第01話 世界は終了しました
――――本日只今を持ちまして当世界は終了させていただきます。長年の御愛用、誠にありがとうございました。
というわけで始まりです。
気が付いたら見知らぬ場所にいた。
近くにあった鏡をのぞいてみる。
誰だこいつ。
知らん顔だった。
現実ではありえない赤髪に、虫も殺したことのなさそうな穏やかそうな顔付きの男。服装は着替えたわけもない魔術士然としたローブだ。
そんな現実を知らしめる為だろう。
図ったように、目の前に等身大の鏡が置いてあった。
「ていうか別人じゃねーか」
自分の姿を確かめて、自分の記憶の中にある体ではないことに気付いた。
自慢じゃねぇが、俺はもっと人を殺せそうな凶悪面してるし、髪も染めてないから黒い、服はいわずもがなだ。くそ、本当に自慢じゃねぇ。
周りを見回してみる。
子供が倒れていた。
十になったばかりの子供。
黒髪に、自分のようなファンタジーかぶれしていない普通の服装をしている、女の子だ。
思いだして。
その子が誰だったかを思いだして、苦虫をかみつぶしたような顔になった。
世界が終了している時。
「この子を、お願いします」
託されたものだった。
助けたいやつが二人いて。だがどっちか一人しか選べなくて、選んだ結果だ。
世界滅んでもいいとか考えてる男に、大事な娘を託すとか。
何を考えてるんだろうな。
まあ、知らないんだろうけど。こっちの気持ちは。
崩落しそうな地面を目の前にして俺は、選択を迫られたのだ。
一番最初の選択。
やらかした俺の今後が決まる、選択。
親は子供を選んで。
俺も、その子を選んだ。
その結果が目の前にあった。
「おい、大丈夫か?」
世界が終わった後、別の世界でこうして生き残った二人は倒れていたわけ、だ。