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ー第9話ー 『緊急会議』

どうもお久しぶりです。中々進みが悪くて申し訳ないです。

職員に聞いたお陰で難なく辿り着いた第1会議室、その扉をノックして中へと入る。


まぁ、少し早いだけで、どうせ会議は始まっているのだろうな、めんど臭い、またあのクソハゲに嫌味を言われるんだろうな。

そんなことを覚悟して会議室に入ったが、いつもとは少し様子が違った。


「おぉ!イリアル殿ではありませんか!お待ちしてましたぞ!ささ、会議は間も無く始まります。ご着席を。」


「はい?」


おかしい、なんだこの対応は?いつもなら『遅いですぞイリアル殿!』とか言うのに、というかまだ会議が始まってない?俺が早く来たと言うわけでは無い筈だが……


会議室を見渡すと、普段とはかなり違った面子が顔を揃えていた。


まず、普段はクソハゲが座る上座に位置する席には、豪華な赤と金の装飾が施された玉座が設置され、その両隣にはその玉座の一回り小さいサイズと、更に大きいサイズの椅子が設置され、そこからあとは普段通りのしょぼい椅子が並べられ、しょぼい椅子は二席だけ、多分俺とこのクソハゲの席が残されていた。


上座とかを考えて、位置的には多分、俺の席はでかい豪華な椅子の隣に設置されたしょぼい椅子だろう。


俺がその席に座った事を確認するとクソハゲはいつも通り、マイクとかが設置されている舞台に登った。


『ええ、本日は皆様大変多忙な中、お集まり頂き誠にありがとうございます。』


そう言うの良いから早く始めない?

内心そう思いつつも顔には出さない優しいお爺ちゃんの俺は、適当に相槌を打ってクソハゲの社交辞令的な挨拶を聞き流す。


『さて、それでは今回の議題に移りたい所ではありますが、この度の議題内容は大変重要度が高い為、最高機密扱いとさせて頂いております。そして、今回その機密性の高さからこの度、今議会にご参加なされる王族の御三方を僭越ながらご紹介させて頂きます。……お願いいたします。』


そうクソハゲが光る頭をしっかりと下げたその方向に視線を向けると、舞台横から金髪の王子っぽいお二人と巨大なデブ、バズズ様が現れた。


『皆様ご承知の上でしょうが、ご紹介させて頂きます。王国連合大本営総帥ガネシヤ・ロトムス・ハンバード陛下。』


全員が一斉に立ち上がったのに反応して俺も立ち上がり頭を下げる。


「構わない。楽にしたまえ。」


うっは、流石っす。なに今のイケボ。流石陛下!イケメンですね!


いや、馬鹿にしているわけでは無い。本当にイケメンなのだ。それに立ち居振る舞いも完璧。これはもう、イケメンすぎて頭が上がらない。


『同じく総帥補佐セブンド・プリルス・シューラ陛下。』


「………」


うっは!クールなタイプのイケメンだ!凄いな、やはり王族にはイケメンかデブしかいないのかな。


『教会代表議会委員バズズ・キンダム・サン陛下。』


「うむ。」


教会代表議会委員?なにその役職。初めて聞いたのだが……


まぁいい、軽い挨拶を済まされた陛下は舞台を下り、中心の椅子にガネシヤ陛下、その隣の一回り小さい椅子にセブンド陛下、やはり一番でかい椅子にはバズズ様が座られた。


それを確認したクソハゲは、やっと議題に移ろうと話し始めた。


『それでは、僭越ながらこの度の議題についてご説明させて頂きます。』


お手元の資料をご覧下さい。とよくあるフレーズの言葉で目の前に置かれる、なんかかなり分厚い資料を手に取る。


ええ……と、『邪神』。たったこの二文字がタイトルの資料。もうちょっと何か、タイトル無かったのか?ちゃんと考えろよな。


『今回、こうして緊急議会として皆様にお集まり頂いたことは、近頃連合市民の中で噂されます『邪神』についてであります。』


この議題内容に首をかしげる上流階級の面子達。首をかしげるのは仕方ない。何せ本来の議会は噂なんてものについて話し合いなどしない。当たり前だろうが、政治の事、経済の事を王国連合全体での基本方針を決めるための会議がこの議会だ。


