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不死身の神官〜色々平均以下の俺が転生して不死身になった〜  作者: ほねつき
ーヨールパル大陸ー 魔王勇者決戦編
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ー第7話ー 『ドラグ対クッティー』

待たせましたな。タイトルは詐欺に近いです。どうぞ

起きよバンシィ……




起きよバンシィ………




「あ?」


なんか五月蝿くて目を開けるとおっさんが居た。


「おお!!バンシィよ!目が覚めたか!早速だが飯を作ってくれ!!」


おっさんはくるくると部屋の中を回りそう言った。まず落ち着け。


「分かったから、今何時だ?」


「うむ?夕飯の時間じゃ!」


時間聞いてんだよボケ!!


窓の外を眺めると欠けた月が辺りを照らしていた。おけ、夜な。


「そか、じゃあ適当に肉でも焼いてろ。」


アイテムボックスから創造魔法で作った肉の塊をおっさんに渡す。ん?誰が買った肉なんてやるかよ!自分で食べるわ!!


「なに!?作ってはくれんのか!?」


「ああ、面倒い。じゃな、俺はちょっと出かけて来る。」


「あ、ちょま!」


バタン!と扉を閉め追いかけてきたおっさんを阻止する。

玄関のドアを開け外に出ると大きな欠伸をしたドラグが待ち構えていた。

ドラグがこちらに気付きその巨体をゆっくりと持ち上げ俺を上から見下ろす。

こうして改めて見るとドラグって短足だな…

いや、カッコいいんだよ?西洋龍って感じの黒龍。ほんとにカッコいいって思ってんだよ、でもさーなんかこう、まじまじと見ると短足だなって……


「おい、バンシィお前何か変な事考えてないか?」


「ん?いや、別に」


なーんで此奴、こんなに勘がいいかな?なんかムカつく。


「フン、まぁ良い。乗れ、2秒で向こうまで飛んでやる。」


「そか、ガンマは1秒だったけどな。」


「なにっ!?」


小声で言った筈だったのにどうやら聞こえていたらしい。耳いいなお前。

ドラグは鼻を鳴らし何やら翼の準備運動を始めた。


「舐めるなバンシィ、俺なら瞬きした瞬間に着いてやる。」


「は?良いよ別に」


そんなアホみたいな速度で飛んだら衝撃で家壊れるだろ。馬鹿かこいつ。


「いーや!駄目だ!鳥の分際がこの俺より速いなどあってならんのだ!!」


いや、ガンマは規格外なだけだから、普通の鳥はそんな速度で飛ばないから…


「行くぞ!バンシィ!掴まれ!!」


「出来ればやめて欲しい…」


身体に掛かった重量に押され瞬きをすると目の前は王都サンの城の近くだった。


「いかん!飛びすぎた!!」


「アホかお前は!!」


慌てて急回転して城を避けるドラグ。多分気づかれているだろうがなるべくバレないように王都サンから南側の森に着地した。

人化したドラグが俺と瓜二つの姿に変身する。

へー、仮面を付けた俺ってこんなんなんだー。なかなか怪しいな。


「で、どうすんだ?」


「ああ、先ずは人気の少ない様な所に設置したいな。」


そう言って森の奥に入って行くドラグ。さっきの事については何も言わないんだな。


さて、小一時間ほど森を彷徨いましてドラグがやっと決めた場所。木々が無造作に生い茂り太陽の光を遮る程の木の伸び具合の場所。

なかなかジメジメしている。


「この辺で良いか。」


「良いんじゃないか?」


正直何処でも良い俺は適当にドラグに賛成しておく。


「やはりそうか、此処が良いな。」


そう言ってドラグは突然地面を掘り返し始めた。


「おいおい、何やってんだ?」


「何って、魔法陣を設置する為の祠を造っている。」


「は?」


いや、てっきりそのまま地面にドン!ってつくんのかと思ってたんだが…


「なんだ?普通に造ったら冒険者とかに見つかってしまうじゃないか。」


まぁ、そうなんだが。


「それに、地下に埋まっている魔法陣ってなんだかワクワクするだろ?」


ニタニタと口を綻ばせながら地面を掘るドラグ。

お前の事だからどうせそうだと思ったよ。お前は楽しそうならなんでも良いもんな?

