。

 今日が何の日か知らないわけではないでしょう?

 こちらにも予定がありますので」


 コロネが言えば、叔母は慌てて、バックの中からアルバムのような物を取り出すと、私の前に差し出した。


「ご、ごめんなさいね。こんな大事な日に邪魔しちゃって。

 ほら、貴方の母親の小さいときのアルバムよ。


 そ、それじゃあ」


 言ってそそくさと立ち去っていった。

 息子の方も、中古おんなとかブツブツつぶやいて、出ていってしまう。


 本来なら、代金踏み倒しに怒る所なのだが……今の私にはそれどこれではなかった。


「コ、コロネだよね……?」


 もう一度おそるおそる尋ねれば、コロネはにっこり笑って


「はい。お迎えにあがりました。猫様」


 言っていつもの笑顔で微笑むのだった。

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