ー第1話ー 『7年。』
ー初歴490年ー
「あー………眠みぃ……」
俺は朝起きローブに変身し外へ出て太陽の光を浴びる。
「はぁ…良いねぇ……」
最高だね〜あのおっさんが居ないから今日は平和で静かだよ〜
その時背後に気配が現れる。
「ただいま!」
「帰れ。」
おっさんが転移で現れる。クッソ…なんで噂をすれば出てくんだよ…帰れよ…
「時に、バンシィよ。」
「チッ…なんだ?」
「頼まれてくれんか?」
チッ…またそんな事かよ…俺はスパイでも何でも無いんだぞ…
「嫌だと言ったら?」
「転移で飛ばす。」
「一文無しでか?」
「左様。」
どうせ強制なのは分かってる、まあ、俺も暇だから別に良いんだけどな。
「言ってみろ。」
「最近、魔族領が騒がしくての…」
魔族領に行けと?やだな……
「すまんがまた、リムサン大陸に行ってもらいたい。」
「ん?リムサン大陸は人族領じゃね?」
「そうじゃ。最近魔族領が騒がしいのは人族の王国連合が何かやっておる様なのじゃ。」
「何かって?」
「それを見て来て欲しいのじゃ。」
完全にスパイになってんな…俺……
別に暇だから良いんだけどな…
「良いだろう。」
「じゃあ、早速頼むぞ。『強制転移』!」
その瞬間、視界が眩んだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気がつくと森の中だった。そもそも場所が判らないので木に登り地上を見下ろした。すると直ぐの所に見覚えのある巨大な鉄の壁が見えた。
「王都サンだな…」
7年ぶりだな……そう言えばバズズ様になんか話さないかんな……
俺は木を飛び降り王都サンの方に歩き始める。
アイテムボックスからあの仮面……マスクを取り出し顔に装着する。取り敢えず色々と行動範囲を広げる為に色んな顔の俺を作っておく為に俺はマスクを付ける。
おっさん曰く、マスクがあれば素顔は見られないから服装さえ変えてしまえばただの一般市民として活躍出来る様になるそうだ。
難しい事はよく分からんわ……
……そうこうしている内にいつの間にか城門の前まで来ていた。よく見るとそこの門は人族語で『東門』と描かれていた。
……東門って事は……貴族地帯だな…
クッソ…あのジジイめ、面倒な所に飛ばしやがって……
仕方なく俺はその大きな門をくぐった。
「おい、貴様。」
またか…
案の定、門番に呼び止められた。振り返るとその格好は門番と言うよりかは騎士の方が近い格好をしていた。現に白い槍背負ってるし……
「なんだ?」
あくまで俺は冷静に聞く。
しかし、門番はかなりの威圧を掛け俺に迫って来た。
「此処からは貴族エリアである。それを承知の事か?」
「ああ、知っている。」
「貴様、見た目が怪しすぎる。此処を通すわけには行かん。……貴様、身分は?」
……身分?ねぇよ……あれ?高位聖神官って使えるかな?
「神官だ。」
「ああ?神官が一体なんの様だ?」
「第二国王様への謁見だ。」
「嘘を吐くな!」
本当の事だし…
門番は俺の胸倉を掴み今にも襲いかかって来そうな勢いで俺に威圧して来る。
「高位聖神官って知っているか?」
「しらん!!」
………最悪…面倒いわ……
俺は魔力を練り門番に一声かける。
「すまんな。」
魔法を発動させ門番を鎖で拘束する。
『マジックチェーン』
リックが使ってた系統の魔法だな。属性はなし、かなり難しい魔法だな。
俺は因みにおっさんに教えてもらった。
「おい!貴様!!」
「すまんな。」
俺はマスクを外し魔眼を発動させる。
『記憶眼』
門番に目を合わせると門番は少し小さな悲鳴を上げるがそのまま気絶した。そりゃそうだろな、今の俺の眼、真っ白だもんな。
記憶眼は見たものを完璧に記録するカメラ見たいな魔眼だが、応用を利かせ俺はほんの5分程度の記憶を消す事が出来る。
つう、訳で消させて頂きますその記憶。
俺はマジックチェーンを解除し門番を放置してそのまま真っ直ぐ王城に向かった。
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王城の門の前まで来ると背後から忍者が現れた。
「ディラデイル様、どうぞ此方へ。」
「ああ、ありがとう。」
流石に正面から入れる訳ではない様で裏口に通された。
場内を案内されるが7年前と同じあの部屋に連れてこられた。
俺は扉をノックして中へ入った。
「失礼します。」
ベッドの上で転がる少し白髪が見え始めた巨体が此方を覗いた。
「お久しぶりです。バズズ様。」
眠そうに此方を暫く見つめていると思い出したかの様に起き上がった。
「おお!ディラデイルではないか!7年振りじゃの!何か面白い事はあったか?」
特に無いです。
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「ほほほ!面白うのう…」
「それにしても、此処の城壁の警備は酷すぎますよ。」
小一時間程俺の作り話にバズズ様は耳を傾け聞いてくれた。まあ、でかい魔物と戦ったとかダンジョンがどうたらとかな。で、今は此処まで来た経緯を話してる。勿論、嘘だがな。
「それはどうしてじゃ?」
「そりゃあ、私がマスクをしているだけで捕縛しようとするのですよ。」
いやぁ…なんだろな、此処まで熱心に聞かれるとなんだか罪悪感を感じるな……
「ほほほ…ではその門番は可哀想じゃの。」
「何故です?」
「しっかり仕事をしておったのに理不尽な奴の所為で仕事が出来なかったからの。」
……誰のことだろうな!
