十二話:渦ってなに?
泉は今日も水の音が小さく聞こえるだけで、とっても静かだった。
すこし広いところを選んで、さっそく体中の魔力をゆっくりと動かし始める。
毎日練習したおかげで魔力の操作は結構上達してきた。
ついに全身の身体強化の練習をしてもいいよって、エルピに言ってもらえるまでになったんだ!
すごいでしょ!
魔法はまだ上手く出来ないけれど、身体強化はこのまま達人になれちゃうかも!
ゆ~っくりからすすす~に、すすす~からすらーに、だんだんと魔力を動かす速さを上げていく。
最初の頃はこのくらいでもう疲れちゃっていたけれど、今は…なんとか、大丈夫!
それに、がんばるのはここから!
すらーからしゅばばにするんだけれど、するんだ、けれど…よ、よいしょ!
よし! 出来た!
あとは、しゅばばからぎゅわんに……ぎゅわんに……ぐぬぬぬ…………
『うん。一旦休憩しようか』
……わかった!
すこしずつ魔力を動かす速さを下げていく。
ふはーといつの間にか溜めていた息を吐き出す。
すぐに森の澄んだ空気を吸い込んで、また吐き出す。
心臓がどきどきする。
すこし体が熱くて、舌を出す。
『大丈夫?』
うん! 大丈夫ってあれれ?
近くの木の下で休もうと歩きだしたら、思うように足に力が入らなくて座っちゃった。
思っていたよりも、疲れていたのかな?
『渦、がかなり残っているようだね』
うず?
なんだか目が回りそう!
『そうだね。全身の身体強化等で、魔力が体の中を高速で環流すると、所々で渦を作るんだ。身体強化時は全体の流れ、が速くなっているから、影響は殆ど無いんだけれど、その渦が身体強化を解除、しても残っていると、渦の流れの速さと、体全体の流れの速さの差、から色々と悪さをするんだ。足に渦があったとしたら、思っていたよりも足の力が強くなって、その分他が弱くなったり、逆に足の力が弱くなって、その分他が強くなったり』
わー! おもしろいね!
『面白いかもしれないけど、今後の為になくしておいた方が、いいと思うな』
え、そうなの?
『ほら、ここみたいな平地じゃない場所とか、で身体強化を解除、しないといけなくなるかもしれないし、もっと言うと、戦っている時に解除、って事もあるかもしれないよ? 常に万全な態勢でいる事、に越した事はない、けれど、それはあくまで理想で、実際はそうじゃない事の方、が多いでしょ?』
たしかにそうかも。
ごはんを食べている時に、機嫌が悪そうな猪さんにおしりを頭突きされたことがあったもん!
あれはびっくりしたなー。
『うん。もしその時に、丁度身体強化を解除、していて、体中に渦が残っていた、としたら?』
わー! たいへんそう!
『でしょ? だから今度は、渦が残らないように意識して、身体強化の解除をしようね』
わかった!
木の下ですこし休んだら、またがんばろう!
全身の身体強化が出来るようになるにはまだまだかかりそうだけれど、こうして毎日こつこつやっていれば、きっと出来るようになるよね!
読んでいただきありがとうございます。