ー第6話ー 『第三王子』
青い空!
緑の森!!
そしてそびえ立つ王都を囲む城壁!!
……………うん、語呂が悪かった……
俺はシンドバットから約1ヶ月かけこの王都サンまでやって来た。馬車に揺られ続ける1ヶ月は苦痛でしか無かったよ…同乗した乗客には変な目で見られるし…
ほんと!なんなんでしょうね!?異世界人がそんなに珍しいですかね!?見た目は完全に同じなのにね!?たかが服装!黒ローブに仮面じゃないですか!?普通だろ!?
………分かってる…普通じゃないよな…俺もこんなやつと同じ馬車だったら変な目でみるわ……
まぁ、そんな事は関係なく馬車は王都サンの城壁の外で終点だ。なんで王都の外で終点だってのは王都サンに入る為に通る門で怪しい奴が居ないか確認する為だ。
王都サンには東西南北4つに門が構えてあってそこを通るのは誰でも自由なんだけど、怪しい奴は門番に止められる仕組みになってるらしいよ。
「ちょっと、君。良いかな?」
…………こんな風にな?
俺はボディービルダーみたいな門番二人に挟まれどっかの宇宙人みたいに城壁の中の取り調べ室みたいな部屋に入れさせられた。部屋のドアは1つで鉄で出来てる。多分…机を挟んでおっさんの刑事みたいな人が俺の前で座る俺はビルダー二人に強制的に座らせられた。
俺が刑事風のおっさんと目があうと話し始めた。
「君、なんで連れて来られたか分かるか?」
「見た目が怪しいからですか?」
「その通りだ、これより身体検査を行う。拒否権はない。」
そう言われ俺は両側のビルダーにまた捕まれ身ぐるみ剥がされた。
止めて!私に乱暴する気でしょ!エ◯同人みたいに!エ◯同人みたいに!!
「疑って済まなかったな。」
「いえ、疑いが晴れて良かったです。」
安心してちょっとローブ剥がされただけだから
「…今から君の通行許可証を発行する。もしまた止められた時はこの許可証を見せるんだ。……君、名前は?」
「ディラデイルです。」
「ディラデイルね……」
刑事風のおっさんはスラスラと紙に字を書いていった。そして剥がし俺に渡して来た。
「はい、これ。……じゃあ、疑って済まなかったな、もう出ててって良いぞ。」
刑事がビルダーに頷くとビルダーが俺を外に案内してくれた。
とんだ邪魔が入ったけどまあ、暇だったし良いか、ええと、まずはマック・アルバって言う聖神官の所に手紙を届けないとね。……しまったな、ビルダーに場所聞けば良かった…
まあいいや適当に歩いとけば見つかるでしょ、そのうち……
んー、全然見つからんな…てか広いんだよここ……徒歩だと1日かかるぞこれは…
さずがに大通りだから馬車も通るな…危ねぇ…なんか馬車に家紋?みたいなマークがついてるのがいっぱい通るな…
「うぎゃゃぁ!!」
突然男の叫び声が聞こえ見てみると少しボロい服を着た男が馬車に轢き逃げされた。
俺は神官魂に火が点き男に駆け寄った。
男は全身血だらけで今にも死にそうだった。俺は直ぐに回復魔法を掛け男の傷口を回復させた。男は意識が無かったが多分大丈夫なハズだ。
「おい!貴様!!」
何処からか声が聞こえ辺りを見回すが野次馬ばかりで誰が叫んだのか分からなかった、しかし野次馬の間を無理やり飛ばすように現れたのは見間違えることの無い六神教の白いローブを身につけた緑色の髪の結構カッコ良い青年だった。
青年は俺の前までくると指を指して言った。
「貴様!!その男は私が祝福を与える筈だった者だぞ!…大体貴様何者だ!?見るからに怪しい…貴様六神教のものではないな!?何者か!名を名乗れ!」
誰こいつ、いきなり何?結構カッコ良い顔してんのになにこの性格…うわぁ、俺こいつと関わりたくないわ…いくら同じ神官でもね…
「……ディラデイルと言う。六神教の神官だ。」
俺は立ち上がり、うざい男と目線を合わせた。
俺が少し睨みつけると男は少し後ずさった。
「うっ、六神教だと?だったら私が誰か分かってそんな口を聞いているのか!?」
「知らねぇよ、誰だよ」
そう言うとウザ男は顔色を変え突然俺を蹴り飛ばした。
「無礼者!!貴様、私を知らないだと!?私は六神教、特級神官のクッティー様だぞ!!」
