ー第2話ー 『七王会』
大きな丸テーブルを囲う様に置かれた金色に輝く七つの椅子見る人が見ればそれは玉座にも見えるだろう……
此処は魔族領の大陸ヨールパル、そのほぼ中心に位置する巨大な城、『魔王』グリムが住まう居城、それを知るものはそのまま、『魔王城』と呼ぶ。
舞踏会でもやるのではないかと言うほどの広さの部屋にそれはあった。
地面には恐らく数百の値があるであろう赤い絨毯に壁には何処かの有名な画家が描いたと思われる絵が幾つも飾られていた。
そんな所の真ん中に設置されるテーブルと椅子、扉から一番遠い椅子に一人の男が座った。
『魔王』ファランド・グリムである。
彼は頬杖をつき、誰かを待っていた。
そして、少し経った時に扉がゆっくりと開いた。
扉が開き其処から現れたのは2メートルはあり筋肉質で顔はオレンジ色の立髪が特徴のライオンの様な男だった。
「来たか…ズオウ…」
「ああ、久し振りだな、グリム。」
ズオウと呼ばれる大男はグリムの腰掛ける隣の椅子に腰を掛けた。
「……で、突然の集会だが、何かあったのか?」
「いや、それは全員集まってから話そう……何か食べるか?」
「……肉を貰おうか」
「分かった。」
グリムが指を鳴らすとズオウが現れた扉とは反対側の扉からメイドが現れた。
「此奴に肉を持って来てやれ、美味い肉だぞ。」
グリムの命令に顔色一つ変えずメイドは頷き戻って行った。
「愛想が無いな。」
「……感情が出すぎる奴も困る。」
暫くの沈黙が襲った。
焼いた肉の塊が奥から運ばれテーブルに置かれた。
それと同時に扉が開き腕を組みながら白いロングヘアの女と漆黒の髪をした男のカップルが入ってきた。
「やあ!久し振りだね!」
「久し振りね!」
「ああ、久し振りだな……適当に座ってくれ。」
「そうかい?じゃあお言葉に甘えるよ。」
「甘えるわ!」
肉を無言で食べ続けるズオウの隣に二人が座った。手は繋いだままである。
グリムは頬杖を付きながらそれを横目で見てメイドを呼んだ。
「………其処の二人に飲み物を適当にやれ、酒は駄目だぞ。」
メイドは無言で頷き戻って行った。
謎のカップルがいちゃいちゃする中また扉が開いた。
入って来たのは緑色の髪をしたポニーテールの女だった。
彼女は謎のカップルを見ると分かりやすく舌打ちをした。
「なに?あなた達、呪い殺されたいの?」
女は二人に向かってかなりキツい事を言うと……
「気にしないでサリフ♡私達の愛に嫉妬しているだけよ。」
と女が
「そうだよね。ネル♡君の美しさに皆んなが嫉妬してるんだよ!」
「もう♡ばかぁ!」
二人が気にせず更にいちゃつき始めた。
女は青筋を浮かべながら右手をあげ黒い球体を作り出した。
「待て!待て!シロン!止めろ!」
グリムがそれを慌てて止めた。
シロンと呼ばれた女は仕方なしにカップルとは反対側の椅子に腰を掛けた。
次の瞬間
バコん!
と扉をぶち壊し現れたのは
「ギャハハハハ!!!俺様参上!!」
「ついでに俺も!」
訳の分からないポーズを決めて入って来たのは、青色の髪をした男と、物凄く普通な顔、と言うかバンシィそっくりな男が入って来た。
「てめぇら!ざけんじゃねぇ!!」
グリムがテーブルに片足を置き右手から何処からともなく赤い槍を出し二人に目掛けて投げつけた。
「とうっ!!」
「ふんっ!!」
槍を大きく飛んで躱し二人は空いていた残りの席に着地して座った。
「いきなりなんだグリム!」
「それはこっちのセリフだ!!なに、扉壊してんだよ!!」
青髪の男がグリムに文句を言った。
「まぁ!良いじゃねぇーか!全員揃ったんだろ?始めようじゃねーか!」
「なに勝手に仕切ってんだ!『族王』!!」
「なんだ?名前で呼べよ。読んでる人がわかんねぇだろ?」
「なに言ってんだお前は!!」
『魔王』ファランド・グリム・ドワフール
『獣王』ズオウ・ド・ブフ
『武王』サリフ・トューカ・パール
『賢王』ネル・トューカ・スキュル
『破王』カイト
『呪王』シロン・チーネ・プル
『族王』ドラグ=バンバーン
七つの王が集まる会議
人呼んで『七王会』
此処に開催の狼煙が上がった
大きな丸テーブルに七人の王が座る。
テーブルにはそれぞれ好みの飲み物が置かれていた。
『魔王』グリムはトマトジュースの様な飲み物、『獣王』ズオウは動物の肉、『武王』サリフと『賢王』ネルは緑色の液体の飲み物にストローをさし一緒に飲み、『破王』カイトはオレンジジュース、『呪王』シロンは紫色の液体のもの、『族王』ドラグはメイドから渡されたメニューを未だに見ている。
此処でグリムが口を開いた
「さて、早速だが今回集会を行った理由につい…「ちょっと待った!!」
「今度はなんだっ!?」
