二十五話:二回目の感覚
さつまいも。
“ときこ”の畑でたくさん掘ったなぁ……。
僕が掘ると綺麗に採れるって、いつも褒められたっけ。
味もぽかぽかした味だよね。
歯ごたえはあまりないし、歯の間に溜まらないように気をつけないといけないけれど、とっても好きな味。
また食べたいなぁ……。
って、そんなこと考えている場合じゃなかった!
魔力の球への魔力の流れを断って、消そうとする。
けれど、流れを断ったのになかなか消えない。
もたもたしている間にも、魔力を使って走っているのか、狼さん達が走る音がすぐそこまで近づいてきている。
じゃあ、こう!
左に向かって魔力の球を放つ。
魔力の球はぴゅーっと森の中を飛んでみえなくなった。
ぃよし!
あとは僕も魔力を使って狼さん達との距離を
『え、ちょ、ちょっと待って!』
ん?エルピ?
待つって……あ、もしかしてダメなの?
『そう。今のままだと、身体強化をすると、見付かるよ』
そっか!
わかっ……あれ?
でもなんで狼さん達は大丈夫なの?
魔力感知でみえている狼さん達よりも、もっと追って来ているんだよね?
その狼さん達は、魔力を使っているんじゃないの?
『そうだね。若葉の場合、風になるんだっけ? 精霊や半精霊体、が使うものに近い、と思うんだけど、それの過程で偶々、上手く、魔力隠蔽が出来ただけ、だから魔力を使用する時の、体内魔力濃度の変化、に合わせた魔力隠蔽、は、まだ出来ないんだよね』
うーん、よくわからないけれど、僕にはまだはやいってこと?
『そうだね』
わかった!
もっとがんばって、狼さん達みたいに隠れながら、びゅんびゅーんって出来るようになる!
『その前に、赤べえだね』
うん!
……あれ?
すこしうしろを向いて耳を澄ます。
うーん、自分の足音で聞こえにくいけれど、うしろから追って来ている狼さん達が減っているような気がする。
気のせいかな?
『気のせいじゃないよ。上手くいったみたい、だね』
エルピがなにかしたの?
『若葉がやったんだよ? ほら、さっきの薩摩芋型魔力球。あれに数匹釣られたんだけど……まさか偶然?』
なにかしたような覚えはないから、そうみたい。
赤べえへと続く糸がぐーんと左にずれていく。
近くなってきたのか、糸のずれる幅が大きい。
あとすこし――
突然、背中に重石がのったような感覚に襲われる。
視界がぼんやりと暗くなる。
足からの感覚が鈍くなって、べつのだれかの足みたい。
長い間息をしていなかったみたいに、息が切れ始めて、足取りも重くなる。
息を吸いたいのに、胸の辺りでなにかが詰まっているのか、息が吸えない。
胸に詰まったものを吐こうとするけれど、詰まったものが出てくる気配はない。
すっごく気分がわるい。
こんな感覚初めて……ううん、違う。
僕はこの感覚を知っている。
でもいつだったかは……あ、そうだ、“ときこ”と“しん”に会った時だ。
『わ、若葉!? 大丈夫!?』
う、うん、だいじょ――!
目の前に迫る木。
さっきまでは避けなくても大丈夫だった。
けれど、今はきっと……。
すでにおぼつかない足に魔力をあつめて、無理矢理避ける。
サッと僕の毛が木の側面を擦った。
殆ど勢いそのままに、またべつの木。
『若葉!』
ふわっと体が浮いて、前に進んでいた勢いで空を向く。
背中の首に近い辺りがなにかに挟まれて、伸びる感覚。
ズズッと地面がなにかと擦れるような音。
ようやく勢いが落ちて、ぶらーんぶらーんと前とうしろに体が揺れる。
揺れが収まると、ゆっくりと地面に体が下りていく。
地面に足がついたと思ったら、挟まれていた感覚がなくなった。
なにかが僕のうしろから前に移動する気配がして、
『大丈夫?』
エルピ……じゃない。
なんだか重たい頭を上げると――狼さん。
それも、いつも背中に頭をのせてくる狼さんだった。
『捕まえたみたいー』
『やったねー』
『やったやった』
『おー』
狼さんのうしろに、他の狼さん達が近づいてくるのが見えた。
僕を追いかけていた狼さん達とは、もうすこし距離があったはず。
それに、僕がさっきまで行こうとしていた方向から……。
まあいっか。
そんなことより、
『ありがとう』
そう言うと、狼さんがうれしそうに尻尾を一振りした。
その姿を見て安心しちゃったのか、
僕は気を失った。
読んでいただきありがとうございます。




