ー第12話ー 『魔神鬼化と強欲』
何故だ?何故なんだ?
地面スレスレまで生えた黒と紅の大きな翼、頭から生えた黒い角は更に太く伸ている。一目見ればそれは悪魔を連想させる様な姿。
その周囲は灼熱地獄の様な熱風が吹き陽炎が揺らめく。
ジリジリと削られる体力、風呂にでも入れそうな程の大量の汗が剣の握りを緩くする。
「獄槍・顕現」
紅い槍が再びグリムの左手に出現する
しかし、槍の穂先は先程のものと違い太い三叉の形だった。
あの形の槍はタリウスの結界も貫いた『神殺し』地球でいったら『ロンギヌスの槍』みたいだな。俺の知ってるロンギヌスの槍とは大分形は違うが。
タリウスに合図を送り二手に分かれて挟撃する。
しかし、槍を横に払われ上手く近付けないリンやリーリャが居ないとこうも攻めきれないとは…今まで上手くやっていけたことがどれだけ恵まれていたことか……
勇者の力とタリウスの力を合わせても『魔王』には届かない。
だったら時間制限は有るが『真剣・解放』を使えば…
「真剣・解放!!」
瞬時に生成される莫大なエネルギーをグリムに向けて放つ。
「…フンッ!」
魔力のエネルギーの波動を両手で受けるが黒いコートが破れた。
鉄の様な硬さを持ったコートが破れたこれならいける!
真剣・解放によって身体能力を底上げした俺は地面を蹴りグリムの間合いに入り込んだ。
「真剣・雹撃!」
振り抜いた真剣から氷の粒手が生成されグリムを襲う。真剣でグリムの首筋を狙うが新たに出現した槍で防がれる。
「破滅魔法…ダークフレイム」
闇の光線が死角から襲うが俺は魔力感知で全て読み躱す。
よし…この調子で…
「極槍・顕現『蛇腹状の投擲』!!」
四方から降り注ぐ爆発する鏃を全て避け交わしグリムに接近し剣を振るう。
躱されるが左腕には当たった。
「チッ…破滅魔法『エターナル・バーン』」
巨大な炎の球が発射され爆散する炎が眩い光を放ち四方に飛散する。飛び散る炎を真剣で打ち払う
『蛇腹状の投擲』
「なに!?」
散らばった炎の中から鏃が現れ更に爆発を起こした。爆発の炎が身体を焼くが氷の結界で冷やした。
直ぐに反撃に出る。
飛びかかる鏃を躱しグリムへと近づく横から払われた槍を真剣で受け止めそのままの勢いで真剣を振るう。
グリムはそれを槍で受け押し合いになった。
「破滅魔法『フレイムボール』」
「ぐぁっ!」
炎の球が死角から襲い背中を焼いた。
「ナガト!退いて!『雷龍』!」
タリウスから放たれた蛇の様な細長い雷を纏った龍がグリムへと襲う。
「ハァッ!『魔神鬼化』!」
突然翼が消滅しグリムの肉体が二倍ほど巨大化し強靭な肉体に変化した。
雷龍を素手で殴り消滅させ見た目以上の軽い身のこなしで移動し殴りかかってきた。
突然の戦闘スタイルの変更に少し驚きを隠せないでいた俺は思わずその攻撃を受けてしまった。
「グフッ!」
パンチ一発で宙を舞った視界がくるくると回り目が回る。
「ナガト!…なにっ!?ぐぁっ!」
飛び出したタリウスをグリムが襲った。
俺は何とか着地し真剣を構える。
「獄槍・顕現」
先程よりも巨大な『神殺し』の槍が出現する。
『神殺し』の一振りで炎が放射状に現れ広がる。
「真剣・氷帝」
炎を凍らせ塊となった炎を魔力をぶつけ壊す。
一気に斬りかかり槍が振るわれる前に真剣のエリアに踏み込みグリムを斬りつけ離脱する。
俺のいた場所に拳を打ち込まれ地面にクレーターが出来上がっている。
あのレベルのパンチを喰らったらお終いだ。
「真剣・迅撃」
風を纏った真剣で風に身を投じ風の様に静かに斬る。
それでもグリムに致命傷は負わせれない。
馬鹿みたいな防御力だな。
「真剣・鬼力」
力の入った真剣を振りかぶって斬りかかる。
「舐めるなよッ!勇者ァァ!!」
剣と槍が交わり再び押し合いになった。
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
「うらァァァァァァ!!!!」
地面が凹んだ。
それでも押し続けた。
「クッ…」
再び地面が凹んだ瞬間グリムがバランスを崩した。その隙は見逃さない。
「うヲォォォォォォ!!!」
グリムは耐えきれず槍を捨て真剣を躱した。だが、俺は更に踏み込み真剣を振るうグリムの左腕に深く斬りつけた。
肉を裂く様な感覚が手に伝わった。
この世界に来てから勇者として人族の敵である魔族を何人も殺してきた…
地球だったら完璧な犯罪者だな…
でもそれも…この魔王を倒せば終わる!終わらせてみせる!
この世界に平和を!人を殺さなくて良い世界を!魔王を倒せば魔王を倒せば!魔王を倒せばッ!
《ー新たな『真剣』が解放しましたー》
その『真剣』が開放された時俺はその力が考えなくても伝わった。
魔力を練り真剣を呼び出す。
「『真剣・傲慢強欲』!!」
両手に現れた黒と白の剣。その刃は鋭く光りこの高熱の空間を打ち消した。
「アァァ!!『神殺し』!!」
グリムは唯一動く右手に槍を構え振り投げた。
傲慢強欲の白い真剣、傲慢がその能力を発動した。
受けた技を優越し打ち消す。真剣・傲慢はその傲慢さ故に他者を見下し優越する。一度優越したものは次から絶対に受ける事はない。
絶対的守りの真剣。
白き傲慢の真剣を『神殺し』に向かい振り払う。
「なにっ!?」
『神殺し』は傲慢に打ち消され消失する。
その瞬間、黒い強欲の真剣が黒く光る。
何かを求めるようにただ強く黒光った。
黒い強欲の真剣を振るうと強欲の真剣が通った場所の魔力が消失し直ぐに空いた穴を埋めるように魔力が移動し満たした。
強欲は強欲な故に欲を求める。欲のあり続ける限り強欲は強欲であり続ける。
「『真剣・強欲』!!」
________その名を呼んだ。
チカラダ…チカラヲ…チカラヲ…チカラヲサシダセ…チカラ…チカラ…チカラ…チカラ…
力を求める声が心の奥底から響き渡る。キモチワルイ。
何なんだよ…この嫌な感じは……
チカラヲ…チカラヲ……チカラヲヨコセッッ!!
「ぬあっ!?」
強欲の真剣を握った左手の感覚が無くなった。
左腕が勝手に動いた。強欲の真剣を振るい空気中の魔力を喰らう。
強欲の真剣の黒光りが段々と増している。
グフェェヘェヘェヘェヘェヘェヘェッ!!!
チカラ!チカラ!コワス!
チカラデコワス!ダレヲッ!
テキヲッ!テキハ!ミナゴロシッ!
テキヲッ
コロセ!
「強欲のままにッ!!」
______________気付いた時には…
俺は……
「な……ナ…ガト?」
「…ひッ!」
自らの両手を見てそして地面に広がる真っ赤な血飛沫の痕。
直ぐに分かった。
魔王を倒していた…
何故だ…何故なんだ…
…どうしてこうなった…




