ヒジョウビョウトウ
昔、私には、お兄ちゃんがいた。
優しい、優しい、お兄ちゃん。
もうどんな顔かなんて覚えていないし、
どんな声さえかも分からない。
私が覚えているのは、そこに「いた」と言う真実だけ。
.......いた、はずなのに。
此処は、非常病棟...。
真っ白な、真っ白な、非常識な病棟。
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頭が割れそうな激痛で、目が覚めた。
真っ白な天井が視界に入る。
痛い。....凄く、痛い。
見覚えのない、真っ白な天井だ。
その天井には、シミ一つもなく
人の生活感を感じさせない。
治まりかけてきた頭痛を紛らわせるように
またきゅっ、と目を瞑る。
.....ココは、どこなんだろう。
私の天井は、真っ白なんかじゃない。
そうか、部屋以外の場所で寝てしまったんだ。
いや、家の天井にも白い所なんて、無い。
「いた、たた...」
少し呻いて頭を支えながらゆっくり体を起こす。
心地の良いベッドに、いつの間にか寝てしまっていたようだ。
「.....」
辺りを見渡せば、白。白ばかりの背景。
壁、天井、ドア、今私が寝転がっていたベッド、
部屋のモノは全て白な、そんな場所に私は居た。