ーエピローグー 『sideナガト』
最後です。
タリウスの結婚式の後、俺は部屋の一室で身支度を整えていた。
世界は救われた。
勇者なんて必要無く。
世界を救ってない勇者は勇者なのか?
分からない。
俺はもう、元の世界に戻ろうなんて思わなくなった。
何だかんだでこの世界に慣れてしまった気がする。
それに俺はまだ、やる事がある。
少しのお金とアイテムボックスを持って、俺は部屋を後にした。一枚の置き手紙を残して。
新都市マギアは素晴らしい発展を遂げている。道は舗装され、学校や商業施設に住宅地、西洋風な街並みだけどこの都市は俺のいた世界に近づきつつあった。
世界には平和が訪れた。
邪神も無く、魔物は出るけど冒険者達が討伐する。至って平和な世界だ。……でも、本当にそうだろうか?
平和は戦争の上に成り立っている。華やかなものの裏には影がある。
俺はその全てを知らなければならない気がした。
世界は広い。強いと思っていた自分の力は、神官一人にあっさりと越えられていた。
ディラデイル……
その神官は言った。『勇者』とはなんだ?……と。
考えなければならない。勇者の意味を……その為には、もっと世界を知らなければいけない。そんな気がした。
布の外套を羽織り、フードで顔を深く隠す。
ここで誰かに見つかったら笑い者になってしまう。
幸いなことに、誰にも気にされることもなく、マギアの門をくぐる事が出来た。
整えられた道を外れ、森の中へと進んでいく。
まずは軍事国家の帝国に行こうか……そこから世界を旅しよう。
心に決めた時、目の前に人が現れた。
「ナガト。何処へ行くの?」
現れたのは長い青髪を下ろしたリンだった。身の丈以上の杖をつき、白いローブを身に付けていた。
「リン……通してくれ……」
「質問に答えて、何処へ行くの?」
こうなったリンは頑なに動かない。それを分かっていて俺はため息を吐いた。
「勇者の意味を探す旅に出る……」
「そう。なら私も行くわ。」
「は?」
急に態度が変わり、俺の横に引っ付く様に立ったリンに、戸惑いが隠せない。
「え?……なんで?」
「何故と言われると、勇者の意味の答えは何なのか、気になったので。」
「いやいや、でも俺は一人で探したいんだけど?」
「二人の方が乗り越えられる壁が多いのでは?」
「んん……」
結婚式で神官ディラデイルの手紙に出てきた言葉。
確かに頷ける話だったので、違うとは言えなかった。
「では、決まりですね。さて、何処に行きますか?」
「………なんかなー……」
違う気がするけど、まぁ、良いか。
一人より二人の方が楽しいし。
そして俺とリンは、勇者の意味を見つける為に、世界へと旅立った。
その後、彼らは世界を周り数々の人と出会い、別れ、そして出会いを繰り返し、その生涯は彼らが最期に辿り着いた名も無き小さな島で幕を閉じたのだった。
《『勇者』スキル『不屈の心』が発動可能です。》
《Continue? YES NO 》
『NO』
《OK! "Game Over" The good life.》
___fin___
最後まで読んでいただきありがとうございます。
最後ですが……ども、ほねつきです。
約二年かけ、この駄作も幕を閉じました。皆さまお付き合い頂きありがとうございます。
これからもディラは不死身の生涯を送って行く事になります。この『不死身の神官』が、皆様の頭の片隅にでも置いて頂けていたのなら、嬉しい限りです。
今までありがとうございました。
それではまたいつか、会えると幸いです。
では、また。