「さて、誰の事でしょう…」
俺は首を傾げ眼を逸らす。
「ふふふ…所でディラよ。」
「はい?」
「最近、新たに属性魔法で追加されたものがある事は知っているか?」
属性魔法で追加されたもの?
「ふふふ…その顔は知らん様だな。」
「申し訳ない…」
「良い、王国連合で極秘にされた物だからな。」
そんなの、分かるわけがないわ…
「一体どう言う物なのです?」
するとバズズ様が周りを確認し顔をスススと近付け耳を貸せと言われ頭を傾ける。
「無属性魔法じゃよ。」
無属性魔法……
「相手の魔力、空中の魔力を吸収し自分の魔法として発動する属性魔法じゃ。」
バズズ様が離れたので俺も頭の向きを変えバズズ様を見た。
「厄介なのがこの魔法、常に発動し続け半永久的に魔法が使えると言う所じゃ。」
へぇ…すげえな…
あれ?でも何かそんな感じの事、一回あった様な……
「それで、私はどうすれば…」
「うむ、この事は絶対に口にしてはいかん。世にバレてしまったらそれを悪用する者が現れるかも知れん。」
「では、その者に出会ったらどうすれば?」
「ふむ…保護して欲しいが、流石に無理が有るからな…その能力の事を誰にも話さん様にしろと伝えよ……としか言えんな…」
「分かりました。」
少しの沈黙が襲った。
「時に、ディラよ。」
「はい?」
「お主は次に何処へ行くつもりじゃ?」
王国連合の闇を捜査しに行きます。なんて言ったら絶対駄目だから……
「風の向くまま、気の向くまま、世界をゆっくりと旅しようと思っております。」
「ふむ。」
バズズ様が少し考える。
「では、ロトムス王国内に最近現れたダンジョンの『エリア96』に行ってみてはどうかの?」
エリア96。
ダンジョンへの入り口は多数、存在していてその中で96番目に発見されたから『エリア96』って名前なんだ。因みに『エリア96』と今は呼ばれてるだけでその内に何か別名で呼ばれる様になるらしいよ。
例えば俺が魔眼を手に入れたあのダンジョンは『エリア83-魔眼帝』って正式名がある。
ダンジョン名は大抵そこのエリアボスで名前が決まる。つまり未だエリア96はエリアボスが見つかっていないという事だ。若しくは見つけたが殺されたかの何方かだね。
だが、面白そうだ。ロトムス王国だし、行ってみる価値はあると思うな。
よし、決まりだ。
「そうですね。では一度ロトムス王国に行きたいと思います。」
「おお!そうか、それが良い、ではまた土産話を待っておるぞ。」
「ははっ!………それではまた。」
「うむ、ではの。」
俺は立ち上がり痺れた足を無理やり動かし扉を開き出て行った。
赤い絨毯の敷かれた長い廊下でまた来た道を戻りながら思った。
少し、あの子達を見て行こうか。
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あの子達の家は判らないから俺は駄目元で広場へと向かった。
広場にはあの頃の子達と同じくらいの歳の子が元気一杯に遊んでいた。
7年前と変わった所はベンチが綺麗になった事くらいだ。
俺は新しくなっているベンチに腰を掛けた。
肩の力を抜き頭をダランと後ろにもたれた。木が少し生え揃うそれよりもっと向こうで本当に7年前のあの子達と同じ位の子供達が3人の中学生位の女の子に集まっていた。
一人は薄い水色の髪でセミロング、もう一人は薄い緑色のロングでもう一人は黄色の髪のショートの女の子だった。
水色の髪の子は手に水属性の球を出現させ空中にフワフワ浮かせ何か言っていた。
緑色の髪の子は地面の草を成長させ花を生やしそれを千切って花の冠にすると子供達に被せている。
黄色の髪の子は何か小さな子供達と追いかけっこしている。
少し視線を変えると別の場所で茶色の髪のぽっちゃりと黄緑色の髪の男達、二人がまた別の子供達に剣を教えていた。ただ…木の棒で。
更に別の所でオレンジの髪の男が一人で火属性の魔法を小さな子に教えてをガンガン木に当て薙ぎ倒させている。
その倒された木を終始右手だけで回復させ続けるピンクの髪の男、時々左手を口の前に当てて笑っている。
そしてその少し離れた所で少し髪の長い黒髪で細めの男が木陰で読書をしている。
きっとあの子達が成長したらあんな感じだろうね……
その時、火の球がかなりの速度で俺の方に飛んで来た。
俺はダランとしていた為に咄嗟に身体が動かず顔面で火の球をくらってしまった。
「いって…」
小規模の爆発が発生し顔が痒い、熱い。くしゃみ出そう……
かなりの音がしたらしく中学生位の子達はみんな気づき此方に慌てて駆け寄ってきた。
俺は身体を起こし立ち上がる。炭が付いた顔を噴水の水で洗う。
……綺麗だよ!多分…
念の為水魔法で顔をもう一度洗っとく。
「すみません!大丈夫ですかっ!?」
少し幼いその声はまるでアイナちゃんの声だった。
「ああ、問題ない。」
俺は振り返りその子の顔を見た。
その子は物凄く驚いた顔をして此方をジッと見つめてきた。近くで見ると目といい鼻といい顔つきも少し大人びているがそれでもアイナちゃんにそっくりだった。
「でぃ…ディラ先生?」
「ん?ああ、久しいな。」
違った。本物のアイナちゃんだった様です……




