第二話『桃姫こと、絶望』
ウホッ!(前話を一部訂正しました。)
ウホホイ!(ピンクメイド服→ピンクミニドレスに変更しました。
『ゴメス・プリチー・プリアーナ』→『ゴメス・モン・ピンキーヌ』に変更しました。)
ウホホイホイ!(大変申し訳ありません、把握おねがいします。)
ウホイ!(ではどうぞ。)
日も暮れ始めた頃、俺は冒険者ギルドに帰還した。
冬場冒険者ギルドは、人が疎らで殆ど機能していない程、物静かな筈だったのだが、俺が帰還した時には、普段殆ど見かける事のないギルド職員や受付嬢がフル稼働し、まるで夏場の繁盛期の様に慌ただしく動いていた。
「あっ!変態マンさん!……違った!フクロウさん!ご無事でしたか!」
「お嬢。お前わざと言ってるだろ。」
書類関係では最強を誇る看板受付嬢ことお嬢が、珍しく書類関係の仕事を片付けており、このギルドの謎の忙しさを物語っている。
「それで?……一体、この慌ただしさはなんだ?只事ではなさそうだが。」
何しろ普段暇な辺境ギルドがここまで慌ただしいのである。
これで何も無いとか言われたら流石に笑ってしまう。
「はい、実はですね、色々緊急事態が起こりましてですね……」
「ほぅ……」
なんだ?金髪のゴリラを討伐する緊急クエストでも発令したのか?
だとしたら是非やらせて頂きたいところだが。
「この件につきましては、ギルド長がお話しします。フクロウさんはギルド長室へお願いします!私はこの緊急事態を、書類で解決しなければならないので!」
そう言うと、普段の舐めた性格からは想像も出来ない程、真剣な表情で書類を作成し始めたお嬢を見て、慌ただしく書類やら何やらが行き交うギルド職員達の合間を縫って、ギルド長室へ向かった。
「失礼するぞ。」
「誰だい……今は忙しい………フクロウ君じゃないか!……すまないね、直ぐ君に聞きたいことがあるんだ!」
山の様な書類を軽く退かすと、椅子から立ち上がり俺に座れと指示してきた。
……座らないがな。
俺は近くの壁に背中を付け、ギルド長に説明を求めた。
「……そうだね、まずは君に聞こう。……山が動いた所を、見た事はあるかい?」
「……言っている意味が分からんが、山が動いた所を見た事はない。」
「そうかい、では事の発端から話そう。」
「………」
ギルド長は、一つ間を置いて語り始めた。
「このクロズエルから北西に位置する、コルトプールという商業都市から、突然連絡が途絶えたんだ。」
「ほぅ……」
興味深いな、本当に緊急事態じゃないか、これは何かが出たか、連絡系統に何らかの支障が起きた……とかかな。いずれにせよ、今の俺にはどうすることも出来ないな。
「直ぐに王国から調査隊が派遣され、コルトプールの確認がされたのだけど……」
このパターンは調査隊が帰って来ないパターンかな?
「調査隊がコルトプールに到着した頃には既に、何者かによって破壊された後だったんだ。」
「成る程、一大事だな。」
都市丸ごと破壊されるとは……都市には強力な冒険者や王国騎士の方々も居ただろう……それすら容易く退け、都市を破壊したとなると……『厄災級』か、それ以上だな。
「一大事なんだよ。……そして、調査隊が目撃したのは、巨大な白い山だったんだ。」
「白い山?」
「ああ、そうさ。信じ難い事に調査隊は、巨大な雪山が動いたと、口を揃えて言うのだから驚きだよね。」
雪山?巨大な………動く山?
『奴は雪山に擬態し、よっぽどの事でもない限り、殆ど動かん。』
頭の中にドラグの言葉が思い出される。
………そうか……雪山か………
「……フクロウ君?……何故、笑っているんだい?」
「……何?……そうか……笑っていたか……。気を悪くさせていたら謝ろう。」
「いや……そんな事は無いけど、どうしたんだい急に?」
思わず口角が上がりそうになるのを必死で抑え、無表情を作り出す。
「なに……少し、いい事があってな。」
「……そうなのかい。しかし、君がそうやって笑ったのは、初めて見たかもしれないね。」
「そうか?俺はそんなに、笑う事が無かったか?」
この問いにギルド長が笑った。
「本当にどうしたんだい?柄にも無いような事を聞いて………緊急事態で、頭がおかしくなったのかい?………でも、フクロウ君。君は前まで、凄く怖い顔をしていたよ。」
「そうか。それは、、、悪かったな。」
「その笑顔があれば、街の住人から好かれ易くなるのに。」
「別に人気者になりたい訳ではないからな。」
「そうかい。」
乾いた笑みが、数秒の間を支配し、沈黙が訪れる。
「所で、ギルド長。頼みがあるのだが。」
「フクロウ君が僕に頼み?一体なんだい?」
俺は壁にもたれるのをやめ、恥を捨てギルド長の前で頭を下げた。
「俺をその、動く山の調査に参加させて頂けないだろうか?」
動く雪山。
それは間違いなく『八頭白象』に違いない。
待っていた。遂に、牙を手にする事が出来る。
アイラヴィタを倒す?俺にはどうでも良い。
必要なのはアイラヴィタの牙だ。それさえ手に入れる事が出来れば、後は別に用は無い。
牙を手にする事が出来るのなら、今は何だってしよう。
「……いや、できない事は無いけど……なんで急に?」
流石に不審に思うか……
分かっていた事だが、今のは後先を考えていない行動だったな……
チッ、自分の迂闊さには呆れる。
脳みそをフル回転させ、言い訳を考えていた所で、ドスドスと何か大きな足音が聞こえた。
「ケルぅ♡お邪魔するわよぉ〜♡」
突然、悍ましい声と共にノックも無しに開けられた扉。
振り向けばそこには、ピンクのミニドレスを着こなした、あのゴリラがマッスルポーズを決め立っていた。
「ご……ゴメス……何故、君が……」
「あらっ♡嫌ねぇ、別に寄りを戻しに来たわけじゃないわよ♡……あら?貴方は、さっきの可愛こちゃんじゃない♡」
おい、今何か衝撃的な事を言わなかったか?
