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第一話『貴方の正義』

お待たせしました!

天災級アイラヴィタの討伐から一週間が過ぎた。


街は日常に戻り、平和な時間が取り戻された。


俺も、その日常の枠の中へと戻って来たわけだが、ひとつ。

大きな変化を手に入れた。


魔術によって厳重に閉ざした小さな木箱からひとつ、片手で握れる程に小さな白骨を取り出す。


その純白の美しさは、何処か見るものを魅了する。


アイラヴィタの牙。


アムリタの秘薬の最後の素材だ。

完成すれば、死者を蘇らせる死者蘇生の秘薬。

これを後は未完成の秘薬と調合させる事で、アムリタの秘薬は完成する。


しかし_______


しかし……だ。


「おい、フォルテ。お前、持ってないよな?」


「ハイ?ナンノハナシデス?」


枕の上でピョンピョン跳ねていたフォルテが、ベットに着地する。


「ほらアレだよ……アレ。……秘薬だよ。」


「モッテマセンヨ!テッキリバンシィサマガ、モッテイルカト、オモッテイマシタ。」


「そうか、だとすると残念なお知らせだ。」


「ウワァ……キキタクアリマセン。」


「良いから聞け。場所は既に分かっている。」


「ア、オトシタワケデハ、ナイノデスネ。」


「貴様俺を舐めているのか?俺が、そんな失態をするわけないだろ?」


「デスヨネ、サスガバンシィサマ!」


「ああ、それで、場所はだな……リムサン大陸だ。」


「ウワァ……」


「おい、なんだその反応は……俺は落とさない様に考えて、ドラグのいた場所にあえて、置いて来たんだ。」


「タダワスレタ、ダケデスヨネ?」


「フハッ!すまないその通りだ!」


最悪だよ。面倒なやつだよコレ……

遠足のおやつを用意して、バックに入れ忘れた様な最悪の気分だよ。


チッ……忘れたものは仕方がない。切り替えて取りに帰る事を考えよう。


こんなのは簡単だ、リムサン大陸に帰れば良いのだ、帰れば。

問題はその方法。


泳いで帰るは論外。


たしかに行きは泳いで、何ヶ月も掛けて海を渡ったが、それは俺とフォルテが何も持っていなかったから出来た事だ。


通常人間が、何ヶ月も海を泳ぎ続けるなんてできはしないが、残念ながら俺は不死身。ちょっとやそっとじゃ傷付きなんてしない。

かなり弱体化はしているが……


そのせいで、海を何ヶ月も泳ぎ続けると、身体の感覚が無くなってくるのだ。

感覚が無くなると、困るのはもしも物を落とした・・・・・・・・・時に気づかない事だ。


もしも、俺が海の中でこの『アイラヴィタの牙』を落とそうものなら、発狂するぞ、多分。


こればかりは、優秀な部下であるフォルテにも預ける事は出来ない大事なものなのだ。


となると、船がいるな。少なくとも数ヶ月海を彷徨ってもビクともしない、頑丈な船が。

いや、最悪小舟でも良いか。

兎に角、船を手に入れなくてはならん。


しかし、どうやって手に入れる?残念な事にコミ症の俺は、漁師の知り合いなんて都合良くいない。

さて、どうしたものか。

最悪の場合、犯罪に走るかも知れないが、それは最終手段としておきたい。


金は一応………ある。


アイラヴィタの討伐金として、金貨が五枚。

今更後悔しているが、あんな化け物相手に金貨五枚は安過ぎる。

戦ってない俺が言う事では無いが……


そんな事はどうでも良いとして、船は金貨五枚あれば買えるか?

そもそも、船ってどこで買えば良いんだ?

船屋さんなんてあるのか?良くある王道ストーリーなら、船大工とかと仲良くなったりして、手に入れるという、パターンがお決まりだったりするが……


何度も言おう。コミュ症の俺に、そんな都合よく船大工の知り合いなんていない!


