ー第2話ー 『冒険者ギルド』
「お久しぶりです。先生。」
「おう、よく憶えていたな。」
「恩師を忘れる訳ありませんよ!」
俺はベンチで足を組んで座り前に8人の教え子、子供達が囲む様に立っている。アイナちゃん。メルちゃん。ニーナちゃん。ザンバ、デュメス、ギノ、ランバ、ノア……あれ?タッ君が居ないな……
「所でタッ君が居ないが何処へ行ったんだ?」
その時アイナちゃんの顔が暗くなる。あ、まずい事聞いたかな?
「1年前に冒険者になると行って旅に出たきりです…」
「そうか。」
あちゃーやっぱ、旅に出ちゃったかーアイナちゃん可哀想だなー
「先生は7年間何方にいらしたのですか?」
「故郷に帰り旅に出ていた。ちょっとした依頼を受けまたこの国に戻って来たのだ。」
なんか俺、カッコよくね?
「そうなのですか…では直ぐに此処を出られるのですか?」
「ああ…それよりも大きくなったな。皆んな。」
「先生はお変わりない様で何よりです。」
そりゃ、『不死身』だからな。これ、忘れんな。歳も取らないからな!……それより、話が浮かばねえ…
「…さて、俺はお前達の元気な姿を見れて良かったぞ。俺はもう行かねばならん。どうだ、アイナちゃん。タッ君に会ったら何か伝えておこうか?」
何も話す事が無かったので俺はさっさとロトムス王国に行こうと思う。
「………」
「何も言う事はないか?」
「……もしも…」
アイナちゃんが絞り出す様に声を上げる
「もしも、タウリスが死んじゃいそうな時は助けてあげて下さい…」
「ああ、良いだろう。」
俺も、タッ君には死なれたくないからな。
「あ、あと…大s…何時でも帰って来てね…とお伝え下さい。お願いします。」
絶対大好きって言おうとしたな。青春だね〜
「分かった、タッ君には『愛してる』と伝えておこう。」
「え、あ、ちょっと!」
アイナちゃんが顔を真っ赤にしてるがスルーして俺はアイナちゃん以外の子達とハイタッチで別れを告げた。
「また会おう、お前達。」
「「「はい!!」」」
俺はロトムス王国のある北東に向かって走り出した。
風魔法で家の屋根よりも高く飛び上がり屋根をの上を走りショートカットで北門を抜け森の中へと入りジャンヌを呼び出した。
(お呼びですね。バンシィ様!)
「こっから北東に真っ直ぐ進んでくれ。別の王国が見えるはずだ。」
(了解!)
俺はジャンヌの背中に飛び乗りジャンヌは猛スピードで走り出した。
まるで木が自分から避ける様にぐんぐんとスピードを上げて森の中を疾走する。
三時間位だろうか…
(バンシィ様、アレではないですか?)
気がついたら寝ていた様だ…
「ん?どれどれ?」
山の上から覗くとそこは王都サンよりも倍以上の大きさで国が築かれていた。
巨大な円形で街が築かれてその中心に天にも登るほどの高い、それは高い、バカじゃないの?と言いたいくらい巨大な城が築かれその周りには此処からでも分かるくらいの大きさの池堀が設置されていた。
城を囲む様に大中小様々な建物が築かれていた。
その周りを更に囲む様に巨大な絶壁の壁が築かれていた。
門は此方からだと三つ見える。
一番近い門から入る事にする。
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門は特に何の問題も無く潜れた。
門からの広い通りの道は王都サン並みの賑やかさで人が溢れていた。
さてさて、おっさんが言ってた王国連合がどうたらってのはどうやって調べれば良いんかね?
…………
凄いよな…こう言うの仕事にしてる人ってどうやってやってんだろうな?
まあいいや、別に……じゃあ、エリア96に行こうかな?
クゥゥ……
その前に腹ごしらえだな。
さて、俺は今、重大な問題にぶち当たった。
金が無い。
持ってくるの忘れた。
今頃机の上に埃かぶって置いてある筈だ……
もう一度アイテムボックスを確認する。
無い。
やべぇ……何も買えない…どうする?……どうやって金を集める?
