ー第7話ー 『吸血姫はあっち』
本当は昨日の内に投稿する筈だったのに……書いてたデータが消えるなんて…なんてこった、パンナコッタ……
「うん、つまりどこにあるの?」
「此処です。」
「うーん、聞き方が悪かった。その寝永姫城の入り口は何処にあるの?」
「……此処から北に20メートルの所にこの中庭から中に入る入り口がある。」
「ん?中庭?」
「そう、中庭。」
「よく分からんな。」
「そう…」
じっくり詳しく聞いていくと俺たちが今いる場所は既に魔将エルナーヴァ・イーナが護る『寝永姫城』の屋根の上らしい。
こっから真っ直ぐにいくと二階建ての屋敷の様な建物があってそこから地下に入る事が出来るらしい。
丁度ここの真下にも何かはわからないが部屋の様な物はあるらしい。
なんて言うか、この馬鹿みたいに広いらしい眠りの森は森ではなく広大な屋上緑化の様なものらしい。
どうやら、『寝永姫城』は上に建てられているわけではなく、下に大きく広がってるらしい。
『寝永姫屋敷』とか言ったのは撤回しよう、改めて『地下要塞寝永姫城』って事で良いんじゃないかな?
「どうします?突入しますか?」
「様子を見よう…と言ってもこの霧じゃな……」
魔物は現れないが、下手に動いて気付かれても、そもそも、入り口があるなら鍵がいるだろ?門番でも居るのか?
「……突入しても別にいいんじゃないかしら?」
眠気から復活したリーリャはレイピアの手入れをしながらそう言った。
「だが、入るにしても鍵がないだろ?」
「そんなの蹴破って入れば良いじゃない。」
レイピアを軽く素振りするリーリャ。フォンと言う風を切る音が静まる森に響く。
「お前な、そんな事すれば魔族が集まってきちゃうだろ?」
「集まってきてもリンが吹っ飛ばせば良いじゃない!」
うん!確かにそうかもしれないけど!
「あのな、魔将の全員が襲ってくるかもしれないんだぞ?」
「別に大丈夫じゃない?」
「大丈夫じゃないから今こうやって1人ずつ倒して行こうって話なんじゃないか!」
「そうだったかしら?」
「そうなんだよ!」
結局、良い案は思い浮かばず最終的に強行突破という事になってしまった。何故だ、この敗北感は……
そして今、リーリャの案内により森の中を歩き真っ黒な二階建ての屋敷を発見した。
屋敷の中央には比較的大きな扉が一つ、そこ以外は入れそうな場所は無かった。
俺たちは木陰に隠れ様子を伺った。
屋敷には人の気配はなく、門番も立っていなかった。
どうする?ノックして開けてもらうか?
それとも、不本意だがリーリャ意見で蹴破るべきか?
すると突然リンがスタスタと屋敷の方へ歩き始めた。
「お、おい…リン…」
リンは恐れる事もせず堂々と二段の階段を上がり扉の手すりに手をかけた。
ギギギギ……
リンが軽く引くと扉はゆっくりと開きはじめた。
ええぇぇぇぇ……開いてるの……この場合なんで開いてるの分かったの?って聞くべきなのだろうが、そんな事より此処……
「不用心過ぎだろッ!!」
「…!うっさいわね!」
「どうしたんだよ、ナガト…」
なんだよ…二人して……ちょっと、突っ込んだだけじゃないか……変な目で見るなよ……
中に入ったが、アニメやゲームにもありそうな目の前が幅が広く取られた階段がありそこから横に二手に分かれどちらからでも二階に行ける階段が正面に現れ、壁には絵画やら美術品やらが並べられ天井にはシャンデリアが部屋を明るくしていた。しかし、
「……誰もいないわね、」
「どうリン?」
「……このフロアには誰もいない、恐らく奥の部屋にも誰もいない。」
居ても厄介だが、居ないと不気味でしかも、心配になってくるな。
本当にいるのかよ。
「どうする?地下に繋がる部屋でも探すか?」
「そうね、そうしましょう。」
一階の扉は全部で四つ、入り口から右側の部屋と左側の部屋、それと中央の階段下のドアが2つだ。
俺たちは先ず、右側のドアから入る事にした。
「……」
「どうした?リン行かないのか?」
「……行く。」
立ち止まっていたリンに声をかけ俺たちは移動した。
ドアノブ、に特に変なところは無く俺はドアノブに手を掛けた。
「いいか?行くぞ!」
俺はドアを思いっきり押しあけ中に入った。
「え?物置部屋?」
「そうみたいね」
中は4畳ほどの広さで掃除機のようなものや箒、雑巾、ちり取と掃除に必要な物が整理され置かれていた。
それ以外は何も無いただの掃除道具いれか?
