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ー閑話4ー『Xマス』

クリスマスですね!この話は完全に被せました!どうぞ!因みに作者はクリぼっちです……タイトルを付け足しました。ストーリーに変更無いので気にしなくていいです

某所の一角に現れた赤い扉の小さなバーが『Open』の文字をぶら下げた。




街全体がカラフルな電飾で彩られた。お祭りの様な事が街全体で行われた。普段は夜に店を閉める店も未だ明るく客を呼び込んでいる。

道には手を繋いで歩く人がごった返し、数人で歩く団体。少なくとも1人で歩いている様な人は見当たらない。

そんな街全体がお祭り騒ぎであるのは一つ理由がある。


それは今日が『Xマス』だからである!



Xマス。この世界での存在の説明をすると長くなるので省略しておこう。簡単に言えば〈街中リア充しか居なくなる〉という伝説の日なのである。






「ねえ♡サリフ?あそこのお店良さそうじゃない?ちょっと行ってみましょう♡」


「そうだねネル♡とても静かで良さそうだ。行ってみよう。」


その2人のカップル…いや、リア充は赤い扉の小さなバーへと足を運んだ。


中は、もの静かなゴシック調の壁に、沿う様に並んだワイングラス。黒い少し光沢のあるカウンターが、扉からずっと店の奥まで伸び、見た目とは裏腹に意外に奥に広い作りになっていた。

