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第八話『邂逅』

大変長らくお待たせしました。

創世の剣とは世界最強の剣だ。

選ばれると同時に、得られる膨大な魔力は、全身に力を漲らせ、虚無から物質を創り出す、正に神の身技の体現。


それは、単純であるが故に隙はなく、その絶大な力を持って、鋼鉄の皮膚を貫く筈だった。

創り出された巨大な樹が消滅する。

口の中がからからだった。息が出来ず、喉が詰まり、意識が朦朧としている。

それでも必死で息を吸い、再び再起した白象を見上げる。


「あら……倒したと思ったのだけど……♡」


「カカッ!流石に一筋縄ではいかぬのぉ。」


創り出した樹は何事も無かった様に消滅し、その白象の胸部は空の景色が見える程に巨大な穴が空いてもその力強さは全く衰えてはいなかった。


ありえ……ない。

心臓の位置する胸を貫いてなお、生きている?

神の身技に等しき創世の剣の力。確かにそれは凄まじい。だがこれは……その凄まじさを凌駕している。


天災級『八頭白象アイラヴィタ


数ある災いの中で最も『最悪』と呼ばれる、天からの災いプレゼント

これが、これが天災級……威力不足で討伐までに至らない、ならばわかる。


威力は十分。神に等しき創世の力。それを受け、胸を貫かれて尚そこで息をするこの生命力。ありえない。こんな事が。


……こんな事が起こっていい筈がない____


「……ルイちゃん!?」


突如襲いかかる脱力感。意識が真っ白に染まる。唐突に訪れたそれは、いわゆる『魔力切れ』だった。


意識が朦朧とする。視界は黒に塗り潰され、耳は音を拾わない。

眠りにつくような脱力感と倦怠感が僕を支配し、思考を刈り取る。


意識は空白に落ち、何もかもが黒に塗り潰され、僕は意識を失った。



***



再び再起する視界。感覚がない。しかし僕は、左手をつき、立ち上がった。意識は未だ朦朧としている。


「大丈夫なの?ルイちゃん?」


大丈夫です。そう口にしようとしても声は出ない。

僕は無言のまま、創世の剣を片手に白象へと近づく。


『ヴォォォオオオオオオ!!』


白象の脚が振り下されると同時に、身体が動いた。

地面を蹴り、風を纏い加速する。


白象の脚が創世の剣と交わった。

風を纏った剣の刃は白象の肉を容易く引き裂く。


白象の脚を蹴り、跳躍する。眼前に巨大な十六の眼の一つに接近し、刃を突き立てる。


手の感覚も、何も無い。

それでも身体は動いていた。

地面に足が触れたと同時。跳ねるように、足裏で地面を蹴り、再び跳躍。空中では不自由な身体を風が支え、その跳躍は一瞬にして白象の頭上まで到達する。


刃に風が渦巻き、竜巻の如く巨大な暴風を創り出す。

暴風は雲を巻き込み、太陽の光を遮る。創世の剣は想像イメージを反映し、それをこの世に創り出す。だがこれは、想像イメージのそれではなく……


『魔術』だった。


創世の剣から渦巻いた暴風は勢いを増し、風は刃という凶器に変わる。


一五の眼が、ギョロリと創世の剣に集中する。


そして、その風は振るわれた。


風は遮られる事なく白象に叩きつけた。


魔力切れであるはずの身体が、本来ならば無いはずの魔力を放出し、身体は熱く、昂ぶる。


風が止み、白象が未だ、健在である事を確認した。

何という耐久性、いやこれは不死性とでも呼ぶべきか?


