ー第3話ー 『聖神官ガードラの弟子』
「うーん……」
「どうしたんだ?リック。」
「いやな、ヤマトが凄く機嫌が良くてな、この調子だと、あと数時間で次の村に到着しそうなんだよ…」
「そんなに!?」
俺たちはさっきの村を出て夜を越し、日が昇り1時間程たった所までいた、予定ではあともう1日掛かる予定だったのだが、次の村まであと数時間で到着してしまうらしい
凄いなヤマト…どんだけ速く走ってんだよ……あ、ヤマトってのは馬の名前な。
「ああ、恐らくこの調子で行けば終点のシンドバットまで1週間弱で着いてしまうかもしれない……」
「そんなに早く!?」
予定では3週間掛かる予定なのにそれを1週間って…かなり負担が掛かるだろ……そう思い俺はヤマトの身体を心配して無理をするなよと言ってやった。
「おーい、ヤマトーあんまり無理したらだめだぞー」
「ブルルヒーン!」
何を言ってるのか分かんないけどヤマトは声を上げ今までより更にスピードを上げた……
「ディラ、お前神官辞めて調教師に成れば良いんじゃないか?馬の…」
なんか分かんないけどリックに凄く馬鹿にされた気がした…
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次の村には30分も掛からずに到着してしまった…後でヤマトの体力を回復してやろう……
この村は建物の全てが木で出来ている所が目立った。小さなメインストリートの様な所の一角に馬車は止められリックに出発時間を聞いた。
「正直、1日とか居ても良いんだけど、村だと乗る人間は殆ど居ないからな…金銭的な面もあるし…」
そう言えば馬車には結構な金を払わなければならないその分の金の事も考えてなきゃ駄目何だよな…あれ?この馬車代って幾らなんだ?
「なあ、リック、俺の運賃代って幾らになるんだ?」
「んあ?…えっと、アバナ村からだから500チールだな……心配すんな、200チールにまけてやるよ」
「おお!マジでか!サンキュー」
「良いぞ、じゃあ次の出発時間は1時間後だ。」
「了解!…じゃ!」
そう言って俺は村の探索を始めた。
俺はメインストリートから抜けた家が建ち並ぶ所に足を運んだ。理由は何かあるかな〜?位の感覚。
時折村人と思われる人とすれ違う、その時に何故か俺はそのすれ違う人に変な目で見られてしまう……
何でだ?……神官が嫌い的な?
「イャアァ!!チカっ!?チカっ!?」
まぁ、良い加減帰ろうかと思ったそんな時、別の路地で女の人の悲鳴が上がった。
俺は凄く気になり様子を見に行った。
すると、小1くらいの女の子が倒れているのが見えた、その近くにはお母さんらしき人物が泣きながら倒れている女の子を揺さぶりその子の名前を呼んでいた。
俺は助けないと、と身体が自然と動きその子の側まで駆け寄った。
「どうしたんですか!?」
「チカが急に息切れを起こして倒れたんです!!」
「分かりました!お母さん、このチカちゃんを揺らすのは止めましょう。私は回復魔法が使えます!チカちゃんを少し回復させますから下がって下さい!」
「本当ですか!?娘を助けてくれるんですか!?」
「はい!助けますから少し離れて!」
兎に角この子に回復魔法を掛ければ少しは何とかなると思うけどとりあえずこの母親、倒れてる子供を揺らしすぎだよ。
俺は倒れてるチカちゃんが息をしているか確認し体育でならった回復体位をうる覚えながらとらせ回復魔法を掛けた、一番回復力が強いので……
俺は回復が終ると確認の為にマスクを外し透魔眼を発動するさせる、これは見たものの魔力の流れを見る事が出来る魔眼で俺はこっそり使ってみた結果人間は普段は魔力は血液の様に流れている事が分かった。つまり、この子の魔力の流れが血液の様に流れていたら大丈夫って事。仮に何処かで溜まっていたりしたらそれは魔力病の可能性がある。
魔力病ってのは魔力が体内で溜まって酷くなると魔力が突然勢いよく流れ出し死に至ったりする病気らしい…ガードラ様に教えてもらったんだよ。これは回復魔法とは別で解毒病魔法ってのを使わなければいけない。これはドラグに教えて貰ったから大丈夫。
……魔眼を使った結果、魔力溜まりは見えなかったが少し魔力が少なく感じた、これは俺の考えであってない可能性の方が高いけど魔力って多分、血液とかと一緒で食べ物とかによって量が増えたりすると思うんだよね。
まぁ、この子の場合、魔力じゃなくて恐らく食生活が関係してると思うんだよね…だから念の為俺は母親に質問する。
「お母さんはこの子のに普段何を食べさせてますか?」
「え?レタスやニンニク、ニンジンとかのお野菜ですけど?」
「肉や魚は食べてますか?」
これで食べてるって言われたら俺はもう何も出来ない…俺が予測するのは学校で習ったんだけど、これ多分貧血だと思うんだよね。