確かに俺も地下に隠してあった方がロマンがあって良い。


まぁ、そうなんだが。


俺もドラグと一緒に地面を掘った。




穴は元の姿のドラグが丁度入るくらいの広さと高さまで掘った。途中からめんどくさかったので魔法を使ったが。


「よし、此処からは転移魔法陣の設置だ。後は俺に任せろ。」


「分かった。」


ドラグにが穴の中央に土を固め始め土台の様なものを作り始めた。

俺はなかなか暇だったのでこの穴の補強を始める。穴の四角に創造魔法で精製した木の柱を打ち込み剥き出しの土の壁は土属性魔法で作り出した硬質の粘土の様な土で綺麗に固める。その土で木の柱も綺麗に隠してまるで土で出来た遺跡の様な作りにしてみた。

壁に呪文描けば完全に遺跡だな。


んーー


そだ。予言的なものでも描き続けるか。


魔導書に使われている魔導文字を使い壁に予言を描いていく。

因みに適当に描いているので始めが天地創造の話になっている。


『天より舞い降りし神の使い厄災振り撒き地を壊し海を割り全てを無に帰す時新たなる神が新たなる天を創り海を創り山を創り命を吹き込むだろう。』


うん。なかなかソレっぽい。良いセンスだ、俺…


『海を割りし神なる力天に帰りし時天は割れ新たなる天を生み出すだろう。』


うん。良いぞ!予言みたいだ!


『破滅を導く者来たりし時、創世を創りし者もまた来る。』


『山を築きし創世の剣に選ばれし者。破滅に導かれし大地、創世の剣に選ばれし者、剣抜く時、森は色付き、新緑の大地へと生まれ変わる。』


という訳で創世の剣を創ります!