ドラグが突然割り込みグリムが剣幕でドラグに問いかける。
ドラグは特に気にも留めずメニューをグリムの方に見せ指をさした。
「この、ミンチボールと言うのは何だ?」
「あ"?」
そのしょうもない質問に青筋が浮かぶグリムだったが首を振りメイドを呼んでドラグに付けさせた。
ドラグはメニューをメイドに見せあれこれ質問し始めメイドの答えを聞くとんんん、と首を鳴らし悩み始めた。
「………では、改めて…「なあ!」
「だから何だアァァ!!」
グリムがテーブルをぶっ叩き一瞬テーブルに乗っていた物が宙に浮かび着地した。
そんな事は気にも留めずドラグは意見を述べ始めた
「あのさ、皆んなで飯食わね?」
「………何故だ?」
グリムが理由を尋ねるとドラグはんーと喉を鳴らし少し考える
「同じ場所で飯を食い『七王会』の結束力を更に高めようではないか!」
俺良いこと言った的なドヤ顔をバンシィの顔で決めるドラグ。
グリムは少し悩むと答えを出した
「良いだろう、ではゆっくり食事をしてから今回の件について話そう。」
そう言ってグリムはメイドにメニューを全員に配るよう指示し自身もメニューを見て悩み始めた。
七人の前に料理が並べられ食べ始めた。
ズオウはひたすらに肉を頬張りグリムはステーキを静かに美しく食べ、サリフとネルはソフトクリームの様なものを「あーん」とか言って食べさせ合いっこしている、カイトはザリガニ見たいな生き物のバター焼きの様なものを豪快に食べ、シロンは紫色の謎の物質を食べ、ドラグはミンチボールと言うハンバーグを食べていた。
「所でドラグ」
「あ?」
カイトがドラグを呼ぶ
「お前最近その姿ばかりだが、何か訳があるのか?」
そう言われドラグは自分の状態を確認すると
「……そうだな、特に訳はないが?」
ドラグがハンバーグのお代わりを追加する。
「そうなのか、で、その姿のモデルはどんな奴なんだ?」
「……んー、良い奴だぞ?」
ドラグのしょうも無い返事にカイトが呆れる。
「…それだけか?何かもっと無いのか?強いとかさ」
カイトがても付け加えながらドラグに聞く。
「んー、強いな。」
「どの位だ?」
ドラグの言葉に少し目を輝かせるカイト
「んー、俺より強いはずだ。」
その言葉にカイトが顔色を変えた。
「……本当か?」
「ああ。」
「能力は?」
「『魔物王』を持っている。」
「何だとッ!!」
グリムが突然割り込んでくる。
「何だよ、聞いていたのか…」
「そんな事はどうでも良い!!其奴は何処に居るんだ!?」
ドラグが少しムッとする。
「言っとくが仲間に引き入れようとしても無駄だぞ?」
「其処を頼む、名前だけでも…貴様の土産に好きなものを持たせよう。」
「……バンシィ・ディラデイルだ。」
「バンシィ…憶えておこう。」
再び王たちは食事に専念した。
「では、改めて今回の招集の理由だが…」
グリムが顔の前で腕を組み語り始める
「俺は今から12年後に人族領に攻め入る準備をしている。」
「それはまた……何で12年なの?」
ネルがグリムに問う
「それはだな、現在我々は『魔導核』の生産に取り組んでいる、それの完成が12年後だからだ。」
「魔導核?」
ネルが聞き返す
「ああ、まあ、新兵器とでも思ってくれ。」
軽く流すグリム、ドラグは心の中で少し記憶を探っていた。
魔導核……聞いた事はあるな……確か300年前、帝国の実験で現在存在する人族の大陸を真っ二つにした原因の兵器だった気がする……
賢王でも知らんとは……話は残っていないのだな……
「じゃあ、その新兵器とやらで人族を叩くって事ね?……つまり、私達にも参加して欲しいと?」
ネルがかなり深読みをして聞く
がその読みはあっていた様で
「ああ、そういう事だ、一緒に戦わないか?王が何人もいて心強い事は無い……この世界の未来の為なのだ。」
グリムが熱心に六人に頼む。
「私達はパスよ、サリフを危険な目に合わせるわけには行かないわ。」
「ああ!僕のことをそんなに心配してくれてるんだね?大丈夫だよ!僕は何処にも行かないから!!」
「サリフ♡」
「ネル♡」
「「「「「…………」」」」」
五人の冷たい目線が二人を覆う
「……私もパスね、集団戦より一人を呪い殺す方が楽しいもの……」
シロンが言う
「俺も団体戦より一騎打ちの方がいいから俺もパスで。」
カイトが言う
「ギャハハ!俺は飯を食べに来ただけだからな!」
ドラグがテーブルに脚を乗せ言う
「……俺はグリムには一族共々世話になっている、仇で返すわけには行かない。」
ズオウだけが唯一参戦の表明を出した。
それを聞いたグリムは少し涙を流しながらも
「……ありがとう、ズオウ……」
「問題ない。」
その熱い友情?の様なものをドラグは面倒くさそうに眺めていた………