ー第10話ー 『Bランク勇者』
何故でしょう、話が進んでいない気が……
再び戻る視界に映った紅紫のドレスに身を纏うイーナの姿。先程まで美しいと感じて居たのに今では何も感じない。
「またか…攻略法が見当たらんの…そのスキルは……」
イーナから放たれる他者を拒絶する様な魔力の波動を肌で感じ素早く後ろに跳んだ。
直ぐに俺の立って居た場所に紅紫の斬撃が地面を切り裂いた。
「……ふむ、同じ手は二度も食わんか。」
「リーリャ!いくよ!」
「ええ!」
タリウスとリーリャのコンビでイーナを引き付ける。
タリウスの剣を躱すとその落下点にリーリャが斬りかかりそれを腕で止めるイーナに反対から剣を振るうタリウス。
しかし、その攻撃もイーナの腕で防がれた。
「…なに…」
「まだ、まだ甘いのだよ!」
腕を素早く外しその腕でリーリャを突き飛ばし動揺を見せたタリウスに肘打ちしもう片方の手に魔力が集まりタリウスの腹に当てた。
「『マジック・ショック』」
直線に吹き飛ばされ何十もの木を折りその勢いが止まった。
「タリウス!!」
駆け寄り『回復の真剣』をタリウスに掛けようと魔力を練るとそれをタリウスに制された
「タリウス?」
「良い……自分で治すから…その魔力はイーナを倒す事に…………」
全身傷だらけその傷口から血が垂れ出て今にも倒れそうなタリウスはそれでも俺の手を拒んだ。
「良いのか?」
「良いんだよ……俺を誰だと思ってるんだ……いずれ最強の冒険者になるタリウスだぞ……」
その言葉に俺はタリウスとの出会いがフラッシュバックした。________________
2年前
様々な冒険者達が集まる酒場のギルド。其処は王国連合で最も活気があり一流と呼ばれる強者の冒険者が好んで集まる冒険者ギルド。王都シューラの冒険者エリアの中心に構え他のギルドとは外見は木造の二階建てで他の魔法煉瓦で建てられたギルドとは違いみすぼらしく其処にあった。
中では何十人と推定Aランク以上の一流と呼ばれる強者の冒険者達が酒を飲み交わし己の武勇を自慢する……訳ではなくただ世間話や、その日の出来事、嫁の愚痴など皆仲良くただ、酒を楽しむ為に其処に集まっていた。
「それでよぅ、そのDランクの少年共がよぅ、こんな事を言ったんだぁ『貴方もDランクですか?良かったら一緒に薬草採取に行きませんか?』ってよぅ…」
革の装備に鉄で出来たソードで紺青色の髪の男一見すると駆け出しの冒険者にも見えるその男は酒を豪快に飲み店員と思われる男にお代わりを頼んだ。
「はーそれで、何つったんだ?」
その男とは反対側に腰掛けた金髪のモヒカン頭。革の装備の男とは違い黒色の龍の鱗で造られた装備を着けその背中に身の丈以上の黒い大剣が一際目立っている。モヒカン男は酒をチビチビと飲んでいる。
「ああ、勿論。薬草採取に行って来たぜ!クラインスギルドの受付嬢にかなり嫌な顔されたがな!!」
「何だそれ!」
ワハハと響く笑い声。
そんな中に俺は現れた。
「………」
一瞬場が静まり返るが直ぐに騒がしくなり俺はその男達の近くに座ったんだ。
「おう!若いな少年!」
「おお?黒髪の兄ちゃん大丈夫か?ここのクエストは中々辛いぞ?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
「甘いぞ、黒髪の兄ちゃん、人生油断しちゃダメだぜ、命を落とすからな。」
「なに、お前は真面目なフリしてるんだよぅ!」
そう言って紺青色の髪の人はモヒカンの人を叩いた。
「いてぇな!叩くこたぁねぇだろ?」
「えぇ?油断しちゃダメじゃないのかぁ?」
何なんだこの人達は、俺は凄く思った。何故ならこのギルドはAランク以上の強者しか集まらないギルドだって聞いたから来てみたらこんな、テンプレで絡んでくる様な冒険者が居るって……
他の人は強そうな武器や装備をしているのに…場違い過ぎるんじゃないか。
「はーーい!!みなさーーん!!ちゅーーもーーーく!!!」
カランカラン!!とベルを鳴らし冒険者達の視線を一点に集めたピンクのロングヘアの受付嬢。
「さぁ!今回はこちら!討伐ランクA下位!『ボルケーノドラゴン』でぇーーす!!!さあ!今回の報酬2000チール!!因みにこのギルドでの参加人数は2人までなので三人以上はくじできめまーーす!!やりたい方は此方にあつまってくださーーい!!」
ギルド内の雰囲気が一気に変わり仲間内での相談を始めていたりしていた。
「なるほどねぇ、ボルケーノか、『アンデット』じゃないもんな…」
「おめぇな、アンデット種なんて早々出る訳ねぇだろ、諦めて行けよ、今月カツカツなんだろ?」
「そう言うお前はどうなんだ?嫁に全部取られてるだろ?」
「ふっ、甘いな、まだ、予算はあるからな。」
この人達はちょっと他とレベルが違う感じがするし、俺も経験は積んでおきたいから討伐に志願した。