剣の形はタリウスの真なる剣と同じ形。色はエメラルドグリーンの柄に同じくエメラルドグリーンの宝玉を埋め込んである。


能力は色々付けてある。

先ずは持ち主を選ぶ。


これは一定以上の魔力を持った人ではないと重くて持てない仕様になっている。因みに魔力の基準は勇者ナガトくらい。

だから相当な魔力を持っていないと重くて持てない。


次にその特殊能力。

さっきも言った通り森を創る能力をつける。と言ってもそんなもの作る魔力、世界の全ての人族の魔力を使って出来るか出来ないかレベルになるのだが…

だから正直この能力は使えない。

でも応用を利かせれば色々な事に使える筈だ。


ついでに周りに木々があれば使用者の能力が上がる様にもしておこう。

それと枯れ木を復活させる能力も。


なかなか魔力を取られる仕様になったな。まぁ、俺が使う訳ではないからなんでも良いんだが。


創造した剣を片手て振り回した後壁に立て掛けた。


「ドラグ、まだか?」


「ん?出来たぞ。」


振り返ると5人分程の広さの台座に巨大な魔法陣が描かれそこから複雑に魔力が流れている。

うん、もう何がどうなってんのか分かんねーや。


「へー凄いな」


「だろう?…それにしてもバンシィお前、凄いもの作ったな」


ドラグが壁の文字と創世の剣を見てそう言った。


「…だろ?」


「だが、この天井、どうやって隠す?」


ドラグはぽっかり空いた天井を見上げる草木が丸見えだ。


「埋めれば良いんじゃないか?」


「そうなんだが、転移魔法陣は転移の際魔力を大量に放出する。その放出された魔力に耐えられるような天井にしなければならん。」


ドラグが考え込む。

んー魔力に耐えるだけなら俺、作れそうだな。


「なぁ、ドラグ。その放出される魔力はどれ位の強さなんだ?」


「ん?そうだな、アムリタの『ワールドバーン』くらいか?あの湖の穴を作るくらいの。」


それって中々強くないか?でも、何とかならなくもないな。


さっそく創造。


天井を魔力を帯びた土で覆う。みるみる天井が土で埋められ数秒で完全にこの部屋を閉ざした。

光が入らなくなり真っ暗になる。俺は魔眼使ったら見えるけど。

ドラグが火の魔法で明かりを灯す。


「なぜ、埋めてしまった。」


「いや、土を強化すれば良いと思ったから埋めたんだよ。」


俺は創造魔法でその土の天井を魔力で硬化させた。多分ドラグが殴っても壊れない。

試しはしないが。


「……なるほど、では、此処からどう出るのだ?」


「ん?穴掘って出れば良いんじゃないか?」


「また掘らねばならんのか…」


どうやら疲れているらしい。仕方ない俺がやってやろう。予言を唯一描いていない壁を人が1人入れるサイズに穴を開けそこから斜めに地上に穴を開ける。光が僅かに差し新鮮な空気が流れた。

創造魔法で土の階段を創造し地上まで繋げる。

その階段を上り地上に戻った。


「この階段はどう隠すのだバンシィ?」


「勿論、こうするのさ!」


創造魔法で穴の上から白石の台座を乗せそこに八芒星を描く。

八芒星の中心には円を描きその中心に創世の剣を突き刺す。

台座を魔法で固定する。


「なにをやっているのだ?」


「まぁ、見てろ。」


創世の剣の柄を持ちグイッと回す。手を離し直ぐに台座がずれ、階段の穴が見えるようになった。魔法ってすごいな!こんなカラクリも作れるんだぜ!建築士ドンマイw


「何だこれ!?面白いな!」


「ああ!これなら普通の人が見れば剣が刺さってるだけになる、回そうなんて誰も思わない筈だ!そして、魔力を選ぶ剣だからそうそう抜かれる事もないしな!」


「凄いぞバンシィ!!」


「だろ!!」


そんな、俺たちの喜びをぶち壊す様にそのKY(空気読めない)奴は現れた。



「!!」


突然死角から襲って来たナイフを躱しドラグがナイフを掴む。

ナイフの飛んで来た方に振り返るが、木しかない。


「ドラグ、見えたか?」


「いや、突然ナイフが飛んで来たとしか…」


先程までのエンジョイ気分が台無しだ。誰だ、こんな殺しにかかってくる様なことする奴…賊か?賊だとしたら相当なステルススキルだな。目視じゃ確認出来ないぜ。


透魔眼使えば一発で判るけど。


と言うわけで仮面の下から透魔眼を発動。


へーすげーこりゃ、人間辞めてんなー


それは木に擬態していた、いや、木と同化しているってのが正しいかな?いや、木に木の魔力と木ではない別の魔力が見えるから多分人だろうけど。

此処までする賊は居ない。多分。だからこれはアレだ、確実に俺を殺しに来てる奴。

俺になんか恨みを覚えてる奴……


クッキー・・・・かッ!!?」


「どうした!?バンシィ!?」


あ、違うな、クッティーか。まぁ、何でも良いや。


………反応無しっと。

と思ったらその木じゃない魔力からナイフが飛んで来た!


魔力樹を鉄バットに変化させナイフを打ち返す。

ナイフは綺麗な放物線を描く事なく。パキッという音を立て地面に落ちた。

刃こぼれでもしたか?


まぁ、良いや。


「ディラぁぁぁ…久しぶりじゃないかぁぁぁ?」


「いや、誰お前。」


木からメチメチと現れる人ならざる何か。キモい!めっちゃ!キモい!ゴキの裏側みたいにキモい!!違う!キショイ!!


何あれっ!?木と人間が合体するとあそこまでキモくなるの!?なあ!クッティー!お前のあのウザかったけどあのイケメンの顔はどうした!?お前、そんな顔でいいのか!?


何だあのゴーレムが水分抜けたみたいな顔は…化けモンじゃないか…


「ディラぁぁぁよぉぉぉ!!こぉぉぉぉんなところでぇぇ?なにやってんだぁぁぁぁ?」


此奴、語尾うぜぇぇぇぇ!!


