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ー第18話ー 『説明が面倒だ。』

どうも、お待たせしました。

バズズ様からダンジョン『エリア1』を攻略せよと、命令を受けた訳だが、別に俺一人で行っても全く問題は無い。だが、バズズ様には二人で行きますと言った以上、取り消しはしたく無い。



……と、言うわけで今俺は、誰を連れて行くか、それを考えながら廊下の真ん中に立っている。


良く考えたら、俺に、教会の中での知り合いがほぼ皆無だと言う事実に気がついた。


廊下ですれ違う神官達は、名前も知らない神官ばかり、あれ?俺ってもしかしてボッチ?


………思い返せば確かに、俺は教会にいる人間と殆ど関わりがない。そもそもこのマギアに事態いない訳なんだが。

……これはマズイな。これでは、パシリも出来ないじゃないか。


「ひぇぇ……ディラ様ではないですかぁ……」


「あ、ディラ先生!」


俺があれこれ考えていると、目の前には、何やら魔道書らしき物を五冊ほど抱えた秘書のビービとアイナちゃんの姿があった。


「む……ビービ特級神官に、アイナちゃんか。」


そう言えば忘れていたが、秘書のビービにアイナちゃんの面倒を見てもらう様に頼んでいたのだったな。


「ひぇぇ……ディラ様、何故この様な所で立っていらしているのでしょうか?」


「いや、なに。少し考えごとをしていてな。」


「廊下の真ん中で、立ってですか?」


「む……」


痛い所を突いてくるな……アイナちゃん。そんな所がすごく、NNにそっくりだな。

まてよ……NN?


そうだ!アイナちゃんはNNじゃないか!!だったら、もう、アイナちゃんをダンジョンに連れて行こう!


一番連れて行っても問題なく、それなりに実力もある!なんだ、こんな簡単な問題だったのか!


そうと決まれば早速実行。


「そんな事よりだ。丁度良い。アイナちゃん。君はダンジョンに潜った事はあるかい?」


突然の俺の質問にアイナちゃんは戸惑った表情を見せたが、直ぐに答えてくれた。


「いえ、私はまだ、ダンジョンに入れる様なランクでは無かったので……」


「そうか。」


アイナちゃんはダンジョンを攻略した事はないか。

うーん、俺は入った事はあるがな、攻略ってやった事ないからな、どうすれば良いのか、全く分からん。そうだ、後で本屋行ってダンジョン攻略の指南書でも買って来るか。


「あの……ごめんなさい。」


俺が何も言わないでいるとアイナちゃんが、今にも泣きそうな顔で謝ってきた。辞めてくれ、俺が泣かせたみたいになるから。


「いや、なに。問題ない。アイナちゃん。明日から少し、俺と一緒にダンジョンを攻略しに行こう。」


「ひぇぇ……」


「ダンジョン……攻略……ですか?」


「そうだ。少し手強い魔物が出るらしいが、そんなに時間はかからん。どうだ?行くか?」


いや、待てよ、443階層まで潜るから、時間はかかるか?

