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ープロローグー 『世界魔力選別』

大変長らくお待たせしました。

気が付けば知らない天井が出迎えた。


「………ここは……」


「気がつきましたか、ナガト。」


ハッと声がした方を見てみると、紅茶を嗜み椅子に腰掛けるリンの姿があった。


おかしい。俺は、ディラデイルと戦っていたはず……


「……なぁ、リン。ディラデイルは?」


俺の問いかけにリンは小首を傾げた。


「ディラデイル?その方はここには居ませんが……」


「居ない?……俺はどうしてここに?」


「ダンジョンを攻略した後、ナガトは疲労が溜まっていたのか、この『マギア』に帰って来た途端、気を失って倒れたのですよ。」


「気を失った?」


そんな筈はない、俺は確かにディラデイルと戦った筈……


「ナガト。貴方が何を考えているか分かりませんが、夢だったのでは?」


「夢……」


夢にしてはあまりにも現実味のある夢だ。あいつディラデイルの剣の動き、力強さ、全てが本当に起きた出来事のようだ。


「ナガト、大丈夫ですか?」


「え、ああ……あまり、『マギア』に来た記憶がないんだ。」


「ナガトは魔力が尽きかけでしたからね、記憶が曖昧なのも仕方ありません。」


リンはそう言って紅茶を飲み干すと、一つ小さな咳払いをして立ち上がると手元から魔法陣を発生させ、その中から身の丈程の杖を取り出し床を突いた。


「王国連合より勅命を受けました、内容は復活する『邪神』に対抗する為の『マギア』の防衛。」


「防衛?」


こちらから邪神を倒しに向かうのではなく、この『マギア』の防衛?


「はい。邪神復活時、予測される出来事は魔物達の暴走。恐らく今まで見たこともない程の魔物が大量に現れるでしょう。その為、非戦闘員を護る防衛を、この『マギア』に築くとの事。」


「『邪神』の居場所は……分からないのか?」


「はい。ですから私とナガトは、この『マギア』を防衛し『邪神』が現れるのを待つそうです。」


「俺とリンは……って事はタリウスとリーリャは?」


「タリウス、リーリャの両名は、教会代表議会委員バズズ・キンダム・サン陛下の護衛に当たる。」


バズズ・キンダム・サン……元教会最高聖神官の護衛?一体なぜ?いくらなんでも教会の元トップだからって、タリウスやリーリャを護衛に付ける意味はあるのか?