制御の効かない身体は、白象の健在を確認すると、再び地面を蹴った。


沸騰したような熱い血が、体内を循環し、再び風が身体を纏う。


この身体は軽く。眼が風景を捉えきれない。

象の鼻が纏った風で受け流される。


まるで僕自身が風のように、流れるようにその鼻を斬りさいた。


「ルイちゃぁぁん!援護すんわぁん!」


ゴメスさんの拳の衝撃波が、白象の前脚を弾き、白象の体勢が崩れる。

白象が前のめりに倒れ大地が揺れる。


風を操り、身体を急降下させる。

剣先を振り翳し、一本の先端が尖った巨木が創造され、白象の脳天に突き刺さる。


『ヴォォォオオオオオオ!!』


白象の悲鳴は鼓膜を振動させ頭の奥まで響き渡る。

視界が大きく揺らいだ。


巨木を突き刺した頭とは別の頭が、その巨大な鼻で僕の身体を大きく横に弾き飛ばした。

全身が風の力を失い、地面に叩きつけられ、全身の骨が悲鳴を上げる。


それを聞こえていない、或は無視するように身体は再び風を纏い、まるでボールが壁に当たって跳ね返るように、鼻を振り回した頭に新たな巨木を叩きつけた。


「プリチィィィィタックルゥゥゥゥ!!」


タックルと言う掛け声と共に、生き残る頭に踵落としを放つゴメスさんを横目に、ゴメスさんの勢いに釣られ冒険者達が雄叫びと共に、倒れ伏した白象に襲い掛かる。


白象の抵抗は虚しく、冒険者達の勢いに負け次第に弱々しくなり、僕の身体が再びその巨体に、巨木を突き刺し白象はその息を止めた。



***



そして脅威は過ぎ去った。


雪の大地に斃れた。雪の美しさと並ぶほど純白の皮膚は、体内から止めどなく溢れる紅き鮮血に染まる。


八頭白象。アイラヴィタ。


その山にも匹敵する巨大な体躯と、それに繋がる八つの象の頭部は、正しく『天災』と呼ぶに相応しい相貌である。


「お疲れ様ねっ、ルイちゃん♡」


「……お疲れ様でした。ゴメスさん。」


あの戦いの後でも、ゴメスさんは全く疲れを見せてはいない。

簡易に作られた木の椅子に腰掛け、もう動く事のないアイラヴィタを見上げる。


怖ろしい。この世にはこの魔物と同等の力を持った怪物が山ほどいる。

『天災級』。それは人類にとってどれだけ危険であるかを示す指標だ。


天からの災い。なにもそれに分類されるものは魔物だけではない。

過去には『沈黙の皇帝』と呼ばれる今は亡き大皇国の象徴は、他者を寄せ付けないと程圧倒的な力を持った人間だったと聞く。


沈黙の皇帝は今から100年前に、『聖龍王』と『四神獣』によって、神聖地にて封印され、今もその封印は解かれてはいない。


しかし僕は、何故かこの胸に渦巻く違和感をしっかりと感じ取っていた。


「これから冒険者達への素材の山分けがあるから、私もそっちに向かうわねんっ♡」


「ああ、はい。いってらしゃい。」


冒険者達の集まる報酬の受け渡し口に、ゴメスさんが嬉々として混じりに行くのを見届けた。

その時、ほんの僅かなタイミング。

ゴメスさんの前にいた紫のローブを身に纏った男と眼が合った。


それは一秒にも満たない時間で、僕にとってはなんの記憶にも残らないであろうその時間は、僕にとって衝撃的な事だった。


「……沈黙の皇帝。」


意図せず溢れたその言葉に、自分でも首を傾げた。


沈黙の皇帝だって……?


何故僕は今、あの男の事を沈黙の皇帝と言ったんだ?

いやいや、沈黙の皇帝は100年も前に封印されている筈だし、それに僕は沈黙の皇帝なんて見たこともないのに………


僕はありえないと否定し、眩しく照らす太陽から逃げるように、椅子を持って日陰へと移動したのだった。

ども、ほねつきです!

……はい、皆様の言いたい事は分かります。

一ヶ月なんの音沙汰もなく、申し訳ないでございます。

いやはや、四月に入り私事がバタバタと忙しくなってしまい、こうして一ヶ月も放置してしまう結果になってしまいました。

こいつもう書くの辞めたんじゃねーのか?

そう思われたかな……と自分でも後悔しております。

辞めてません!

これからは、私事の方も前のように落ち着くかと思います、頑張って早め早めで投稿したいきたいと思います。

どうか皆様、お付き合いくださいませ!


さて、これにて『動きし白象編』は終了でございます。

『邂逅』とか大層なタイトルつけといて、大した事ないじゃないかとか、ツッコミどころしかありませんが、大目にみてください。

次回からは『沈黙の皇帝』こと、ディラさんの視点でしっかり書いていきます。お待ち下さいませ!

では、また!

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