いや、めっちゃ掛かるな。


「わかりました!行きます!」


時間について訂正しようと口を開けたが、それよりも先にアイナちゃんが心を決めてしまった。

まぁ、良いか。時間がかかったらかかったで……


「そうか。ならば、明日の朝、ビービ特級神官が呼びに行く。それまで自身の装備を整えておいてくれ。ビービ特級神官、任せたぞ。」


「ひぇ?」


俺は多分、一万チール程入った皮袋を秘書のビービに手渡し、アイナちゃんの事は丸投げした。


「それで色々準備を手伝ってあげてくれ、それと、アイナちゃんの部屋を用意してあげてくれ。頼んだ。」


「ひえぇ!?」


「ああ、食糧と道具は此方で用意する、それは好きな様に使え、余ったらお洒落な服を買っても構わん。では、アイナちゃん。また明日。」


「え?あ、はい。」


俺は、止められる前に足早に二人の後を去り、マギアに広がる商業街へ向かったのだった。



_________________________________________________________________________________________________________



「おはようございます!ディラ先生!」


「ああ、おはよう。」


準備を万全に整えた俺とアイナちゃんは、バズズ様のいる、執務室前に集合した。


「……今から、バズズ様にご挨拶ですか?」


「そうだ。」


何を当たり前の事を言っているのか、アイナちゃんは俺が肯定すると、ピッと背筋が伸びた。

そこまで緊張しなくても良いだろ……


俺は扉をノックして、入室許可を取らずに扉を開けた。


「おはようございます。バズズ様。」


「おおお、おはようございます!」


だからアイナちゃん……そこまで緊張しなくても……


部屋に入ると、椅子にドッシリと構えたバズズ様と、お茶を注ぐイグザの姿があった。


「うむ、おはよう。」


「おはようございます。ディラデイル様、それとNN。」


あ、やっべ。やらかした。


「え……イグザ……?」


もう遅いか……ちらり視線を変えると、驚愕の表情を見せたアイナちゃんと、頭にハテナが浮かんでいるイグザの姿があった。


「どうしました?NN。そんなに驚いた顔をして、私の顔に何か付いていますか?」


「どうしてって……え?」


辞めてくれ、アイナちゃん。そんな顔で俺を見ないでくれ……違うんだ……これには訳があるんだ……


「ふむ、イグザよ。今のNNはアイナ・フェルトゥーレじゃ。そこは間違えてはならぬぞ。」


「そうでしたか、申し訳ありません。アイナ。どうかしましたか?」


ヤバいヤバいヤバい。

アイナちゃんになんて言えば良いんだ?

と言うかそもそも、アイナちゃんの中でイグザはどう言う位置づけにいるのか知らない。

だから下手なこと言って話が噛み合わないとか、一番最悪だ。


「何を言って……イグザ……あなた、死んだ筈じゃ……」


「死んだって……一体いつの事ですか?」


あ、もう話が噛み合ってないわ、コレ。

チッ……俺が何とか誤魔化すしかないか。


「アイナちゃん。イグザについては後で話そう。すまんがイグザも、話を進めさせてもらう。」


この場で訂正するとか、絶対時間がかかる。それは面倒なので、ダンジョンに向かってる間にアイナちゃんだけに訂正しておこう。

イグザに何言っても無駄だし。


「あ、すみません。」


「ごめんなさい。」


そんなにしょんぼりしないでくれ!アイナちゃん!それにイグザも!!

俺が悪いみたいじゃん!


大事な事だから二回言っとくぞ!


俺が悪いみたいじゃん!



「うむ、して……ディラよ。連れはアイナ・フェルトゥーレで良いのだな?」


「はい。バズズ様。ご報告と同時に、出発の挨拶に参りました。」


「うむ、ご苦労。では頼んだぞディラよ。」


「はい。お任せ下さい。」


こうして俺は、何ともまぁいつも通り、軽い感じでマギアを出発したのだった。








バズズ様が手配していたダンジョン『エリア1』に向かう馬車の中、俺はアイナちゃんの質問責めにあっていた。



「ディラ先生!イグザですよ!イグザ!あのイグザが生きていたんです!知っていましたね!?ディラ先生!」


まずは整理しよう。アイナちゃんはイグザが死んでいたと、勘違いしているようだが、実際のところは俺が助けたので、別に死んではいない。

ただ、問題はイグザが、アイナちゃん達の事を覚えていない事だ。いや、知らないと、言った方が正しいのか?

