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世界終了のお死らせです  作者: 透坂雨音


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第12話 やり直しの代償

(※6/1修正しました。長い間気付かなくてすみません)



 夢から現実へ。

 意識が戻った途端にやってきたのは激痛だった。


「あがっ、あぁぁぁぁぁぁぁ!」


 背中を突き破るような痛みに、思わず膝をついた。

 思考をかき乱される激痛に、数秒……数分耐えて、徐々に苦痛が治まってくるのを待つ。


 息を整えながら周囲を見回す。

 あの試練のフロアではない。


 気が付くと、白い靄の中で一人で立っていた。


 どこだ? つうか、何がどうなった?


 確か……。


『あらら、やられちゃったね。』


 思い出そうとした瞬間、聞きたくもない忌々しい声が響いた。

 瞬時に思いだした。最悪だった。いや、そんな言葉で表せていいものか。


 里留は死んだのだ。そして、その光景を見て油断していた俺も……。


「セーブクリスタルとやらの効果で扉んとこに戻されるんじゃねぇのかよ」


 あの状況で脱出の事にまで頭が回ったのは奇跡だろう。

 どうにも明確にその時の事を思い出せないのは、半分意識が飛んでいたからか……。

 下手したらあれで終わっていた。

 こうして話してるってぇ事は、まだ生きてるって事だろう。


『そうなんだけどね。親切なオリガヌちゃんは思っちゃったりするの。いやあ、このままでやっちゃっていいのかなーって』

「あぁ?」


 どういう事だ。思わせぶりな態度してねぇでさっさと説明しろ。


『体は元に戻せても、記憶は元に戻らない。……この意味が分かるかなぁ?』

「チッ」


 思い至った。そういう事かよ。

 俺は良い。問題は里留だ。


『痛みの記憶とか、残ってるんだけどぉ。ちょっと、これ発狂しちゃわなーい? だいじょーぶなのぉ? 鍛えてる大人とかじゃなくって、里留ちゃんてー、ただの子供でしょ』

「戻せるんじゃねぇのかよ」

「体はね。記憶まで消す仕様にしてほしい?」

「断る」


 反射的にそう答えた。

 しろって言ったら、こいつはやりそうだ。迂闊な事は言えない。

 失敗するたびに、そんな事されたらたまったもんじゃない。

 一度死んだ後も生きている、なんて。ただでさえ薄気味悪いっていうのに。


 だが……。


『良いよ。里留ちゃんの記憶、ちょーっとだけ消してあげる。三秒くらい?』

「本当か?」


 悩んだ。

 あんな経験と痛みをした少女は、大丈夫なんだろうか。


 もしかしたら、耐えられないかもしれない。

 万が一そうなる危険性があるのなら、その危険性をどうにかできる話があるというのなら、回避すべきなのではないのか。

 それが、こいつの思惑に乗る様な事だとしても。


『うん。あぁ、良い表情。その顔とってもいい。必死に悩んでますって感じがして』

「チッ、……わかった。頼む」


 結局はそうするしかない。それが一番良い方法だ。……そう思って納得するしかない。本来の里留はどうなったか分からないが、分からなくてもいい。未来なんて分からないもんだ。最悪になる可能性なんて残しておけねぇ。


『うふふ。言質、取ったからね?』

「あ?」


 声に邪悪な響きを感じて、制止の声を上げようとする。

 だが意識が、抜けるように落ちていった。

 高所から突き飛ばされて落ちるような感覚と共に、俺の記憶は途切れた。





――――




 見つめていた先で、唐突な変化が起きた。

 夢から覚める様な素振りを見せた紅蓮の体が、ぴくりと一度動いたのだ。

 そして……


「あがっ、あぁぁぁぁぁぁぁ! がああぁぁぁぁぁ……」


 痛い。痛い。痛い。痛い。


 叫びながら、そう訴えながらその人は苦しんでいた。

 紅蓮は、文字通り床を転げまわている。手足を振り回して、まるで壊れた人形のように。

 痛みを感じているらしい体は、ひどい痙攣を起こしていた。


「紅蓮……っ!」


 発っした里留の声は、痛みの最中にある紅蓮の耳には届かない。

 近づこうにも近づけない。暴れ回る彼に近づけば、里留の方も怪我をしてしまう。


「誰か」


 どうすればいいのだろう。

 里留は、こんな時どうしてやるのが良いのか知らない。だから何もできなかった。

 助けを求めるように周囲を見回してみれば、ちょうどよく誰かが階段から登ってくるところだった。


 黒髪の少年だった。紅蓮と同じ年頃くらいの。厳しい面持ちで、探る様な視線でこちらを見つめてきた。

 そして「……子供?」気の抜けたような顔をしてみせる。呆気にとられている。と言ってもいいかもしれない。


 通りすがった第三者。紅蓮より素性の分からない人。

 けれど里留は言った。


「助けて……っ」


 誰かにすがるしか今の自分にできる事は無い。

 そうする事以外、自分にはできる事が無いのだから。




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