ー第11話ー 『聖神会-2』
今日は昨日より早めに起きて女将さんに無理を言って朝ごはんを9時にして食べさせてもらった。
さっさと食べて俺はまた闘技場に向かった……
闘技場の中のリングまで辿り着くと、ソルトが指立てをして待ち構えていた。
「フンッ…フッ…ディラデイル君、おはようございます…フッ…フンッ…」
「ああ、おはようございます。」
俺は取り敢えずソルトの近くで座りソルトの腕立てを見ていた。
「フンッ…フッ…昨日は負けてしまいましたが、今日こそは負けません!僕はこの肉体で!今回もまた!戦闘技術では優勝して見せます!ディラデイル君はそんな肉体で大丈夫なのですか?」
腕立てをしながら喋っていても息は乱れていなかった。
で、何だって?肉体で大丈夫か?フッ…問題ない、魔法で補えるし。
「ああ、大丈夫だ。」
「そうなのですか、やはり魔力が多い方は肉体補正が長く続くのですね!」
「ん、そうじゃないかな?」
「僕は、魔力が全く無いので、やはり肉体的な体力で戦うしか無いのです、それでも、前回はあのクッティー君に魔力切れまで持ち堪えましたが、今回はディラデイル君が強敵ですね!僕の体力か、君の魔力か、何方が保つか、お互い全力でやりましょう!!」
「ああ、そうだな。」
熱血な子って嫌いじゃ無いな。多分この人はかなり強敵だと思う。
俺が勝つ自信の方があるけどな!
俺が勝つ自信の方があるけどな!
大事だから二回言った。
俺とソルトは暫く無言だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暫く待っていると一気に昨日の何人もがやってきた。
そのほぼ全員、多分全員が俺を少しチラ見してリングの中央に群がった。
ほんと、居心地悪いわ…
「ところで、ディラデイル君は、何故その様な仮面をつけているのですか?」
今度は腹筋をしていたソルトが聞いてきた。
「ん、少し前に怪我をしてな…でも、どうして急に?」
「いやあ、見るからに怪しいので、少し気になっただけです。」
「そうか。」
やっぱり怪しさ満載なんだな…ちょっと萎えるわ…カッコいいと思うのにな……
「よろしい、全員集まりましたね。それでは最後の種目、戦闘技術の説明を行いましょう。」
いつの間にか座っていた7人の聖神官と最高聖神官。マック様が聖神会、最後の種目の説明を始められた。
「ルールは簡単、リング中央で一対一で戦って貰います。勝負は何方か片方がリングから落ちる、もしくは意識を失う又、何方かが降参したら終了です。武器などの制限は有りません。好きなように戦いなさい。」
ありきたりなルールだね。さて、優勝するぞ〜!
「なお、勝者はトーナメント形式で優勝を決めたいと思います。それでは対戦相手の発表をします。……一回戦、クッティー対、リットリオ・ベネトチオです。それ以外はリングから速やかに降り脇に設置される椅子に腰を掛けていなさい。」
そう言われリングから飛び降り脇に設置されている何故か金箔と赤の座布団?で玉座みたいな椅子が1つとそこから更に離れた位置にボッロい木のベンチが設置されていた。
余りにも不自然過ぎてその玉座的な椅子を凝視していたら、背後から怒声が掛かった。
「ちょっと!そこはクッティー様の椅子ですわよ!」
「そうですわ!貴方の様な見すぼらしい平民が見ていいものでは無いのですよ!」
「「さぁ早く退きなさい!!」」
俺は無言で振り向かずに木の椅子の方に向かった。
「ったく…何なんですの…」
「本当ですわ、クッティー様の御椅子が汚れてしまったらどうするつもりだったのでしょう。」
……うぜぇ…
木のベンチに座るとリングの中央が角度的に見えない位置になっていて他の人を見てみると皆それぞれ立って壁にもたれたりしていた。
俺も立ち上がりリングの中央のクッティーとリットリオが見える様になった。
二人は2メートル位の距離で対峙していた。
「始めっ!」
マック様の合図と同時にリットリオは後ろに飛んで手を前に突き出し魔方陣から黒っぽい紫色の球体を3つ、クッティーに向かい高速で発射した。
クッティーは何処からともなく細長い剣、レイピアを抜刀し素早い動体視力の突きで球体を粉砕した。
「きゃぁぁ!!!クッティー様ー!!」
「美しいあの剣さばき、まるで王子様の様ですわ!」
五月蝿ぇ…
リットリオは射撃が失敗に終わると直ぐに何処からともなくクッティーと似た様なレイピアを取り出し構えると、レイピアに何かの魔法を掛けたのか、黒っぽい紫色のオーラ的なものがレイピアを包み込んだ。
「リットリオ君は珍しく闇属性の魔法が使えるのですよ。」
下から声が聞こえ見てみると腕立てしているソルトがいた。
何で腕立てしてんのに見えんだよ。とかのツッコミはスルーして俺は話を聴いた。
