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ー第14話ー 『ダンジョンエリア4』

どうも、お待たせしました。

アクテムラとマリオンの話です。

「全く……相変わらずのお菓子臭さだったね……」


「お菓子食べたかったー。」


「駄目だよ。我慢しなさい。」


「うーん。分かったー。」


マギアに建設された大型の雑貨屋にて、マリオン・リリフとその弟子、アクテムラ・ペルティルはダンジョンを攻略する為、雑貨屋で必要な物を買い集めていた。


「ねー。マリオン様。」


自身よりも一つ頭小さいマリオン様の袖を引っ張り、見た目と反する幼稚な仕草で辺りを見回す。


「なんだい?」


「へへー。なんでもなーい!」


「なんだそりゃ……」


マリオンはクルクル回るアクテムラにほっこり肩を落とし商品棚に視線を戻す。


(ポーション、念の為に非常食も買って行くかね。)


マリオンは商品棚に並ぶ数々のポーションを眺め、フラフラ落ち着きのないアクテムラに離れないようにと釘をさす。


(流石にポーションは高いねぇ………しかし、背に腹は変えられないからねぇ……)


自身のお財布事情を考えつつ、最上級のポーションを5本手に取りカゴに入れる。


(ダンジョンエリア4……下に下がるに連れ魔物が強くなる階層式のダンジョンね………しかし、エリアボスフロアまでの道のりはわずか6時間、往復で12時間の非常にダンジョンとしては小さなダンジョンねぇ………)


マリオンはメモ書きのようなモノを見つめ「ふぅ」と小さな息を吐いた。


「さて、アクテムラ。欲しいものは揃ったから、買って宿に戻るよ。」


「はーい!」


さっさと歩くマリオンの背中を見つめながら、アクテムラはその後をついて帰った。




_________________________________________________________________________________________________________





未だ日も上らぬ早朝、首都マギアから40キロの位置に、ひっそりと存在する岩から切り出した様な小さな入り口。

外からでは中の様子は伺えない、ただ言えるのはその小さな入り口から、ただならぬ程の魔力が溜まり、人を寄せ付けない異様な雰囲気を放っている事だ。


そんな異様な雰囲気を放つ入り口の前に立ったマリオンとアクテムラ。

マリオンはその異様な雰囲気を放つ入り口をじっくりと見つめ、やがて口を開いた。


「こりゃ、まるで人を拒む様な嫌な魔力だね……」


「マリオン様ー、凄い暗そうですよー?」


「安心しなアクテムラ、ちゃんとライトも用意したよ。」


「わーい!さすがマリオン様〜!」


マリオンから手渡されたライトを振り回し異様な雰囲気の前でもはしゃぐアクテムラ。


「アクテムラ、気合を入れな、これはお前に課せられたテストの様なものだよ。大丈夫、私もいるから落ち着いて行くよ。」


「んー?分かったー。」


そうして二人は薄暗いダンジョンへと足を踏み入れたのだった。






「キキヤァァァ!!」


「聖神魔法、サンダーバレットー!!」


「ギィキヤァァァア!」


薄暗い筈のダンジョンは、アクテムラの雷魔法によって、眩く照らされ、蝙蝠の様な魔物の群れをその雷によって撃ち落としていく。


「それで良い。それで良いよアクテムラ。その調子でどんどん進むよ。」


「はーい!サンダーバレット!」


「キギヤァァァ!!」


蝙蝠達の死骸を作りあげながら、二人は足早にダンジョンエリア4の一階層を突破した。



激しく腐敗した数々の死体が、思わず鼻を摘みたくなる様な腐敗臭を放ち散らばる二階層。


嘗てこのダンジョンに挑んだ冒険者だろうか、ボロボロの鎧に身を包んだアンデット達が彷徨い、無謀に挑んで来る生ける人間にくを喰い散らかし、繁殖する蝙蝠の魔物デザートを齧り付き、ありとあらゆる腐敗した死骸ゴミが新たにアンデットとして動き出す、腐の悪循環がこの二階層では行われている。


