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第六話『金欠の皇帝』

さっそく不定期更新になってしまいました!

申し訳ないです!ではどうぞ!

冬空の朝日も登った頃、俺は空腹を我慢しながら、冒険者ギルドへ向かった。


「チッ……寒いな。」


この不死身の身体も、何故か封印による影響を受け、体感や痛覚を感じるようになってしまっている。

寒いなんかは特に、手足が冷えて辛い。

ちくしょう……手袋が欲しい………マフラーが欲しい……


うぅ……寒い。


足早に冒険者ギルドへ向かい、暖をとる事にした。



決して俺は、テンプレなど信じている訳ではないが念の為、変な奴に絡まれないように、決して音を立てずに、冒険者ギルドへ侵入した。

クエストが貼り出されるクエストボードに、冒険者共が群がりかなり荒れているようだが、騒がしくも受付嬢達は気にした様子はまるでないので、多分アレが普通なのだろう。


あらやだ物騒だわ。


……なんてな。


冒険者の群がるクエストボードを避け、誰もいない暖炉の前に設置された長椅子に腰掛け、冒険者共が消えるのを待つ事にした。

断じて寒いから暖炉の前にいるのでは無い、今行けば絶対に絡まれる自信があるから、仕方なく・・・・こうして暖炉の前で待機しているのである。


「君、もしかしてフクロウ君かな?」


「む……そうだが、貴方は?」


ぬくぬくとあったまっていると………違う、仕方なく待機していると、背後から冒険者共とは違い、身なりの整った紺色の髪の筋肉質の男が、俺を見定めるような表情で、そこに立っていた。


「これは失礼した。私はこの冒険者ギルドを取り纏める、ギルド長。ケルディン・ハックフィードだ。済まないが、フクロウ君。付いてきてくれないか?」


「ああ。」


随分と丁寧だが、その身体つきと、しっかりとした足取りを見て、このケルディンと名乗るギルド長が、かなりの腕を持った戦士である事が分かった。

少なくとも、俺が見た中ではこの街で一番に強い戦士の筈だ。

その証拠にこの男は、受けのいい笑顔を作りながらも、決して俺に背後を見せないように立ち回っている。


面倒だな。


気を張り詰めすぎるのは嫌いなんだが、今こちらが気を抜けば、確実にこの男は俺を下に見るだろう。

見下されるのは癪に触る。が、馴れ馴れしくされるのも嫌だ。

殆ど他人と言っても良いくらいの関係が一番楽だ。

俺は暫く、目立たないように、地道に金を稼ぐ事に決めたんだ。


今借りている宿は、女将さんの優しさによって、特別に泊まらせてもらっている。

早く返さないと、俺の沽券にかかわる。


まさか金が無いなんて思わなかった。


お陰で飯も食えず、空腹を我慢する羽目になっている。


「さて、お互い警戒し合うのは、無しにしようか。」


冒険者ギルドの二階、その一番奥の部屋の前で、ギルド長は肩を竦めながら、そう言った。


警戒していた事は認めるか。


だがそれは口だけ、随分と砕けた態度を示しているが、実際には常にヘマをしないように、慎重に行動しているのが見て取れる。


まぁ良い、ここは言葉に乗ってやろう。


「そうか。それで、なぜ私はここに連れてこられたのだ?」


「それは、中で話そうか。」


扉を開けられ、中へ入った。

綺麗に整理された執務室だ。

お菓子やお茶類は流石に無いが、真っ当な執務室だ。

ソファーに座る事を勧められるが、ギルド長が座るまで、俺は座る事はしなかった。


「さて、単刀直入に聞こう。」


良いな、話が早いのは助かる。

ここには暖炉が無くて寒いからな。早く終わらせてほしい。


「フクロウ君。君はどういった事情で冒険者になろうと?」


なんだこれ、バイトの面接かなんかか?


「単純だ。旅の金を稼ぐ為だ。」


真実である。そこに虚偽はない。だが、この男は、まだ何かを探っている。

なんだ?何が目的なんだ?


「そうかい。なぜ旅を?」


「知っていると思うが、私は神官だ。修行の為に、今は旅をしている。その資金を集める為、暫くこの街で冒険者として金を稼ごうと考えている。」


神官ってのは本当に便利だ。神の教えを適当に教授してやれば、何かといい扱いをしてもらえる。職業不明の人間よりは、何か職があった方が信頼されやすいしな。

まぁ、俺が居なかった101年の間に、教会や『大教国・・・』の制度やらが大きく変わってしまっていたら、俺はかなり危ない橋を渡っている事になってしまうがな。


しかしそれは杞憂に終わった。


「成る程、理由は分かった。だがしかし、聞けば君は『製作者クリエイター』らしいじゃないか、そんな人間が冒険者なんて危険な仕事を、しなくてもいいんじゃないかな?」


製作者クリエイター』ね。俺が封印され100年経った今でも、やはりこの世界は大して魔術の文明が進歩していない。

製作者クリエイター』とは、その名の通り製作者だ。魔術陣を描き、魔術を作成し、それを売る事で生計を立てる職業のようなものだ。


いつの時代も人は、出来る人間と出来ないに別れてしまうが、魔術陣も似たようなものだ。描ける人間と描けない人間。描ける人間には、将来を約束される程安定した収入が手に入る。

