ー第11話ー 『二度目の性は勇者として』
勇者視点です。
俺の名前は神上長門17歳だ。
いつの日かたしか夜、真夜中の寝ている時だった。
耳を張り裂く様な爆音で俺は目が覚めた。
真夜中にも拘らずカーテンのしまった窓の向こうが紅く。真っ赤に光っていた。
慌てて窓を開け顔を出すと標高3776m日本一高い『富士山』と呼ばれたその山から火が噴き出ていたのだ。
もくもくと黒い煙が吹き出し稲妻が発生している。
再び噴火。
噴石が隣の家に直撃した。
隣の家から火の手が上がり近所はパニックに陥った。
俺も慌て未だに眠る家族を残し家を飛び出した。
走って。
走って。
富士山からより遠くへ逃げる様に走った。
しかし。
神様は俺に酷かった。
富士山は再び噴火すると巨大なマグマの塊をあちこちに飛ばした。
ネットで隕石に当たって死ぬ確率と言うものがあった。
確か確率は100億分の一。
要は100億回転生して一回当たる確率。
幸運。
とでも言うのだろうか?
俺はその隕石とも呼べるマグマの塊の下敷きになった。
気付くと女神とか言う神様に別の世界を助けてくれと言われた。
幸運。
ラッキーなんてレベルじゃない。
宝くじが当たるよりも幸運じゃないか?
人生をやり直せる。
それは僕にとっていや、きっと誰に取っても凄いことだと思う。
転生して目覚めると王国で俺は『勇者』として性を受けた。
真っ先に思った事は不便何もかもが手作業。魔法が有るが其処まで大した事はない。
何故か、魔法を扱う為の魔力の量には個人差があるからだ。
それにしても不便だった。
スマホもない。パソコンもない。テレビもない。本は有るが漫画の様なドキドキするものは無い。殆ど魔法の扱い方。俗に言う魔導書ばかりだ。
実に退屈だ。
移動手段は馬車で最初は凄い!とか考えていたけど車に比べたら鈍いのなんの。
それでも俺は良くあるチートいう奴で魔物とか言うファンタジーな生き物達を倒して行った。
数ヶ月もしてこの世界のことに慣れてき始めた頃、俺に仲間が出来た。
「『雷剣』のタリウス・カリアだ。宜しく頼む。」
俺と同い年の少年。タリウスは俺が転生する前から冒険者をやっていてAランクと言う冒険者の中でもトップクラスの強さを誇っているのだとか。
出会ったのは偶然。
ボルケーノドラゴンの討伐にギルドが志願者を集めていた時たまたま同じソロ冒険者という事で仲良くなった。
ボルケーノドラゴンを苦戦しながらも他の冒険者と共に倒した俺とタリウスは時のギルド長。名をストライトスにある提案を受けた。
「『勇者』ナガトさん、どうだろうこれから先どんな困難が待っているか分からん。其処でだそこの冒険者ギルドきっての期待のエース、『雷剣』タリウス・カリアとコンビを組んではどうだろうか?」
結果を言うと、俺はその話に乗った。この世界に来てからマトモに仲間と呼べる人は居なかった。
なんせ世界の希望の勇者である。声を掛ける人などそうそう居ない。
タリウスは俺が勇者とは知らなかったらしいが1人より2人の方が冒険は楽しいと快く返事をしてくれた。
コンビを組んで一年経とうとしていた頃。
魔族。人間の敵である種族が海を渡り攻めて来たのだ。
直ぐに王国からの指示で現場に向かった俺とタリウスは圧倒的な力の差を見せつけ魔族達を撃退した。
そんな日の数日後。
王都シューラで休息をとっているとシューラ国王ナナンド・キンダム・シューラからひとつの提案を受けた。
「どうだろう。勇者よ其方らの仲間に相応しい者がおるのだが…」
名をリン・ペルティルと言う。まだ幼い12歳で既に『賢者』の称号を持っているそうだ。
会ってみるとかなり背伸びをした女の子だった
「リン・ペルティルです。宜しくお願いします。得意な魔法は光と雷です。基本は全部、扱えます。」
その子は無表情で全く笑わない子だった。
シューラ国王陛下の御心を蹴るわけにはいかず仲間に引き入れた。
それからさらに数日後の昼間。
シューラ国王のひとつ星の宿屋に泊まっていた昼頃。
突然2発の花火の様な爆発音が起きた。
また2発とコレは確か…
「勇者様、魔物が出現した様です。」
リンちゃんが突然部屋のドアを開け無表情のままそう言った。
そうだった。2発は魔物の襲来の合図だった。
するとリンちゃんは何かを唱えるとこう言った。
「敵の数は数千。スケルトン種だと思われます。」
聞けば魔力感知の上位版の魔法らしい。魔力の種類で魔物を分ける事が出来るらしい。