「おお?黒髪の兄ちゃん、行くのか」
「少年よぅ、無理はしんほうがいいぞぅ」
受付の前に集まったのは俺を合わせて七人、俺以外は全員が大人でどの人もさっきのモヒカンと革装備と違って装備も良いし強そうだ。
「あー!待って!僕もやります!」
「うお!『雷剣』だぜ!こんな所に来てたのか!」「本当だ、『雷剣』だ。」
その男は俺と同い年位の見た目で赤い髪の色をして青い鎧を身につけ、腰には銀色の剣と、木の棒?を着けていた。
「おやおや、『雷剣』さんも、参戦ですねーではこの八人でクジを引いちゃいましょう。はいどうぞー」
箱に入った二枚に折られた紙を引かされその中身を開くと数字の1が書かれていた。
「数字が書いてある人が今回の参加者になりまーす!当たった人ー!」
「おお!僕だ!」
「あらあらーまた『雷剣』さんですかー本当に貴方運が良いですねー、では、もう1人のラッキーマンは?」
「俺です。」
「んー?本当だー、えっと、君は一体ランクは……」
受付嬢が心配した目でこっちを見た。
「Bです。」
「は?」
「Bです。」
静まり返るギルド。
「……クク…ぎゃははは!!黒髪の兄ちゃん!やるな!ここならランク関係無しにクエストが受けられるって知ってて来たか!」
「おおぉ!そう言う事か!Bの少年頑張りたまえよ!」
「ちょっと!ジャックさんにクラントさん!勝手に決めちゃダメです!こう言うのはちゃんとギルド長に確認を取ってからじゃないと……「良いぞ。」
いつの間にか受付嬢の背後に居た銀髪の筋肉質な男。
「良いぞ。ってえぇぇぇぇ!?ギルド長!!いや、良いんですか!?」
「良いんじゃないのか?」
「いや、知りませんよ!!そう言うのはギルド長が決めるんじゃないですかー!」
「うん、そうか、じゃあ良いぞ。」
そのギルド長の一声で場が大きく盛り上がった。
「よっ!流石!リックギルド長!!」
「太っ腹!太い腹〜!」
「『屍体狩り』殴るぞ!」
受付越しから身を乗り出しリックと呼ばれるギルド長が『屍体狩り』と呼ばれる革装備の男に笑顔で殴りに行こうとする。
「まぁ、良いじゃねぇかよぅ…」
「良くねぇな、オラァ!」
ギルド長が『屍体狩り』に掴み掛かりそのまま投げ飛ばした。
「「ウオォォォ!!」」
「良いぞー!!やっちまえー!」
一気に盛り上がり他の冒険者達が2人を取り囲み更に盛り上がる
「俺はリックさんに賭けるぞー!!」
「俺もだー!」「俺も!」「俺もだ!」「全員リックさんに賭けてるじゃねーか!賭けの意味がねーよ!!」
……本当にここは強者だけのギルドなのか?間違えたか?
何故か始まったバカ騒ぎに俺は呆れて物も言えずとりあえずクエストを受けるために受付に向き直った。
すると『雷剣』と呼ばれる同い年位の男と眼が合った。
彼はニコリと笑って手を差し出した。
「俺は『雷剣』のタリウス・カリアだ。宜しくな。」
………
「ナガト・カミカド。宜しく。」
「おう!仲良くしようぜ、ナガト!困ったことがあれば何でも聞け!俺はいずれ最強の冒険者になるタリウスだからな!!」
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………フフ…
思わず口元が緩んでしまった。
「そうだったな、最強の冒険者になるんだったな。」
タリウスはそれを聞いて虚ろな目をしながらも口元をニヤつかせた
「……そうだよ…最強の冒険者に俺はなるのさ……………………………
ナガト!!危ない!!」
突然俺を弾き飛ばし俺と場所を入れ替わったタリウス、その視線の先を倒れながら見るとイーナが俺を殺した斬撃を俺が立って居た位置に向かって放っていた。
タリウスがその位置に立ち薄っすらと虚ろな目をその斬撃に向いていた。
「タリウスゥゥゥ!!」
倒れかけた俺の身体が言うことを聞かずただ俺はその名を叫び手を伸ばす事しかできなかった。
斬撃がタリウスの首を切らんとしたその時。
タリウスの真なる剣が光り輝いた。
タリウスを中心に光の壁が展開されイーナの斬撃を消滅させその光の壁は大きくドーム型に広がり俺やリン、リーリャも包んでイーナを弾き飛ばした。
「………アハハ……また、ディラ兄に助けられちゃった……」
その言葉を残して倒れたタリウスの顔は笑顔だった。
ども、ほねつきです、なぜか、イーナがラスボスキャラみたいな雰囲気でじゃんじゃん勇者を殺ってますけど、彼女は魔王では無いです……
そんな事よりちょっと今回の説明てきなネタバレ?を少し…
『リック』出てきましたね。そうです、あの40話以上前以降姿形を見せなかったあのリックです。と言うか今回、回想で出たキャラ『屍体狩り』以外は既に出ています、受付嬢は50話前くらいに一瞬出てきて走って消えたキャラです……果たしてモヒカンの正体は………気づく方は気づくと思います、答え合わせはまた後々……では!