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みじめな蛙さん  作者: リンゴ雨
一章
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一話 【カエル】

僕は雨が好きだ。


だってじめじめしているし、人も少ない。

蛙の僕にとっては最高の天気だ。

落ちてくる雨の雫の冷たさを感じながらぴょんぴょんと濡れたコンクリートの地面を跳ねていく。

僕の敵は人間だ。

蛙の見つけたら気持ち悪いと言い、蹴ったり、自分達が研究するために、蛙を解剖する。

そんな人間の愚かさに若干イラつきながらも、知らない人の家の塀に登った瞬間、なぜか宙に浮いた。


まさかと思い、後ろを向くと黒のリュックを背負ったそばかすがある少年がいた。


"おい、ブロント。雨の日だからって人間がお前を狙わないわけじゃないから。気を抜いたら捕まる。いい?捕まったらいちいち取りに行くのめんどくさいんだよ...だから捕まったら潰す"


家を出る前、緑色の髪の人が言った、恐ろしい言葉を思い出しながら、ゆっくり意識を手放した。




「はー!?お前、これ青色の蛙だぞ!?ちょっとお父さんに貸してくれないか!?」

「やーだね!お父さんに貸したら全部壊しちゃうもん!」



騒がしい声が聞こえて、ゆっくり目を覚ます。

状況整理をしようした瞬間、少年が僕を持って階段をすごい勢いでダッシュした。

走るのはいいけど揺らすのやめようね。

僕、蛙さんだからね。

少年が部屋に入ったと同時に出て行った。

僕を部屋に置いていっただけなのだろうか、廊下を走る足音がうるさい。

僕にとっては好都合なので、少年の部屋にある窓から飛び降りる。


「チッ...こんなところにいたのかよ...手間かけんなクソ蛙が...」


突然、低い声が聞こえてくる。

ゆっくり振り返ると、意識がぶっ飛ぶ前に思い出した脅迫の言葉を言った人。

緑色の髪のサイドテール。右目と左目は若干色が違う緑と青。

同じ村生まれの詩音。


『ひえっ...ごめんなさいごめんなさいい!今回はしょうがないから...』

「見てたから知ってる。とりあえずいいギルド発見したからそこに行くよ、人間になって」


体を凍らされると思って、構えていたが、詩音が呪文を唱える様子はなく、逆に結構重大な言葉を言われた。

とりあえず言われた通りに、蛙から人間になる。

ついでに僕は異能者だ。

異能者は魔法道具を使わずに魔法が使える。僕も町は、みんな優しく接してくれたけど、詩音が魔法を使った後、子供たちが怖がるからと言う理由で追い出された。

こう言う風に、怖がられたり、蔑まれたりする。

ひどい時には今さっきの少年のように誘拐だってされる。

そして、僕の魔法は青い蛙の姿から、人間になったりできる変身魔法。

変身といってもドラゴンなどの姿になったりできない。そのうちできる...はず。



詩音が言っていたギルドは、ここを海を渡った西の方にある国にあるらしい。

そこはこの国よりいろいろな魔法道具もあるのと、異能者を差別しないらしい。


「そこの国の名前はアリアナ、魔法道具とギルドも何個かあるし、異能者が差別されない。平和な生活ができて、寝床もあるからまさに一石二鳥」


ブイブイとピースをしながら、意味不明な言葉を言った後、詩音の使い込まれた黒い靴が動く。

少年が住んでた家は町からも遠く、森の奥深くなので用があっても誰も来たくないだろう...

少年友達少なそうとかいう勝手なことを思いながら、木と木の間をどんどん進んでいった。


「...やっぱ、君たちも行っちゃうんだね...」



ブロント達が、出ていった様子を見ていた少年は静かにカーテンを閉めた。




「すみませーん、野菜と果物と飴を全部下さ〜い」


海辺の街のついた瞬間、やけに透き通った声が聞こえて来た。

いや、野菜と果物はわかるけど飴入らないだろ...心の中で軽くツッコミしてると、茶色い紙袋の中に、大量の野菜と果物とかを詰め込んだ今さっきの人がやって来た。

黒髪ツインテに黒目、外見はそんなに目立たないが、さっきの大量購入のせいでかなり目立っている。

そして、小さな段差に気付かなかったのか、綺麗にコケた。


『あれ...絶対痛いよね...』


顔を歪めながら言うと、詩音は小さくそうだね、と返した後、足元に転がったリンゴを拾ってその人に渡した。


「すみません、アリアナ王国の行くにはどこの船に乗ればいいんですか?」


「ん?君達もアリアナ王国に行くの?それなら一緒に行こっか!」


詩音からもらった林檎をまた茶色い袋の中に突っ込んだ後、にっこりと笑いながらこちらに来て、僕の手を思いきり引っ張った。

その力は全然女の人だとは思えないほど強い。


「お兄さーん!アリアナ王国まで乗っけてー!」


「おう!嬢ちゃん達、旅のものかい?」


頭に白いタオルを巻いて、黒のタンクトップから見える筋肉はかなり鍛えてるみたいだ。

どんだけ筋トレしたら、こんなに筋肉がつくんだ...

疑問に思いながら、少し広い船に飛び乗ると、船がすぐに動く。


『そういえば、黒髪さんはなんでアリアナ王国に行くんですか?』


「あ、自己紹介してなかったね、おれの名前は...えーと、キイだよ。アリアナ王国に行く理由は、ギルドに戻るためかな...」


そう言って、キイさんが船に立って自己紹介をした瞬間、ものすごい風が吹いて目の前で海に落ちていった。


『キ、キイさああああん!』


「待って、ブロント。お前は海に行ったら死ぬよ」


自分が羽織っていた水色のカーディガンを脱いで、海に潜ろうとした瞬間、詩音に首根っこを掴まれる。

そ、そういえばそうだった...

蛙は海に入ると、体の水分が抜けて死ぬ。

そのことを思い出したら、背中がゾワっとした。

数秒海を眺めていたあと、ぶくぶくという音を立てながら、泡が浮いてきて消えた。

その瞬間、勢いよくキイさんが海から顔を出して、船に乗ってきた。


「うえっへ〜...はやく帰ってこいってことかなぁ...」


ブツブツと呟きながら、黒のマントを脱いて絞りはじめた。

黒マントの下には黒のTシャツに黒の短パン...

いや,黒色の服どんだけ着てるんだよ...と心の中でツッコミつつ、船に寝っ転がる。


「詩音ちゃんとブロントくん...だっけ?この船飛ばすよ!」


にへらと、笑った後、すごい勢いで船を操縦してたおっさんを蹴飛ばした。

驚いて、船から身を乗り出すと、すぐにキイさんは魔法で落下のダメージがなくしてるから大丈夫とまた笑った。

絶対、そういう問題じゃないから...

そう思った瞬間、すごく船が速くなり、思いっきり揺れた後、なぜか船は空を飛んだ。


『やることが無茶苦茶すぎるウゥッ!!』


空に向かって叫んだ後、船に乗っていた木箱に頭をぶつけ、僕は本日2回目の記憶を手放すことになった。


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