「だからなんだよ?」
「なんだだと……良かろう!ならば力の差と言うものを教えてやろう!」
そう言ってウザ男は一旦俺から距離を置き呪文を唱え始めた
「火よ、灼熱の力を私に…『蓮火』!」
ウザ男の周りに4つ火の玉が現れる。
「フッフッフッ…泣いて謝るなら今のうちだぞ?」
こいつたかが火の玉四つで脅してんのかよ…俺ならもっと出せるわ…
では、俺も火の玉を出すとしますか…
指を鳴らし俺の周りに8つ火の玉を出現させた。
「なっ!無詠唱!?」
明らかにウザ男がビビって後ずさった。
「泣いて謝るなら今のうちだぞ?」
言ってやった。
「な、なにを…チッ、今日の所は大目に見てやる。命拾いしたな?」
そう言ってウザ男はローブを翻し野次馬を押し退けどっかに行った。
「あんた!?大丈夫かい!?」
ウザ男が消えた途端奥さんと思わしき女の人が倒れた男に駆け寄った。
「怪我は治っています。気絶してるだけですよ。」
俺は奥さんにそう伝え野次馬の間をすり抜け大通りを避ける様に道を変えた。
教会を探し続けたが一向に見つからず辺りは暗くなり始め俺は宿を探した。
大通りから外れた道には屋台が立ち並びまだ賑わっていた。見回しながら歩いていると二階建ての宿屋を見つけ俺はそこに入った。
「いらっしゃい……あ、あんた…」
そこに居たのは倒れた男の奥さんだった。俺はなんか面倒くさそうなので宿を出ようと思ったが引っ掴まれた。
「あんた今日はありがとね!」
「いえ、」
「なんだい、泊まりかい?」
「ええ、」
「だったら良いよ、泊まっていき、今朝の恩返しで宿代は半額にしてやるよ。」
奥さん、女将?はニッコリと笑っていた。
「……今、何月何日ですか?」
「えっとね、9月30日だよ。」
「じゃあ、20日分泊まりでお願いします。」
「良いよ、30チールね。」
「はい、どうぞ。」
「はい、まいど、それにしてもあんた、凄いわねよりによって第三王子に喧嘩売るなんてね〜」
ん?第三王子?
「え?第三王子って何ですか?」
「ええ?そりゃ、今日、あんたが追っ払ったあの男に決まってるやないの。」
「アレ第三王子だったんですか!?」
やばい…俺詰んだんじゃね?
第三王子って絶対ヤバいやつだろ…
「知らないで喧嘩売ったのかい?あははは!大丈夫だよ!彼奴にはそんなに権力は無いからね!ただ、逆らったりすると結構面倒くさいからみんな嫌ってるんだよ。」
「…そ、そうなんですか…」
「ああ、だから気にすることなんてないのさ、あたしゃ見ててスッキリしたよ、魔法の天才を負かしたんだからね!」
「そうですか、」
「ええ、そうだよ。おっと、部屋に案内しなきゃねぇ、こっちだよ。」
そう言って女将?はペラペラ喋った後やっと部屋に案内してくれた。
案内された部屋は二階の一番奥の部屋だった。
「食堂は下ね10時から23時までだから気をつけるんだよ。それと風呂は近くの銭湯に行っておくれ、トイレは一階の食堂の近くよ、行けばわかるわ。」
「はあ、どうも。」
女将はそれだけ言うと行ってくれた。俺はドアを開け部屋に入った、ベットに転がり俺は足をほぐした。疲れた…
……………
…………
………
……
…
そのまま眠ってしまった。
次の日俺は目が覚めると下の階の食堂に向かった。
そこには女将と昨日倒れてた男がせっせと料理を作っていた。
女将の方が俺に気付くと男の頭を叩いてこっちにきた。
「おはようね。……ほら、あんた!!助けて貰ったんだから礼くらいおっしゃい!!」
女将が男にキレると男は俺に軽く頭を下げ料理を作り始めた。俺も軽く笑顔で返すと女将は諦めた様に話し掛けてきた。
「あんなんで悪いねぇ、」
「いえ、大丈夫です。」
「そうかい?…じゃあ、適当に座っといてくれ、朝食運ぶから。」
「分かりました。」
俺は近くのテーブルに腰を掛け朝食を待った。
飯を食べた後俺は女将に教会の場所を教えてもらいそこに向かった。
宿から王都の中心、王城の周囲を囲んだ西側に大きな教会が建っていた。
俺はアバナ村よりも大きく立派な扉を開け中に入った。
「ようこそ、おいで下さいまし…貴様……」
出迎えたのはウザ男だった……