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不死身の神官〜色々平均以下の俺が転生して不死身になった〜  作者: ほねつき
〜第3章〜 ーリムサン大陸ー 人魔大戦編
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ー第3話ー 『上には上が居る。ただ…貴方だけは上であって欲しくなかった。』

現サン王国国王ゴア・キンダム・サンは弟、第二国王バズズ・キンダム・サンの全くやる気の無い自堕落な性格とは真逆に叡智に優れ国民から絶対的な信頼を得ていた。

しかし、その容貌は余りにも衰え白髪が隠れる事もせずその姿を表し常に付き人が居なくては一人でも歩けないほど、衰えていた。


ゴアは自らの寿命を薄々感じ後継者を決めんとする頃、事件は起こった。


人族の宿敵、魔王軍の大陸進行である。魔族との国境線から遠く離れた王都サンに魔族が進行して来るなど前代未聞だった。正しく意表を突かれたものだった。


しかし、ゴアは全ての事態に備え前々から魔王軍に対抗する為、聖騎士団の整備を怠りはしなかった。

さらには王都の自警団の開設。

これは近年、王都サンよりあの『勇者』の仲間となった『雷剣』のタウリスと同じ学を受けた『天才』と呼ばれる子供達8人を中心に結成しようとされていた計画。

それは今回の魔王軍進行により実現する事は無かったが、きっとその子供達はこの王都を守ってくれるだろうと確実性のない希望・・という信頼を抱いていた。



ゴアは自らの玉座に身を任せるように腰掛け部下からの報を待っていた。玉座の前には腕のきく聖騎士が四人、ゴアの隣に国王補佐役の第一王子ゼリド・プリルス・サンがまだ慣れないその銀の剣を片手に立っていた。


「ん?」


一人の聖騎士が静まり返る玉座の間で声を漏らした。


「どうした?」


部下の異変に気づいた四人の聖騎士の中で最も格の高い『聖騎士団長』の位を持つ男が声を掛けた。


「いえ…ただ、そこから……」


部下の指差した方向。何の変化もないいつも通りの歴代国王の像が並べられているそんな場所に変化は特に……


「一体なんだ!?」


「なんじゃ!何事じゃ!」


突如、像の前に召喚魔法を示す紫の魔法陣が複数現れその向こうから強大な魔力が近づいてくるのを感じた。


「敵襲!ジークとハルは国王と王子をお守りしろ!!俺とビビィで敵を殲滅する!!」


「「「はっ!」」」


聖騎士達は配列を改め召喚魔法から出てくる魔物に備え剣を構えた。

すると複数の魔法陣が突然混ざり合い直径8メートルは有ろう、魔法陣が完成する。

そこから姿を現した強大な黒い骸骨……


「………」


人の身長など優に超えるその巨体、紅くも見える漆黒のその骨は一本一本が人の体を同じほどの太さに肋骨に当たる部位に紅く輝く水晶玉の様なものが一つ浮かんでいる。


スケルトン種は産まれた時は白いそれこそ人体模型の様な骸骨でその種がほぼ全てのスケルトン種を占めている。

しかし、これは全ての魔物に言える事だが魔物は生物を多く狩る事で強さを上げる。


其奴はその魔物の中でも上位に入る存在だろう。

なんといってもその圧倒的威圧感、そして魔力。只のスケルトンなど塵にも満たない程の圧倒的魔力の多さ恐らくその巨体が紅く黒いのは数え切れないほどの生物を、人間を殺してきた返り血が固まる事によって染まったものだろう…