ギルド長はつまり、そんな安定した収入を得られる人間が、なぜわざわざ冒険者なんて仕事をするのか、そんな単純な疑問だろう。


「簡単だ。私は旅する神官だ。苦行を乗り越えなければそれは、旅とは言えないからな。」


「ほぅ……分かった。君の言う事を信じよう。」


一体何を警戒していたのか、理由は全く読めなかったが、勝手に自己完結してくれたようなので、一安心だ。


「じゃあ、君にこの冒険者カードを発行しよう。」


渡されたのは地球で言う、運転免許証ほどの大きさの白い鉄のプレート。そこには魔術的に文字が彫られ、《冒険者ギルド・クロズエル支部発行》と書かれ、フクロウと言う俺の名前と、Fランク冒険者であると言う記載がされている。


「それは君の身分を証明するものでもあるから、決して失くさないように、再発行は金貨一枚掛かるからね。」


「ああ、気をつけよう。」


これは袖の中に控えるフォルテに渡し、管理してもらおう。


「じゃあ君はこれで、新人冒険者になった訳だが、どうだい?ギルドの説明は必要かい?」


面倒だな。


「いや、予習はしている。結構だ。」


「へぇ……そうかい、それなら頑張ってね。」


「失礼する。」


適当に挨拶を済ませ、部屋を後にする。

早速だがクエストに行こう。やはりFランクの冒険者では、討伐のクエストは受けづらい、それに俺は神官だ。下手に目立つのは避けなければならない。


………となると、やれる事は限られるが……


「よし。」


クエストボードの端に貼られた、Fランク推奨のクエストを取った。

それを昨日も見た受付嬢の元に持って行き、手続きをしてもらう。


「はい!【薬草採取】のクエストですね!……はい!手続き完了です!薬草は隣の解体屋に納品をお願いしますね!では、いってらっしゃい!」


やはり無難だな。【薬草採取】のクエストは、毎日のようにクエストボードに貼られる。薬草は、冒険者や薬屋に多く需要がある。

だが、低賃金な上に地味だし時間と労力が必要な為、殆ど請け負う人間が少ない。

つまり競争相手など存在しない訳で、じっくりと誰にも邪魔もされずにクエストに打ち込める訳である。

それにFランク冒険者である俺に、ピッタリなクエストだ。


街の門を抜け、森の中へと入り、人の目が無くなった所でフォルテを袖から出し肩に乗せる。


「バンシィサマ。【ヤクソウサイシュ】デ、ヨカッタノデスカ?」


「ああ。勿論だ。良いかフォルテ。何事もな、目立たないように行動するには、他と同じように正攻法で行動する事が大切なのだ。」


「ナルホド。」


コクコクと頷くフォルテは、本当に理解が有って助かる。

もしこれが、ダルクやガンマだったりすると、「関係ありません!そんな奴ら潰してしまいましょう!」なんて言うに決まっているからな。

本当にフォルテは優秀だ。


「バンシィサマ!アノ、キノカゲニ、ヤクソウガアリマス!」


「なに?……本当だな。流石だフォルテ。」


木陰に見つけたのは、【ハナミソウ】と呼ばれる、薬草の一種で主に、風邪薬の材料に使われる。

冒険者達に需要があるかは知らないが、念の為採取しておく。

が、しかし……今になって重要な事に気がついた。


「バックが無いな。」


「ア……ソウデスネ。」


失態だ。薬草を採取しても、しまう袋がない。


……畜生ちくしょう。こんな事になるなら、ナイフなんて買わなければ良かった………

バックを買う金は残念ながら無い。


今の所持金はゼロだ。


金欠と言うか、『金無し』だ。


俺の第一目標が、バックを買う事になったのは言うまでも無い。

その日はローブのフードの中に、薬草を入れ、手にも持てるだけ薬草を持ち、街の住人や他の冒険者達に醜態を晒しながら、冒険者1日目を乗り越えたのだった____________




因みにクエスト報酬は銅貨三枚だった。


……ちくしょう________


やはり目立たずには、いられないディラなのです。

悪目立ちしないように、、、と言っておいてこの有り様。

悪目立ちしまくりですね。ハイ。

では次回、『薬草の皇帝』。

投稿日は不明ですが、早めに投稿します!では、また!

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