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不死身の神官〜色々平均以下の俺が転生して不死身になった〜  作者: ほねつき
ーヨールパル大陸ー 魔族領進撃編(勇者視点)
72/252

ー第8話ー 『喰吸血鬼』


「……」


俺たちは無言で武器を抜きタリウスと俺で前衛、リンとリーリャが後衛で位置取りをとった。


ベットから顔を出す黒髪の女と俺たちに無言で魔力がぶつかり合う。


「…………」


ゆっくりと息を吐き緊張する体をリフレッシュする。


「……なんじゃお主ら、メイドだったら足りておるのだが…もしかして、魔王軍に入隊したいと申す者たちか?困るのぉ…妾はそう言うのは全てスペラに任せておるのじゃ……」


眠そうに目を擦りベットから現れた女は180はあるだろう長身で黒いワンピースを身に纏っていた。

胸元から見える谷間に眼が行ってしまった。腹周りはくびれがあり足もスラッと細く、モデル体型の女だ。

程よく伸びた長い黒髪に整った顔立ち、どことなく色気が極めきたつ。これが、『吸血姫』なのか?サキュバスかそう言うのにしか見えないのだが、俺が童貞だからか?俺が童貞だからそんな風に見えるのか!?


どこにもぶつけようの無い謎の怒りが湧いてきた。


「貴方が、『吸血姫』エルナーヴァ・イーナ・ラーマプリンチームで良いですか?」


落ち着いたタリウスが俺の代わりに女に聞いた。


「……ふむ、その名で聞くという事はお主らは人族じゃな。しかも、この様な辺境に現れるということ、つまり噂の『勇者』のパーティー。そして、そこの膨大な魔力を抱えるお主、お主が『勇者』じゃろ。」


女は真っ直ぐ俺に指を指した。そうだ、此処で名乗ろう。俺は童貞どうこうの雑念を振り払い名乗り出た。


「そうだ!俺が「お主ではない!その後ろじゃ!お主が『勇者』じゃろう!」


俺は振り返ると其処にはリンが立っていた。


「……ちが「そう!お主が『勇者』じゃ!その莫大な魔力、敵を前にしても冷静を保ち続けるお主が『勇者』じゃな!」


何故だ!何故、俺に話させてくれない!


「『勇者』!お主の名はなんじゃ!」


「……私はリン。『勇者』では「そうか!『勇者』リンよ!良くぞ此処まで参った!妾の名はイーナ!ファランド・イーナ・ドワフール!偉大なる『魔王』ファランド・グリム・ドワフールの伴侶である!」


元々豊満な胸を張り更に胸を強調する様に踏ん反り返る。なに、魔王と結婚してるの?仮にも『魔将』の一角なのに?え?それって良いの?大体、なんで夫婦なら一緒に居ないんだよ!いや、居ても困るけどさ!


「伴侶ってなに?」


「……妻ってことよ…」


タリウス…雰囲気考えて…


「ククク…お主らその様子じゃと妾を討伐しに来た、そんなところじゃろう?」


「……そう。」


リンが素っ気なく答える。

『吸血姫』イーナはクツクツと笑い魔力を放出した。

部屋の緊張し張り詰めた空気が一瞬消えた。


ふと気づいた時には其処は俺たちが『寝永姫城』に入った入り口の前にいた。


「…さすがに、5人を転移とは骨が折れるのう…」


背後から声が聞こえ振り返ると木の枝に座ったイーナが髪を撫でながら其処にいた


反射的に真剣を抜きイーナに向ける。


俺が真剣を抜いた途端イーナの視線がこちらに向いた。


「……そのスキル…『真剣』か、真剣を扱えるのは『勇者』と聞いておったが…ん?」


イーナが突然、手を顎に当て何か考える仕草を見せた。

そして、何か思いついた様に肩をプルプル震わせ俺にとって指をさしてきた。


「……ま、まさか、お主が『勇者』なのか?」


「そうだ。俺が『勇者』ナガトだ。」


「で、でわ…その、リンとやらは一体何者じゃ…」


「私は『賢者』。」


「け、『賢者』じゃと!!」


イーナが顔を抑え驚く。

次の瞬間黒い魔力の球が飛んできた。

咄嗟に真剣で相殺し全員に散開するよう指示する。

見上げるとイーナが立ち上がりワナワナと顔を赤くしていた。


「おのれぃ…ふざけるな…騙したなこのちんちくりん共っ!!」


……は?


「この妾にとんだ恥をかかせたな!この妾を…この妾をッ!」


手で木に八つ当たりする様にイーナが木を叩いた瞬間その辺りからバキリとへし折れ、すくすくと育っていただろう木が無残に折れた。


「待て待て!お前が勝手に解釈したんだろっ!」


「確かにそうかも知れん、だが、妾に恥をかかせたのは事実、絶対に許さん。」


ブワッと密度の濃い魔力が放出された。

何か、来る!!