超越したオーバー骸骨兵スケルトン


其奴はそう呼ばれている。

普段、魔物を狩る冒険者ですら此奴は最低・・Aランクの冒険者が30人揃わなければ討伐に向かえない『厄災』である。

そんな奴が今目の前にしかも王都サン、それも王の間に現れたのである。


そんな筈がない・・・・・・・


正に前代未聞、全くありえない事だった。この王の間、いやこの王族の住まうこの城には有らゆる魔法を弾く帝級の魔防壁が何重にも張られ守られているのである。

それが破られ魔法が発動したのならばそれこそその魔法が世界を終わらせる程の神級の大魔法でしかない。

それ程あり得ないのだ。


いや、そもそも有り得ないはずだが魔防壁が破られたのなら避難警告の警報が自動的になる筈だ。

それが無い、いや、それごと破壊されたのかもしれないが…


数少ない望みを賭けるなら恐らく城の内部、つまり裏切り者によって発動された可能性が高い。


疑いたくは無いがあの陰気臭い王国魔術師達か現第二国王バズズ様率いる六神教の教会の者達の可能性も否定は出来ない。


本来その場で考えなくとも良い事を考えながら俺は剣をその『厄災』の魔物に剣を向けた。







「先方!『光の一閃』!」


溜めた魔力を光に変え剣振り抜き光属性の斬撃を飛ばす。

魔物には弱点の属性が其々存在するが全ての魔物に言える事は『光属性』に弱いというところだ。


「何!!」


その光属性の魔法は俺は使える。有りっ丈の魔力を注ぎその一撃に任せ放った斬撃は黒い骸骨のその腕によっていとも容易く防がれ消滅してしまった。


成る程。


SSランクの魔物というのも納得だ。

これは圧倒的な防御力だ。


「………!」


その時スケルトンが動いた。

その巨体らしからぬ素早い動きで俺の目の前に姿を現し拳をうち放った。

その巨大な拳を俺は捉える事が出来ずまるで手毬の様に床に弾み魔法で強化された壁に背中を打ち受けた。


こんな……


こんな……化物を勇者はあっさり倒したのか…勇者も大概、化物だな…


上には上がいるといつも思い知らされるがこんな形で思ひ知りたくは無かったな…


骨が5、6本やられたか…


王国最高の腕のきく鍛冶職人によって作られたこの聖騎士専用の鎧をたったの一撃で凹ましてしまうとはね…


血反吐を吐き捨て剣を支えに立ち上がる。


こんなね…魔物相手にやられる位で…


「騎士団長を舐めんじゃネェェェ!!」


走る度全身が恐怖と痛みで悲鳴を上げるのを己の矜持のためだけでその巨大なスケルトンに立ち向かう。

先程体の支えにした剣を振り放つそれよりも早く黒い骸骨はその膂力かどうかは判断できない馬鹿力で再び俺を吹き飛ばす。


王には…王には…近付かせんぞ!

化物め!!騎士団長として、いや一人の王を守る騎士として!!


「ウオォォォォォ!!!!」


光属性が効かないのならッ!防御が効かないのならッ!!

核を潰すまでッ!!


黒いスケルトンが余所見をしている背後からその肋骨の中に紅く輝く水晶玉を狙い剣を突き刺した。


「!!!!!!!」


手応えが無い?

想像と違う格の硬さに呆気に取られ黒い巨体があっさりと崩れた。

まるで水風船でも破った感覚だった…

核を突き刺した瞬間、弾け四方に散らばった紅い小さな塊。


「え?」


思わず声が漏れた。


いや、そんな筈が無い…


いやいや

待て待て…さっきの防御力はどうした?どうもあっさりといや…核を突いただけでこうもあっさりと?確かに核は人で言う心臓の様なところだが今までの経験では硬さは絶対に合った筈…なんだ?この違和感は…


紅く小さな塊は一つ一つに大きな魔力を宿し今度は俺と同じ程の黒いスケルトンが何体も…


カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ………


頭蓋骨を震わせカタカタと揺れる骸骨の大群。不気味。


成る程、そういう事か…最初に大量の魔法陣が現れたのはこれが召喚されていたからだな…本来召喚される筈の此奴等が無理やり合わせて召喚された為にあんな核が脆かったのだな。あの巨体な核は此奴等のいくつもの核が合わさって出来たというところか…



待て…こんな数相手に勝てる訳が無いぞ!!