店の人物らしき店員は居ない。


しかし、席に腰掛けワインやカクテルを飲む客が数人いた為、そのリア充も隣の客から離れた席に腰をかけた。

赤色の丸椅子は腰にフィットし心地良く疲れを感じさせない。


「いらっしゃいませ。」


リア充の眼の前にひょっこりとカウンター下から現れた、黒髪黒眼の白いカッターシャツに黒のベスト。扉の色と同じ、赤いネクタイを着けたバーテンダーが現れた。


「何に、いたしましょうか?」


そのバーテンダーは落ち着いたもの腰でリア充を見つめる。口元は笑っているが眼はそれ程笑っていない。

リア充の男は、そのバーテンダーを測るように見つめ、直ぐに注文をした。


「俺はハイボールを頼む。」

「私はジントニックでお願い。」


「畏まりました。ハイボールの氷はどうされますか?」


「入れてくれ。」


「畏まりました。」


バーテンダーの手前にグラスが置かれ、霜の掛かったハイボールグラスも置かれる。

グラスに氷が3個ほど入れられ、ハイボールグラスにはレモンが絞られ入れられた。


シェーカーにジンと、トニックウォーターが入れられ、ハイボールグラスには氷が一杯に入れられる。

バーテンダーはグラスに入れた氷を捨て、水滴を軽く拭き取り再びカウンター手前に置き直す。


シェーカーに氷が入れられシェーク。


リズムを刻んだ心地よい音は直ぐに鳴り止む。


グラスにジントニックが静かに注がれた。バーテンダーはシェーカーを一度置くと、ハイボールグラスを手に取り背後に振り返りハイボールを注いだ。


ジントニックに、シェーカーから取り出した氷が3つ入れられ、ハイボールと共に並べられる。

バーテンダーはバースプーンをくるりと回し持ちだす。

静かにそして早く、丁寧にステア(混ぜる事)されスッと、リア充の前に置かれた。


「ごゆっくりどうぞ。」


そう言い残したバーテンダーは、店の奥の客に別のものを提供しにいった。



リア充は、お互いのグラスを静かに当てると一口、口にした。


「あら、美味しい。」


「本当だ。」



「それにしてもネル。良いのか?俺たち『王』の称号を保つ者が軽々しく外に出てしまって…」


「大丈夫よ。相当な実力者でもない限り私達の正体を見破る人なんて居ないわ。それに、いざとなってもサリフ。あなたが守ってくれるんでしょう♡」


「勿論だよネル♡誰が来ようと負けはしないさ何たって俺は『武王』だからね♡」


男の名はサリフ。『武王』の称号を保つ実力者である。

そして女は『賢王』ネル。サリフの妻であり、賢者を超える程の魔法を扱う事が出来る実力者である。


彼らはお互いを愛し、愛し過ぎる故に他者から反感を買う程の、バカップルである。





バーテンダーはゆったりとした動作でシェーカーにホワイトラム、パインのジュース、ココナッツミルクと氷が加えられシェークする。


バーテンダーの眼の前に座る、緑色の髪のロングヘアの女が話しかける。


「ねぇ、マスターはどんな女が好きなの?」


若干、頰の紅くなった女はバーテンダーに絡む。


「そうですね、少なくともこの様な店に二人以上で来ない方ですかね?」


女の前にシェークされた、パインとココナッツにラムがベースのカクテル。ピニャコラーダが置かれる。


「そうなんだ…じゃあ、私はオッケーね。」


「それは無いので安心してください。」


「即答ねぇ…マスターのそんなところ私は好きよ…」


「御冗談を…」


グラスを拭き始めたバーテンダーを見つめながら女は、ピニャコラーダに口をつける。


「相変わらず……美味しいわね。」


「それは、ありがとうございます。」


女はグラスを傾け揺らす。カランカランと氷の音色が静かに響く。


「ねぇ…マスター。私ね実は『呪王』なのよ。」


女の名はシロン。『王』の称号を保つ実力者である。『呪王』の名を聞けば多くの人が悲鳴をあげ 逃げ惑う、そんな存在の相手にも関わらず、バーテンダーは落ち着いたもの腰でグラスを拭く。


「お客様がどなたであれ、この店に来られた以上はお客様。この店のお客様である以上は私はどんな権力にも力にも屈しませんよ。」


「……そういう男らしいところ好きよ…」


「私は私の今、眼の前に居られるお客様は好きではないですね。」


「マスター、呪うわよ?」


頰が紅いながらも『呪王』シロンはマスターと呼ぶバーテンダーを軽く睨む。


「私に呪いは効きませんよ。」


バーテンダーは鼻で笑いグラスを拭き続ける。


「その自信がどこから来るのか私は知りたいわ。」


「私も何故、お客様が『Xマス』に一人で此処に来られているのか知りたいです。」


「…クッ…」


心なしか、少しテーブルが凹んだ気がした。




「ねぇ…サリフ…」


「どうしたんだい?ネル?」


「アレってほら、シロンじゃないかしら?」


「えー?どれどれ?本当だな。シロンだ。げっ、こっち見た…」


シロンは二人の存在に気付くと、バーテンダーに断りを入れしっかりとピニャコラーダを右手に持ち、ズカズカとそれでいてかなりの速さで、二人のリア充に接近した。その顔つきはまるで鬼瓦だった。


シロンは二人の近くまで行き、少し睨みを効かせると、突然気持ち悪いくらいの笑みに変わり、ネルの隣に腰を掛ける。


「あら、お二人さんデート?熱いわねぇ?」


シロンのその笑みの裏に隠れる様子もない、『殺意』をサリフは感じ取っていた。


「お、おう…」


「あら、シロンこそ、こんな所に1人で何を?」


「飲みに来たに決まっているでしょう?呪うわよ?」


「あらー、独り身は寂しいわね。貴方も恋人でも探したらどうかしら?最も言い寄る男なんて居ないでしょうけど」


「舐めないで欲しいわね、私にも恋人くらい居るわ!今は仕事中なのよ!ね!ダーリン!!」


そう言ってシロンは、グラスを拭くバーテンダーにウインクをかました。

ネルはバーテンダーを見つめ、無言で問いかけるとバーテンダーは全力で首を横に振りまくった。


これは、相当。嫌、らしい。


「ちょ、其処まで否定しなくても!」


バーテンダーは、シロンの必死な訴えに聞く耳も持たず、カウンターの一番奥に座る、黒髪で黒いコートを着た男に何かを提供した。その黒コートの男は何かをバーテンダーに訴えている様だが、此処からでは聴き取れない。


それにしても、あのバーテンダー、仮にも『呪王』に怖れも抱かず、この様な対応をするとは…いや、実力差も分からない様な素人か……


ネルがそんな事を考えていると、


カランと扉が開いた音と共に、聞き覚えのある声が聞こえた。



「成る程、バーと言うのはこう言う所なのか!」


「そうだぜカイト!今日は俺が奢ってやろう!」


「おお!マジか!やったぜ!」


迷惑なくらい騒がしい、青髪の白いコートを着込んだ高身長の青年と、赤褐色の髪をした、青年と同じ位の身長の男。紫のローブを着たその声は、ドラグの声だ。


「おー!お前ら!偶然だな!んで、シロンも居るのか!珍しいなお前らそんな仲よかったか?」


流石に気付くか、騒がしく面倒な奴等が来たか……何故こんな所に…地味な店を選んだ筈なのにどうしてこうなるの。


「久しいな、ドラグにカイト。」


「おー!サリフか、どれ隣座るぞ!」


「じゃあ、俺も隣に座るぞ!」


ズカズカとサリフの隣に座る、マナーの悪い2人。流石にこれはバーテンダーも怒るだろ…


余り騒ぎは起こしたくは無い。切り抜ける方法はあるか?