「なあ、バンシィあのゴーレム・・・・は知り合いか?」


ドラグが真顔でそう言ってくる。


「まぁ、知り合いって言ったら知り合いか?そもそも、あんな顔じゃ無かった気がするが……」


「おぉぉぉぉぉい!!ディラぁぁぁぁぁぁ?ぼぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!おまえを"お"ぉ"ぉ"ぉ"!!!ずぅぅぅぅどぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"まっでだんだぁ"ぁぁ!!」


「だとよ、バンシィ好かれてるな。」


「辞めてくれ。」


俺とドラグが話してる間もクッティー(仮)は呻き声の様な喋り方で語り続ける。


「お"おおぉぉぉぉまえを"ぉ"ぉ"ぉぉ!!!ゴロズダメにぃぃぃぃ!!!」


「バンシィ、お前殺されるほど愛されてるらしいぞ。」


「辞めてくれ。」


クッティーが体内に秘める魔力を増幅させる。といっても俺からすると誤差でしかない。


「ヴェェェェルゥゥゥドォォォォ!!!!ビィィィナァァァァスゥゥゥゥ!!!ぼぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!ぼぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!おまえを"ゴロズダメに!!あぐまどぉぉぉ!!!…ウッ!ヴェェェェ」


突然クッティーが戻し始め地面に両手をついた。

え?キモい。


「あぐま?…悪魔か?まさか彼奴は悪魔と契約したのか!?」


「そうみたいだな。」


知ってたけど。


「悪魔か、天より高きに存在する天使大陸と悪魔大陸、現世に滅多に姿を現さない天使と悪魔。その片割れが現れるとは一体どんな余興だ?」


「さぁな。だが、今はそれを考えるよりもこの悪魔をどう倒すかが問題じゃないか?」


未だに嘔吐し続けるクッティーを横目に作戦会議を始めた。


「現世に顕現する悪魔は実体が無い。故に魔法や物理による攻撃は何も効かん」


「何それ、無敵じゃん。」


「お前も無敵だろう?」


まぁ、そうだけど。


「故に悪魔と戦う時は呪解を行なってから討滅するのが人族の戦い方。」


「成る程。」


じゃあ、俺も出来るな。


「魔族の戦い方は取り憑いた者と全力で殴りあい何とかすると言うのが魔族の戦い方。」


魔族…良いのか?それで……


「そして、我ら天龍族の戦い方は……」


目の前に居たドラグが一瞬で消えた。慌てて魔力の方に顔を向けると両手をつくクッティーの背後に腕を組んで立って居た。


『悪魔を殺し天使を滅す破壊の息吹と消滅の息吹。跡に残るは破滅のみ。』


ドラグが内包する魔力が枷を失った様に暴れ回り解き放たれる。

ドラグはクッティーを踏みつけ身動きを取らせない様にした。

ドラグはまるで勝利を宣言している様に右手を掲げ拳を握った。


その拳に解き放たれた魔力が一気に収束される。

その拳は電気を帯び炎を帯び風を帯び氷を帯び水を帯び闇を帯び光を帯びそしてその全てがお互いをお互いに打ち消し合い消えた。

否消えたのではない。見えなくなったが正しい。その全ての魔力は混ざり合い『無』の魔力を作り出した。



「破滅の拳ィィ!!」


振り下ろされた『無』を纏う拳はクッティーの背骨をくの字にへし折った。

クッティーは耳が痛くなる様な絶叫が森に響く。

何故かクッティーからは血の一滴も溢れない。確実に吐血はすると思っていたら血が全く出ない。


「ヴァァァァァ!!!ディラぁぁぁ!!!ぼぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ぼぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「煩いな。」


ドラグが拳を引き抜くとクッティーの背が薄っすらと消え始めた。


ドラグが距離を取るとクッティーは俺に手を伸ばしなんか言ってる。ごめん、防音壁だわ。

きーこーえーなーいー!


クッティーの身体が消え直ぐに頭も消えた。


あらあら、また呆気無かったな。


クッティーよ成仏しろよ。


「…天龍族の戦い方は物理と魔法で殴ることだ!!」


そのバンシィに向けて放たれた言葉は防音壁によってバンシィの耳には入らなかった……

ドラグ「…天龍族の戦いは物理と魔法で殴ることだ!!」

バンシィ「は!?何だって?」

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