ー第3話ー 『やり過ぎた力』
おっさんは歩く、片手に剣、もう片方に十手を装備しながら。
おっさんは剣を構え横に振った。
するとその斬撃?でおっさんの目の前の木々は根こそぎ消え去った。
しかし、木々は消えたが残ったゼリー状のものがウニウニと動き一塊に成ろうと集まっていた。
おっさんは問答無用で合体途中のゼリーに斬撃を放った。
ゼリーは一瞬切れた様に見えたが直ぐにくっ付き合体を再開した。
「ほぅ…斬撃が効かぬか……」
おっさんはそう呟くと両手から武器を離す。武器はそのまま黒い光になって消えた。
その間にゼリーが合体を完了し2メートル位のドロドロとした緑色のスライムに変化した。
おっさんはその姿を見ると手を上にあげ指をパチンと鳴らした。
「破滅魔法。領域呪縛……貴様はもう逃げる事は出来ん。」
それと同時にスライムがあの緑のスライム状のものをおっさんにむかって連射した。
「…ペクト」
おっさんが言うと目の前に半透明の円がおっさんの前に現れた。あの……マホ◯ンタ的な感じ……
スライム状のものがその半透明の円に当たるとそのままはね返ってスライムに飛んで行った。
スライムはそれに対応できずに当たってしまう。
スライムはジュウという音をたて少し溶けたように見えた。
(…バンシィ様…)
急にダルクから声が掛かる
「なに?」
(…あのおっさんは一体何者ですか?)
「おっさん?ああ、『大魔王』だよ。」
そう言うとダルクの八つの頭が同時に驚いた顔をする。
(『大魔王』ですか!?『魔王』ではなく!?……だからあんなにお強いのですね!!)
へー魔物ですら『大魔王』とか『魔王』とか知ってんだースゲー
そんな事を話していたらおっさんが空中に浮かび背中から黒い翼?みたいなのを生やした。翼って言ってもあれね。天使とか付けてそうなアレじゃなくて、コウモリ?とか羽が生えてない翼ね。
そしたらおっさんの黒い髪の間から二本の黒い角が生えた。
………強そう。
スライムは溶けた部分を回復し終えおっさんを迎え撃つ様な格好になる。
おっさんが浮かびながらゆっくりとスライムに近づく
スライムがまたゼリー的なものを発射する
おっさんは今度はそれを手で受け止め投げ返すスライムもそれをジャンプして避ける。
するとゼリー的なものが地面に付いた瞬間に爆発した。
「ほぅ…」
おっさんが関心した様に声を出す
すると直後におっさんのすがたが消えスライムの背後に現れ叩きつける様にパンチを繰り出す。
しかしスライムは瞬間的に銀色のメタルなスライム的な色に変化しおっさんのパンチを防いだ。
「…成る程……」
おっさんがそう言うとまた消え今度は俺たちの前に立ちはだかる様に現れた。
「…流石は究極の王スライムだな…恐らくだが此奴は全てのスライム種の能力が使える様だの……」
おっさんが俺に説明する様に言うと頭を掻き言った。
「…我も飽きたのでの……終わらせるとするかの……」
おっさんがそう言うとおっさんから黒いオーラ的なものが現れ始めた。
「永久に眠るが良い。破滅魔法。」
おっさんの回りに幾つもの紫色の魔法陣が現れる
それを見たスライムは慌てて逃げようとする。
おっさんはそれを指を鳴らして動きを止める。
「スライム如きがこの我から逃げられるわけあるまい…」
怖えぇ……
「永久の終わり!」
魔法陣から一斉に紫色のビームが放たれスライムに当たり大爆発が起こる。
爆風が凄い……
煙が晴れると其処から向こうは何も無くなっていた。
「…またやり過ぎたの…」
……いや、うん、
何も言えねぇわ……
俺たちは進む、ひたすら真っ直ぐに……障害物は無い。
何故なら……
「やり過ぎなんだよッ!!」
「うおっ!ビックリした。……なんじゃ、まだ言うておるのか……」
「当たり前だよ!!緑が殆ど無えじゃねーか!!」
「煩いのお……真っ直ぐ歩くだけになって良かったでは無いか……」
「そうだけど!!否定はしないけど!!」
「なら良い。」
クッソ……
(まあ…バンシィ様、落ち着いてください。……もう着きましたよ。あとは登るだけです。)
「おお、ありがとな。助かったぜ。」
「ダルクは登れんのか?」
(はい、私は山の気候には耐えられないので……)
「そうか…残念じゃの…」
おっさんそんなにションボリしなくても……
「よし、じゃあ、またな!ダルク!!」
(はい!)
「行くぞ、おっさん。」
「お、おう。」
俺とおっさんはダルクと別れ山に登る
木が生い茂り斜めになっているので結構登り辛い……
後ろを見るとダルクは何所かに居なくなっていた。
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2時間くらい登った。だけどまだ頂上は見えない。
「………のう、バンシィよ。」
ずっと黙っていたおっさんが話し掛けてくる。
「なんだ?」
「あのな…非常に言いにくいのだが……」
「なんだよ?」
「……怒らんか?」
?怒る様なことでもしたんか?このおっさん。
「怒らんから言ってみろ。」
おっさんが指と指をモジモジさせながら言った。
「…あのだな……我の魔法の【浮遊】で、山の上まで登れば良いと思ってしまっての……」
「…それは俺にも効果あるのか?」
「…ああ、あるぞ。」
俺は思いっきり息を吸う。
「……先に言えぇぇーーーーーーー!!!!!」
「やっぱり怒った!!」
怒るわ!!なんだよ!!【浮遊】ってよ!!さっきから使ってたじゃねぇかよ!!なんだよ!!俺には掛けられないのか…とか、思ってたじゃねーか!!掛けれるんかよ!!ふざけんな!!
「…………もう良い、さっさとその【浮遊】で飛んでしまおう……」
「お……おう。」
おっさんが魔法を掛けるのか手を挙げる。しかし、おっさんはパッと上を見上げた。俺もつられて上を見る。すると視界が黒い何かに遮られた。
ドシンと言う音を立て二階建ての家位の大きさのゴリラが目の前に現れた。
ゴリラは激しく胸を叩き両手を地面につける
「ニンゲント、マゾクカ………」
しゃ!喋ったぁぁぁ!?!?
「如何にも我々は魔族と人間だが?」
おっさんがビビらずゴリラに問い返す。
「ソウカ……デハ、マゾクヨ、ココニナニヲシニキタ?」
「この山の天辺を目指しておる。」
「ソウカ…デハ、ココヲトウスワケニワイカナイ。」
「何故じゃ?」
「ココカラ、ウエハ、オレノ、ナワバリ、ダカラトオサン。」
「……ふむ、では、どうすれば通してくれるのかの?」
ゴリラが一瞬二タッとした様に見えた。
「モチロン、オレニ、チカラデカッタラトウシテヤル、ソレドコロカ、オレガ、テッペンマデオクッテヤロウ。」
「ふむ、なかなか良い条件じゃの、では、その勝負はなんじゃ?」
「カンタンダ、オレガイッパツ、オマエタチノ、ドチラカヲ、ナグル、オマエタチ、ソレニタエル、ソシテナグラレタホウ、オレニイッパツナグル。……タッテイタホウノ、カチダ。」
「良いだろう!!受けて立とう!この、バンシィがな!!」
「は!?」
おい!今の完全におっさんが受けるとこだろ!!
「バンシィなら『不死身』があるで、絶対耐えられるであろう……」
あ、そっか、なるほどねー
「そうか、なら良いだろう!!」
こうして、俺とゴリラの間に火花が散った。