既視感という名の物語
これはまた別な主人公の物語
『申し訳ありません。こちらの《手違い》で殺してしまって……』
そういって頭を下げる、光輝く女神さま。残念なことに胸がない。まな板だ。
「いやー、全然イイっすよ!しゃぁーないっす、ドンマイっす!」
『申し訳ありません、三河浩二様……貴方のような御心の広いお方をあんな殺し方で……』
「いいですよ、あんなとこで遊んでた俺も悪いですから。」
『ああ……何と慈悲深い』
そう言って泣き崩れてしまう女神さま。
どっちかと言うと、俺の方が泣きたい。
……どうしてこうなった。
***
あの多くの人が亡くなった、大震災から一年。
俺の友達も、たった一人だけ亡くなった。
そう、あの時はゲーセン行って別れた後の出来事だった。
結構いい奴だったけど、トラックに跳ねられ倒壊した木製の建物の下敷きになって亡くなった。
なんて、マシな死に方なんだ!
ちくしょう、どーしてだよ!
……手違いだ。手違いで殺された。
俺は、学校の帰り道いつものようにゲーセン行って帰る帰り道、いつものように河川敷の石を拾って投げて捨て家に帰る、そのルーティンを繰り返していた筈だ。
だがその日、俺はいつになく興奮していた。
「ヒャッハッー!宵の明星とは俺のことだぜぇー!」
すっごくカッコいい台詞を思いついて、河川敷で叫んでいたんだ。
「宵の明星はココからが本番だァァー!」
なかなかいいセリフだ。流石俺だ。
だが、問題はここからだ。
そうして帰ろうとした俺は、一歩踏み出したそしてその先にはなんと………
苔が生えていたのだ!!
俺はそれに足を滑らしすっ転んだ。そうそれはもう、アニメみたいにひっくり返った。そして俺は………
***
「______後頭部を強打し、そのまま天国へと。」
『……はい、ですが苔を設置し殺したのは我々の責任です。』
「それは何回も聞きましたよ。本来は僕が帰った30秒後に来る男の子を殺す予定だったんでしょ?」
どーして、30秒早くしちゃったかなぁ、しっかりしてよ神様ー。あー目の前にいたわ、女神だけど。
『その通りです。大変申し訳ございません。…………三河浩二様、宜しければ提案があります。』
「はい、なんですか?」
でもすごいなーこの天国なんだー。
『貴方様の魂を、別の世界へ送り、新たな生を謳歌して頂く……というのはいかがでしょうか?』
何それ知ってる!ラノベでありがちな転生展開!
「転生って、やつですか。因みに嫌だと言ったらどうなります?」
『……魂ごとこのまま消滅します。』
「なるほど。転生させて下さい。」
拒否権ないじゃーん!
『申し訳ございません。地球には戻せませんが、その世界は、魔物や人間が暮らす所謂ファンタジーという世界です。』
「おー!ちなみになんかチートとかは?」
『勿論、三河浩二様が望まれる事ならば、出来る限り色をつけさせて頂きます。』
「やったぜ!じゃあ、まず『宵の明星』って感じのステータスにして欲しい!」
『理解いたしかねますが、善処いたします。』
そう言って女神さまは微笑む。
善処の意味分かんないけど、やってくれるって事だよね!
「あ、そうあと一つ!」
『はい、なんでしょう?』
「二度と転ばない姿にして下さい。」
『………』
***
__________________お?
おお?
おおお?
おー!
気がつけば緑の世界に包まれていた。
肌を撫でる心地よい風。
見たこともない緑色の人型のゴブリンみたいな生き物。
ドロドロした緑色のスライムみたいな、スライム。
そして俺!どうしたこれは。
何故か視野が360°全て見通せる。
さらには位置が低い。あと、手足がある感覚がない。
なにこれ、ステータスとかないかな?
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name……三河浩二 【スター・ゴーレム】
status……『宵の明星』『転生者』
skill……『宵の明星』『明星の鼓動』『明星の煌き』『明星の逆風』『原初の星』『気候変動』『形態変化』『五芒星・明星』『星の終わり』
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おー!すげー!なんかよくわからんけどチートっぽい!
よーし!せっかくの異世界だし!やっぱアレをするしか無いよね!
「国をつくろー!」
いぇぇーーい!
こうして、彼の物語はこの《死の大陸》で始まった。
え?しれっと再開するなって?
ではまた!