ー第9話ー 『不屈の心』
5日ぶりみたいですね。割と申し訳ないと思ってます。言い訳すると書くのがめんどくさかったです。…言い訳じゃない←
「雷龍!」
タリウスの青と赤の剣の先に雷が集まり所謂東洋龍と呼ばれる細長い雷を纏った龍が飛び出した。
『グオォォォォ!!』
龍は天高く舞い上がりイーナに向って急降下を始める
タリウスが地をかけイーナと数回打ち合い距離をとった、瞬間龍がイーナを襲い雷鳴を轟かせ爆散した。
「…光よ、我が剣に光の加護を!」
剣が光を纏い身体の強化されたリーリャが地を蹴り消え雷に焼かれるイーナの胴体を切った。
「……『ホーリースラッシュ』」
リーリャがレイピアを鞘に収め振り返る。
手応えはあったらしい。喰吸血鬼出会っても胴体を切ってしまえばおしまいだろう。
そう、気を抜いた瞬間リンの莫大な魔力が一気に放たれ俺やリーリャ、タリウスも吹き飛ばすかの様に四方八方に放たれた。
「『マジックブラストサーチ』」
「……ぐぬぅ!」
俺の背後から突然無傷で倒れたイーナが現れた。
偽物!?
慌てて剣を構え距離をとる、しかしイーナは仕掛けてくる様子もなく地面に這いつくばっていた。
完全に隙だ。
そう感じ剣を突き立てイーナの喉を貫こうとした
「ふっ、馬鹿め、『暴喰大針』!!」
背後から魔法陣が現れそれを目にした瞬間。
「…ガハッ!」
巨大な槍が背中を貫き腹をえぐりそのまま俺は飛ばされ少し離れた位置に俺ごと突き刺さった口から大量に血が流れ腹からは何も感じない程に大量の血が流れ意識が朦朧とし始める。
………俺…死ぬのかな…
朦朧とした意識の中みんなと過ごした日常が走馬灯の様に頭を流れた。
「ナガトッ!!」
タリウスがイーナと何度も攻防を繰り返す姿が薄っすらと瞼の隙間から見えた
足手まといだったな……勇者ってだけでちやほやされて…ごめんタリウス……リン……リーリャ………俺は……もう………
急な眠気に誘われて意識が刈り取られた。
《…『勇者』スキル『不屈の心』が発動可能です。》
《Continue? YES NO 》
何もない真っ白な世界に現れた二つの文字。
続けるか続けないかと問うそのふた文字。
俺は訳も分からず『YES』と願った________________
「何っ!?何故生きておる!」
気付いた時には俺は立っていた。
目の前には驚き戸惑っているイーナがいてその後ろには泣いていたのか目元や目が真っ赤になりへたり込んでいたリーリャが口を開けて此方を見つめタリウスは剣を構えたまま俺を見て唖然としている。
振り返ると俺が突き刺された筈の巨大な槍が地面に刺さり俺の血であろう赤黒く染まっていた。
その隣で無表情だが、明らかに一歩引いた姿勢で杖を此方に向けいつでも魔法が放てる体勢でリンがいた。
って!
「待て待て!リン!俺はナガトだぞっ!撃つな!やめろ!」
慌てて宥めるが杖を下す気配の無いリン。
リンの魔力が俺に触れた。
「鑑定」
俺は全身を魔力で確かめられるかの様に魔力に包まれ直ぐにそれは解放された。
そしてリンは杖を下ろしこういった。
「鑑定の結果、魔力総量以外100%対象がカミカド・ナガトである事を確認。……先ほどのナガトと同一人物である。」
何故生き帰った。それは薄っすら頭に流れた『勇者』のスキル『不屈の心』だと俺は思う。
おそらく対象が死んでしまった時きっと何か条件付きで復活出来るチートスキルなのだろう。
検証は後回しで俺は真剣・炎帝を抜きイーナに向き直る。何故か真剣に送られる魔力が多くなった気がするが、疲れなどは一切感じずむしろもっと魔力を高める事が出来る気がしてならなかった。
「何故、生き返ったかは知らんが再び殺すまで!」
そう言い放たれた真っ黒な魔力の球体を魔力を放ったリンが止めた。
「『マジックシールド』」
「ありがとう、リン!」
リンの横を抜け魔力を大量に取り込ませた真剣を力強く握り、足は大きく踏み込み地を蹴り駆けた。
魔法発動で生じた硬直。
個人差はあるが平均的な硬直時間は1秒。
その1秒で俺はイーナの間合いに入りその首を狙い剣を振った。
硬いものを切った手応えはしっかりと手に伝わった。
イーナの首は天高く舞いボトリと地面に落ちた。
「………やった…」
思わず声が漏れた。
「ナガト?やったの?」
タリウスの質問に俺はコクリと頷いた。
「流石ね、と言いたい所だけど、あんた何で蘇ったのよ。」
「俺もよく分からんが、多分『勇者』のスキルだ。」
「なによ、それ…」
リーリャが呆れ顔で此方を見てレイピアを仕舞った。
「フッ…フッフッフッ………その程度で妾を倒したと思うておるお主らはお笑いだぞ。」
「なにっ!!」
振り返ると地面に落ちていた筈のイーナの首が無くなりイーナの胴体が首を持ち上げくっ付けた。
「甘い、甘過ぎるぞ、妾は首を切られた程度では死なぬ。何故ならば妾は『完治治癒力』の称号を持っておるからの、細切れにしようとも無駄じゃ、妾ならば完全に再生する。妾は無敵なのじゃ!」
完全に再生?