早速、支度をする。
武器は要らない。
俺には『勇者』のスキル『真剣』があるこれは様々な種類の剣を召喚する事が出来るスキルだ。
「ナガト。準備できたか?」
準備満タンのタリウスが部屋に来た。
「ああ、大丈夫だ。行こう。」
魔物が現れた西門の手前で状況を聞いた。
「はい。只今、我々騎士団が西門前で陣を取りスケルトン集団を迎え撃つ準備をしております。距離は…」
色々聞いたので簡単に言うとスケルトンと言われる骸骨の魔物、BランクとAランクとSSランクのスケルトンの大軍が向かっているらしい。城壁の上では大砲の準備が完了して何時でも向かい撃てるそうだ。
「リンちゃん。」
「はい」
「ここから遠距離攻撃で強い魔法ってあるかな?」
「ええ、神級魔法の雷魔法『裁きの雷』が使えます。これならスケルトンに効果抜群ですし半数以上倒せると思います。」
「それで頼む。」
うひゃーそんな魔法使えるんだ。怒らせない様にしないとなぁ殺されちゃうよ。
リンちゃんが城壁の上まで浮遊魔法で登った。
30秒後、城壁の向こう側から轟音が轟いた。
門を出ると砂が舞い散り煙がモクモクと上がっていた。
騎士たちが目に見えるスケルトンと交戦していた。
「行くぞ。」
「おう。」
身体強化の魔法をかけ地をかける。タリウスが先行し俺は戦闘近くで立ち止まる。魔力を集めスケルトンを俺に気を向けさせる。
近くにカタカタと歩いてきた骸骨を正拳で粉砕した。
今回のスケルトンは異質だ。
何故ならこんな大軍が集まっていたら必ず王国連合は気付く筈だ。
つまり、突然現れたと考えたら誰か、恐らく魔族が故意に召喚したとみて良いだろう。
『勇者』のスキルには『逆探知』という『勇者』関係無いだろと突っ込みたくなるスキルがある文字道理、逆探知で魔力の元をたどるスキルである。
ただ、当たる確率は五分五分。全く信頼に欠けるスキルである。
兎も角、スキル発動。
反応は直ぐに出た。このスケルトンの大軍が現れたミラルの森を少し行った所に2人、反応があった。
間違いない。こちらの様子を伺っている。
恐らく、このスケルトン達を倒したら直ぐに逃げるだろう。そうなる前にどうにかして捕まえたい。
勇者のスキルを発動する。
『思念』
リンちゃんにチャンネルを合わせる。
《聴こえるか?リンちゃん?》
《!!はい、聴こえます。》
返信があった、流石は『賢者』未知の出来事にも冷静だ。
《俺とタリウスをミラルの森に送るって事は出来るか?》
《…強制転移ですか?魔力を練るのに時間が掛かりますが出来なくはないです。》
《じゃあ頼む、こちらのスケルトン全てを倒したら直ぐに魔力の元へ送って欲しい。場所はこの辺りだ。》
直ぐに魔力をリンちゃんに流し位置を曖昧だが示す。
《分かりました。》
そう言ってリンちゃんは会話を切り魔力を練り始めた様だ。
俺もさっさと終わらせよう。
『真剣』光の残剣
俺の手の中に1メートル強の光の剣が現われる。
素早く横に薙ぎ払う。
光の斬撃が味方の騎士達をすり抜けスケルトンだけを一撃で消滅させる。
うん、我ながらチートだ。
一方的だはっきり言って負ける気はしない。本気でやれば天下を取れるのではないだろうか?
残った他のスケルトンより一回り大きな黒いスケルトン。
『オーバースケルトン』SSランクの魔物だ。
魔物のランクは強さで決まるが大抵Sランクに入ると他の魔物より強さが桁違いになってくる。つまりこのオーバースケルトンは格が違う。全力で行く。
「『真剣』!閃光の五光剣!!」
俺の周りに五つの光の剣が出現する。闇を払う究極の剣技。
光の残剣の数百倍の威力をこの5本の剣が持っている。当たれば命はない。さらに言えばこの剣はホーミングだ。相手が瞬間移動でもしない限り目標を追い続ける。絶対の剣。
「行け。」
俺の合図と共に一瞬でオーバースケルトンに突き刺さる。
直ぐにケリがついた。
残りのオーバースケルトンも同じ要領で討伐した。
直ぐにリンちゃんに合図し転移を開始した。
目の前には無表情に立ち止まる紫のローブの2人組み2人ともフードを深く被っている。
それでも顔は少し見えた。
1人は仮面を着けもう1人はタリウスと同じ赤い髪の色の男だった。
間髪入れず質問する。
「今のスケルトンを召喚したのはお前たちだな!?」
仮面の男は無表情なまま、隣の赤髪の男が答えた。
「だとしたらどうするのだ?」
確信犯だ!