その時近くの武器屋から世紀末な男3人が新品と思われる鉄の剣を持って出てきた。
「グヘヘへ、どうだ!」
「すんごいです!早速その剣の実力を知りにクエストに行きましょう!」
「グヘヘへ!そうだな!ギルドに行くぞ!」
クエスト………そうだこれだ!!
俺はギルドに行くと言う世紀末男三人組の後をコッソリと追った。
ギルドとやらは大通りから少し離れた小さな商店街の様な所に3階建ての建物で存在していた。
見た目はシンプルなレンガの建物で…いや、形はシンプルだけどドアが無い。開放感が溢れすぎている……そんな事はさて置き、看板には『冒険者ギルド ロトムス支部』と書かれていた。
入ろうと思い入り口の近くまで行くと酷い酒の臭いがする……
中からはグヘヘへ!見たいな笑い声が凄い聞こえる……
これは入るの躊躇うわ……
まあ、勇気を振り絞り中へ入った。
中は思ったよりもずっと綺麗でかなりの酒の臭いが溜まっていた…
俺が入ると一瞬場が静かになったが直ぐにガハハ!だのワハハ!だの騒がしくなった。
俺は迷わずクエスト受付カウンターを通り過ぎ、アイテム買取カウンターへ向かった。
え?お決まりのゴブリン倒して地道に金稼ぐと思った?
俺がそんな面倒くさいことするわけ無いだろ!アイテムを売るのだよ!アイテムをッ!
受付の人はメガネを掛けたおじさんだった。
「回復薬は買ってくれるか?」
「あ?ああ。」
俺はアイテムボックスから作り置きの回復薬を一つ取り出しカウンターに置く。
「あと何十個か有る。一つ幾らで買ってくれる?」
「………ちょっと、待ってな。」
おじさんが回復薬を持って奥に消えて行った。
暫くすると回復薬を持って戻って来た。
「この回復薬が本物かどうか調べて来た…結果は本物。しかも、教会特製。そうなると一つ150チールで買い取らせて貰おう。」
「ふむ…」
結構高いな…銀貨1枚と大銅貨1枚ね…あれ?これ商売出来るんじゃね?
回復薬なんて俺が幾らでも、瓶さえ有れば作れるから……
いや、待てよ…あんまり作り過ぎると何だっけ?……需要がどうとか何とかなって、値段が下がるんじゃないか?
それだったら必要な現場に直接売った方が俺の値段で売れるからそっちの方が良くないか?……俺、天才やん!
まぁいい、取り敢えず5個売ろう…
俺はアイテムボックスからまた回復薬を4つ取り出しカウンターに並べる。
「その回復薬とこの4つを買ってくれ。」
「あいよ、じゃあ5個で750チールだな。」
おじさんは中銀貨1枚と銀貨2枚、それと大銅貨を一枚回復薬を回収してから渡してきた。
「うむ、確かに受け取った。」
あ、エリア96の場所聞いとこうかな?
「おい、エリア96の場所は何処にあるんだ?」
その瞬間場が凍りついた様に静まり返った。
「オイオイおい!仮面のにいちゃん、さっきから聞いてりゃ、エリア96に行くんだって?」
酒を飲んでた世紀末な男、さっきの三人組じゃない別の屈強な男が一人俺に近づいてきた。何だその仮面のにいちゃんって……あ、仮面付けてたわw
あれか?お決まりの絡んでくるパターンか?
