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不死身の神官〜色々平均以下の俺が転生して不死身になった〜  作者: ほねつき
ーヨールパル大陸ー 魔族領進撃編(勇者視点)
79/252

ー閑話4ー 『ビビスとサラミス』

自分でも驚きの長さ!


『輪廻転生』


知っているだろうか、死んだ者の魂はまた別の魂としてこの世に生まれ変わる。そしてそれは輪廻の輪の様に何度も繰り返される…という。


一部の魔族の間ではそれは行われると信仰され大多数の魔族の間ではあり得ないと信仰されていなかった。

私もその大多数の一人だった。

死んで転生するなどあり得ない。もし居たとしてどうやって転生したと証明するのだ…と。


前世では少なくともそう思っていた。


そう、前世・・では……



あり得ないそう心の何処かで疑いつつ、私は亡き魔王アムリタ様の遺された魔導書『輪廻転生』を読んだ。

それには生前の記憶を持って後世に蘇る。そんな事が書かれた魔導書だった。


私はそれを信じた訳ではなかったが興味本意で、その魔導書の書かれた通りに私は魔法を発動した。


今まで見た事もない魔法陣が私を中心に勝手に展開され私は身動きが取れなくなった。

口も動かせないなり辛うじて目だけは動かせた。


転移の術式に手を加えた魔術式、最上級の拘束魔術の術式、そしてもう一つ別に何か巨大な物を転移させる術式が組み込まれている事は確認が出来た。


その瞬間、巨大な物を転移させる術式が発動し突然辺りが暗くなる。


「!!」


上を見上げるとそれは巨大な岩石が私を押し潰した。________________________________________________________________________________________




私の意識は突然覚醒した。


真っ暗で何も見えない。

ここが一体どこなのか分からない。

フカフカなベットか何かの上で寝転がっていて身体は頭が文字通り重くそのせいか身体が思う様に動かない。

なんとか、動きづらい身体を動かし手探りで辺りの状況を考察する。


まず両手を伸ばした先には檻のような棒がいくつも均一に並んでいる。

手の届く範囲で確認したが全てが檻のような棒がある。感覚的に天井の方へ手を伸ばすが空を切った。

少なくとも、手の届く範囲には何もない。


では一体ここはどこなのか、檻の様なものがある事からここは牢屋?

いや、それにしては狭すぎる。両側を檻に囲まれている牢屋など私は知らない。

だとすると精神魔術、精神系魔法の類か?

いや、それも無いだろう。

精神系魔法は私とアムリタ様しか使えない筈…それにその魔法は発動までに時間が掛かりしかも対象者を拘束した状態でなければ成立しない。精神魔術のほうも同じ様な感じだ。

だとしても、私は長時間拘束された記憶はないしそもそも、私は『輪廻転生』を発動した時に岩に潰された筈…


……そうだ!すっかり忘れていた!『輪廻転生』そうだ、私は輪廻転生を行使したのだった!

となるとここはまさか……本当に…転生出来たのか?


これで精神系魔法にかけられた私だとしたら一生笑いモノだな。


だが、仮にそうだとしても此処は一体どこなのだ?


「あーうーあー」


!?


なんだ今の声は!?


「うう〜あーうー」


!?


何故だ!?


何故だ!?



「あうぅぅぅーーーアァァァァァ!!!(何故まともに喋れないのだアァァーーー!!!)」


「どうしたの!?ビビスちゃん!!」


!?


突然、灯りが付き眩しさに思わず目を瞑る。一体なんだ…声が思う様に出せないといい、そしてあの声の主は誰だ?聞き覚えのない女の声だった。


ゆっくりと目を開き目の前に現れた巨大な顔に驚く。


その顔は赤褐色の肌に赤い髪。

この種族は私は知っている……魔王軍に所属する中で最も手先の器用な一族。


ドワーフ族だ。


「あら?どうしたの?ビビスちゃん?ママが来たら安心したの?」


ママ…?

何故、ドワーフ族にママが?

いや、私は根っからの魔人族だ。ドワーフに親戚などいない。故にこのドワーフの女は誰だ?