「倒す!!」
『真剣』火の剣!!
魔力をふんだんに使って赤髪の男に斬りつけようとした。
瞬間俺よりもずっと早く仮面の男が俺の剣を防いだ。
バカな…火の剣を受け止めるなんて…
火の剣は最大の火力を誇る剣だ。その剣に纏う炎が全てを焼き尽くす。その火力がただの鉄の剣に防がれた!?
魔剣か!?
この世界には魔剣という魔力を持った剣が稀に存在する。作っているらしいが殆ど低確率で強さもばらつきがある不安定なものだが、良いものであれば世界のトップクラスにまで上れるほどだと言う。
この剣もその類の武器かもしれない。
俺の背後に魔力が集中しているのを感じた。恐らくタリウスだろう。
タリウスだった。タリウスはなぜかその場から動かなかった。
仮面の剣を弾き背後に下がる。
「タリウス!手伝ってくれ!此奴ら、強い!!」
危険を促し応援を要請する。しかし、タリウスから帰ってきた返事は予想をしていないものだった。
「待ってくれナガト!」
戦闘準備をした俺はカクッとなってしまった。
その隙を赤髪の男は見逃さなかった。視界がギリギリ追いつくほどの速さで手をまるで龍の爪の様に変化させ突き刺してきた。
遅れて剣でガードする。しかし、赤髪の男の力は強力で俺はいとも簡単に吹っ飛ばされ背中を木に打ち付けた。
まだだ!俺は諦めん!
『真剣』聖光の大剣。
魔力を貯め一撃必殺に貯める。
「待ってくれ!ディラ兄!俺だよ!」
タリウスが普段は見せぬ焦りでその場を抑えようとした。
しかし、赤髪の男は聞く耳を持たずタリウスを攻撃した。
タリウスが赤髪の攻撃を弾いた、俺はその隙をみて『真剣』を引き抜いた。
「うおぉぉぉぉ!!」
巨大な光の大剣を振りかぶり仮面と赤髪の男に叩きつけた。
しかし、
「魔防壁」
仮面の男が俺の知らない呪文を唱え大剣の攻撃を防いだ。右手を掲げた仮面の男の前で大剣は動きを止めてしまった。
糞がぁ!!
大剣に集中する仮面の死角を狙い腕を切り裂く様に抜刀する。
また、まるで仮面の男は見えている様にその攻撃を防いだ。
防いだ武器は見た事がある。
トンファーだ。
前世で見た事が数回あったが、この世界で見たのは初めてだった。
その時俺が放った光の大剣が魔力不足で消滅した。
仮面は空いた右手に剣を出現させ振り下ろした。
ガードが間に合わない!
カキン!
と鉄と鉄がぶつかり合う音と共にタリウスがその剣を防いでくれた。
俺は直ぐに距離を取り剣を構え直す。
その間にもタリウスが必死に戦闘を止めようとする。今まで見た事ない事だ。
「俺だよ!ディラ兄!タリウスだよ!」
ディラ兄?あの仮面の男はディラという名前なのか?でも、何故タリウスが知っているんだ?
「俺だと分かって何故、刃を向ける?」
なんだ?一体、タリウスとこの仮面に何があったんだ?
すると仮面の男が距離をとった
すると赤髪の男が、
「時間だ。お前らの健闘を祈っているぞ。」
その言葉と共に2人の男は飛んだ。
突如背後から飛んできたプテラノドンの様な生き物に掴まり空へ逃げた。
慌てて魔法を構える。
「ま、待て!!」
ファイヤーボール!!
しかし俺のファイヤーボールは仮面の男が放った水魔法。ウォーターボールによって相殺された。
俺に空を飛んで追いかける力はなくただ、空を悠然と飛ぶ者を追いかけられなかった。
「くそッ!」
思わず地面を蹴る。
何なんだ彼奴は一体……
後に残ったのは謎だけだった。
* * *
どうして?
何で俺が戦わなければならないんだ?
俺はタリウス。たった今、師匠と呼べる俺の最大の恩人、ディラ兄と剣を交えた。俺もよく分からない。何故かナガトとディラ兄が戦っていてディラ兄がナガトを殺しそうだったから止めた。
何故?
何故、あの優しいディラ兄が『勇者』と戦っている?
人違い?
いや、ローブの色が違うだけでマスクは同じ、それにあの俊敏な動き…間違う事なくディラ兄だ。
だったら何故?
本当に分からない。
空の彼方に逃走するディラ兄とその仲間をただ、見つめるしか出来なかった……