ギャーギャー騒ぐ2人の方へバーテンダーがやって来た。


「いらっしゃいませ。何にいたしますか?」


「おー!これがバーテンダーか!すげぇ!」


流石カイトと言うべきか、無知過ぎるだけなのか、店を仕切るバーテンダーを相手に、中々喧嘩を売っているな。本人は自覚は無いだろうが。


「ん?では、俺はキールでい……ブフッw」


何故かバーテンダーを見た瞬間に、吹き出すドラグ。

何故だ!?何故顔を見て笑った!?何が面白かったのだ!?


余りにも非常識な『族王』を前にしても、バーテンダーは落ち着いていた。


「おー、じゃー俺は、オレンジジュースでイイぞ!」


うん、『破王』カイト、君はお酒を頼もうな?


「畏まりました。」


そう言ってカウンター下から冷えたグラスを取り出し、瓶に入ったオレンジジュースをグラスに注ぎ、氷を三つ入れカットされたオレンジを一つ、飲み口に差し込み軽くステアされ差し出される。


「うおー、なんだそれ、カッコいいな!」


「これはバースプーンですよ。」


軽い相づちを打ちながらキールを作り上げたバーテンダーが、『族王』の前に静かに置いた。


『族王』がそれを確認すると、突然姿勢を変え、脚を組み、顎を少し上げ、バーテンダーを見下す様な格好で、こんな事を言い始めた。


「おい、店主。俺はこの店の客だ。そうだな?」


一瞬、バーテンダーから殺気を感じたが、直ぐに無くなった。流石にこの態度はムカつくな。私がそちら側でも殴りたくなる。

しかし、それでもバーテンダーは笑顔で答えた。


「そうですね。ここに来られる方、全てはお客様ですね。」


「そうだろう?で、客の言う通りのモノを提供する。それがお前の役目だろう?」


「仰る通りですね。」


「じゃあ、取り敢えず肉を出してもらおうか、勿論、一番美味い肉をな!」


バーテンダーが一瞬、凄く悪い顔をした気がしたが、多分気のせいだろう。


「分かりました。ですがお客様、勿論お金はお持ちですよね?」


「ギャハハ!!こう見えても俺は金持ちだぞ!?舐めるなよ!」


「畏まりました。少々お時間頂きますので、お待ち下さい。」


そう言って店の奥の厨房へと入って行ったバーテンダー。



バーテンダーが戻って来るまで、私達は今後の『五王会・・・』について話しをしていた。

『魔王』グリムに、『獣王』ズオウ。とても良い二人だった、特に『魔王』は元『七王会』の会場を提供してくれたからな。それを置いても、『魔王』は魔族界のリーダーで、私達『王』にも世界にも影響を与え平穏があった。


しかし世界は変わった。


『魔王』の目指した平和とは、少なくとも違う形で。


『魔王』が『勇者』に負け、魔族と人族の長い戦争は人族の勝利に終わり、人族と魔族は互いに手を取り合い、新たに『人間族』を名乗り、完全では無いが世界には、平和が訪れた。