その筈の緊急議会が、噂話を議題にあげられることは前代未聞だ。


まぁ、俺も少し驚いてはいるがな。


まさかここまで邪神の噂が議題として上がってくるとは思わないだろ、普通。


『近々邪神が復活する。と言う噂が既に市民の関心を寄せており、我々としてはその邪神の情報がごく僅かしか把握しておりません。もしも、この噂が現実に起こるとなれば、魔王に続く世界の危機であります。そこで、各上流階級の皆様方に情報の共有をお願い致します。』


うん、実にめんど臭い。


『アルフォト卿。少し良いかな?』


誰も邪神について語らない中一人、大本営総帥ガネシヤ陛下が手を挙げた。


『はっ。ガネシヤ陛下お願いいたします。』


そう言ってクソハゲがマイクをガネシヤ陛下に手渡し退がる。


『諸君、私は先ず諸君らに紹介したいもの達が居る。……入ってきたまえ。』


「失礼します!」


ガチャリと扉が開かれ若い女と男が入ってきた。

あれ?


二人はどうも俺の黒ローブとそっくりなローブに身を包み、男はオレンジ色の髪色をして、女は薄緑色の髪を腰まで伸ばしている。


あれれ?もしかして……


「皆様初めまして、私メル・キューリフです。こちらに居るのはランバ・ウェーテェフ。私達二人で探偵業を営んでおります。」


その発言に少し騒つく。まぁ『探偵』だもんな、おかしな職業ったらありゃしない。騒つくのも仕方のない事だ。

と、そう考えていたら、どうやらそう言ったざわつきではないらしい。


「『探偵』のメルとランバだと?」

「類い稀な天才の二人組……今までの未解決事件も有りとあらゆる方法で解決してきた名探偵か……」


何それ、どうもご説明ありがとうございます。誰かは知らないけど。


『私は彼らの考えが実に興味深く、そして最も可能性の高い考察だと考えている。先ずは二人の邪神についての推理を聞いてもらいたい。』


ざわつきが収まらない会議室が、ガネシヤ総帥が口を開くだけで静まり返り、二人の主張を聞こうと耳を傾ける。


おいおいマジかよ、なんでガネシヤ総帥とか言う普通絶対会えない様な人物に共感得られてんだよ。


ヤバすぎだろお前ら。


『先ずは私達が推察した限りでの、邪神の影響力を説明したいと思います。』


一呼吸置いて再びメルが語り出す。


『単刀直入に言ってしまうと、この世界は滅びます。』


その発言に再びざわつきが起こるがそれを遮る様にメルが語り続ける。


『暴風、水害、地割れ、干ばつ、疫病。全ての厄災を司る神。それが邪神です。邪神は今から約400年前にその姿が確認され、『大英雄』チール・ロトムス・ハンバードによって封印され、今もこの世界のどこかに存在しています。』


うわー、凄いわー天才かよなんでそんなに分かるんだよ。王家代々受け継がれてきた話しと殆ど同じじゃないか。


「ふむ、それで邪神の場所は分かるのかね?」


議員の一人がメルに対し質問を投げる。


『いいえ、分かってはいませんが、少なからず目星はあります。』


その質問した議員をきっかけに他の議員達も一斉に質問を浴びせるのを、クソハゲが手を叩き静めさせる。


『順を追って説明させて頂きます。先ず、何故邪神が復活すると言う噂が流れたのか、噂の発祥はこの『マギア』だと私達は考えています。』


少し間を置いたメルは話を続ける。


『世界のあらゆる組織が集結する最大の情報都市の『マギア』。その中央に位置するシンボルタワー。このタワーに数ヶ月前、とある組織が侵入したとある人物から情報を入手しました。』