いや、違う……これは……


そっと私の身体はそのドワーフの女に抱え込まれ視界が一気に高くなる。


木造の作りの広めの部屋に窓が一つ、そこから見える景色は真っ暗で何も見えない。

視線を変え私を抱き上げる人物を見る。

何度見てもドワーフの女だ。


まさか……本当に……いや………そんな事は………


もう、気づいてはいたが認めたくは無かった。


覚悟を決め自身の身体を確認する。


明らかに魔人族の肌ではない赤褐色の肌にふっくらとした腕。自分の顔を触り感触を確かめる。

もっちりとした肌…まるで、赤子の様なふっくらでつやつやな肌……


これはもう……そうか……私は輪廻転生に成功したのか……

だが………だが………



「アァァァァァ!!あうぅぅぅーーー!!!(赤子からは勘弁してくれぇぇぇーー!!!)」




_____________________________________________________________________________





さて、改めて自己紹介といこう。

私は魔王軍第1魔法軍魔法総指揮長リューマン・ルー・サラミス。と言うのも

今はドワーフ族の子。ビビスだ。


では自己紹介も終わった事だ。早速分析に入ろう。

先程、私を抱き上げていたドワーフ。あの女は私、いや、ビビスの母親である事は間違いない。

そして此処はおそらく家の一室で私は、ビビスはベビーベットの中に閉じ込められている。


そして、話は変わるが、気になったものが一つある。先程、灯りがついていたが、眩い光を放っていた。それは蠟燭の火ではなく、光。まるで昼間の様な明るさを放っていたあの光には僅かだが魔力が流れていた。


そして今、その灯りはついていないが魔力が流れていた位置はしっかりと記憶している為、魔力を肌で感じその魔力が何かを探った。


結果は分からん。私も知らない魔法陣が入り組んでいたり、というか知らない魔法陣しか組み込まれておらず諦めた。


どうやら、魔法文明は私が知っているものより進歩している。

それだけは理解した。

つまりその事からくる答えとしてはそう。

私はどうやら、未来に転生した様だ。


その後何も分析するものが無くまた明日、調べて行けば良いと私は眠ったのだ。




意識が覚醒する。月明かりが窓から室内を薄っすら照らしている。


おかしい、何故だ?何故、朝ではないのだ?何かおかしい、私の記憶では寝る前は月が隠れて真っ暗な夜だった筈…何故だ?何故また夜なのだ?何かおかしいぞ…何だ…一体何が……


分からない。

いくら考えても答えが出る訳ではない。

仕方ない…今私にできることをやろう…今、私の身体は赤子、つまりだ、赤子の出来ることそれ即ち、『睡眠』。寝る子は育つという。将来この身体が睡眠を十分に取らなかった故に成長が不十分だったなどそんな事にならない様にしなくては……

大丈夫。時間はある。だから私は眠った。




それから何度も目を覚ましたが、何度寝ても何度、寝ても夜中にしか目覚めない。

寝て目覚めてを繰り返して26回…私はある変化に気付いた。


ベビーベットの柵を掴み力一杯に引っ張りその勢いで立ち上がる。


そう…歩けるようになったのだ!