「くさーい!」


「確かに酷い臭いではあるけど、これは人が誰にも目取られず、天に召される事も許されなかった者たちの悔しさと、怨念の臭いだよ。」


「腐敗臭?」


「……そうとも言うね。」


マリオンが、ため息まじりにそう答えるが、アクテムラは蝙蝠のアンデットを光属性の魔法で撃ち払い、完全に聞いていなかった。


「そうだよアクテムラ、その調子だ。」


「マリオン様!後ろ!」


「ん?」


突如マリオンの背後に現れた人型アンデットが、その鋭い爪をマリオンに振り下ろした。


「早く召されな。聖神魔法『自由への昇華フリーダムエクシィ』」


マリオンがその右手を払う様に詠唱すると、人型アンデットに光が降り注ぎ振り下ろした爪がマリオンに襲いかかる前に、その肉体の全てが霧になって霧散した。


「わー!凄ーい!流石マリオン様!」


「ふっ、アクテムラ、お前もいつか出来るようになるよ。なんせこの魔法は会得するのに10年はかかるからね〜。」


ウンウンと頷き、そう語るマリオンを無視して、アクテムラは再び現れた蝙蝠のアンデット達に身体を向ける。


「うーんと、えい!聖神魔法『自由への昇華フリーダムエクシィ』!」


先程、人型アンデットと同じように、蝙蝠のアンデット達は霧となり霧散した。


「わーい!みてみてー!マリオン様ー!出来たよー!」


ピョンピョン跳ねて喜ぶアクテムラ。


「ほ……ほう、流石アクテムラ、私の10年を10秒で会得するとはね……私、少し悲しくなってくるよ………」


マリオンが肩を落としていると、アクテムラはそれを無視してどんどん先へ、次々現れるアンデット達を霧散させながら進んでいく。


「マリオン様ー!早く早くー!」


マリオンが気づいた時にはアクテムラは既に、辺りのアンデット達を一掃し、三階層へと繋がる階段の前で手を振っていた。


「成る程、これが若さかい……」



_________________________________________________________________________________________________________




三階層へ降りた二人は、突如目の前に現れた黒い扉の前に立っていた。


「なんだい、こりゃ?扉かね?だとしたら、人?それとも人に近い脳を持った生物が作ったのかね?」


「マリオン様、この扉硬いよ?」


コツコツと、まるで石を叩いている様な音が鳴る。


「迂闊に触るんじゃないよ。アクテムラ。もし呪いの類だったら、どうするつもりだい?」


「何ともないよ?」


「何ともなくても、もしあったらどうするんだい?って事だよ。」


「んー?分かったー。」


「その返事は分かってないね。」


マリオンの大きな溜息も、まるで聞こえていない様に扉ばかり気が向くアクテムラ。押してみたり、引いてみたり、魔力を流してみたりと、色々試してみたが、扉が開く気配はない。