そうやって一人、心の中で己のボッチレベルの高さを研鑽していると、フォルテが何かに気付き、俺の袖の中へと潜った。


その三秒後、俺の部屋の扉に、三回丁寧なノック音が響いた。

女将さんか?

いや、女将さんはこんな丁寧なノックなんてしない。

そもそもあの人はノックせずに、大声で俺を呼ぶ。だから俺は、そのドア向こうの未知の相手に警戒し、居留守を狙った。


「変態マンさ……違った、フクロウさん。私です。アイリスです。」


アイリスと言う人は全く知らないが、この声と、変態マンなどと俺を呼ぶのは、一人しかいない。


「お嬢か……一体何の用だ?」


そう。本当に何の用だよ。今までこの宿で過ごして来たが、冒険者はおろか、知り合いの一人も……そもそも知り合いなんていないか。

……まぁ、うん。


「はい、それについてなんですけど、移動しながら説明しますので、今から大丈夫ですか?あと、私だと気づいたなら、ドア開けてもらっても良いですか?」


「断る……と言ったら?」


面倒な。

受付嬢が呼び出しに来るパターンは読めなかったが、これは絶対に面倒事に違いない。

しかし、受付嬢の落ち着いた様な言葉使いから、緊急の要件でもなさそうなのだ。となると、断っても良さそうなのだが……


「それは、ドアを開けない。と言う行動だけですか?それとも、両方ですか?」


「質問に、質問で返すな。」


「そのお言葉、そっくり貴方にお返しします。」


チッ……面倒な。

直ぐ様身支度を整え……と言っても立ち上がって武器とバックを持つだけだが。

ドアを開けた。そこには、身なりの整った、赤い受付嬢のユニフォームを着こなしたお嬢が、そこにいた。


「しかし、お嬢。お前、アイリスって名前なんだな。」


「開口一番それですか?……しかも、フクロウさん。貴方、今の今まで私の名前知らなかったんですか?」


「ああ。」


「心外です!誰にも名前忘れられた事ないのに!」などと、どこかのロボットアニメ主人公の『親父にもぶたれたこと無いのに!』的なイントネーションでそう叫ぶお嬢を無視し、部屋から離れた。


「あっ!ちょっと、フクロウさん!なんで置いていくんですか!?」


「はぁ……」


「露骨にため息!?しかもなんで、私が悪いみたいな目で見ているんですか!?」


「騒がしいな。」


なんで朝っぱらからこんな元気過ぎるお嬢の声を聞かねばならんのか、怠くて怠くて仕方がない。

お嬢を無視し早足で宿を出て、人混みのど真ん中に突っ込み、ギルドへと向かう。


朝は寒いのであまり好きではないが、この純白の雪景色の中を歩くのは、嫌いではない。寒いのは大嫌いだが。


「フクロウさんっ!大事な話ですので、ちゃんと聞いて下さいよ!」


「ああ。」


大事な話なのは初めから分かっている。ギルドの職員が宿に押しかけて来る時点で、大事な話じゃなかったら、訴えてやるよ。


「『クルセイダー』はご存知ですよね?」


「知らん。」


「えぇ!?貴方、神官ですよね!?」


「そうだが、知らん。教えてくれ。」


クルセイダーと言われても、戦闘機くらいしか思いつかないな。


「教会の最高戦力ですよ!別名、『異端・異教徒殲滅官』。神敵と定めたら最後、それを消し炭にするまで止まらない。教会最強の戦闘集団じゃないですか!」


「あー。そんなのもあったな。」


知らんな。知らんけど、一応教会の人間と言う設定なので、知っていることにしておこう。うん。


「何ですかその反応は!?それが今!来ているんですよ!ギルドに!」


「そうか……で。なんで俺が呼ばれているんだ?」


「あ、な、た、を呼べって言われたからでしょうが!」


「おいおい、お嬢。そんなに大きな声を出すと、厚化粧がバレるぞ。」


「私はこれがすっぴんですぅー!残念でしたね!」


へー、そうなのか。だとすれば、今この瞬間、この辺りの化粧を頑張っている奥様方全員に喧嘩売ったな。


さてと、そんな事はどうでも良いな。


ギャーギャーうるさいお嬢を無視して、ギルドに到着した。



& & &




なんだったか、異端殲滅だったか?