凄いな、そこまで分かってるのか。


『当てはまるなら我々人間族への復讐でしょう。彼らは未だ魔族として、我々に対抗しています。我々を滅ぼす為に邪神を復活させる事もあり得るでしょう。』


それで自分も邪神の所為で死んだら本末転倒だな。

『魔王の徒』の目的は未だによく分からない。突然現れては消え、少し騒動を起こしたと思えばまるで霧の様に消えてしまう。

何が目的なのか、全く分からないのが今の現状だ。


「聞いての通りだ諸君。」


ガネシヤ総帥が話すと議会は静まり、ガネシヤ総帥へと視線が集まる。

総帥はゆっくりと、しかし模範的な所作で舞台へと上がりマイクを手に取る。


『邪神が復活する可能性は非常に高い。故にこれからその対策会議として各首脳部の意見を出してもらいたい。』


「恐れながら総帥閣下。」


ガネシヤ総帥に対して、恐れもなく手を挙げた一人の男。


『これは、カーベルナ公爵。なんでしょうか?』


「はっ、恐れながらガネシヤ総帥。私は彼女ら探偵の推測に同意できません。」


一人、反対の意見を述べる公爵。それに対してウンウンと頷く上流階級の面々も多少いる。


『これは、一体どうしてでしょうか?』


「はっ。まず、彼女らの言う事には信憑性がありません。」


『成る程、彼女らの言っていることが信用出来ないと。』


「恐れながら申し上げさせて頂くと、左様にございます。彼女らはそれでも一塊の探偵、一部意見のみで判断するには信憑性が足りぬかと。」


ごもっともな意見だ。邪神の生い立ちも知る王家の面々なら、メル達の意見をあっさり聞き入れる事も出来るが、それを知らない面々はどうなるか、本当にそうなのか疑うしかないだろう。初めから王家がメルとランバを推す事にも疑問があるだろうし、そこら辺の配慮が足りていない。

王家の方々は何かを焦っている、そんな感じがするような会議だ。


だがまぁ、真実を知る者からしたらどの局面であっても王家に加担することの方が得策だろう。後々の恩も売りつける事も出来るしな。


「恐れながら総帥陛下。よろしいですかな?」


『ん?失礼ですが貴方は?』


お知りでない!陛下は最高聖神官をお知りでなかった!この不肖イリアル!誠に遺憾である!

………言ってみただけだ。


「教会最高聖神官イリアル・ルイデ・ライデにございます。陛下、お初目にかかり誠に恐悦至極の次第でございます。」


挨拶くらいすこしアピールしておこう。第一印象は大事だ。


『おお、これは貴方が現最高聖神官のイリアルか。して貴公の意見を聞こう。』


「はい。これは私達教会が調べた『邪神』についての情報にございますが、『邪神』ですが、『魔王の徒』によって復活させられる事は間違いないかと思います。」


『ほう、その根拠は?』


「はい。私の独断で色々調べさせました。その結果『魔王の徒』は既に邪神の居場所、そしてそれを復活させる為の準備を着々と進めていることが分かっております。」


『成る程、ではその邪神の居場所とは?』


知るわけないだろ。


「申し訳ありませんが、不明です。『魔王の徒』は邪神の情報にはかなり厳重に扱っております。こればかりは知り得ることが出来ませんでした。しかし、400年前の文献を探せば何か手掛かりが有るのではないかとそう考えております。」


『ふむ、貴公がその情報をどの様に集めているのかも興味があるが、今はそれどころではないな。邪神の居場所については此方で調べておこう。教会は『魔王の徒』の動向を監視してもらいたい。』


「かしこまりました。」


嫌だ。絶対に嫌だ。これはもう早急に俺以外にディラの役を務めてくれる者を探さなくては……


「恐れながらガネシヤ陛下。その邪神がもし仮に復活した際、我々はどの様な対応を行えば良いでしょうか?」


また一人議員が質問を投げる。


『うむ、それについては既に対策が取られている。セブンド。』


「はっ。」


ガネシヤ陛下からマイクを受け取ったセブンド総帥補佐は、全員に対して一度会釈をすると語り出した。


『では、邪神に対しての対応ですが、我々は『勇者』を使う事に決定している。』


まぁ、それが妥当な判断だろう。やっとあの怠惰な勇者を動かす気になったか。此方としても生活費を貢ぎ続ける事にも正直イラつきを覚えていた所だ。丁度いい、邪神は全部勇者に任せよう。俺は簡単な『魔王の徒』の監視に徹するとしようかな。


『それに際し、探偵のメル殿とランバ殿にも協力してもらいたい。』


「はい!世界の為にも力になりたいとおもいます!」


さっきからランバが一言も喋らないな。

なんだ?大勢の前では喋れないタイプか?


『この度の会議で皆に集まってもらった訳は『勇者』に対して最大限の援助をして頂きたい為であります。』


「「はっ!」」


『では、新たな続報をお待ちください。』


おっ、そろそろ終わりだな。


『では、今日はこれにて終了とさせて頂きます。』


陛下が立ち上がったのに対して、全員すぐに立ち上がり深々と頭を下げる。

扉が閉まる音がすると全員がはぁ、と肩の力を抜きそそくさと会議室を出て行く。


それに流されて俺も、教会本部へと戻る事にした。


やることが色々できた。早く帰って終わらせよう。


俺はメル達の存在も忘れ、他の議員達と同じ足で、とっとと会議室を後にしたのだった。


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