これはかなりの進歩だ!前回の目覚めでは全く立つ気にもならなかったが、今回なら立てそうな感じがしたから試してみれば出来たのだ…

これで私の行動範囲も広げられる。だが、問題はこの柵だ。


足を上げても届かない。柵を外そうと思ったが留め具も見当たらない。完全に釘が打ち込まれている。

……一体どうすれば……


仕方ない、また何度か寝れば成長があるだろう。

そうやって何度も睡眠を繰り返しそこから更に36回。

遂に言葉を使えるようになった。


「あ…あ…破滅魔法『ファイア』」


指先から小さな火がパチパチと燃え直ぐに消えた。

やはり前世より魔力が落ちているな。まだ赤児だからと言うのもあるだろうが、そもそも、ドワーフ族自体の魔力もそこまで多くは無かった筈だ。


腕に溜めた魔力を流し深く深呼吸する。


身体の力を抜いてベットに尻を落とす。

魔力の消費でかなり疲れたな。今日は寝るとしよう。



そうして、寝ては起きてを繰り返し行使可能な魔法を調べ検証を行って42回。

私はこの法則にやっと気が付いた。

未だ幼いが成長したこの身体で部屋を動き回れるようになり私は気が付いた。窓を眺めると煌めく月が真ん丸に空に浮かび辺りを明るく照らしていた。


満月だ。今まで目覚めた回数は104回、この世で満月になる日は月に二回。一年で26回、今まで目覚めた回数から26を割ってやるとそこから出される数字は『4』。

そしておそらく今、この身体は4歳。

つまり、私はいや、私、サラミスと言う意識は満月の時にこのビビスの身体に現れ乗っ取る様な存在だな。


ん?これって輪廻転生って言うのか?要らぬ疑問が頭を過ぎったがアムリタ様の作り出した魔法だ。失敗などあり得ない。もしあったとしたら私が途中でミスを犯したか何かだ。

だが、この法則が分かった事は大きな進歩だ。これで次に目が醒めた時に満月ならば確定だ。



そしてまた目覚めた時。

私は直ぐに窓の外を確認する。

満月だ。これで満月に意識が現れる事は確定した。

そして今度は新たな発見が二つある。


一つはベビーベットからシンプルなシングルベットに変わっていた事。


そしてもう一つは薄っすらだが私に、記憶・・がある事だ。

これは私の記憶ではなくこの身体のドワーフ自身の記憶だ。父と母とに鍛治を習っている事を私は薄っすらだが知っている。

つまりはこの身体は私とビビスの記憶が混雑している。

……となると…これを利用しない手はないな…




ふむ、どうやら成功した様だ。

私は新たに壁に設置された本棚と数冊の魔導書を手に取る。

本棚には魔導書の他にお伽話の本や『鍛治の基本』と言う本に『武器の図鑑』という本も置かれている。この二つの本の内容は既にビビスが覚えている為、その記憶と知識は私にも入ってる。


私が何をやったか、一言で言うならば洗脳だ。

いや、洗脳とは言い方が悪いな、要するには自分自身に精神魔法を掛け勉強する様に仕向けただけだ。

こうすれば勝手にビビスは勉強を始めその知識は私にも入り私は私で現代魔法の知識を蓄えればビビスにも共有される。なんと素晴らしいシステムか!!私が私の手で勉強しなくとも知識は入ってくる。なんと言う事だ!!素晴らしい!『博学』の称号ももらえそうだな!!


それはまあ、置いておき現在の魔族の情報はこうだ。

今はあの【50年人魔領不可侵条約】を結んで254年、約250年たった世界で、しかもここは魔王軍の本拠地、ブゥルムンド大陸ではなく、人族領と近接した大陸。ヨールパル大陸。そのドワーフの村。

そしてビビスはその村の村長夫婦の1人息子だそうだ。


250年……長い年月が経っている…かつての部下や陸海軍総指揮長方も居ない。私はやはり1人なのだろうか………


いや、違う…アムリタ様だ……アムリタ様ならば、この輪廻転生で転生しているはず……そうだ!そうに違いない!!

私の忠義は終わってはいないのだ!!




では、アムリタ様がいずれ転生なされた時、再び魔王の座に君臨なされるように準備をしなくては…

その為には魔王の椅子に誰も座らせない事。

幸いにもこの250年間誰の1人もその椅子に座ってはおらず、魔王府と言う新たな行政機関が魔王の椅子の影に隠れ行政を行なっているようだ。

素晴らしい、魔王の存在無くとも行政を行える。そこまでにこの魔族の経済は発展しているのか?

更なる情報が必要になってくるな……



何百と睡眠を重ねこの身体は10歳を迎えた。

部屋の本棚は鍛治についての本がズラリと並びその一番下の棚に様々な分野の魔導書が並んでいる。開いた様子はない記憶にもないことから買ってそのままにしたのだろう。

その辺の細かい記憶は無い。おそらく衝撃的な事やビビス本人が興味を持った事しか私の記憶には入らないのだろう。


まぁ今はそれはどうでもいい、今回からは人脈を広げる事にする。

今の時間は12時、ビビスが目覚めるのは6時、五時間の時間があるそれだけでどこまで広げられるか、手始めにこの村の不良達をシメてくるか。



路地裏に葉巻を咥え溜まっている3人のドワーフの不良。此奴らはどうやら村一の不良達で誰も手をつけられないそうだ。そして、ビビスはこの不良達に絡まれ大事な『武器の図鑑』をビリビリに破られたらしい。

