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ー閑話2ー 『初めてのお客さんはBBA』

某所の一角の赤扉の小さなバーが『Open』の文字をぶら下げた。




昼間に賑わっていた街も夜の帳が下りると街の店は閉店の作業をする。人も疎らになった通りに未だ光るお店を見つけた。


『バー〈フレスト〉』


名前の様にどうやらここはバーらしいわ。

落ち着いていそうだから少し入ってみましょうか。


赤い扉を開けるとチロリンと心地の良い鈴の音色が出迎えた。

店内は外からは伺えなかった程奥に広くとても落ち着いた雰囲気のあるバーだわ。

黒いカウンターに赤い丸椅子。黒い壁と木の床。面白い作りだわ。ここのお店の設計者はセンスがあるわね。

しかし…店員はいないのかしら…


一番奥の席に座る黒いコートのおじ様が一人寂しそうに飲んでいるので店員は居るでしょうけど…

まぁ良いわ取り敢えず座りましょう。


入り口から少し奥へそれでいておじ様の位置から離れた椅子に腰をかけた。


私の名はシロン・チーネ・プル。『五王会・・・』に席を置く『王』たる存在。『呪王』シロンよ。

まぁ、『王』と言ってもそんなに偉いものじゃないわ、むしろ不幸になるものね。世間一般は『呪王』の名を聞けば恐れ逃げ惑いお話も出来ないもの。


だから私は普段、名前を隠しこの魔族界を生きてきたわ。三ヶ月前に『魔王』が『勇者』によって討伐されたけれど『勇者』は私達『王』を狙って来るのかと思っていたら何もしてこなかった。

いえ、人族と魔族を統一して『人間族』にするなんて阿呆らしい事は言っていたわね。

良いんじゃないかしら?私は静かに生きていたいもの。

静かならよし平和なら尚良し。


「いらっしゃいませ。」


「あら。」


目の前のカウンター下から現れた黒髪黒眼のバーテンダー。優しそうな目に落ち着いたもの腰、柔らかな表情。中性的な顔立ち……カッコいい……


「ご注文は何にしましょう?」


「あ、じゃあ。ピニャコラーダをお願いするわ。」


「かしこまりました。」


冷えたグラスとシェーカー、パインジュースにココナッツミルク、ホワイトラムを素早い動作で準備するとそれらをシェーカーに氷と一緒に入れシェィクを始めた。


ゆったりとした、飲み物が混ざり合う心地の良い音。

直ぐにグラスに注がれ氷が入れられバースプーンで軽く混ぜられる。


一連の流れる様な動作はとても美しくカッコ良かった。

スッと目の前に出されたピニャコラーダ。


「ごゆっくりどうぞ。」


そう言って少し離れた位置でグラスを拭き始めたバーテンダーに見惚れているとカランと氷が音を立てていた事に我に返りグラスを手に取り一口。


甘くて美味しいわ。


パインもココナッツも良いものを使っているわね。

それに、愛を感じるわ!


「美味しいですね。」


「そうですか?ありがとうございます。」


「ところで、このお店は貴方だけなの?」


「ええ、そうですよ。」


「じゃあ、貴方がこの店のマスターなのね?」


「そういう事になりますね。」


「ふーん。彼女とかはいるの?」


「いないですよ。」


「そうなの…モテそうなのにね。」


「いえ、案外そうでもありませんよ。」


「ふーん。好みのタイプはいるの?」


ピニャコラーダを一口。喉を潤す。


「そうですね…清楚な方が良いかなと思います。」


「そうなのねぇ…あ、カシスリキュールをお願いするわ。」


「かしこまりました。」


手慣れた手つきでカシスリキュールを作り上げるマスター。本名も聞きたいわね。それは流石に早すぎるかしら…やっぱりもう少し何回か来ないと駄目ね。


「どうぞ。」


ピニャコラーダを飲み干して出されたカシスリキュールを一口。

美味しいわね。どうしてこんなに美味しいのかしら…


「美味しいわね、なんでこんなに美味しいの?」


「素材が良いからですよ。」


成る程ねぇ…

しっかりと味わいカシスリキュールを飲む。なんだか、小腹が空いてきたわね。


「小腹が空いたのだけど何かありますか?」


「私の主旨としてはお客様のお求めなさるものならば出来る限り提供しようと思っております。何か食べたいものがあればリクエスト下さい。」


「あら…それは面白いわ。そうねぇ…野菜がたっぷりの暖かいパスタがいいわね。」


「かしこまりました。調理してまいりますのでお待ち下さい。」


そう言ってマスターは店の奥の厨房へ入って行った。

調理も全部やるのね凄いわ…惚れちゃいそう。


待っている間カシスリキュールを少しずつ飲む。不思議とその間も客は入って来なかったわ。ここは完全に穴場ね。


少しすると厨房の方からとても良い香りがした。


直ぐに厨房の奥から皿を持って現れたマスターが静かに私の前にその料理を置いた。

白い丸皿の中心にこんもりと盛られたクリームパスタ。ほうれん草や、蕪、白菜、人参がパスタと絡み合いその上からチーズとパセリアッシェ(パセリのみじん切り)が掛けられている。


「冬野菜のクリームパスタです。」


「頂くわ。」


フォークとスプーンでパスタを絡ませ一口。

美味しいわね。一流のお店に行って出てきてもおかしくないレベルのシロモノだわ…これは相当値が張るわきっと……


そう思いつつパスタをペロリと食べきってしまったわ。


「ご馳走様。美味しかったわ。おいくらかしら?」


「ありがとうございます。全部で31ルムンドになります。」


カシスリキュールを飲み干して私は勘定を払う。お値段は他のバーと何ら変わりは無いわね。パスタが少し高いようだけど。この美味しさなら納得できるわ。


「ありがとう。また来るわ。」


「ありがとうございました。」


マスターは微笑みながら私を見送ってくれた。

店を出て帰路に着いた私は思った。



明日も来よう。



必ずゲットしてみせるわ。

そう心に誓って。






__________________________





無駄に話しかけてきたこの店初めてのお客さん。あの女の人、絶対行き遅れだな。見た目はまあまあ綺麗だったけど、絶対中身BBAだな。


食器を片付け洗浄してタオルで拭いていると目の前のおっさんが話しかけてきた。


「のう、バンシィよ。我には酒は出してくれんのか?」


「あ?水でいいだろ?」


「酷い!ここの場所を見つけたのも我でここに入る税も全て魔王府を動かして免除してやったのに!それに食材やら食器も全て用意したのに!!」


「そうだな。ありがとう。塩水で良いか?」


蛇口から出た温かい水をコップに注ぎ塩を一掴み入れて溶かしてやった。


「うむ……しょっぱ!そしてぬるい!本当に塩水出す奴があるかっ!?」


ここに居ます。


「いや、おっさんには感謝してるよ。でも俺たち相棒じゃん?良いじゃねーかそんくらいさ?」


「む…確かに我らは相棒じゃ…まぁ、それくらいなら……って待てい!おかしいぞ!相棒ならしっかりとしたものを出すじゃろ!?」


「チッ…」


「露骨に舌打ち!?何故じゃ!?何故我が悪いみたいになっておる!?」


「わーたよ。出せば良いんだろ?何飲むんだ?」


「む…で…では…ジントニックで頼む。」


「分かった水でいいな?」


「何でっ!?」




まるで日常。

今のところバーは全4話で合わさせるつもりです。次の投稿は今日か明日で最終話の投稿はクリスマスになります。

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