随分と物騒な肩書き背負っているようだが、そんな物騒な奴らがこんな辺境な街に来て、俺に用なんて、あり得ない。と、思いたい。

そもそもだ、俺は名を上げてもいないし、これといって特に何もしていない。

そんな俺が、その………なんだっけ?


クルセイダーだったか?


……まぁ、そんな奴らに呼び出されるなど、あり得ないと思っていたが、なにかの間違いであってほしい。

だが、面倒事には常に、面倒事が重なるものだ。


ギルド長の執務室をノックし、念の為返答を待った。


「フクロウかい?どうぞ、入ってくれ。」


「失礼する。」


言葉と共に、ドアを開け執務室に踏み込んだ。


_____瞬間。全身が回避に動いた。

殺意。いや、それに似て異なる異様な気配。魔術の類ではない、もっと本質にあるような、こころからの嫌な感触。


「チッ……」


身体は既に動いている。

おそらく、何かの『スキル』の様なものだろう。

しかも本人は意図せず使っている、パッシブスキル的なものだ。

相手からの前動作の無い、一番反応しづらいタイプの攻撃。

だがしかし、この手のスキルが攻撃系のスキルでない事は、直ぐに理解できた。


反射的に捻った身体を戻し、何事も無かった様に取り繕う。


「失礼、床が滑りやすかった。」


「……そうだったかい?そんなに滑る床では無かったと思うけど。」


そう語る、いつも通り自然体のギルド長。

ギルド長は、果たしてこの異様な気配に気づいているのか、いないのか、いまいち判断しかねるが、一応我らがギルド長ではあるので、気付いていてこの態度なのだろう。そうだ。そうに違いない。


暢気なギルド長から眼を離し、何故かその隣で温和な表情で佇む、青年に視線をやった。そして、一目で理解した。うん。ヤバい奴だ、コイツ。


丁寧に切り揃えられた黒の髪に、黒の目。

背の高さは、椅子に座るギルド長と殆ど変わらないほどで、俺よりも低く。顔は童顔で一見、教会の人間とは思えない。

しかし、身に付けた藍色のローブにはしっかりと胸元に、教会の刻印が刻まれており教会の人間である事は伺える。耳にぶら下がる藍色のイヤリングから、足の先から頭のてっぺんまで優等生の小柄な青年がそこにはいる。


「これはこれは、初めまして、ミスターフクロウ。」


見た目だけならば、十代後半に見える。

確かに一見すれば、ただの良い子に見えるだろうが、問題はそこではない。

これでも何千年と人を眺めてきた俺だ、この人間の本質が、ここにはない事はこの数秒で理解した。

そして再び言おう。

コイツは絶対に、ヤバい奴だ。


強い弱いの強弱ではない、もっと根底にある、意識の問題。


「私は異端・異教徒殲滅官こと、クルセイダー……『正義ジャスティス』・フェルメアス。

どうぞ、よろしく。ところでミスタ_______」



一言で言うならば、そう_____________



「あなたの『正義』はなんですか?」



狂っているクレイジーだ。

ども、ほねつきです。

どうでしょうか?ピンクゴリラことゴメスに次ぐ、濃い目の新キャラ。その名も『正義ジャスティス』。

ジャスティス・フェルメアス。

クレイジーなディラをクレイジーと言わしめる存在。果たして、その存在成果を発揮できるのか!?

そして、クルセイダーと言う新たな組織___

物語は未だ、序章に過ぎない。

言ってみたかっただけです。すみません。


誤字脱字などございましたら、報告していただけると有り難いです。

それと、評価やブクマ登録もお待ちしております!僕が喜びます!

では、また。

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