「闇属性か…それは凄いな。」
「ですよね。でも、クッティー君の方はもっと凄いのですよ。」
「凄い?何がだ?」
「クッティー君は二属性持ちなんですよ。炎と風の…」
「ふぅん…」
二属性持ちね……闇属性と光属性の魔法と同じ位、希少価値のある属性だね。闇属性も凄いけど、二属性持ちも凄いね。俺は全部使えるけど。
そんな事を話していたら動きに展開があった。
さっきからずっと魔法を連発していたリットリオがふらつき始めた。
「あー、リットリオ君、やってしまいましたね……」
ソルトが未だに腕立てをしながら言った。
「どうしたんだ?」
「…闇属性の魔法は威力などが高い分、その分他の属性魔法よりも消費魔力が多いのです。」
つまり、魔力の使い過ぎ…魔力切れって事だな。
「成る程、魔力切れって事だな?」
「そうです。つまりクッティー君の勝ちですね。」
ソルトがそう呟いたと同時にリットリオは魔方陣を展開してそのままパタリと倒れた。
「……ふむ………勝者、クッティー!」
パチパチと拍手が巻き起こる。
「きゃー!!クッティー様ー!!」
「クッティー様ー!!」
クッティーがリングから華麗に着地し赤と金ドリルが駆け寄りタオルやら賞賛の言葉を送っている。
その間にリットリオは黒服によって片付けられた。
「……では次、パン対、アクテムラ、リングに上がって向き合いなさい。」
「はーい!!」
胸でかな茶髪ロングのお姉さんが手を挙げ返事をしてリングに上がった。
そして、ショートのピンク髪の貧乳がとぼとぼ、リングに上がった。
幼稚な巨乳お姉さん、アクテムラがキョロキョロ辺りを見回す。
「んー?」
豊満な胸が揺れる、それに素早く反応した貧乳のパン、指をさして怒った。
「な、何ですか!?煽っているんですか!?その手には乗りませんよ!!私は別に胸が無い事なんて気にしてませんからっ!!」
顔を真っ赤にさせ抗議するパンを無視してアクテムラは反応しなかった。
「良いですか?………では、始め!!」
「どーん!!」
ガードラ様の合図と共にアクテムラがその巨大な胸で、パンの顔面にタックルをかました。
パンは勢いよく弾かれリング、スレスレで持ち堪えた。
「うぅ…酷いですぅ!」
涙目でパンが抗議をしたがアクテムラは気にせず追撃をしていた。
「どーん!!」
「きゃあ!」
パンを側面から胸で弾きとばしリング中央へ移動させる。
パンは衝撃で尻餅をつきお尻をさすりながら立ち上がり足元に魔方陣を展開させた。
「もう、怒りましたよ!いくら胸が大きいからって……」
魔方陣の中心でふわりと浮かび正面に緑の球体を出現させた。
「『エアカッター』!」
そう言って球体を叩くとアクテムラが前触れも無く弾き飛ばされた。
「えい!!」
パンが球体を横から叩くとアクテムラも横に弾き飛ばされた。
「えい!」
「てい!」
「やぁ!」
無防備なアクテムラを暫くいたぶったパンはスッキリしたのか球体を両手で押し飛ばした。
するとアクテムラはポーンと弾き飛ばされリングの外に弾き出された。
「………あれぇ?」
アクテムラが首を傾げリングの上で見下ろすパンを見た。
「ふふふふ……私の勝ちよ!!」
パンが指を突き刺しそう高らかに宣言した。
「………はい。パンの勝ちですね。」
マック様は物凄く素っ気なかった。
「それでは次、ガイとソルト、リングに上がって向き合いなさい。」
ソルトが腕立てを止めリングに上がっていった。そして、緑のおかっぱ頭で、ソルトより体格が二倍はあるガイがリングに上がった。
ソルトはガイに一礼するとつられてガイも一礼をした。
「…それでは、始め!」
「はぁっ!!」
ソルトが開始同時に回し蹴りを放った。
「ひぃ!」
ガイは頭を守るように手を当て伏せてソルトの蹴りを回避した。
ソルトは蹴りが空ぶりバランスを崩すが倒れた勢いでガイの背中を跳び箱のように使い手で跳ね除け着地する。
素早く向きを変え両手を前に構え未だに伏せてるガイに対峙した。
暫くの沈黙の後ソルトが構えを解き脱力した。
「すぅぅ……」
ソルトが自身の周りに魔力を貯め始めた…気のせいか風が少し強くなった気がする…
ソルトが再び構え拳を強く握り締めパンチを放つ為に腕を引いた。
大地をしっかりと踏み力強く構えた。
そして、今にもその拳を放たんとした、その時。
「こ…降参…降参です……す、すみません……」
頭を埋めたまま両手を挙げた、巨大のガイの姿があった。
「……ふむ、ガイのリタイアで、勝者、ソルトじゃな。」
拍手と共にソルトの力が抜けた。
そしてゆっくりと此方に歩いてきた。
するとニコリと笑い頭を掻きながら言った。
「いやぁ!何とか勝てましたよ!」
何言ってんです!圧勝ですよ!!