「マリオン様、この扉開かないよ?」


「本当かい?押してみたかい?」


「うん。やったけど開かない。」


「どれ、貸してみな………本当だね、開かないね。」


マリオンもアクテムラと同じ様な事を扉に試すが、全く反応がない。

マリオンは、困ったとばかりに首をひねる。

マリオンが扉を開ける方法を考えていると、アクテムラが突然扉をノックし……


「すみませーん!誰かいますかー?居るなら開けてくださーい!」


「何言ってんだいアクテムラ、そんなんで開くわけ………ええぇ!?」


アクテムラの「開けてくださーい」に反応して、黒い扉はゴゴゴと音を立て横に開いた。


「わーい!あいたー!」


「この扉、横に開くタイプだったんだね……いや、違う。なんで開いたんだよ……」


マリオンは落ち着いた雰囲気も忘れて、ツッコミに専念する。


二人が扉に入ると、扉は再び音を立て閉まり突然、暗かった筈のダンジョンが明るく照らされる。


「なんだいこりゃ?」


「わーすごーい!なにこれ?」


二人の目の前に現れたのは、丸い巨大な石造りの舞台。

その中心にはまるで決闘相手を待っているかのように佇む、石像の剣士。


決闘場コロシアムかい?あの石像の剣士を倒さなきゃ、先に進めないってことかね?」


「わーい!面白そー!」


「あ、ちょっ待ちな!アクテムラ!?」


マリオンの制止も聞かず、無邪気に舞台に登ってしまったアクテムラ。

その瞬間、舞台全体を包み込む巨大な半透明のバリアが張られた。


「くっ、結界でもないシールド?なんなんだいこりゃ!?」


マリオンがその半透明のバリアを叩くが、ビクともしない。

その瞬間、動く気配の無かった石像の剣士が、生物の様に動き始め、剣を構えた。


「おー!すごーい!」


パチパチと手を叩くアクテムラ、それを合図と感じたのか石像の剣士が、その見た目とは反した俊敏な動きでアクテムラに剣を振り下ろした。


「うわっ!聖神魔法『氷の宴アイスバンケット』!」


詠唱と同時に、石像の剣士は一瞬で凍りつき、刃先がアクテムラの頭に当たるギリギリで動きを止めた。


「ふぅ、びっくりしたね〜。アクテムラ、さっさと壊しな、いつ動くかも分からないからね。」


「うん!分かったー。聖神魔法『サンダーブレイク』!」


アクテムラは、凍りついた石像の剣士を、いとも簡単に雷で打ち砕く。


石像が壊れると、それに連動して先へ進むための階段が舞台の中心から現れ、舞台を覆っていた半透明のバリアも自然と解除された。


「アクテムラのレベルには合ってないね、このダンジョン……」


あっさりと進んでしまうダンジョン攻略に、マリオンは溜息をこぼした。


「わーい!次々ー!」


次の階段が現れると、跳ねる様に降りて行ってしまったアクテムラを、ゆっくりと追いかけるマリオンを最後に、その空間は再び力が抜けた様に暗く光が落ちた。







階段を降りた先は、先程同様に明るく照らされており、今度は今までとは違う程の高密度の魔力が空間を支配している。


「この、只ならぬ魔力、おそらくここが最後の階層だね。つまり、エリアボスが現れるフロア。気を引き締めな、なにが出でくるか、分かんないのが一番怖いからね。」


「うーん??」


その時、二人の目の前に黒い影が落ちた。


「ギギギ……」


「え……?」


「なにこれ?」


二人の前に現れたのは、緑色の皮膚に、ボロ布を巻いた、醜い人型の魔物。


「ゴブリン?」


「ギギギ………」


そのアクテムラ達の半分にも満たない程の小さなゴブリンは、戸惑った様に二人を見つめる。


「ギギギギ……」


「いや、でも、この只ならぬ程の魔力は、間違いなくエリアボス級………アクテムラ、一応気をつけな。」


「うん!わかった!『サンダーブレイク』!!」


「グギャァァ!!!」


一瞬の隙もなく放たれた雷撃が、ゴブリンの胸を貫き、肉体ごと焼き払った。


「な、なんなんだい、このダンジョン……レベルが低すぎないかい?」


入念に準備をしていたマリオンにとって、最後の最後がゴブリンとは、なんとも言えない気持ちにさせてしまった。


「もう、終わり?帰る?」


「そうだね、予定よりも随分と早いけど、まぁいいね、帰ろうや。」


そう言って、元の道を戻った二人は、行きとは違いなんとも緩い感じで、ダンジョンを抜けていったのだった。









二人が後にしたゴブリンの部屋。


焼け焦げたゴブリンは、不自然な程にその肉体が再生を始め、あっという間に元のゴブリンへと戻ってしまった。


「ギギギ……」


ゴブリンが、何らかの詠唱を行うと、身体全体が黒い影で覆われ、空気の中へ溶けてしまった。


『ダンジョンエリア4』


別名『虚像の鏡ミラージュミラー


彼女達が、このダンジョンの本当の恐ろしさを知る事は、今後一切無かった。

さて、彼女達が知る事が無かったエリア4本当の恐ろしさ。

その恐ろしさを体感する人間は一体誰なのか!?


次回!『城◯内 死す!!』


嘘です。ごめんなさい。


次回はみなさん大好き勇者視点です(棒)


次回!『タイトル未定!!』


気長にお待ち下さい!ではまた。

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