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ー閑話3ー 『少し飽きた。』

本日2話目です。タイトルは決して僕の思いを書いてるわけじゃないです。


バーを開いて三週間。客足は伸びない。毎日来るBBAのお客さんは俺の事をマスター呼ばわりしてなんかしつこいし。開店から閉店まで毎日一番奥のカウンターを占領する何故か・・・水しか飲まないおっさんは正直邪魔だし。何より………









少し飽きた。








なーんかな、暇過ぎるのもあるんだが、毎日こうやってるとさ飽きることない?いやいや…別に嫌な訳では無いんだが、俺の想像と違って少し怠くなってきたんだわ。


……バイト雇おっかなー。


でも、なるべく給料払いたくないなー

何とかしてただ働らきしてくれる奴いないかなー。

ふと、おっさんを見やる。


「何じゃ?」


「いや。」


駄目だ。なんか凄い駄目な気がする。そうだ!いっその事ダルクとかにやらせるか?


……待てよ、ダルクは犬だから手が使えないだろ?ベータ?鼻くそほじるから駄目だ。シャン?手じゃなくてエラじゃねーか!となればガンマ?ガンマなら人化出来るしそれなりに愛嬌も良いはずだ……


ふと俺は金を渡して肉の塊を買ってきたガンマの姿がフラッシュバックした。


……駄目だこりゃ…


詰んでるじゃねーか。



カランとドアが開いた音に振り向き二人の冒険者風の男らが入ってきた事を確認した。

一人は中々年期の入った皮装備に鉄のロングソードを身に付けた紺青色の髪のおじさん。もう一人は金髪モヒカンで黒いドラゴンの鱗の様な鎧の装備にシンプルな黒い大剣を身に付けたおじさん。すげーモヒカンだな…ん?どっかで見たことあるな…それにあの大剣も……


「はー、まさかリムサン大陸以外で酒が飲める場所があるとはな!」


「全くだ。ここまで遠征で来て久々に酒が飲めるぜ!」


中々のボイスで席に着いた二人。それの前に行こうとしたら水しか飲まないお客様(笑)が俺の袖を引っ張り止めた。


「あの装備の整っている男が持っている大剣…」


耳打ちで話しかけて来るおっさん。


「何だ?知ってんのか?」


「知ってるも何もあれは我の作った『不老剣』ではないかっ!」


え?


もう一度モヒカンの大剣をよく見ると確かに見たことのある剣だった、いや、間違いねぇ!あれ『不老剣』やん!


「バンシィ!あれはお主が持っておったんじゃないのかっ!?」


「あーそう言えばあげたわ。」


思い出した!あの大剣!確か、『世紀末』のジャックにあげたんだった!確か呪いを解くの面倒だったからかな?


「何故じゃ!何故あの様な者にっ!?」


少し涙目で訴えてくるおっさんを突き放し言った。


「確か呪いで外せなかったんだよ。」


「あ、そう言えばそうじゃったの。あれは使用者から離れなくなる呪いがあったの。」


納得したおっさんから離れちゃんとした営業スマイルで二人の元に寄った。そう言えばジャックは世紀末スタイルじゃなくなったんだな。


「いらっしゃいませ。」


「おお?若えな。」


「お!若いなバーテンダーにいちゃん!バイトか?」


「いえ、オーナーです。」


ジャックのアホな予想に直ぐに言い返したら変な顔したので面白かった。

それにしてもジャックよ、貴様に一万くれてやった依頼主の顔を覚えていないのか?馬鹿なのかな此奴。あ、ちげえ、俺今仮面してなかったわ。


「何にいたしましょう。」


「そうだな!取り敢えずビールとつまみだ!」


「じゃあ俺も。」


「かしこまりました。」


カウンター下の枝豆と冷奴を二人分取り出し、から入れと取り皿を用意し二人の前に出す。

続いて冷えたジョッキを冷蔵庫から二本取り出し壁側にセットされたビール樽からビールを注ぐ。


二人に提供し取り敢えず濡れてないけどグラスを拭いた。


「じゃ、乾杯!」

「乾杯!」


ゴクゴクと勢いよくビールを飲む二人。


「ぷはぁ!」

「あぁぁ!」


二人共半分程ビールを一気飲みするとフォークで冷奴を小さく切って食べた。


「おっ、美味いね。」

「本当だ。美味い、丁度いいつまみだ!」


「ありがとうございます。」


二人は枝豆も摘んで食べた。すると何やら二人は感心している様に頷いた。


「なぁ、オーナーのにいちゃんよ。この枝豆、かなり高いの使ってないか?」


ん?そんなに美味かったか?それ、俺の創造魔法で俺が食べた事のある枝豆を再現しただけなのだが。

まぁ、でもそこそこいいものなのかな?


