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ー第3話ー 『用があったようだ。』

お待たせしました

双剣島が一体どんな島なのか、少しワクワクしながらも、着いてみれば別に普通の島だった。

これと言って特に何もない、島だ。

あえて何かを挙げるとするならば、自然豊かでとても良いと思います。かな?


だが、まぁ。地図によれば、双剣島の左半分側のほぼ中央に、ホムンクルス研究所があるらしい。その近くには管制塔つう、何やら本隊と通信ができる施設があるらしい、まずは応援を呼ばれては面倒なので、この管制塔は抑えておきたい。

つまりは、この中で最も頼りになりそうで、確実に管制塔を落としてくれそうな奴を抜選しよう。


NNはどうだろうか?


………論外。俺と一緒に行動。


では、シャン。いや、此奴は陸地ではなく、船で留守番しといてもらおう。海が恋しいだろうし、もしも海から敵が襲って来た時、船は守ってもらいたい。帰りは船で帰りたいからな。俺は此奴ら全員を同時に転移する手段がない。

最高で俺を含め2人までなら転移が出来るが、三人以上の転移となると、強制転移を使えば何とかなるが、俺には強制転移が使えない。何故って言うと、自分以外を転移させる必要性を全く思いつかなかったから、覚えなくても良いかなーって思って、覚えなかった。


本当のことを言うと、転移と違ってまたなんか、理論がどうたら違うらしい、それをまた覚えるのが嫌だったから。


話が逸れた。


「バンシィ様!物陰に二人隠れてたので仕留めました!」


そう言って銀色の鎧を身に付けた、魔人族の兵士二人の血だらけの死体を、頭を掴んで持って来る。

おい、やめろ。なんで持ってきた。


「持って来るな。………そうだな、ダルク。お前は彼処に見える塔を制圧しろ。」


「分かりました!」


「待て。」


そう言って直ぐにも、走り出しそうな勢いのダルクを止め、俺は念の為考えをまとめる事にした。


まずは、管制塔を制圧する事は絶対条件だ。そして次に本命のホムンクルスを頂く、地図によればホムンクルスはあの管制塔の隣にある研究所に保管されている。おそらく、いや絶対彼処には罠が仕掛けてある筈だ。

ダルクみたいなおバカちゃんだと、直ぐに引っかかる可能性がある。

面倒臭いが、此処は俺が行かざるを得まい。ついでにNNも連れて行く。

まあ、NNを連れて来た事にはちゃんと理由がある。


理由は簡単だ、研究所の中に何があるか知ってそうだったから。


それだけだ。


シャンは留守番、ダルクは管制塔。俺とNNは研究所か、後はベータとガンマか……


「バンシィ様ー。まだですかー?」


退屈そうに口を尖らせるダルクを無視して、少し考えを変える。


「ベータ。お前はダルクと一緒に行け。ダルクがヘマをしない様、しっかり見張っておけ。」


「ワカッタ。」


「えー。ベータも来るのー?」


「ダルク。あの塔ならば、敵が大量に押し寄せる。全員、お前が好きにして良いぞ。」


「本当!!わーい!」


チョロい。


「ガンマとNNは俺と来い。シャン、お前は船を守っておけ、海の方が戦いやすいだろう?」


「はい!ありがとうございます!」


「ふん…………では行くぞ。」


「はーい!」「御心のままに。」「御意!」「主人あるじの思ウまま二。」


………掛け声くらい、統一してくんないかな?



__________________________________________________________________________________________________________________



「た……助けてグハァ!!」


逃げ惑う敵兵達を容赦なく、言葉通り潰していくダルク。


「へっへーん。どうです!バンシィ様!僕の力は!」


「ああ。」


正直、お前の思考回路がどうなっているか気になる。何故、そこまで楽しく一人で人殺してんの?