俺とリンの様に首都の防衛に当たった方が絶対にいい気がするけど。


「何故、バズズ陛下にあの2人を護衛に付けるんだ?」


「詳しくは分かりませんが、何か王国連合で作戦があるのでは?」


作戦ねー……居場所も分からないのに作戦なんて立てようがないと思うんだけどな………


「そっか、それじゃあ俺たちはこの『マギア』を護る為、頑張ろうか。」


俺はベットから降り、軽いストレッチをしながらそう口にした。


「ええ、もちろんです。」


リンの同意の声が、ため息の様に聞こえた。


________________________________________________________________



バズズ様を見送った後、俺はデスクに置かれた電信機を使い、ビービを呼び出した。


「ひぇぇぇ……お呼びですか?」


「ああ。」


デスクに腰かけ脚を組み、見下す様な位置でビービを歓迎した。

え?歓迎する様な態度じゃないって?俺の方が偉いからそれは良いんだ。うん。


そんな事はどうでも良い。ビービを呼び出したのには訳がある。訳がないと呼び出さない訳だが。


「ビービ特級神官。」


「は、はい!」


「ギルディークは魔法が使える様になったか?」


「ひぇぇぇ……高位聖神官様ぁ……流石に獣人の方に魔法を使える様にするのは無理がありますよぉぉぉ……」


ギルディーク、憶えているだろうか?白銀の尖った耳を生やした獣人の父親の方だ。

ビービを読んだのはそのギルディークを、ちょっと使いたいから。


「まぁ、構わん。ギルディークを連れて来てくれ。」


「ひぇぇぇ……わかりましたぁぁ……」


そう言って部屋を出て1分程でビービはギルディークを連れもどって来た。

早いな、完璧か。



「高位聖神官様、呼んだか?」


敬語とタメ語を巧みに使いこなすギルディークを前に、俺は少し口元が緩んだ。


「ギルディーク。貴様にやって貰いたい事がある。」


「へー!もちろん金は弾んでくれんだろ、ますよね?」


敬語使い辛いならもうタメ語で喋れよ、聞き取りづらいわ。


「報酬は五万チールだ。」


「へへっ、乗った!いや、是非やらせて頂きます!」


「フッ……ならばまずはこれを着ろ。」


そう言ってアイテムボックスから取り出したのは俺と同じ黒いローブ。

それをギルディークに投げ渡す。

俺と同じ黒いローブ。色々と細工はしてあるが、それ以外俺が着ているものと全く同じだ。


ギルディーク、コイツは俺の『ディラ量産計画』の第1号になってもらう。


魔法が使えなくてもこの際どうでもいい。


取り敢えず、やって貰いたい事がある、それだけだ。


「よーし!着たぜ!後はどうするんだ?」


「では、予め装備を渡しておこう。」


そう言って再びアイテムボックスから取り出したのはポーチ付きのベルト。ポーチの中はアイテムボックスが仕込まれ、そこにはこの時のために用意しておいた、ありとあらゆる状況に対応できる魔術を羊皮紙に描いて入れてある。

あと、持てば誰でも一流剣士になれる『名刀電光◯』ならぬ、『名剣ヒト殺シ』を入れておいた。これを持てば、殺したいと思った敵を、容赦なく無慈悲に切り刻んでミンチに出来るスグレモノだ。


……出来れば使わないで欲しい。


「おっ、これは何だ?」


そう言ってギルディークが取り出したのは『食糧を召喚する魔術』が描かれた羊皮紙だ。

正直、魔術は魔力操作に長けていない奴だとただの紙切れになる、魔法が使えないギルディークには宝の持ち腐れか?


と、そんなことを考えていたら魔術がギルディークの手によって起動された。


「おっ?肉が出た!」


羊皮紙が破裂し肉が現れると、ギルディークは喜んで肉にかぶりつく。


しかし、何故だ?獣人は魔法が使えない筈、だが魔術は起動した。つまりあれか?獣人は魔法は使えないけど魔力操作は出来るとか、そういう事か?