「破滅魔法、『ダークニードル』!」


足元から魔力が動き咄嗟に地面から突き出たものを、飛び上がり回避する。

魔力によって動かされた地面が槍の先の様な形に変わり地面から襲い掛かる。


「……聖神魔法『氷の宴アイスバンケット』。」


今も形を変え続ける地面を氷が覆い動きを封じられた。

その瞬間、イーナに動揺が走りその隙を狙いタリウスが剣を抜いた。


雷を纏ったその剣がイーナを襲いイーナは咄嗟に避けるも左腕に擦り傷を与えた。


「ッ!」


イーナから紫に近い黒の魔力の刃が無数に放たれタリウスから距離をとった。


「雷を纏った剣……しかも、魔剣とは…『勇者』パーティーとは些かズルいの…だが、」


その瞬間背後に違和感を感じ躱した。振り返った時には既に俺の立っていた場所に短剣が突き刺さっていた。


「これを避けるのか…頼れる部下達は定休だし…妾も運がないのぅ…」


え?定休?

前転して短剣を避ける。


「…チッ、避けたか。」


しまった、隙を突かれた。

しかし、地面に刺さった短剣からは未だにイーナの魔力が感じる。


「ナガトッ!それは罠よ!!」


「その通り!『爆』!」


短剣が光り砕け爆発した。


「うがっ!」


顔を庇った右手に短剣の破片が刺さった。直ぐに抜きとり溢れる血を止血する。


「『ヒール』」


直ぐにリンから回復魔法が飛んで傷を直してくれた。

その間にリーリャがイーナを引きつけレイピアで何度も魔力の球を壊している。


タリウスが魔力を練り全身に雷が纏いパチパチと音を立て始めた。


イーナが跳躍しその着地点を予測しタリウスは抜刀と共にその雷を放出した。


「なにっ!?」


雷に触れたイーナは身体が雷によって動きを封じられた。


「今だっ!『真剣・大光剣』!!」

「聖神魔法『サンダーブレイク』」

「光よッ!いけっ!」


俺は光の大剣を抜きイーナに向け投合しリンは雷を帯びたものに対し攻撃力が上がる雷の魔法、リーリャはよく分からないが光属性のビームを放った。


大剣がイーナに刺さりよろめくその瞬間に雷と光が襲い大爆発を起こした。木々が吹き飛び土が舞いイーナが確認出来なくなった。


手応えはあったが、警戒は解かない。新たに真剣を抜きイーナのいた場所に剣を向ける。



「…ククク…面白い、実に面白いぞ。」


ゆっくりと煙の中から現れたイーナは髪が汚れ腹には大剣が突き刺さったままだった。

ゆっくりと大剣を掴み、自らの腹から抜きとり捨てた。

光の大剣は魔力を失いその瞬間消失する。

すると突然イーナは口を開き人と違い犬歯が長いその歯を見せ自らの腕にかぶり付いた、ポタポタと鮮血が落ち次の瞬間イーナがその肉を引きちぎった


ゴキュリと吞み込み口から垂れた鮮血を拭った。


「…フフッ…驚いたであろう?妾は吸血鬼ヴァンパイア族の変異種、喰吸血鬼グランヴァイア。血肉を喰らい己の糧にする存在じゃ!」


イーナから先程の魔力とは全く別の魔力が放出されその力で凍っていた地面が砕け地割れの様になり俺たちに襲いかかる。


魔将軍の威圧ジェネラルフォース!」


地割れに油断した俺たちに威圧の波動が襲い身体が震え動けなくなった。

イーナの魔力が爆発的に上がり上空から魔力の球が俺たちの中心に落下した。


地面にぶつかった瞬間その球は大爆発を起こし無防備な俺たちを襲った……


様に見せかけた。


リンによる予め掛けられていた強制転移の魔法によって俺たちは爆発から逃れることに成功した。


「……躱したのか!?」


「転移魔法を使えるのはお前だけじゃ無いんだぜ!」


そう高らかに宣言する。使ったのは俺じゃないけどね。


「さあ、お前ら…」


肩の力を抜き緊張を解す俺の合図と共に全員、魔力を練り溜め込む。

俺は烈火の炎を纏った真剣・炎帝を抜き魔力を与え更に硬度を上げ構える。


タリウスは魔天を使い雷の剣に変化させる。その威力は普段とは段違いの魔力を取り込んだ雷で剣の周りから白い小さな稲妻がパチパチと音を立てる。


リーリャは魔法陣で身体の強化と属性の強化を行い


リンは杖を握り目を瞑り俺たちとは桁が違い過ぎる莫大な魔力を一気に練り上げていった。



全員の準備を確認し俺は地を蹴りイーナへと距離を詰め剣を振り下ろした。

硬化した腕で剣を防がれたが俺たちは止まらない。



「行くぞっ!!」




「「「おぉ!!」」」




俺たちと『吸血姫』の闘いが始まった。

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