「食べてないです…何しろお金が無いものでして…あの……この治療費は幾らになるんでしょうか?」
「は?」
俺はこの母親の言葉に少し驚いた。だって、俺は善意で子供を助けただけなのにお金はいくらかって聞いて来るんだぜ?そんな事で一々金、取ってたら…そんなの神官じゃねぇだろ…
「お母さん…お金は要らないです。僕は善意で娘さんを助けただけですから。」
「ほ、本当ですか!?」
「え、ええ…」
「ありがとうございます!!」
お母さんが凄い泣いてしまった……え……なに……
「えっと……お母さん?あのですね、これは僕の考えでして余り当てにはしない方が良いと思うのですが、娘さんに野菜と別にたんぱく質…肉や魚は食べさせないといけないです。」
ただの貧血だったら血を増やせばいいだけのような感じだけど悪性貧血ってやつだったらたしか………………
ビタミンB12の不足で起こるから動物性食品だったら摂れるはず……多分……
「それが無ければ卵を食べれば良い筈です…兎に角、動物に関係する食べ物も野菜と一緒に食べれば良いと思います。」
それ位しか分かんねえ……てか、覚えてねぇ…これテストに出たから覚えてただけなんだよね…どうでも良いけど…
あ、そだ。
俺はマジックボックスの中を探り一本の瓶を取り出す、濃い緑色の液体が入っている瓶だ。
「これは、ポーションでして、この子がまた症状を訴えた時にはこれをスプーン一杯分を水で薄っすら緑色位まで薄めて飲ませて下さい。気休め位にしかなりませんが少しはよくなる筈です。」
「あ、ありがとうございます!神官様!!」
「いえ、後は娘さんを安静に寝かしてあげて下さい、大丈夫です、さっきの魔法で治しましたから。」
「ありがとうございます!!」
そう言ってお母さんは泣きながら言ってきた…貧血ってそんなに重い病気だったけな?
「すげぇな!黒い神官さんおらのカカァが膝を痛めて動けねぇんだが、治せたりするのかぁ?」
俺が気付いた時には周りに数人の人集りが出来ていた…
「ええ治せますよ。」
「本当かぁ!?じゃあ、カカァを連れてくるから待っててくれぇ!」
そう言って俺に話しかけて来たポトムズさん似のおじさんがずっと向こうまで走って行った……
「おらのとうちゃも足が動かねぇんだが、治せるか?」
絶対ただの年だと思うんだが、治せない事は全く無いので「治せます」と答えた。すると集まった人達全員が似た様な事を俺に聞き始め俺はもう、面倒くさくなったので「なんか、痛いところある奴全員来い!!」と叫んでしまった……その所為で何十人かが、俺の所まで集まるが俺は全体回復魔法で一気に回復してやった……
なかなか……堪えるものがあるな……
俺は回復させた後にもう疲れたのでその場を離れ馬車に戻った。
馬車では地面の草を食べているヤマトの姿が見え俺は軽くヤマトの頭を撫でてから荷車に乗り込んだ。
それから数分ぐらい経ってからリックが戻り馬車は次の村に向かい始めた。
森の中を走りながらリックが話しかけて来た。
「聞いたぞ、ディラ、お前村人の怪我を治したんだってな?」
何で知ってんだよ……
「ああ、そうだね。」
「幾ら取ったんだ?」
「取ってねぇーよ。」
リックまで何なんだよ…神官なら人に癒しを与えるのが仕事だろうが…こんな事はやって当然だろ……
「そうなのか?何で取らなかったんだ?」
「逆に何で取るんだよ……神官は人々に癒しを与える事が仕事だろ?」
そう言うとリックが突然声を上げて笑いだした。
「お前面白いな!他の神官とは全然違うな!!まるで、異端者で有名な聖神官ガードラだよ!!」
「は?ガードラ様は俺の師匠なんだが?悪口は聞き捨てならんな?」
そう言うとリックの笑顔が固まった。
ふふふ、俺の威圧に恐れをなしたか…流石俺だ……
「お、お前って、聖神官ガードラの弟子なの?」
「あ?うん。」
「……嘘だろ…ガードラは弟子を取らない事でも有名なんだぞ……」
「いや、それでも俺、弟子だし…」
「はっ!!もしかしてお前がアバナ村で別れたあの老人夫婦ってもしかしてガードラか!?」
「そうだよ、知らなかったか?」
今更何言ってんだよ此奴は……
「……そうか、そう言うことか、ならお前が村に無償で怪我人を治した事も納得できるぞ…」
なに、此奴なんか1人で完結してんの?
「……ディラ、そう言えば王都サンに行くって言ってたよな?」
「ああそうだけど?」
「もしかして、『聖神会』に参加したりするのか?」
「ああ、その為に王都サンに向かうんだよ」
そう言うとリックの顔が急に真面目な顔付きに変わり語り始めた。
「いいか、ディラ、神官はな…………………」
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