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若葉のカムイ  作者: ☀シグ☀
第一章:東へ
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五十六話:カンタラは不思議なヒトがいっぱい

 ひなたぼっこの季節になってきました。


 赤っぽいレンガ。

 オレンジっぽいレンガ。

 しっかり茶色のレンガに黄色っぽいレンガ。


 あと白っぽいレンガ!


 いろんな色のレンガで造られたお家が並ぶ、あったかい街並み。

 足下も灰色の石から暗い色のレンガになっていて、とっても綺麗!


 でも、それよりも!


「あれがSランクのモンスターか?」


「ずいぶん小さいな」


「油断するな。デカいよりも、ああいうのが一番ヤバいんだよ」


「リデット、オデット覚えておけ。あれが面倒なタイプだ」


「トデット兄? それ水垢にも言ってなかった?」


 いろんな形をしたお家が左右に並んだ、まっすぐな道。

 その両わきにあつまって、僕達を見ているヒト、ヒト、ヒト、ヒト!


 ヒトがたっくさん!


 たくさんすぎて、ヒトが十人よこに並んで歩いても大丈夫そうな大きな道が、四人並んで歩けるかどうかにまでせまくなっちゃっている。


 とっても、とってもたくさん!


「右テオ。左マルタ。後方メラニー。無いとは思うが、魔力の動きに注意しろ」


「「「はい」」」


 ススッとマットとテオ達が僕を囲む。

 そして、マットが「ワカバ、まずはこの西門から西大通りを歩いて、この町の最も重要な場所に案内しよう」と言って、歩き始めた。


 ヒトとヒトの間を歩きながら、あつまったヒト達をテオ達越しにながめる。


 街のヒト達も、やっぱりまだ僕が怖いのかな?

 ほとんどのヒトは、僕が顔を見ようとすると、スッと顔をそらしちゃう。

 でも、じっと目をあわせてくるヒトもいる。

 うーん、わかんないや。


「なあ、今この街に通過おじさんが来ているぞ。出くわしたヤツがゴーストとか騒いでいたが、姿を見せずに“通りますよっと”なんて言うヤツはアイツしかいないさ。あれは間違い無く通過おじさん。俺はおじさんには詳しいんだ」


「私はおじさまじゃないわ!」


「マジか。そういやカンタラは去年天帝の年だったな……。こりゃまた気合い入れてやらないと死人が」


「今の誰だ?」


 ザワザワとした喧騒の中から、目立つ声をひろってみる。

 この声は、たのしそうに話しているあのふたりかな?


 よくわからないけれど、おじさんがいるみたい?


 おじさんって、年を取った男のヒトのことだよね。

 ここにあつまっているヒト達の中にもたくさんいるけれど……違うのかな?


 あれ? なにしているんだろう?


 右側のヒトだかり。

 その向こうに見えるお家の屋根の上に立つ、ひとりの男のヒト。

 体が大きいのか、この距離でもよく見える。


 あ、手をふってくれている!


 組んでいた腕を解いて、ゆっくりと大きく右腕をふっている。

 そして、なにかに納得したようにうなずくと、こちらに背を向けて、どこかへ去っていった。


 なんだったんだろう?


「どうした?」


 あ、テオ。

 心配させちゃったかな?


『屋根の上に男のヒトがいたの!』


「男の人?」


 うしろのメラニーが聞き返してくる。

 テオは、緊張した表情で、さっき僕が向いていた方向に目をやっている。


 でも、さっきの男のヒトはいなくなっちゃったあとだから、わかんないよね。


「どんな姿だった?」


 姿?

 上が白くて、下が青。

 それと、


『大きかった!』


「ああ、ビルさんか」


 テオの表情がやわらかくなった。


 わかったの!?


「あの人は大丈夫だ。ちょっと、ほんのちょっと変わっているが、優しい人だから」


 そうなんだ! お話してみたいな!


 それからもマットに案内されるまま進んで、不思議なことに気づいた。


 さっき見たヒトがいる。


 西門を出てすぐの辺りにいたふたりのヒト。

 たしか、おじさんの話? をしていたヒト達が進んだ先にもいた。


 今度はお話をせずに、じっとこっちを見ている。

 動くのも、時々頭の右上の辺りをさするくらい。


 先回りしていたのかな? って最初は思っていた。

 けれど、あのふたりを見るのは、これでなんと四回目。

 もしかして……ふたりとも四つ子?


「ここ! ここね! お肉屋さんなの!」


 お肉屋さん!?


 急いでふり返り、メラニーが指さしている方を――!


 見えなーい。


 屋根とか、ちょっとだけ青い看板が見えるくらいで、ほかは全部ヒトだかりの中。

 一番見たいお肉も、すこしくらいするかもと思っていた香りもない。


 すこし、ううん、とっても残念。

 だから、また今度のおたのしみにしよう!

 今度はしっかり見るぞー!


