ー第1話ー 『叩響大猩々』
木々の僅かに差し込む光が周囲を明るくしふわりとした優しい風が枝を揺らし此処が敵の領地である事を忘れてしまいそうになる。
自然って良いね〜前世だとこんな生き生きと自然に任せて生きてる森は初めて見たな。
前世だと植物管理法とか言ったけな、木や花、植物を伐採するも育てるのも増やすも減らすも全部がコンピュータによって管理された農園見たいなものだったもんな〜
「警戒するほど危険な森ではない様な感じだね?」
周囲を警戒するなかタリウスが肩の力を抜いて声を出した。
「馬鹿なの?あなたね、魔族領なのよ?槍が降ってくるかもしれないのよ?」
んな訳あるか。うっかりツッコンでしまいそうだったが二人の邪魔はしないでおこう、ったく、タリウスは鈍感だな、絶対、リーリャに好かれてるよ。俺だったらすぐ気付くね。あーおもしろ顔真っ赤にしちゃて〜
あらあら、リーリャさんおっとめ〜
仲良く痴話喧嘩するタリウスとリーリャをほっといて俺は探査魔法で周囲を警戒する
昨日のゴブリンの奇襲以来魔物と一切出会わない。
何でだろうな、何かが魔物を間引いているのか、それとも守護者的な魔物が縄張りでも張ってるとかかな?
そんな事を考えていると探査魔法が何かに引っかかった。感知魔法に切り替えそれが何なのか確認する。
「ナガト様、前方46メートルに巨大な魔力と微量の魔力が同時に感じます。」
「うん、そうみたいだね。」
距離とかはわからなかったけど小さいのと大きい魔力は感知できた。
「タリウスと俺は前で確認する。リーリャとリンは後方の警戒を。」
「了解」
「わかったわ」
「行くぞ、タリウス!」
「ああ」
俺とタリウスは走り木々の合間を縫ってその魔力の方へ向かった。
「うわっ、猿!?」
「違うよナガト!アレは…」
黒い毛並みに赤い鬣体長3メートルはあるだろう大猿。いや、それにしては耳がやけにデカイ、象みたいに耳が大きい。オマケに尻尾が三本も!何だあいつは!バケモンじゃないか!!
「叩響大猩々だ…」
「ビートコング?」
「大きな耳に大猿の様な生き物、間違いないよ!」
タリウスが説明していながらも真なる剣って剣を構えている。
「あれ?」
「人?」
大猿…ビートコングの右手の間から何か人の手の様なものが出ていた。
その手は間違いなく僅かだが動いていた。
「グ?」
ビートコングと目が合った。
その瞬間ビートコングが大きな両耳をパタパタ動かし自らの顔に当てた。
「まずい!ナガト!耳を抑えろっ!!」
『ゴキャァァアァ!!!!!!』
咄嗟に塞いだ耳をすり抜ける様にビートコングの咆哮が耳に響く。
「奴の咆哮をマトモに聞いてはダメだよ!マトモに聞いたら気絶してしまう!前動作がさっきの耳をパタパタ動かす事だ!気をつけて!ビートコングはAランク上位の魔物だから!」
「貴重な情報ありがとう!行くぞタリウス!真剣・鈍鬼化!」
紅く輝く刀が現れ俺の力を高めてくれる。スピードが遅くなる代わりパワーが上がる真剣・鈍鬼化の能力で俺は腕に力を溜めながらゆっくりとビートコングの間合いを詰めていく。
ビートコングはそれをすきとみたのか再び耳をパタパタ動かした。だが、俺は歩みを止めない。信頼できる奴がいるからな!
