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不死身の神官〜色々平均以下の俺が転生して不死身になった〜  作者: ほねつき
〜第3章〜 ーリムサン大陸ー 人魔大戦編
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ー第5話ー 『ロトムス防衛戦』


そこはただ、広いだけの様にも見える謁見の間。壁には恐らく値が付けられないほど高価な美術品が飾られ美術館にも見えなくはない。

その中心に地面より数段高く作られた踊り場の様な所に金の装飾の施された玉座に深く腰掛け威厳ある風格の男。


現ロトムス王国国王。


名前は知らない。その名を知っている者は王家の中でも一握りの人間しか知らないらしい。一国の王が名前を隠してバレないものなのかと思うがバレていないのはそういう事だろうな。


「勇者ナガトよ…」


その王が沈黙を破り低い声が響く。

俺は王の言葉に耳を傾ける。


「シューラ王国の件、大儀であった。圧倒的であったそうだな。」


「はい、ありがとうございます。」


「何でも、『賢者』を仲間に入れたそうだの。」


賢者…リンちゃんの事か。流石に情報が速いな。


「はい、左様にございます。名はリン・ペルティルと申します。」


リンちゃんとタリウスはこの王都ロトムスで観光をしている。王宮には王家と伯爵以上の貴族とその騎士、それと例外で『勇者』である俺しか王宮へ入る事はできない。


例え勇者の仲間であっても貴族でも無ければ入れないだとか…

まぁ、警備の関係だと思うけどね。


「勇者よ、貴殿の功績を讃えなにか「ご報告致します!!」


「貴様!陛下の御前であるぞ!正統な手順を踏んでからだな…」


突然乱入してきた騎士に国王の近衛隊の騎士長が怒鳴る


「良い。何か重大な事の様だ。申してみよ。」


「は、申し訳ありません!観測隊の報告で王都より30キロ南東に魔族の大軍隊を発見したそうです!」


「何?種族は?」


「はっ、観測しただけで少なくとも獣人が大半を占め魔人が僅かにいる様です。」


「成る程…」


王は顎を撫でる仕草を見せ此方をチラリと見た。そして威厳を持った声で言い放った。


「勇者ナガトよ今こそ我らロトムス王国を守るときがきた様だ。」


黙って耳を傾ける


「勇者は第一騎士団を連れ魔族の迎撃に、第二、第三騎士団はその援護に回れ。第四以下は近隣住民の避難指示、周辺の警護に当たらせろ…近衛隊は各部署に通達せよ。」


「「はっ!」」


王の近くを守っていた騎士二人が駆け足で謁見の間を出て行く。

そのあと慌てて入って来た男も一声掛け退出した。


「勇者よ…」


王が優しく声を掛けた。


「はっ」


「騎士団は南門へ配備しておく。騎士団長のバルカスという男が指揮をしてくれるはずだ。先ほどは指示せよと申したが気にしなくても良い。騎士団の士気が上がれば少しは楽になろう。」


「はっ」


「獣人とは戦った事はあったかの?」


「いえ…」


「奴らは強靭な肉体を持つ脳筋ばかりである、奴らは魔法は使えん代わりに膂力だけが発達しておる、それを踏まえ戦うことだな。」


「はっ、ありがとうございます。では、行って参ります。」


直ぐに体を反転させ急ぎ足で謁見の間を出た。


獣人…さて、どう闘うかな…


まだ見ぬ敵を想像し迫りくる敵にどう対処するか思案しながら俺は王城を後にした。




『思念』でタリウスとリンちゃんを集め敵が近付いている事を伝えた。

3人で誰も居なくなった道の中心で魔族にどう対処するか話し合っているとゆっくり歩いてくる魔法剣士がいた。


つばが少し長い赤く白羽が付いた帽子を被り赤いコートを身に付け腰に細く煌めくレイピアをぶら下げた金髪の美女が此方に歩き立ち止まった。


「貴方達が勇者とその仲間ね?」


その女は透き通る様な声で此方に問いかけた。

この女性は何者なのか、なんで、避難命令が有るのに居るのか。いや、冒険者は避難指示が出ていないか…


では冒険者?


いや、魔法剣士の冒険者なんて……誰かいたかもしれないな……


「そうですが、貴方は?」


「これは失礼したわ」


魔法剣士は右手を腹の辺りに当て軽く頭を下げた。この一連の所作は何度も見た事がある。

貴族、それもかなり上の家の挨拶だ。貴族は階級が上がるごとに挨拶が軽くなる。これはかなり軽い挨拶だ。


「私の名はリーリャ。リーリャ・スペティア・アルマータ、アルマータ家の一人娘よ、魔法剣士をやっているわ。」


アルマータ家。

その名を聞いて一瞬3人とも凍りついた。

アルマータ家とはロトムス王国内で一の権力を持った一族で貴族の中でも唯一王への反対権を持っているヤバい一族である。その一人娘が今目の前にいる。マズい、非常にマズい、此処で彼女を怪我させようものならここの全員の首が飛んでも可笑しくない気がする……


「これは失礼しました、私はリン・ペルティル。『賢者』と呼ばれております。しかし、アルマータ家の娘様が護衛もつけず何故この様な危険な場所へ?」


真っ先に再起動したリンちゃんが問いかける。

流石リンちゃん伊達に『賢者』やってないね!

心の中で称賛しつつ俺はリーリャ様の言葉に耳を傾ける。


「リーリャでいいわ、それと警護は良いわ、堅苦しいのは嫌いなの。そうね、貴方の質問に答えるなら私はこの国を守るため、そして魔族に復讐をする為ってところね」


「魔族に復讐?」


俺も疑問に思った事をタリウスが聞いた


「そうよ。幼い頃にね、ちょっとあったのよ…」


そう言って暗い顔になったリーリャを慌てて宥めたリンちゃん。


「そんな事はどうでも良いわ、私も一緒に戦うわ。一緒に連れて行きなさい。」


困る!ハッキリとは言えないのがもどかしい。

大体そんな理由で一国の権力者の娘を戦場に連れて入れるわけがない。


「行っておくけど私、Aランク冒険者で腕は確かよ。」


え?