念の為、ものを退かして調べてみたが隠し扉も地下に繋がる通路も何も無くなんの収穫も無しに部屋を出た。
次は階段下のドアに行った。
ドアはさっきのドアと違い木のドアでは無く、鉄の様なもので出来た茶色の扉で、縦長に手すりが付いていた。
「じゃあ、いくぞ。」
手すりに手を掛け思いっきり引いた。なかなか…重いな、だが、これ位は開けられる。
そして勢い良く開いた扉の先に見えたのは白銀の氷の世界だった。
「さむっ!」
冷たい空気が漏れ身体が身震いを起こした。
「さむいじゃない!ちょっとあんた、一人で行ってきなさいよ!」
「はっ!?」
「ナガト、僕も行くよ。」
そう言って俺とタリウスで寒い凍える程の白銀の氷の世界に入った。
中は言うほど広く無く、まるで狭い冷凍庫の中の様だった。
置いてあるものはたった1つ、氷で出来た男と思われる半身像だけだった。
ペタペタと触るが手が冷たくなるだけで何もなかった。
「寒い!早く出よう!」
「そうだね!」
何もない事が分かれば用はない。俺たちは我先にとドアへ戻った。
ドアから出た元の部屋はとても暖かく感じた。
次にさっきとは中央の階段を挟んで反対側の扉に向かった。
この扉もさっきと同じ鉄の様な扉で手すりが付いている。
もう、嫌な予感しかしない……
「行くぞ…」
扉を思いっきり引き開けその先に見えた白銀の氷の世界を目にし俺は思いっきり扉を閉めた。
「つぎ!行くぞ!」
「えぇ!?入ってないのに!?」
「どうせ何も無いさ!!次だ!次!」
そして俺たちは入り口から左側の一階最後のドアの前にいた。
ドアには内側から掛けられる鍵が付いていて中からしか開けられない様だが、ドアノブに掛けられた『入室可』の三文字を信じ俺はドアを開けた。
中はめちゃくちゃ広く左手の壁には洗面台が5つ並び中央に縦長のベンチが2つ並び右手の壁側には縦長のロッカーが10個並んでいた。
「更衣室?」
「みたいだね。」
なぜにこんな所に更衣室が…
俺は思ったが、此処は異世界。俺の常識が当てはまるわけでは無いのだ。そうだ、こんな所に更衣室は普通なんだ!
「なんで、こんなとこに更衣室が?」
「知らないわよ!魔族の考える事なんて!」
どうやら、この世界でも流石にこんな所に更衣室は設置しない様だった。じゃあ、魔族の独特な何かかな?
それとも何かあるとか?
