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ー第2話ー 『ホウレンソウ』

アイナちゃんとNNが、『マギア』から出て行った事を確認して、俺は転移を発動した。




転移した先は俺の家の庭。おっさんがフォルテを踏み砕いているその背後に転移した。


「むっ、バンシィか。」


転移して間もなく、振り向かずに俺の存在を言い当てるおっさん。


「ああ。」


「………のう、バンシィよ。いくつか聞きたい事がある。」


おっさんの普段は見せない真剣な雰囲気。色々と引っかかる事があるのだろう、おっさんは肩をフルフルと震わせていた。


「なんだ?」


「こ……この………」


「あ?」


「この面白い魔物はなんじゃっ!!」


うるさいな。


おっさんは嬉々としてフォルテを踏み砕いて、再生した所を踏み砕く。なんとも性格の悪い事をして喜んでいる。

フォルテが少し可哀想なので止めてやろうと思っていたのだが………


『……フォォォォ!!!』


と、聞こえた訳では無いがそんな感じで頰を赤らめビクンビクン痙攣していたので、触れずにおいた。


「ゴーレムだ。ダンジョンで捕獲した。」


「おおう!ダンジョンか!成る程、だからこれ程の再生力を持っておるのか!」


ある程度、楽しんだのかおっさんは砕け散ったフォルテを箒で集め、置いてあった木の箱にしまうと、箱ごと家の中に入れた。

またこいつは家に余計な物を入れやがったな………


おっさんがフォルテを家の中にしまって出てきたと思ったら、再び真剣な表情で腕を組んだ。


「さて、真剣な話じゃ。」


「なんだ、さっきのは真剣じゃなかったのか。」


真剣な話なんて面倒なだけなので適当なこと言って話を伸ばすが、結局は伸ばしているだけ、普通に話を進められた。


「まずは、何故。バンシィ一人だけなのじゃ?シャンにダルク、ベータとガンマはどうした?」


「あ。」


忘れていた。


「『来い』」


四匹の名前を呼んでやるのは面倒だと、詠唱をハブって召喚陣を用意する。


「わー!やっと帰れたー!」


真っ先に出て来たのは少年のダルク。


「じ……地獄から解放された……」


今にも死にそうなボロボロの体で現れたのはガンマ。

一体どうしたのか、聞こうとは思ったが全員が戻って来てからにしよう。


「ううぅ……海が恋しい……」


そう言って出てきた、やはり死にかけのシャン。「海が恋しい」とか言ってる辺り、多分海に入れなかったのだろう。


「バンシィ様。全員無事にキカンしました。」


「ああ、ご苦労。」


最後に出てきたベータは、何故か全身傷だらけだが、平然としている。


全員が来た所で、召喚陣を解除し取り敢えず傷だらけのベータとガンマを回復してやる。


「あぁ……ありがとうございます……バンシィ様……」


「バンシィさまー!!酷いですよー!何で一人で帰っちゃったんですかー?」


うるさいな。

ダルクの頭を地面に叩きつけて、少し黙らせる。


「それについてはうっかりしていた。」


「うっかりじゃだめですよー!!」


復活したダルクを再び地面に叩きつける。


「はぁぁ………」


傷が癒えたガンマは本当に疲れている様で大きなため息をついた。


「しかしお主ら、何故そこまでボロボロなのじゃ?」


「「「ダルクの所為です。」」」


おっさんの問い掛けに、三匹が口を揃えてダルクを指差した。


「えー!違うよ!元はガンマとシャンが悪いんだよ!」


プクーッと頰を膨らまして否定するダルク。しかし……全く事情も知らない俺だが、何となくダルクが悪い気がする。


「一体、何があった?」


「バンシィさまぁー!ガンマが僕達を置いて、飛んで帰ろうとしたから悪いんだよ!」


「お待ち下さいバンシィ様!私は助けを呼びに行こうとしただけなのです!」


ダルクの証言を、ガンマが必死に訂正する。


「私は助けを求める為、アムリタ様かドラグ様をお呼びしに行くと言ったのですが………ダルクの奴は、私が一人で帰る気だ!とか言って空を飛ぼうとした私を撃ち落としたのです!」