じゃあ、一体どうやって倒せば良いんだよ。
………そうだ、なら再生できない様に煙になるくらいまで消し飛ばせば!
魔人◯ウみたいに煙でも再生したらどうしようもないけど、超火力な魔法でイーナを消し飛ばせば…いけるか?
それにしても、イーナも中々チートだな。
「リン!」
名前を呼び俺は手を耳に当てる仕草をする。
リンは此方を見ると頷き直ぐに実行した。
『なんでしょうか。』
頭に響く落ち着いたリンの声。『念話』だ。念話はお互いが念話を行うことで頭の中で会話が成立するスキルである。どちらか片方が念話をするとその一方でのみ語られるだけになる。
初めてこのスキルを使った時はリンが察して念話で返していたので会話が成立していたらしいが、念話を持っていない人にそれをやれば神のお告げみたいに俺の声が響くという……
いや、そんなことはどうでも良いや。
俺は先程立てた魔人◯ウ討伐(仮)の作戦をリンに伝えた。
『成る程、確かにそれは可能性がありますね。では、私とカミカド様で思い思いの強力な魔法を生成しましょう。』
そう言ってリンは念話を切った。
「…神級結界陣『魔力防陣・改』」
直径3メートルほどの強力な防御結界がリンを中心に現れリンが杖をつき目を閉じその莫大な魔力を練りながら詠唱を開始した。
リンが詠唱を必要とする魔法……
一体どんな威力なんだ?
「ナガト!僕とリーリャが引き付ける!ナガトは詠唱を!」
「あ、ああ!」
タリウスの雷を纏った剣がイーナを襲い躱した地点に光魔法を放ちそれは魔法で受け流し球体の破滅魔法を放ち時たま詠唱に集中するリンに向かって動揺をかける為か魔法を放つが殆どはリーリャとタリウスに阻まれそれをすり抜け通った魔法はリンが最初に張った結界に阻まれ消滅する。
しかし、何故だ?
イーナは首を切られても生成する無敵の様な身体な筈だが、何故あんなにも避ける必要があるんだ?
避けずに斬られてもそこから攻撃すれば良いのに……
それをしないという事は何か制限があるのか?1日数回までとか?
動き回るイーナを目で追い観察した。
すると、イーナは肩で息を吸っており、時折胸を抑えるなどの仕草を見せ、かなりの心労が溜まっているように見えた。
……もしかすると…
「雷炎!」
「……チッ」
タリウスの放った雷と炎が拡散しイーナの腕に切り傷をつける。
だが、直ぐにその傷は塞がり何もなかったように見えるが、イーナの顔は未だに顔を歪ませ痛みに耐えるような仕草をしていた。
可能性はあるな、なら蓄積ダメージを与えていけば!
魔力を高め爆炎の炎を放つ
「…ちィ!」
不意打ちに咄嗟で両手を塞いで反応したイーナ。両腕が焼け落ち断面が焼けている。
おかしいな、
蓄積ダメージを与えるつもりだったのに両腕が無くなっちゃった。
一度死んだことによって魔力操作が下手になったかな?
「……『応急回復魔術・天』!!」
魔力も何の前触れも無くイーナが魔法陣に包まれ無くなった腕がにょきりと生え出てきた。
「今のは…成る程…魔術を仕込んでいたのね…」
リーリャがその魔法陣の事を魔術と言った。
魔術。魔法が発達する前の時代に使われていた魔法の前形態の様なものらしい。人族では既に廃れて存在すらしていない。
そんなものが魔族では未だに存在する、魔法発祥の地は違うな。
だが、俺は魔術の仕組みも何も知らない、今の魔術は名前からして回復魔法の様なものだろう、腕まで再生する事はかなりのものなんだろう。
イーナはゆっくりと歩き館を背後に仁王立ちした。
「随分と妾もコケにされたわ……だが、準備運動はこれで終わりじゃ」
「……なっ…身体が……」
空中の魔力が震えあがりその振動が身体に伝わり身体が震えるえ動けない……
タリウスやリーリャは膝をついたり剣を支えにやっと立っている状態だった。
「妾の血は喰吸血鬼であると同時に魔人の血も流れておる!魔人の力はその力を内に秘め解放した時に最高の状態になれるのだ!」
イーナがフワリと空中に浮かび手を胸に当て魔力が収束を始めた。
イーナに集まった魔力が紅紫色に染まりイーナを包み込む。
「『魔力解放』!!」
刹那に放たれた紅紫の波動が空間が薄っすら紫紺に染まり紅紫のドレスを身に纏い紅紫色の二つの角が天を突く程に生え、肩甲骨の辺りから紅紫の翼が生え大きく開き羽がヒラヒラと落ち今までとは明らかに違い過ぎる魔力の桁。
だが、その美しいと思える姿に俺は見惚れていた。
その為直ぐ其処に迫っていた『死』というものに気付いては居なかった。
「『吸血鬼の殺刄』」
空中を舞った視界と共に意識が途絶えた。
《スキル『不屈の心』が発動可能です。》
《Continue? YES NO 》
『YES』