プロローグ
今から約3000年前、誰にも心を開かないとても恐ろしく冷たい竜がいました。氷竜は人が近づけないとても深い深い雪山の洞窟に住んでいました。雪山の付近の村人は、みんな氷竜を恐れ震えながら暮らしていました。村人達は絶対に近づかないように子供たちに言い聞かせ続けて来ました。
『いいかい、決してあの雪山の奥に入っては駄目だよ。あそこには恐ろしい姿をした竜が住んでいるんだ。あれは人間を食べようとするから、お前達なんてすぐに食べられてしまうよ』
それはみんな知っていることでした。戦争中の街からこの村に疎開してきた1人の小さいお姫様を除いては…お姫様がそのことを知っていたら、また未来は変わったのでしょうか?お姫様はどちらが幸福だったのでしょうか…
この先を知るものは、ほんの一部のものだけです。この本の著者は深い緑色の髪を持っていた…とか…しかし、その著者も今では亡くなり残ったのは一冊の本…お姫様は生きたのでしょうか食べられてしまったのでしょうか。その一冊の本は、今も誰かに受け継がれていて目にしたものは誰もいないそうです。
そんなたった一冊の本を手にしている灰色の髪の少女は、どんな運命を辿りどんな愛する人と巡り会うのでしょう。