ふね
この舟は、流れには逆らえないのだそうだ。
ぼくは舟の先頭で、先程聞いた言葉を思い出していた。
教えてくれたのはさっきまで併走していた舟に乗っていた男で、ぼくと彼はどうしてか気を許せる仲間だった。理由はわからない、けれどお互いがお互いの舟に乗り込んだ時からそうだったように思う。
「この舟は宝船さ、
奥の船室に乗せている大層なものを運ぶために俺達は乗っている」
彼は確か、そう続けた。
「宝、財宝か何かかい?」
僕が聞くと、彼は首を横に振った。
「いいや、ガラクタさ」
そして自称気味に笑う。
「けれど詰め込めるだけ詰め込んで、乗せるだけ乗せなきゃ気が済まなかったんだろうさ」
「そんな事をしたら転覆してしまうかもしれないのに?」
「そうだ。こんなおんぼろの、作りが雑な舟に乗せなきゃ許せなくなってしまう程度にはな」
舟は脇に生えた緑に跳ね返されながら、時には水面から突き出た枯れ木に引っかかりながら、それでも水の流れに逆らわずに進む。
ぼくはその舟から振り落とされないように確り舟の淵にしがみついて流れていく。彼の舟が先を行って、見えなくなったのはその頃だった。
「アイツ、ちゃんとたどり着けたのかなあ」
何処まで進んでもその姿は見えなかった。だからきっと、目的の場所に到着したのだろう。
「ぼくの舟はどこまで進めばいいんだろう」
笹の葉で折られた、みどりの舟は目的地も知らぬまま何処までも進んで行く。
何処までも、
何処までも
きっと今でも