ビビスの事に首を突っ込みたくは無かったが、記憶として私の中にそれが入る以上、無視できないものだ。物を壊す、しかもそれが知識に繋がる物を壊されるのは私としても非常に遺憾だ。

その落とし前はこの不良達に償ってもらおう。


「ああ?テメェ…村長の息子、ビビスじゃねえ〜か?」

「おいおい、何しに来やがった?また俺たちに殴られに来たのか?」

「ギャハハハハ!!!」


不愉快な笑い方だ。相手にするだけ馬鹿らしいが、ビビスの調子が悪いと私の情報収集にも影響が出る。まずはその図鑑が買える分の金を貰おう。


「おい、何とか言えよ?ビビってんのか?」


煩いな此奴は、大体、10歳の子供に3人で寄ってたかって何が楽しい…

思わずため息がでた。

だが、不良達にはそれが気に食わなかったらしく。肩を力強く握ってきた。


「おい、舐めてんのか?」

「少しは痛い目みないと分かんねぇのか?」

「おい、俺がやる、糞ガキ、舐めてんじゃねー…ぞッ!!」


振り下ろされた拳を片手で受け止めガッチリと握る魔力を乗せたその手で魔法を発動する。


破滅魔法。グラビティ・ブレイク


不良の拳を魔力で粉砕する。


「ウギァァァァアァァァァァ!!!!」


不良の断末魔が清々しい拳を粉砕した不良は痛みに耐え切れなかったのかそのまま泡を吹いて倒れてしまった。そこまで痛かったか?

まぁ良い、逃げないだけマシだ。


「さて、」


「ひぃぃぃ!!」


この腰抜け不良二人組をどう痛めつけるか…

先ずは片足を粉砕。路地裏に再び断末魔が響く。

失禁し大粒の涙を流しながらも地を這い砕かれた足を引きずり逃げようとする。不良二人の手を踏みつけ同時に魔力で粉砕する。

この断末魔を聞いても誰も現れないという事は村の皆は危機感が無いな…いや、村を滅ぼすつもりなどは無いが…


まぁ良い、気絶してしまった不良共の懐を漁り金品を獲る。ほぅ…未だにルムンド硬貨が使われているとはな、しかし…この不良共、なかなか持っているな全部で200ルムンドと少し村の人から奪ったとしてもこの額は多いな。

なにか、きっとあるだろうが、この際はこの金で武器の図鑑を買って来るか、ブゥルムンドならばまだ開いてる店があるかもしれんな。



破滅魔法。『転移』



そして私は図鑑を手に入れる事ができた。図鑑は本棚の空いた隙間にしまい、余った100ルムンド余りの硬貨は私の、ビビス自身の持つ空間、アイテムボックスにしまった。おそらくこのビビスがその空間を開ける事はないだろう。開けられても問題はないだろうがな。

村の不良もブゥルムンドに一緒に転移して海に流したからおそらくもうこの村には戻らないから私の存在を知るものは居ない、そして、前世で使っていた魔法の殆どが使えるという事も分かったので大きな収穫だ。


さて、ではまた次の満月まで待つとするかな……





そうして何度も何度も研究や検証を行って気づけば母が行方不明になり父は死にビビスはそれでも逞しくたった一人で生き村の村長として君臨しそして、結婚し一人娘が出来ていた。

なんだ、この複雑な気持ちは…するコトをした訳ではないのに自身の身体と同じ血が流れる子が居るというのは……なんだ……これ?

いや…私の意識ではしていないが、この身体ではシタという事になっている……本当になんだ…この気持ちは……




そして月日は更に流れ気付けばビビスは52で、妻の…メルガ…だっけか?…も病で死んだ。元々身体が弱かったそうだし、私はメルガとは口を聞いた事もない偶に隣で寝ていて無理やり退かした記憶しかないな、確かその日の朝それが原因で喧嘩していた記憶もあるが、それは私ではないからな。

だが、ビビスが彼女を愛していた事も知っているしコルガとか言う娘を大事にしているのも知っている。私はこの身体の持ち主ではないからビビスの意思は尊重しよう、だがな……