「………おい、ギルド長。まさかとは思うが、お前はゲイなのか?」
最悪だな。まさかこんな身近に、しかも相当な地位に立つ人間が、まさかこんなゴリラと関係を持つような『変態マン』だったなんて………
「フクロウ君。一応訂正しておこう。僕はゲイではないし、彼女は間違っても女だ。」
「何だと?」
……この化け物が?……嘘だろ?
何度ゴリラを見直しても、ミニドレスくらいしか、女であるという証明が出来ないのだが……
いや、待て。仮に女だとしても……
「ギルド長。お前は、こういう女が好みなのか?」
どちらにせよ、ドン引きだ。
お世辞にも女とは思えないし、まずこれは人種が違うだろ。もうこいつ魔物と言っても過言ではないぞ?
「違う!フクロウ君!僕の名誉にも賭けて言おう!彼女は昔、『桃姫』と呼ばれる程に美しい淑女だったんだ!」
嘘をつくなぁァァァァ!!!
淑女?……このゴリラが淑女だと!?
世界中の淑女に謝れ!いや、全ての女に謝れ!これは犯罪だ!!
「下手な嘘も、大概にしてくれ……こんなのが女なわけないだろ?」
「……『ゴメス』と言う名は、僕らの故郷の言葉で、『美女』を意味するんだ。」
嘘をつくなぁァァァァァァァァ!!!
もしそうだとしても、世界中の美女に謝れェェェェェ!!!
「フハッ!もう、この話は良い。ではな。ギルド長。例の件はどうか頼むぞ。」
一刻も早く。この空間から逃げ出したい。
なぜゴリラとゲイに挟まれ無ければならない。そして何故ゴリラ。お前はこんなに早くここへ来れたんだ。ふざけんじゃねぇ。
「あら、フクロウちゃん。貴方はまだ帰っちゃ駄目よ。」
そう言って、帰ろうとした俺の肩をゴリラは抑えた。
「……おい、この馬鹿力の何処が女だ?」
思わず愚痴を漏らしてしまう程の馬鹿力。
なんだこいつ、全力を出していないとは言え、片手で俺を止めやがった。
「あら、馬鹿力って嫌ねぇ、素晴らしき筋肉のチカラって言って頂戴♡」
「おいギルド長。これが女の言うセリフか?」
「くっ……昔は『桃姫』と呼ばれる程美しい、立派な魔術師だったのに……」
「あら、失礼ね♡今も、『桃姫』と呼ばれる立派な筋肉魔術師よん♡」
そう言って手を、ハートの形に作りポージングを取ってくるこのゴリラ。
筋肉の自慢はわかった。帰って良いか?
「今の二つ名は『絶望』だけどね。」
「ほぅ。それは的を射ているな。」
「その二つ名は私、認めて無いわよ!」
そうやってポージングを取るから『絶望』とか言われるんだよ。なんだ?ポージングとらないと死ぬのか?
落ち着け無いのか?
呪いか?ポージングを取らないといけない呪いなのか!?
自信は無いが呪解してやるぞ?
誤って『エタニティバスター』を照射してしまうかもしれないがな。
「……って、今はそんな話は良いわ♡フクロウちゃんも聞いてちょうだい♡動く巨大な雪山の正体はわかったわ♡私はそれを伝える為にここに来たのだから♡」
「………」
だったら今までの下りの時間を返せ。
用件だけ言ってとっとと帰れ!
本当に『エタニティバスター』照射するぞ?
取り敢えず俺は、このゴリラの事が本格的に嫌いになったり、ならなかったりしたのだった。
ども、ほねつきです。
連続投稿3日目です。さて、4日連続投稿はいけるのか?
やはり3日坊主な気が……
ですが、まぁ。序章の中でも盛り上がりの部分に入り始めたので、執筆速度は速くなると思います。(願望)
悪しからず。
ではまた。