…何処かのゼ◯タとか言うロボットに乗ってるニューなタイプの青年の言葉が頭に浮かんだ。
「……それでは、次、ナナとオカルト、リングに上がりなさい。」
遂にあの、青髪の子が登場した。昨日の魔法技術は二番のあの子だ。
………期待。
対するは金髪ドリルの方だった。
「……それでは、始め!」
「たあぁ!」
オカルトが女の子走りで金髪に突撃する。
「……ふんっ!」
金髪は無慈悲にもオカルトの頬をタイミング良く平手打ちしなぎ倒した。
そして、半泣きで倒れたオカルトの胸ぐらを掴み引きずってリングから落としやがった……
もっとちゃんと戦えよ!!おい!!
てか、オカルト!お前序列2位の弟子なんだからもっと頑張れよ!!
あっさりやられたオカルトを俺は哀れに思った。
「はい、ナナの勝ちですね、次は一回戦目最後…ディラデイルとシャナ上がりなさい。」
お呼びが掛かったのでリングに上がり中央で立った。
向かいに赤ドリルが睨みつけながら向かい合い言った。
「良いこと?いくら魔力や魔法が優れていても戦えなくては意味が無くてよ?」
ん?俺がいつ戦えないと言った?え?
「……問題ない。」
「チッ…後で後悔しても遅くてよ?」
そう言って赤ドリルはどこからとも無く豪華に装飾されたロングソードを片手で構えた。
「……それでは、始めっ!!」
「はっ!」
赤ドリルは一歩踏み込み剣を横に薙ぎ払う。俺もその動きに合わせ背後に躱す。
鼻スレスレに剣先が掠めそうだった。
赤ドリルは俺が避けると驚いた顔をしたが直ぐに切り替えまた剣を奮ってきた。
俺は全てを同じ様に躱す。
暫くの間、その動きがずっと続いた。
赤ドリルは剣を力任せに投げる勢いで振るう。俺は大きく背後に避ける。
赤ドリルは剣を構え直し息を整えた。
「……避けることしか出来ないのですの?」
「……そんな事はない。」
「だったら反撃してみなさいよ!」
強く踏み込み剣を斜めに振るった。
俺は赤ドリルの横を回る様に避けこう聞いた。
「この剣は壊れても問題ないのか?」
赤ドリルは呆れた様に俺の顔を見たが剣を構え直して言った。
「壊れるなんてあり得ないわ、この剣は有名な鍛冶屋に最高の鉱物をふんだんに使わせ作らせた最高の剣ですもの!」
そうか……じゃあ壊すのは可哀想だな…
どうしよう……
まあいいや風で吹き飛ばしてやろう。
俺は魔力を強く練り上げながら格好付けで言った。
「終わりにしよう。」
「ふんっ!舐めないで頂戴!『ファイヤカノン』!」
炎のビームが俺に向かって放たれるがもう遅い。
俺は魔力を風のイメージに変換し魔法を発動させる。
炎が見えない壁に受け止められ押し返される。
俺は魔力を更に強め炎の魔法を打ち消しそのまま赤ドリルを場外に吹き飛ばした。
赤ドリルは声を上げる間も無く瞬く間に壁まで吹き飛ばされるが俺は紳士なので壁にも風魔法でクッションの様に作り赤ドリルを受け止めそのままゆっくりと場外の地面に着陸させた。
静まり返る会場。
「……ああ…ディラデイルの勝ちですね。」
マック様の言葉も虚しく響いた……