ちょっと言ってる事が分かんない。

待てよ、何で権力者の娘が冒険者やってんの?頭沸いてるの?馬鹿なの?流石にそれはないだろ……


「これがその証明書よ、それに私、血を見ても平気よ?」


その冒険者カードは本物でハッキリとAランク冒険者と明記されしかもこの王都ロトムス支部発行のしっかりとした冒険者カードだった……


「怪我しても何も言われない?」


一番心配なのはそこだ。万が一、怪我をして文句でも言われたら権力も何もない勇者なんかでは経済面で殺られてしまう…飯抜きの勇者とかたまったもんじゃないね

一応そこの確認は重要だ


「当たり前じゃない、馬鹿なの?」


馬鹿言われた…美女に馬鹿にされて喜ぶ人間では無いので素直に傷付く…

勇者でも精神攻撃は辛いよ…


「早く行かないの?魔族は其処まで来ているのでしょう?」


マイペース過ぎる貴族のお嬢様に俺たちは振り回され最後には仕方なく後を追った。


リーリャを追い南門に着いた俺たちは騎士団長のバルカスと顔を合わせた。

バルカスは銀色の鎧を身に付け兜を被っておりその顔は伺えない。


「第1騎士団は既に布陣が完成し只今警戒体制をとらせております。」


「ありがとうございます。騎士団の指揮は任せます。僕が前へ出ます。」


俺はバルカスに伝えた。

するとリーリャが偉そうな(実際偉いが)口でバルカスに指図する。


「私と勇者が陽動を行うから貴方達は第1騎士団の名に恥じない様に健闘する事ね。」


「そうさせてもらう。」


リーリャの罵倒に近い口調にも反応せず淡々と受け答えるバルカス。さらに畳み掛ける様にリンちゃんも言った。


「私が大魔法で敵を撹乱しますので、残りの始末をお願いします。」


「了解した。」


「タリウスはどうするんだ?」


「え?ああ、うん……」


また浮かない顔をする。シューラ防衛以来時たまこんな顔をタリウスはする。あの仮面の事も話してはくれないし…


少し考えたタリウスが口を開く。


「俺は良いや、王都の警護に入る。何か嫌な予感がするんだ…」


タリウスは何かを感じとる様な心がここに無い様に言った。タリウスも考えたい時はあるだろう…タリウス抜きでも何とかなるだろうし…いざとなれば奥の手・・・があるしな…


「そうか、わかった。じゃあ、タリウスは警備を頼む。」


「ああ、すまない。」


タリウスは申し訳なさそうに俺たちとは逆方向に歩いて行った。普段は腰に付けた木の棒を手に持って…




__________





「来ました。」


「みたいだな。」


かなり離れた位置に動物が人の形をした様な生き物、獣人の大群が広がる様に並ぶその中心には他の獣人より一回りもふた回りも大きな立派な鬣を持ったライオンの獣人が巨大なトマホークを肩に掛け他の獣人達よりも圧倒的存在感と威圧を周囲にはなっている。


「『鑑定』が抵抗レジスト。恐らくかなりの強者です。気をつけて下さい。」


リンちゃんの『鑑定』のスキルが抵抗レジストされたみたいだ。『賢者』の力ですら抵抗レジストするという事は『四大魔将』と同格、もしくはそれ以上という事になる。

かなり厳しい戦いになるかも知れない


するとライオン男は一人前を出て此方まで聞こえる程の馬鹿でかい声量で叫んだ


「俺は『獣王』!ズオウ・ド・ブフだ!勇者を出せ!俺様と一騎打ちで勝負だ!!」


『獣王』と聞き騎士達が騒つく。


「ズオウ・ド・ブフだと…?」

「あの百戦錬磨の?」

「いくら勇者様と言えど相手が少し悪いんじゃ無いのか?」





「『獣王』…『魔王』と肩を並べる獣の王。その称号を持つあのズオウは数々の戦場で一騎当千し『百戦錬磨』のズオウとも呼ばれる事があります。一騎打ちとなるとかなり危険かと…」


「だから何よ?どちらにせよやるしか無いのよ!」


リンちゃんの冷静な分析を全力で叩き折るお転婆娘のリーリャ。

確かにやるしか無いしかし相手の実力がまだよく分からないしかなり危険度が高いな…


やっぱり奥の手・・・を準備しておいた方が良いかも知れないな…



「どうした!?『勇者』は怖じ気て出てこないのか!?」


此方の事情が分からないズオウは散々に煽ってくる。

この口調からしてかなり自信が有るのだろう此方も、負ける訳には行かないからな。


「どうした?本当に怖じ気ずいているのなら楽に死なせて……」


俺は静かに騎士の間からゆっくりと前へ出て真剣を天に掲げ言い放った。


「俺が『勇者』カミカド・ナガトだ!!ズオウ!俺が相手になってやる!!」


「フハハハハ!!良いだろう!全軍!突撃!!」


「「「ウオォォォォ!!!!」」」


ズオウを先頭に獣人達が迫ってくる。

俺も真っ直ぐ剣を構えズオウを迎え撃つべく地をかけた。



勇者と獣王の戦いの火蓋が今、切って落とされたのだった____


遂に魔族と人族の本格的な戦いが始まりました。タリウスが意味深発言をして消えましたが果たして出番はあるのでしょうか?





主人公の空気感……

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