部屋の隅まで調べてみたがやはり地下に行く通路や隠し扉も無く残るは10個のロッカーだけだった。
「開けるぞー」
俺はロッカーの扉を開いた。中に入っていたのは…
「メイド服?」
「メイド服だね。」
中に掛けられていたのはメイド服だけだった。
「そっちは何が入ってる?」
「ここもメイド服よ。」
「……此処も」
結局、10個のうち9個見たが全部、メイド服だけ掛けられていた。念の為、最後の1つも開けることにした。
「何も無いわよ、どうせメイド服だけよ。」
「だろうな。」
そう言って俺はロッカーを開けた。しかし、其処にはメイド服は無かった。と言うか、
「何も無いな…」
「本当ね、予備のロッカーかしら?」
「そんなとこじゃないかな?」
部屋から出て俺たちは少し話し合いをした。
「どうする?何も無いけど…」
「もう!面倒だわ!穴掘って地下に行きましょう!」
「それこそ、面倒な。」
意見が全く纏まらず俺たちは5分ほど過ごした。
「……二階…」
「ん?」
今までずっと黙っていたリンが口を開いた。
「……二階に気配。とても、大きな。多分、『吸血姫』。」
「……いつから気づいてたの?」
「入った時から、ずっと。」
「そうなんだ…」
うん、リン。そう言うの早めに言おうね?俺たちのさっきの労力は一体……
「リン!そう言うのは早く言いなさいよね!」
ご立腹なリーリャさんがリンに半ギレでそう言った。
「…みんな、気付いてると思ってた。」
「…………」
リンよ。其処まで俺たちは魔力の気配察知に優れていないのだぞ……
数メートルなら分かるが、二階でしかも部屋の中とか、全く分からないよ。
気を取り直し俺たちは中央の階段を上った。
階段を少し上がるとそこに二手に別れる広い踊り場があり、中心によく分からないが多分鳥の石像が何故かおかれていた。
「変なの……」
「早く上にあがりましょ」
「…………」
何の気も止めず俺たちは向かって右側の階段で二階に上がった。
二階は中央に大きな扉が1つと一階の物置部屋と更衣室のちょうど上に扉が1つずつ合計3つの扉が設置されていた。
やはり、『吸血姫』が居るのは中央の大きな扉一択だな。
恐らく三人とも同じ考えで特に何も言わず自然と中央の扉へと足が動いていた。
「準備はいいな?」
「ええ」
「うん。」
「……」
三人ともそれぞれ反応しリンだけは余所見していたが俺は扉に手を掛けた。
ドクドクと心臓の動きが速くなる音が聞こえる気がする。
俺は覚悟を決め扉を思いっきり押しあけ中に入った。
真剣を抜き声を上げた。
「俺は勇者ナガト!!『吸血姫』イーナ!お前を倒しに来た!!」
名乗りを上げ中を見渡した。大聖堂の様な落ち着いた雰囲気で紅い絨毯が真っ直ぐ敷かれその先には一段程上がった踊り場に黒い椅子がポツンと置かれていた。
「あれ?」
「誰もいない?」
上や下左右を全て見渡し魔力感知も発動するが何も反応しない。
ツンツン、と背中を突然突っつかれ振り返るとリンが二階の右側のドアを指差して
「……『吸血姫』はあっち…」
「「「…………」」」
リンよ。そう言うのは早く言ってくれ。何だ、あれは完全に俺、馬鹿じゃないか……何が「お前を倒しに来た!」だ…誰もいないじゃ無いか……
ちょっと萎えたぞ俺は…
気を取り直してはないがリンが指差した右側のドアの前に来た。今度は魔力感知をしずにもドアの向こうから巨大な魔力をここでも感じた。
「みんな準備はいいな。」
三人ともコクリと頷くのを確認すると俺はゆっくりとドアを開け中に入った。
中は真っ暗でかろうじて黒いベットの様なものが見えた。
「なんじゃ?スペラか?飯の時間はまだではないかの?」
少し幼い様な声と共にベットの中から細い腕がにゅっと現れ魔力を少し放出した瞬間天井のシャンデリアが明るく灯り部屋の全体図が見えた。
だだっ広い部屋に黒いキングサイズのベットが中央に置かれ奥に黒いカーテンが二つ、右手の壁にも黒いカーテンが二つ。家具はベットのただ一つだった。
「スペラ?」
布団の間から現れたのは艶のある長い黒髪を垂らした綺麗な女だった。