まぁいい、そういう事にしておこう。


「そのポーチには様々な魔術が入っている、どこかに説明書があるからそれを読み込んでおけ、あと剣は使うな。わかったらそのポーチはローブの中にしまえ。」


「おう!……じゃなくてはい!」


「ひぇぇぇ……高位聖神官様ぁ……一体何を……」


黒いローブを着させた事には何も言わなかったが、流石に魔術や剣が出てくると何かを感じて話しかけてきた。


「ビービ特級神官、今俺がやっている事は最重要機密事項だ。分かったな?」


「ひぇぇぇ……わかりましたぁぁぁ……」


俺がちょっと圧かけただけで直ぐに縮こまって部屋の端の方で見守るビービ特級神官………

流石にビビり過ぎだと思うが……


まぁいい。


ギルディークがポーチをつけた事を確認して俺は話を進める。


「ギルディーク、これは絶対に守って貰いたい事がある。」


「おう、なんでしょうか?」


俺は創造魔法で作っておいたある物をギルディークに手渡す。


「……これは、仮面?」


「貴様はこれから、この私、『ディラ』として教会の役にたって貰いたい。その仮面は、素顔を隠す為のものだ。」


ギルディークに渡した仮面。それは俺がつけている仮面とは違い顔全体を覆い隠す銀色の仮面だ。

もちろん視野の確保をする為、眼の部分は外から見えない半透明のレンズを使いギルディークの視界は確保している。

ただ、鼻と口は覆われているので息はしづらい。それはまた改良していくつもりだ。

今は面倒だからやらんけど。


「へー、つまり俺は『ディラ』の影武者って奴か?」


「違うと言いたいところだが、似たようなものだからな、そう言う捉え方でも問題ない。ただお前は仮面を被る間は『ディラ』を名乗って事を成し遂げてもらう。」


俺が命令口調で話してもギルディークはうんうんと頷き、何のためらいもなく仮面を被った。


「それで、私は何をすれば良い?」


おぉ、凄え俺にそっくりだ。


「ひええぇぇぇ?」


「ギルディーク、貴様そんな特技があったのか?」


「ギルディーク?なんの話だ、私はディラだ。」


ああ、もうそこまで役に徹してるのね。真面目な事で、だが、俺の想定を良い意味で裏切ってくれたギルディーク。こいつ有能だな。


「フッ……ではディラ。貴様にはバズズ様に気付かれないよう、遠巻きに見守るのだ。」


「了解した。だがディラ、それになんの意味がある?」


自分そっくりな声で聞かれると、なんか変な感じだな。


「所謂バズズ様を監視しろと言う事だ。良いか?何があってもバズズ様、そしてバズズ様の護衛には絶対に接触、発見はされるな。ただ、見守るだけで良い、何が起ころうとも絶対に手を出すな。」


「見守るだけ、それで良いのだな?」


「そうだ。何が起ころうとも、貴様は絶対に手出しをするな、事が起きれば私が動く。バズズ様、もしくはその護衛がアクションを起こせば、仮面の顎の部分を触れると私と直接念話が可能になる。もしもの時は報告と相談をしろ。良いな?」


「理解した。」


「フン……ならば今からだ、まだバズズ様はそう遠くには行ってはおられないだろう。兎に角バズズ様と護衛に気づかれなければそれで良い。任せたぞ。」


「仰せのままに。」


そう言って部屋を飛び出していったギルディーク、うん。多分大丈夫だろう。これで、もしもの時の対策はできた、後は俺がおっさんやドラグにも協力を仰げばそれで良い。


「ひええぇぇ……あの、高位聖神官様ぁぁ……」


「ビービ特級神官、ここで見た事聞いた事、くれぐれも内密に、あと念の為訂正しておくが、これは私の命令ではない、イリアル様のご命令だ。」


「ひぇぇぇ……分かりましたぁぁぁ……」


ビービから見れば俺が命令していると、俺が何か企てている。なんて見られる可能性もある。下克上とか絶対しないが事情も知らないビービには、俺が何か良からぬ事を企んでいる。なんて見られてもおかしくないからな、ちゃんと訂正しておいた。


さて、ビービにはさっさと元の仕事に戻ってもらい、俺はソファで深い眠りにつくアイナちゃんにそっと毛布を掛けておいた。



これからが忙しくなる。


『邪神』はバズズ様がきっと封印してくださる、だがまた封印を解かれる事も考えなければならない。そうならないために、予めそう言う芽は摘んでおくに限る。

まずは『魔王の徒』。Dr.グロウは本腰入れて殺しに行こう。


そうと決まれば早速、この世界を片っ端から探してやろう。


この俺の本気。


世界全体を魔力感知で覆い、そこからDr.グロウと思しき人物を一気に絞り込む。後は千里眼でその魔力の正体を確認して、その研究所ごと消滅させてやる。


さてと、


椅子に座り脱力して、身体の中の魔力を体外に放出する。


世界ワールド魔力マジック選別セレクション


その瞬間、俺を中心に魔力感知の波が世界全体に広がった。






…………そこか。




ども、ほねつきです。

色々あって『小説家になろう』すら開けず、結構な間が空いてしまった気がします。申し訳ないです。

これからは、余裕ができそうなので、2日に一回、いえ、3日に一回………いや、4日に一回………やっぱり一週間に一回のペース………最低でも一週間に一回のペースで頑張ります。

……と、何度も言っている気がしますね………


まぁ、いっか。


この最終章、自分で言うのもアレですが、ディラが最高に輝くと思います。


では、また。

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