「そうですね、一応ここにあるのは全て魔王府も認可されたものしか無いので安全安心で味も良いですね。」


「これって、いくらなんだ?」


そう言って皮装備の男が枝豆を指差す


「それは、冷奴とセットで3ルムンドです。」


「3ルムンド!?安くないか!?」


「まあ、つまみは安いですけど、その代わりお酒が高いですよ。ビールは一杯10ルムンドなので。」


「それは…高いな…少しずつ飲もう。」


普通のビールとかはこの辺だと大体2ルムンドで飲める。ここのはその5倍高い。その代わりビールは魔族界一いいものしか無いしその他もそうだ。

この魔族界は酒類の飲料系より食べ物の方が基本高い。魔族は基本酒は飲み水位の感覚しかないからな。

食い物の方が大事だ。


「………」


「どうかされました?」


突然ジャックが俺を見つめてきた。ホモか?


「いや…オーナーのにいちゃん。どっかであったか?」


何こいつ!?感すごいな!


「それは無いですよ。失礼ですがお客様は元人族ですよね?」


なぜわざわざ『元』なんてつけるのかって言えば今は魔族も人族も人間族って扱いだからだ。少し区別をつける時に元人族とか言わないと差別だとか何とか言われる。面倒な世の中だぜ。


「あ…ああ。」


何故だか罰の悪そうなジャック。


「でしたら、戦場に居たなど特殊な例を除けば初対面ですよ。」


「そ…そうだよな。済まない。勘違いだ。」


「いえ、間違いは誰にでもありますよ。」


グラスを拭く。

すると皮装備の男が俺に話しかけてきた。


「なぁ、オーナーはオーバーフィトクスって魔物を知ってるか?」


オーバーフィトクス?あー、ガンマと同じ種類か。


「知ってますよ。」


「なら話は早え。見た事はあるか?」


「いやー、無いですね。」


なんかあるって言ったらめんどそうだから、嘘ついた。


「じゃあよ。誰か見たって噂とか聞いた事ないか?」


「いやー、どうでしょう。ですが、どうしてオーバーフィトクスを探しておられるのですか?」


「そうなんだよ、それがよ。オーバーフィトクスの唾液を欲しいって言う元人族の変わり者の依頼主が居てな。その依頼を受けて目撃例のあるこのフレクトリアにやって来たんだ。」


唾液?どんな趣味だよその依頼主!その依頼受けるお前らもお前らだけどな!


「成る程。私の方でも探しておきましょう。見つけたら買い取っておきますよ。」


ガンマの唾液ならいくらでも出せるぞ!瓶詰めにして出してやろうかな?1ダースくらいで。


「本当か?ありがとう。そうしてくれ。」


「かしこまりました。」







______________________________________________________



「ありがとうございました。」


「おう!また来るぜぇ!」





俺たちは店を出て宿へと戻る。随分と長居したが充実した時間だった。

月も降り人気の無くなったフレクトリアの街を男と歩くのは何だか気持ちが悪い。


「………」


「おいおい、どうしたジャック?しけたツラしやがって。」


店のオーナーと話してからずっとダンマリだった相方のジャックの肩を叩いた。


「いや…何処か似てたんだなあのオーナーのにいちゃん。」


「似てたって…誰にだ?」


「俺に一万くれた依頼主さ。あの雰囲気、どこかあの依頼主にそっくりだったのさ…」


「そうかい…オーバーフィトクスの唾液を探しといてくれるっつてるし、もしかしたら本当にその依頼主かもな!」


冗談半分で言ったらジャックは「そうかもしれない…」とか、真面目に受け止めやがって!阿保か!

ジャックの言う依頼主ってのはジャックをSランクの冒険者にまで成長させた依頼主の事だ。その依頼主の報酬が一万チールっていう破格でよ、ジャックは戦争の後、恩を返す為にその依頼主を探したんだが、どうも見つからなかったらしい。

教会の聖神官よりもお偉い方のお墨付きを貰ってるからな。どうやら、戦争に巻き込まれたらしい。

それ以来なんか高報酬のクエストが有ると依頼主を見に行く為だけにクエストを受けるなんて阿保みたいな事してそれの所為で俺たちコンビは今、伝説の宝鳥『オーバーフィトクス』の唾液を探す羽目になってんだがな!


「……まぁ、何にしても?またあそこにはいかねぇとな!」


「ああ。」


「酒もつまみも美味いし!」


「何よりクエストクリアの鍵みたいだしな!」


「「ギャハハハハ!!」」





夜中に響く酔っ払いの笑い声は月にも届きそうだった。



何故か死んだ人扱いされるディラ。これも全てあの最高聖神官の狙いだった!?


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