「ほら!ガンマが悪いじゃん!!」


「どこが!?」


うん。ダルクが悪いな。


「バンシィ様。僕も似た様に、海から助けを求めに行こうとしたら、ダルクに邪魔されました。」


「邪魔してないもん!海を割っただけだもん!」


うん。ダルクが悪い。


「ふむ、それでベータはどうして傷だらけなのじゃ?」


「はい。それが原因でガンマとダルクが喧嘩を始めたので、止めに入ったら乱闘になりました。」


ベータが申し訳なさそうにそう語る。


うん。結果。


ダルクが悪い。


「バンシィさまっ!僕悪くないですよね!?」


「いや、お前が悪い。」


「ええーー!?なんでーー!?」


うるさいな。


「しかしダルク、何故お前は無傷なのだ?」


ダルク以外の三匹は傷だらけだった、ベータが言ったように乱闘になったのならば、ダルクも、と言うか主犯のダルクが傷一つ付いてないのはおかしい。


「それはですね!バンシィさま!僕は、回復魔法が使えるんですよー!」


「なんだと?おっさん、教えたのか?」


「いや、我は回復魔法は使えぬよ。」


そうだったな。忘れていた。だったら何故、ダルクが回復魔法を?ドラグか?ドラグが教えたのか?


「一体誰から教わった?その回復魔法……」


「それはですね!ニンゲンのタリウス・・・・って奴から教えてもらいました!」


「………は?」


今こいつなんて言った?

え?タリウス?


「おい、そいつは『雷剣』のタリウスか?」


「うーん、そうだった気がします!」


「待て、何故お前はタリウスと出会っている……ガンマやシャンなら分からんでもない、表世界に移動出来るからな……だがダルク、お前は表世界に行ったのか?」


「何回も行ってます!」


にぃと笑い腰に手を当て胸を張るダルク。


「どうやって?」


「それはですね!ダンジョンが向こうの世界に繋がっていたんです!」


ダンジョン?一体こいつはなんの話をしているのだ?


「どう言うことだ?」


「僕の寝床の近くに、ダンジョンに入れる穴があるんです、そこからずーっと深くに潜って、ずーっと真っ直ぐに進み続けると、ダンジョン『エリア1』って言うダンジョンに繋がっているんです!そこから外に出て遊んでました!」


おい、こいつとんでもない事言ったなおい。

は?こっからダンジョンを通って向こう側に行ける?

そもそも、この島にダンジョンなんてあった事自体、初めて知ったんだが……


「知っていたか?おっさん。」


「まさか……この島にダンジョンがある事すら知らんかったぞ。」


「やはりか。」


よし、決めた。


「痛いっ!バンシィさま!どうしたんですか!?」


「良いかダルク?必ずな、面白い事があったら報告しろ、ホウレンソウだ。」


「ホウレンソウ?」


首を傾げるダルク。

いやいや、いつの間に向こうに居たんだよ、気づかなかったぞ俺。


「いつからだ?お前が表世界に行ったのは?」


「えっと……7年くらい前からです!」


そんなに!?いや、待て。表世界に行っても、こいつ人化の魔法は使えない筈では……


「バンシィさま。実は僕、自分で人化の魔法が使えます!」


「なに?」


パチンとダルクが指を鳴らすと、光に包まれ、少年の姿だったダルクが、そのまま大人になった様な姿に変化した。


「なんと……」


流石のおっさんも、びっくりの様だ。


「それも、誰にも教えてもらってないのか?」


「はい!僕がアムリタ様がやっていた事を真似しました!」


「なんじゃと!?」


今にも目が飛び出しそうなおっさんを見ながら、俺は少し考えた。



…………犬って頭良いんだな。



そう言うことにしておこう。うん。もう考えるの面倒だ。


「念の為に聞いておくが、ダルク。お前、向こうでなにをやっている?」


「えっと……向こうでは、『ダンジョンブレイカー』って呼ばれてます!」


なにその二つ名!カッケーなおい!


「つまり、冒険者か……」


「Sランクです!」


「なに!?」


知らんぞこんなSランク冒険者……よし、後で冒険者の書類を漁って探そう。ランクダウンさせてやる。


と、ただの嫌がらせを思いついたが、やった所でなんのメリットも無いからな……


「……もういい、わかった。お前達、ご苦労だった、また自由に過ごすと良い、ダルク、お前は後でそのダンジョンの場所を教えろ。」


「はーい!」


「フン……解散。」


俺の号令と同時に、ダルク以外の三匹が人化を解いてそれぞれの住処に帰って行った。

え?待って、シャンってイルカ形態でも陸上で移動出来るんだな……

凄いあの……ドス◯レオスみたいな移動の仕方するだな……


一件落着、家に帰ってダラダラしようとしたら、おっさんが声をかけてきた。


「待て、バンシィ。なんか解決している様じゃが、まだ我は質問が余ってるおるのじゃが……」


「えぇ……面倒くさい。」


はぁ……と大きくため息をついたら、おっさんが困った顔で、


「え、そんな露骨にため息つかなくても……」


とか言い出したので思わず笑いそうになった。


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