私はビビスが造った書庫の魔導書を手に取り開いた。そこにはクレヨンの様なもので落書きされた絵がびっしりしかも肝心の魔法説明の部分を落書きしている。


もう少し…この躾をしっかりした方が良い…その内家を飛び出して危険な事をするぞ…あのじゃじゃ馬娘……



だが、まぁ、大目に見てやろう、あのビビスが偶々発見したお陰で私にも扱える様になったのだからな。


突然ビビスの手に剣が現れる。


……創造魔法。破滅魔法の破滅とは相対する言葉だが、深い関係はない。創造魔法。その名の通りあらゆるものを創造する事が出来る魔法だ。創造するものによって魔力の消費が変わってくるかなり特殊な魔法でその使用者は居ない。

破滅魔法がアムリタ様の手によって開発される前より存在する天龍魔法、それを扱う天龍族と言う古代龍の末裔の龍達が神話として語り継いでいた魔法だそうだ。


『創造神は創造魔法を使い世界を創りだした。』


たしかそんな感じの神話だった。それを自分たちの都合のいい様に解釈し作り上げた神々が人族が最も信頼する宗教が六神教。そして創造神のサラリス…私と名前が非常に似ているのが気に食わないが今は置いておこう。


その創造神が創りだしたものが聖神魔法、そこから更に広げていくと魔法神ダリナスやら、魔力神リサリルやら、呪神やら、呪解神やら女神やらが出てくるが今は関係ない。


閑話休題


ビビスがこの創造魔法を発見した事によりなにか色々な物が作れる様になったと、私の魔力・・・・を使って使用者を選ぶ武器とかふざけたものをいくつも創造していた事もこの際は大目に見てやろう。なにより私も創造魔法が使える様になったのだから……





そしてある時、ある一報が入った。


第9代目魔王の就任である。

なんと、今まで魔王なしで経済を回していた魔王府が魔王の就任を後押ししたと言う…何故今になって魔王を就任させたのか、そう言う事も頭を過ぎったが一番の問題は、これではアムリタ様の椅子がない事だ。


どうすれば良いか、それだけが頭を埋め尽くした。そんなある日に『勇者』は現れたのだった。




勇者というのは随分と子供でコルガとほぼ同い年であった。

私がビビスと入れ替わったのはビビスがまた私の魔力でよく分からんが『エメラルドをはめ込んだブローチ』を創造した後だった。

効果は自動回復辺りしか記憶が無く。

もしかするとビビスの事だ、余計な能力を付与している可能性があったがお転婆で阿保そうな女剣士リーリャに渡す様だったのでまぁ良いだろうとその辺は気にしない事にした。


そしてビビスの記憶をほじくり出しほか三点、ビビスが創造する予定だった物を私が代わりに創造してやり勇者に渡す『九石の腕輪』とか言うそのまんまな名前の腕輪には復活するとか言う能力が組み込まれる予定だった様だが、その元になる九石龍の魔石は全て私のあの100ルムンドから出したものだったので復活する魔石は私が貰っておいた・・・・・・・・


大体そんなふざけた能力に頼っていては強くなれんしな。別に勇者が死のうと別に私に影響がある訳ではないのでそれくらいは良いだろうと気にしない事にした。



それからビビスの記憶を頼りに適当に話を繋げそれぞれの武器を渡した、阿保そうな女剣士にはブローチ、頭が良さそうな魔導師には杖、かなり上等な魔剣を持っていた青髪の男には鞘…勇者ナガトに手抜きした腕輪をしっかり渡しそれから話を切り出した。



「処で、お前さん達は何処へ向かっているんだ?」


そう聞くと仮にも敵である魔族に迂闊にも行き先を話してきた。


「眠りの森に向かっています。」


「眠りの森?……なるほど、そこまで行きたいのなら転移魔法陣があるぞ」


勿論嘘だ。転移魔法陣などこの家には無い、ただ、ビビスの趣味で書庫に魔法陣をモチーフにした土台がある事は知っている、今回はそれを利用する。


眠りの森は確か魔王軍の第九陸軍辺りの基地だった気がするがまぁ、きっとこの300年近くで変わったんだろう、知らんが。一様300年前の記憶ではあるが眠りの森の位置は把握している為、この四人を強制転移させることは出来る。


