第16話 襲撃多発地帯
里留が起きたのを見計らい、次のフロアへと向かう。
扉の前まで行けば、セーブポイントの後ろに奴が出てきた。白オリガヌだ。呼んでもいないのに。
『次のフロアの事ですけど、フロアテーマは連携です』
「で、ルールとかはあんのか」
『それは後ほど必要になったら説明しますけど。あの……』
「なんだよ」
『これ、なんですけど』
白オリガヌがおずおずと差し出したのは剣だった。アレンと同じ剣。
橙の柄に太陽の意匠、血の様に赤い宝玉がはめられている。何つーか、ゲームとかの勇者が持ちそうな剣だ。それが奴の剣だった。いま初めてその形を脳裏に思い描いた。効果は威力はともかく、細けぇデザインなんて興味ねぇからな。
珍しくアレンがそれを見て「君はこれをどこで? いや、どうやって手に入れたんだ?」取り乱す。
『すみません。それは言えません。オリガヌさんにばれてしまったら、僕も大変な事になりますから』
「君はその剣の価値を知っているのか……?」
『はぁ、まあ……一応。体だけなら僕もオリガヌですし」
おいテメェ等、俺を蚊帳の外にして話を進めんな。
白オリガヌは自分自身の方へと刃先を向ける。絵面がとんでもねぇ。里留の目に悪いだろ。
『でも、こうすると何となく、あ、これ危ないものだな、と分かるんです』
そうしなくても危ねぇもんだろうが。
白オリガヌは俺に対して『必要になった時は言ってください、返しますので』物品返却の旨を伝えた。
そう言って、さっさと消えてしまう。ただ相変わらず『では、御用の際にはお呼び下さい』馬鹿丁寧にその一言は付け加えていくが。
「返す?」誰にだ。俺を見て他っつーことは、俺にか? 奴じゃなくてか? 「おい」アレンを見るが、首を振られた。
そうしてほぼ意味不明なやり取りがあった後、五層目の攻略が始まった。
このフロアの特徴はカーブや坂道、曲がり角が多い事だ。一層目の迷路を彷彿とさせる。造り的にどうなってんんだ、激しく気になるし問いただしたいところだが、聞いたところでまともな答えが返ってくるとは思えない。面白そうだからそうした。で、たぶん終了だろう。
歩きづらい事この上ないそのフロア。問題だ。疲れる。だが、それだけではない。ここにはもっと疲れる問題があった。精神的に。
「うおおおおっっ!」
出会い頭に、他のパーティーに襲われた。
三人組だった。
こうやって歩くたびに、他の人間に襲い掛かれらるのだ。
殺気。敵意。殺気。敵意。そして休む暇もなく、また殺気と敵意だ。冗談じゃない。
それに造りがアレなもんだから、互いに相当近くに来るまでまったく気づけない。曲がり角でばったりかち合って、肝を冷やしたことなんで一度や二度ではない。
「倒せっ!」「優男は俺がやる」「子供……? いやそれより、ガラの悪そうな男は俺が」
息を合わせてそいつらは一斉に攻撃してくる。対処しなければならない。ちなみにどっちがどっちを狙っているかなんて、間違えたりしない。どうせ俺はガラの悪そうな男だ。
アレンは「君は一人を」、紅蓮にそう指示した。その意味は、自分が二人やる、と言ったのだ。偉そうに。
「くそがっ、優等生め」襲い掛かってきた奴らと大差ない言葉遣いをしながら、俺は杖を構える。
進むにつれてこうした襲撃の頻度が上がってきた気がする。
何故か。だが、相手に聞くわけにもいかない。素直に話を聞く連中なら、殴り掛かっては来やしないだろうし。まさか、そんな奴らばっかなんじゃねーだろうな。ここで出会う輩は。そう考えれば、アレンは変わっている部類に入るのか。この胡散臭いやつ以外に言葉の通じるのがいないとは。世も末だ。いや事実、世の中が末だったな。
しかし見かけたら襲う、とか。「俺らはゴキブリじゃねーっての!」ついそう叫びたくなる。実際、叫んでるしな。
灼熱陽光で、「恨むんじゃねぇぞ、こら」人間一人を焼き払う。轟轟と立派な火柱が立った。威力過多だ。スキルレベルが高すぎて、うまく調整できないのだ。
「ふぅ、終わったよ。里留ちゃんはいない方がいいかもね」
「おーい、終わったぞ。でもまだこっち来んな」
あらかじめ少し離れた所で成り行きを見守もらせていた里留に、戦闘の終了を知らせ、目の前の死体を原型が分からなくなるまで炎で焼き尽くす。
「過保護だねお父さんは」
誰がだ。
こいつが加わってから俺は突っ込んでばかりだ。口に出しはしないが。
「だいじょう、ぶ?」
「僕は大丈夫だよ。ほら、紅蓮も何か言ったらどうだい?」
「別に……。どうってことねぇ」
その大丈夫? は、お前だけにかけられた言葉じゃねえのかよ。