バラギル帝国も、これに賛同し貿易も頻繁になり世界も安定してきた。

皮肉かもしれないが、今の世界は平和だ。


そんな事を考えていると、肉の匂いが漂ってきた。

なんだか、お腹を空かせる匂いだ。


厨房の中から、鉄板に少し厚いステーキを乗せた、とても美味しそうな匂いを放つステーキが、バーテンダーの手によって運ばれてきた。

『族王』の前に置かれ、ナイフとフォークもその横に置かれる。


SSSトリプルエス級の、クックロイのステーキでございます。」


「SSS!?あの希少性の高いクックロイの中で、更に珍しいクックロイの希少種!それのオスの極一部から僅かに取られる部位じゃないか!?」


噂にしか聞いた事が無いが、一度それを食べた者は二度とそれ以外の肉が食べられなくなる程の美味しさだという……


そんな、伝説の様な食材を……このバーテンダー……一体どこから仕入れたと言うのだ……


『族王』が無言でナイフを手に取り一口、フォークで食べる。


「あ………う……美味いっ!!美味いぞぉぉぉ!!いや!美味いでは言い表せない!何と言う感覚だぁぁ!!もうこれ以外、食べられそうに無いぞォォォ!!!」


他の客に迷惑だろうに、ドラグはそれはもう、何も見えていない様な様子でクックロイのステーキをペロリと平らげた。


2、3人いる他の客に迷惑だろうと、軽く謝っておこうかと見てみると、いつの間にか客は、一番奥の黒コートの男のみだった。カウンターに顔を付け完全に酔い潰れている。

失恋でもしたのか?この『Xマス』に災難だな。同情はしないが、だって私には…


「サリフがいるからねぇ〜♡」


「どうしたんだよネル♡」


「こいつら……まじで呪い殺してやりたい……」








こうして私達は、店のラストオーダーまで居据わり飲み続けた。



「マスター会計を。」


「はい。貴女は30ルムンド、そちらのお二人様は56ルムンドでございます。」


「マスターはい。」


「ネル、俺が払うよ。」


「ありがとうサリフ♡」


「おい、俺の会計は?」


『族王』がバーテンダーに声を掛けたその時、バーテンダーの口元が少しニヤついていた。何かある。そう確信した。


「はい。ありがとうございます。お客様はオレンジジュースの方とご一緒でよろしかったですね?」


「勿論だ。で、いくらだ?」


「はい。679万7245ルムンドでございます。」


「おうおう、ろっぴゃくななじゅう………?」


「679万7345ルムンドです。」


「ひゃい?」


『族王』の口が開きっぱなしだ。いやいや、流石にコレは私とサリフでも、払えないぞ。万を入ったら既に、小さな国を運営出来るレベルじゃ無いか……

あり得ないだろ……


「おお…おかしくないか!?」


「いえ、おかしくありません。SSS級クックロイは希少な為、時価での値段でありそれを貴方は、6皿食べていかれましたよ?一皿110万ルムンドですので、おかしい部分はありません。」


「まて!それだと残りの、19万7245ルムンドは一体なんだ!?」


「何を仰っているのですか?お客様、クックロイのピザやクックロイの刺身、クックロイの唐揚げ、クックロイのコロッケ、クックロイのミンチボール、クックロイラーメン、クックロイパスタに、クックロイカレー、クックロイ丼、クックロイのクリームスープ、クックロイのサンドイッチ、クックロイのしゃぶしゃぶを全てS級で食べられましたよね?これで19万ルムンドです。」


なんだ、このクックロイのオンパレード……そしてその身体の何処に入っているんだ?『族王』の能力はいくらでも食べられる、とかそんな能力なのか?


「……あれ?残りの7245ルムンドは?」


「はい、そちらのオレンジジュースのお客様がオレンジジュースを樽で80、お客様がキールを酒樽で38、ハイボールを72、ジントニックを63、40年もののロンマネティワインを2で7245ルムンドです。」


「え…い…今、10万ルムンドしか……」


それでも10万ルムンドある事に、驚きを隠せないのだけど……


「足りない分は、働いて返して貰うしかありませんねぇ。」


バーテンダーがとても可哀想な目で、『族王』を見やる。


「クッ!鬼めっ!」


「心外ですね、お客様が頼まれたのに…」








「ドラグには気の毒だが、良かったなあの店。」


「『族王』は自業自得よ。でもあのお店、また行きたいわ」


「そうだね。きっとドラグも今度は向こう側だろうけど、居るだろうし。いっその事、あの店で今度から『五王会』しようよ?」


「良いわね。それ。流石はサリフだわ」





二人のリア充は『Xマス』の終わった静まる夜の街を、二人で仲良く帰路につくのだった。


ども!ほねつきです!これで閑話は終わり。一様バーはこれからも経営されますが、作中に仕事内容とかは出ないと思います。

さて次からは新時代突入!


《平和な時代の裏で激化する組織の影。

新都市『マギア』を舞台に勃発する派閥争い。散らばった魔王軍を統一する為に動く一輪の『奇跡』の花。

裏切られた片目の少女を救う1人の神官。

崩れゆく平和を守る為に今、最高聖神官が動き出す!!》


すみません。やって見たかっただけです…安心して下さい。こんな感じの内容です。

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[気になる点] ドラグが七王会のときにディラの顔で行ったから知ってる顔では?
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