「どうするんだ?使うか?」


どうせ使うんだろうと内心思いつつも一応確認しておく。


「使わせてください。」


だろうな。


「良いだろう」


指を鳴らし部屋を切り替える。そもそも、この家自体も転移魔法の応用みたいなものなんだがな。詳しいことはビビスが考えた事だから知らんが、転移魔法陣が使われているのは確かだな。

取り敢えず、何も持たずに転移させると怪しまれる気がするので魔導書を読みながら初心者ですアピールでもしておくか


「えーと、転移理論は……確か『魔力の移動と構築』に載ってたはず……あった。」


適当に単語を言っておいて『武器の図鑑』を手に取る。


転移魔法とか、精神魔法とかは、交通とか完全に馬車が必要なくなってしまい経済を大きく傾ける様な魔法はそもそも魔導書なんて存在しない口で伝えられるだけなのだ、考えてみろ精神魔法とか言う他人を乗っ取る魔法が世の中に出回ってみろ本当に世界が終わるわ……


「その本は?」


「ああ、これはな、俺が最も尊敬するお方の書かれた魔導書だ。これがあれば最も安全に誰でも転移させることができる。」


なるべくこの図鑑のタイトルは見られない様に持ち応える。


「へぇ…そんな凄いものを書く人がいるんですか……一体どんな人なんですか?」


「フッ、残念だが、この書は300年前に書かれたものでな、俺は名前しか知らんな。」


いや、本当は知ってるけど。


「まぁそんな事はいい、お前さん達はそこの魔法陣の真ん中に立ってくれ。」


「はい。」


素直に真ん中に立つ勇者達、別にそこに乗らなくても転移は出来るんだがな、雰囲気は大事だ(笑)


「唯一この転移魔法の欠点を言うとどうやらタイムラグが発生するらしい。」


私は図鑑を広げ文を読んでいる様に振る舞う。……ほう…こんな大きな包丁の様な武器もあるんだな…なになに…【大包丁】…そのまんまだな…


「だが、確実に転移はされるから安心しろ。だとよ、お前さん達、安心しな。ただ、タイムラグは距離に拘らず十二時間のタイムラグが発生するらしい、つまりお前さん達が『眠りの森』に転移した頃には昼前ってくらいだな。」


……なんだ、この蟹の爪の様な武器は…【大蟹爪】……だからそのまんまだな……


「何から何までありがとうございました。」


「良いって事よ、じゃあ、始めるから静かにしてろよ。」


さてと、四人を強制転移させるわけだからかなりの魔力が必要になるな……ふぅ……魔力を頭に溜め脳を集中させる。意識的に飛ばさなければ転移は成功しない。…眠りの森…眠りの森……


標準は合わせた。後は詠唱するだけ…



始まり旅立つラーディス我が同胞達ディーラドララーン時と空間のブイドシーン次元を破りスレイズギジル我が元をヤーキディラ旅立ちラーディス新たなるフォーラン我の元へとヤーキドラ集い給えロードムーブ。」


脳の魔力を一気に四人に向かって当て転移するのを待った。

彼らの姿は一瞬で消えおそらく今、次元と空間を移動しているのだろう。


疲れた。


椅子を転移させ腰を落とす。

「現魔王に恨みがある訳じゃない…ただ、の中で『魔王』という椅子に座って良いのはティー・ターン・アムリタ様、ただ一人なのだ。アムリタ様が復活なされた時、その椅子に誰かが居てはならんのだ。『勇者』よ確実にファランド・グリムを討伐してくれよ…」


気が付けば頭から前世で生えていた角が生え前世と同じ白髪に変わっていた。何故だろうな、私が意識にいる中で魔力を大量に使ったことにより私が強く出てしまったのか?また、検証する事が増えたな。


「今夜は満月、私がビビスから出られる日と『勇者』が現れる日が重なるとは、これは運命なのかもしれないね…」






全てはビィスヴィ前魔王様の為にベルディブル…」


ども、ほねつきです。

この話で一万文字使ってるらしいです。

自分でもビックリですよ。さて、一様『九石の腕輪』のフラグ?伏線?は回収。

自分で言うのもアレなんですけど、正直閑話の方が面白い説……

いや!まぁ、いい!!そんなことよりも次回、久々にディラ登場!因みにまだ書いてません!気長にお待ちをッ!!

ではまた!



……でも、どうせ魔王と戦うのは勇者だからディラの出番少ししか無いんですよね……

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