「ああ!魔天・雷光」
雷を纏ったタリウスが稲妻の如く駆けビートコングとの間合いを詰めその耳を削いだ。
「ゴガァ!!」
ビートコングがモーションも止め痛みに苦しんでいた。
「はあぁぁぁぁぁ!!!」
真剣を振りかぶり踏み込みとともにその一撃を放った。
「!!!?」
真剣はビートコングの肩を切り裂き腹を貫いた。
ビートコングは悲鳴をあげる事なく斜めに身体が二つに割れた。
巨体が倒れ地面が揺れ木が揺れる。
その衝撃でビートコングの手の中にいた人?が離れたところで倒れていた。
「君?大丈夫?」
タリウスが声を掛け回復魔法を唱えている。タリウスは何故か剣士なのに回復魔法が使えるかなり異端な剣士だ。何で使えるのかと聞いた事があったが、『ディラ兄』に教えてもらったとそれ以外は教えてくれなかった。
ディラって言うと王都シューラ防衛の時にいたあの二人組の仮面の方だ。
タリウスは話してくれないがいつか話してくれるといいんだがな……
閑話休題
その子は背が俺の半分ほどの小さな背丈の女の子で肌は薄茶の焼けた肌で茶色の髪は短く切られて男の娘、みたいな姿だった。
女の子と分かったのはその小山程度の小さな胸だけで判断した。
「ドワーフの様ですね。」
合流したリンがそう言った。
ドワーフって言ったら手先が器用で鍛冶の達人でって感じの種族だったけな?
「……うぅ…ん」
「目が覚めたみたいね」
ドワーフの娘が目を覚ましキョロキョロと辺りを見渡し俺と目が合った。
「お前らがオレを助けてくれたのか?」
なんだと……
お肌こんがりからして「わたし」は無いだろうと思っていたがまさか、「オレ」だと……ボクっ娘では無く「オレ」予想を飛び越えて行ったわ…
「ああ、ビートコングに捕まってたみたいだから」
「はっ!そうだっ!ビートコングはっ!?お前ら倒したのか!?」
突然思い出したかの様に興奮し始めたので真っ二つにしたビートコングを指差すと先程まで気絶していた子とは思えない程、軽快に移動しビートコングを眺めていた。
「ほうほう…かなり酷く真っ二つにされているが、重要な部分は綺麗に残っているな…」
「お…おい、なにを…」
「ん?あー!しまった!オレの名前はコルガ、クロム村生まれだぜ!見ての通り、ドワーフだ!」
「そうか宜しく、俺はナガト、カミカド・ナガトだ。それで、こっちがタリウス、それで、そこの小ちゃい子がリンで、そこの金髪がリーリャだ。」
全員の挨拶が終わったところで俺は話を切り出した。
「ところで、コルガ、君は何故ビートコングに捕まってたんだい?」
「それは……」
コルガは少し考えた後ゆっくりと事情を話してくれた。
「実は最近、村に蝙蝠の大群が村に大量発生して…倒しても倒してもキリが無くて……だから、ビートコングの鳴き袋を手に入れて蝙蝠を追い払おうとしたんだ…」
「だけど、見つけたのはいいけど倒せず逆に倒されたって訳か。」
「そうなんだよ」
そりゃあ、そうだ、ビートコングはAランク上位だもん、ドワーフっても一般…まして子供が倒せるわけが無い。
「それで…その、ビートコングの素材を譲ってくれないか?」
「良いぞ」
「いいの!?ありがとな!」
はしゃぎ喜ぶコルガ。
「良いのか?ナガト」
「良いんだよ、別に持ってても使わないだろ?」
「そうなんだが……」
「なあ!お前ら!良かったら村に来ないか?オレが礼をしてやるよ!」
「ほんとか?じゃあ、お言葉に甘えるぜ」
「お…おい…」
タリウスが何か心配している様だが心配は無いだろう。
「おい…リン、リーリャ良いのか?」
「良いんじゃ無い?どうせ暇だったし!それに!ドワーフの作る武器ってとっても丈夫なのよ?」
損は無いでしょといつも通りのリーリャ
「問題ありません、予定が少し遅れる程度ですし、ドワーフの技術は我々にとっても戦力になりますし、それに……」
『それに、何かあっても神級魔法で潰せばいいですし』と怖ろしい事は聞かなかったことにする。
そして、俺たち一行はタリウスただ一人の反対を押し切りコルガの住んでるクロム村に押しかけることとなった。