さて、なんと言えば良いのやら。


「確かに、イグザは死んではいない。だが、イグザは既に、アイナちゃんの知っていたイグザでは無いんだ。」


「え?それってどう言う……」


「簡単に言えば、イグザは記憶が無くなってしまった。つまり、アイナちゃんやタッ君、ましてや自分の親すらも、分からなくなっているんだ。」


俺の淡々とした口振りに、アイナちゃんが何も言えずに口をパクパクさせる。


「記憶が無い?……私のことも、タリウスの事も、覚えていないのですか?」


「そうだ。」


キッパリと言い切ると、アイナちゃんは本当に泣き出しそうな顔に変わる。

やめてくれ、今は泣かないでくれ。泣いたら馬車の運転手までに、俺が泣かせたとか思われるから……

なにより俺が慰め方を知らない。


「……で、でもイグザは私の事をNNって呼んでいました!」


あー。今更だけど、何だか面倒な事になってるな、コレ。

説明が凄い長くなりそうなんだが……


「それはだな……色々事情があるのだが、アイナちゃん。君もイグザに似たような事が起こっていたんだよ。」


ったく……誰だよ、こんなに拗れるまで話を後回しにしてた馬鹿野郎は……


俺だよ。文句あるか?


「イグザと似たような事……それって記憶が無かった。と言う事でしょうか?」


アイナちゃんの察しの良さに、ちょっと説明が省けて楽になった事を喜びつつ、俺は大きく頷いた。


「察しが良くて助かる。その通り、そしてアイナちゃん。君が教会の人間として変わっていた理由もそれに繋がる。」


アイナちゃんは俺が話を続けるのを無言で待った。


「記憶を失っていた君は、NNと言う別の人格で行動していた。ただ、これが少々問題でな。アイナちゃん、君はNNと言う人格でかなりの罪を犯している。」


「ふぇ?」


全く予想にもしていなかったのか、アイナちゃんは呆気に取られた顔で、変な声を出していた。

何だその顔……かわいいな。


「まぁ、君はNNでは無いから罪を償う必要は無いが、アイナちゃん、君は教会が監視役を務める事になっている。」


「だから私は教会の人間なのですね?」


「さらに細かい事情は省くが、要するにそうだな。」


ふぅ、俺の頭の中で考えていた説明ではもっと長くなる予定だったのだが、アイナちゃんが案外すんなり受け入れてくれて話が省けた。良かった良かった……のか?


「NN……私何処かで聞いた事がある気がするんです。」


突然、神妙な顔つきで語るアイナちゃん。


「NNは君自身でもあるからな、心の何処かで根付いているのかもしれないな。」


そうだとしたら、嬉しい。NNの経験がアイナちゃんの経験に繋がっているのだとしたら、それはアイナちゃんにとって、素晴らしいステータスに変わる。

NNは性格が残念だったが、戦闘、魔法関連については、あの半年で随分と成長していた。あと10年修行して、魔力が無限・・・・・だったら、俺やおっさん、ドラグとも対等に戦えるくらいになっていたと思う。


NNの使う魔力が無限だったらの話だが。


「……お二方、もう間も無く『エリア1』に到着しますぜ。」


馬車の運転手が顔を見せた。そのニヤニヤとした表情は、俺のよく知っている人物だった。

まぁ、魔力で何となく気がついていたが。


「やはり、リック。お前か。准将閣下・・・・が馬車なんて引いて、軍も余程暇なようだな。」


「准将閣下は副業なようなもんさ、本職はコッチだ。」


嘘つけ。それは絶対嘘だろ。


「ふん、どうだかな、それで、『エリア1』はどこだ?」


「ああ、もう見える。あそこだ。」


その指先には、そこだけ異常な程の魔力を醸し出す、石造りの大きな祠が有った。


では次回から、愉快痛快、ディラとアイナちゃんのダンジョン攻略劇が始まります。

予定では5話くらいになるかな、と思います。

え?443階層のダンジョンを5話で収めるのは無理だって?

ハハ、平均以下の主人公が、まともに攻略なんて、する訳ないじゃ無いですか。

では、なるべく早く書くよう努力します。

ではまた。

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