 それからさらにすこし進んで、先頭のマットが立ち止まったのは、大きなお家の前。


 道と道がぶつかって、ぽっかりと空いたような場所。

 まるで西大通りを左右にわける様に、お家がどっしりと建っている。


 お屋敷っていうんだよね!

 知っているんだ!


 左隣りにお屋敷よりすこし小さい白っぽいレンガの建物があるけれど、それ以外のお家はない。

 なんだか、ここが町の中心みたい。


 レンガの堀に門柱。

 黒い鉄の棒で作られた両開きの扉には、蔦の様なかざりが付いている。


 マットは僕達から向かって右側の扉を開け、左手で中へと僕達を促した。


 扉を通って、門を抜けると、大きな、大きな広場!

 とってもひろーい!


 町のヒト達とみんなで追いかけっこしても、大丈夫かも!

 すっごく広い!


 走りたくなる気持ちを抑えながら、扉を閉めてスッと先頭にもどったマットのあとを歩いて、広場をつっ切る。


 お屋敷は窓とカーテンは閉め切っていて、中の様子はわからない。

 ヒトがいるような音もしない。

 なんだか不思議。


 白く縁取られ、綺麗な模様が付いた木の扉をマットが開き、中へと入る。

 さっきまでしていなかったヒトの話し声が聞こえ始める。


『わぁ!!』


 びっくりして、思わず声が出る。


 深くあたたかい色の木で作られた床。

 ヒトがいっぱい来ても、大丈夫そうな広い空間の奥には長いテーブル。


 左は、夕焼け石が明かりとして一番上におかれている棚が並んで、小さなお店になっているみたい。

 右には上へ行ける階段と細い通路。


 なんだかとってもおもしろそう!


 うわぁーと天井を見上げたら、またびっくり!


 テオ達が使っていた夕焼け石よりも、たくさんで、大きな夕焼け石がふわふわと高い天井近くに浮いていた。


 すごいすごーい!

 天灯? をたくさん飛ばした時みたい!


 あ! 気づいちゃった!

 マットが黒いマントの下に着ていた服!


 奥にある長いテーブルの向こうに座って、なにか書いているヒト達も、右の細い通路の前で立っているふたりの大きな男のヒト達も、すこし形が違うところがありそうだけれど、みんなみんなマットと同じ服を着ているの!


 つまりここは、マットの仲間がいる場所!

 そんな場所に案内してくれたってことは……僕も仲間に入れてくれるのかも!


 やったー!


「ここがカンタラの心臓部。冒険者ギルドカンタラ支部だ」


 マットがすこし緊張した表情で紹介してくれる。


 ぼうけんしゃぎるどカンタラしぶ。

 よくわからないけれど、すごそうな名前!


「ここに君と話したがっている人がいるんだ。すぐに戻るから、少し待っていてくれ。テオ、マルタ、メラニー、行くぞ」


「「はい」」


「……はい」


 僕と話したがっているヒト? だれだろう?

 でも、そんなことよりメラニーが元気がないのが気になる。

 さびしくなっちゃったかな?


 なんとか元気を出してもらいたくて、メラニーの足元まで近づいて、ジャンプ!

 ポンッと軽く頭がメラニーの左手にあたった。


 僕に気づいたメラニーがしゃがみ込む。


『またね!』


「……! またね!」


 メラニーは、さっきまでの硬い表情が嘘のように、ふにゃっと笑った。

 やっぱり、メラニーは笑っていた方がいいね!


 マット達が右の階段を上っていってから、ひとり座って待つ。

 出入り口の前だとジャマになちゃうだろうから、左のお店のところのベンチの右隣りに座っている。


 ベンチの上には、身体強化をしないで登れなかったんだ!


 それにしても、あの長いテーブルのところのヒト達は、なにを書いているんだろう?

 チラ、チラってこっちを見てくる時もあるし、もしかして、絵を描いている……とか?


「うっわ超犬」


 突然、左から声がして、びっくりした。

 声の方を見て、もっとびっくりした。


 黒い髪に黒い目。

 そして、まっしろな服!


 カンタラのヒト達は、なにかの革を使った茶色っぽい服のヒトが多い。

 綺麗な赤や青の服を着ていたヒトもいたけれど、白は下半分くらいまでで、全身まっしろのヒトはいなかった。


 それに目の前の女の子が着ている服は、僕が知っている着物とそっくり。


 マットもメラニーも、洋服? っていう服。

 マルタは、着物に近いのかな? ちょっとわかんないや。


 とにかく、カンタラのヒト達とガラッと違う雰囲気のヒトがすぐ目の前にいて、びっくりした!

 なんだか空気までピンッとしている気がする。


「柴犬? 北海道犬? ま、どっちでもいっか! なんかさっきからここにいるけど、なんか待ってるのー?」


 女の子はベンチにうつぶせによこたわり、手すりに頭をのせて、手をワタワタと僕へと伸ばした。


 読んでいただきありがとうございます。

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