もう吹っ切れて身体の痛みが飛んでしまったわ!勝てる訳がないッ!!!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




パリッ!パリッ!パリッ!







バリッバリッバリッ!






カシュッ…






パクりパクりと菓子を頬張る巨大な丸い生物。


人間である。


だらしのないパジャマ姿にボサボサの金髪の頭。ベットの上で寝転がるその巨体生物はまるでベットが家とでも言わんばかりの転がりっぷりである。


「バズズ様!!避難をお願いします!!」


普段あまりその生物を気に掛けないメイドも今日ばかりは悲鳴交じりに警告する。

それもそうである、なんせ今現在魔族が攻めているのだから。戦えない者は逃げるしかないのである。


そのメイドもその生物も同じ部類に入ると思い一様、第二国王なので一声かけておく事にした様だった。

しかし、その国王は実に不快になる程の態度で応えた。


「嫌じゃ。我はこの神域ベットからは出んぞ。」


「その様な事を仰らずに!ここに居ては危険です!早く避難をっ!!」


「ここより安全な場所が他にあるか。どの道、我は死ぬ事はない。」


食い過ぎで喉詰まらせて死ぬんじゃないのか?とメイドは思ったが決して口にはしなかった。

メイドは迷った。一人で逃げるべきか、無理にでもこの国王デブを連れ地下の避難施設に逃げるか。メイドが選んだのはなんと後者だった。


「良いからバズズ様!早く行きま…!!」


突如、目の前に転がっていた丸い巨体の腕が目尻の横をすり抜けガシャンと何かを壊した。


ゆっくりと腕を戻すバズズの手には紅く輝く小さな水晶玉が握られている。

これは……!


恐る恐る振り返るとそこには天井に頭をぶつける巨大な黒い骸骨が力なく立っていた。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「騒ぐでない。既に死んでおる。」


冷静に答えるその王に呆気に取られた。まさか、今まで一度も動いた所を見た事無かった。きっと重いんだろうそんな偏見、いや、確実性を持っていたデブの男が目にも止まらぬ動きをしたのである。

なにが起きているのだ?


「はぁ……面倒くさいのぉ…メイドよ、其方は早う逃げると良い止まらずな、此処にも魔物が現れた様じゃ。」


「し、しかし…」


「知らんじゃろうが、我はこう見えてもかなり腕が効くからの。」


嘘つけ。きっと今の動きを見ていないものなら誰もが思うだろう…だけど、私は見てしまった。あの丸い。ただ、重いだけの肉の塊があんな尋常じゃない動きを見た後なら分かる、いやあんな動きは聖騎士団長でもきっと出来ないだろう。メイドはただ、頷くしか出来なかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「はぁ……面倒だの…」


部屋を慌てて出て行ったメイドを見送り我は魔力感知を発動させる。

異常な魔力を感知した場所。そこの場所を思い起こすとつい溜息が出てしまった。


「よりにも、王の間とはの…面倒臭い…」


魔力を練ると同時に移動先の軸を合わせる。失敗すると面倒じゃからな…面倒じゃが、ここはしっかりやらんとな…


「………今じゃ、『転移』」









「あー失敗じゃ、非常に面倒じゃわ…」


現れた場所は王の間の天井。我は重力に負け下にいる黒い骸骨共の真上に落下した。



バゴンッ!!



ザッと4体は仕留めたの。

スッと立ち上がり腰を伸ばす。

辺りを見回すと呆然とする騎士四人、いかんな、油断はダメじゃぞ。それと口を開けたまま動かない第一王子の………………忘れたが、かなりの美形が台無しじゃな。

そして手を顔に当て「馬鹿かお前は…」とぼそりと呟く兄者。聴こえておるぞ。

確かに馬鹿じゃな。


我の半分ほどしか無い身体の黒い小さなスケルトンを見下ろす。

実に小さな魔力じゃがこれ程居れば脅威じゃな。


「危険です!バズズ様!!」


叫ぶ騎士を横目に取り敢えず我は目の前のスケルトン8体を核ごと腕で粉砕してやった。





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