「ああ、そうだ。少し商売をしようとな。」
「そうなのか?にいちゃんの見た目じゃとてもじゃねーがあの、エリア96に行くこたぁオススメしねぇな。」
屈強な世紀末が肩を組んでくる。
……臭い。
「そうなのか?一体何故?」
「そりゃ仮面のにいちゃん、エリア96のエリアボスがSランク級のクリスタルドラゴンだからだぜ。」
Sランクのドラゴンね…
正直微妙だわ…
「そいつは強いのか?」
「強いも何も…あんたなぁ…Sランク級の魔物と言えば討伐隊が組織される位の強敵何だぞ?その辺のゴブリンとは訳が違う。」
「そんなに危険ならお前が付いて来れば良いだろう?」
その時、場が騒然となった。
だが、俺は突き進む、どの道道分からんから案内して貰うしかないからな。
「その風格、かなりの腕前何だろう?何も、その、クリスタルドラゴンを倒せ何て言っていない。ダンジョンの近くに行くだけで良いんだよ。そうだ、こうしよう、お前は俺に道案内をする。俺はその礼としてお前の言い値で報酬を渡そう。どうだ?」
言い値と言う言葉で男が反応した。
「本当に言い値で良いのかい?」
「ああ、問題ない。」
いざとなればおっさんに頼れば良いし、それかバズズ様も居るし…
「それなら1万チールで頼む…」
1万チール……
「良いだろう。」
おおぉと何故か拍手まで聞こえてくる。
「それでは、クエストの作成をさせて頂きます。どうぞ此方にお願いしますー」
受付の少し幼い感じの女性がパタパタとカウンター越しから手を振り叫んでいた。
俺はカウンターの前まで行き長くなりそうだったので風魔法で空気椅子を作り腰掛けた。
「クエスト制作は初めてですね?」
「ああ。」
「では説明させて頂きます。先ず、クエストには自由クエストと指名クエストの二つが御座います。」
受付嬢が白い皮?見たいな物に字が書かれているものと、白い皮の外枠に赤いラインが引かれているものの二種類を取り出した。
赤いラインが指名クエストの紙だってよ。
「自由クエストは受注者が誰でも構わない。などと言う場合で使用します。指名クエストでは此方の指名欄にその指名する冒険者の名前をフルネームと、ランクを記入して下さい。」
「わかった…お前、名前とランクは?」
俺はおじさんを指差し聞いた、俺がおじさんって言ってるけど俺の方が絶対年上だしな、別にタメでも良いだろ?
「…ジャック・ハーレー、ランクはAだ。」
「わかった。」
俺は皮に名前を書き込んで行った。
「はい、ありがとう御座います。それでは次の欄にクエスト内容をお書き下さい。……今回の場合だと道案内で宜しいかとおもいます。はい。」
言われた通りに道案内と記入する。何か可哀想だな…Aランクって言う結構良いランクなのにクエストが道案内って……
「はい、それではその下に契約金と報酬金額をお書き下さい。契約金は失敗時の保険金とでも思っていて下さい。ですが、此方は討伐系統のみとなっておりますのでお気をつけ下さい。……ですので今回は契約金の発生は御座いませんね。はい。」
「わかった。」
俺は道案内の下の報酬欄に1万チールと記入した。
「それでは最後にご自身のお名前と身分、職業など御座いましたらご記入下さい。」
ディラデイルとさっさと書いてついでに神官とも書いておいた。
「…神官…ですか?」
「ああ。」
何でそんな心配そうな目で見るんだ…
「問題は無いのですか?」
何の問題だよ……
「問題無い揉み消せる。」
かっこつけて言ってみた。
「そ…そうですか、それでは此方登録とクエストランク付けをさせて頂きます。後は全て此方で行いますのでディラデイル様は自由になさって下さい。」
「わかった。」
俺は取り敢えず世紀末な男達の中に混じって少しつまみを貰って食べた。
今思うと1万チールって……クソ高いやん……家買えるぞ……
あかん…玉ねぎ換算するとほんの少しにしか感じねえ……
「ジャック・ハーレー。クエストの受理をお願いします!」
受付嬢がジャックの名を呼ぶとジャックは何故かガチガチで受付を行っていた。
数分するとジャックはこっちにやって来ると言った。
「指名クエストありがとうございます。ジャック・ハーレーです。宜しくお願いします。」
無駄に頭を下げられた。
「じゃあ、早速案内を頼むよ。」
「はい!」
さて、先ずは旨い飯屋を案内して貰おうかな!
ウチの主人公は直ぐに目的を忘れます。