ここに殺人鬼ならぬ殺人犬が居ますー!ダレカタスケテー。


さて、何故か凄く好戦的かつ殺人的なダルクのお陰で、俺は何もする事なく、ただ血塗られた道を歩むだけになっている。

そして目前に控える研究所と管制塔。残念だが、此処で便利な殺人犬とはしばしのお別れ、俺とNN、そしてガンマは研究所。………と言っても見た目は白い四角い建物だ。

管制塔のほうも、建物に塔がブッ刺さった形をしている。


どうでも良いな。


さて、此処で楽だった移動も、ダルクと別れる事で終了だ。俺はさっさと管制塔に走って行くダルクを見届けると、研究所の入り口に近づいた。


俺は研究所の扉をガンマにこじ開けさせ、堂々と侵入する。


出迎えは無い。だが、どうやら監視カメラで見られている。へー。あるんだな、監視カメラ。マギアには無かったぞ?

取り敢えずガンマに監視カメラに向かって、ピースしておけと指示を出す。


「……やりましたけど、バンシィ様。あの天井にぶら下がった箱に向かってピースとは、意味があるのですか?」


「…………特に意味はない。」


誰か見てたら良いなー。ちょっとくらい、面白いものが撮れたはずだ。


「なんでやらせたのですか……もう良いです、早く先に進みましょう。」


そう言って先を急ぐガンマの後を、ゆっくりとついて歩いた。


「なっ!此処にも侵入者が……ぐぁ!!」


鉢合わせする兵士を、よく分からんが、ソニ○クブーム的な何かを飛ばしてその首を刎ねるガンマ。

風属性の魔法っぽいから、多分エアーカッターとかそこら辺の魔法だろう………多分……エアーカッターって魔法があるかどうかは知らんが……


「居たぞ!彼処だ!!ぎゃぁぁぁぁ!!!」


背後から現れる兵士は、NNが闇眼で文字通り消滅させてくれるので、俺は何もせずにただ歩いているだけと、実に楽なのだが………


人、殺しすぎじゃね?


てか、何人ここに兵士居るんだよ……もう何百人単位で殺してる気がするぞ?俺はやってないけど。


特に血塗られている事以外は何もない、ただの廊下をガンマを先頭について歩いてはいるが、外からの見た目に反してなんか、凄い広く感じる。


これと言って研究所っぽい要素は何処にも見当たらないが、地図を見ると一応、ホムンクルスが保管されている場所には近づいている。


「む……これは……」


ガンマが突然立ち止まり、廊下の先をジッと見つめる。俺は魔力感知を作動させ、何があるのかを確認する。

結果は分からん。魔力を感じない。

まぁ、魔力を感じない時点で怪しさ満点、何かいる事は確かだな。


一応説明しておこう。魔力感知は範囲内の目に見えない魔力を感じ取る事が出来る魔法だ。

魔力は空気中にも存在し、生物はその魔力を常に酸素みたいな感じで取り込んでいる訳だ。

つまり、魔力を感じ取る魔力感知は絶対に、魔力を感じなければならない。魔力は空気にも存在しているからな。それが無い。何も感じないという事は、何か絶対に罠が仕掛けてある。もしくは何らかの魔法で、魔力を感知させない魔法を使う誰かが居るとか、もしくはその場所だけ空気の無い真空状態なのかもしれない。


まぁ、要するに罠だな。


だが、別に止まる程の理由でも無いだろう。


「進むぞガンマ。」


「……分かりました。」


止まる理由がない。ならば、歩むしか道はない。

俺はガンマよりも前、先頭に立って歩き始める。

念の為、魔防壁をガンマとNNに張っておく。奇襲はさせる気は無いがもしも研究所ごと爆発でもしたら、流石の俺でも防ぎようが無い。

圧倒的に攻撃するのは楽しいが、少しでも攻撃されるのは不愉快だ。俺は常に完全勝利を狙う。

あと、相手に勝てると思わせてボッコボコにする格下狩りの様な事も大好きだ。


そしてその魔力を感知出来ない場所にたどり着いた。


成る程、よく分からんが本当に魔力感知をさせない魔法を開発していた様だ。


「ヒュー。よぉ……NNエヌエヌぅ……生きていたんだねぇぇ死ねば良かったのにぃ……ヒュー。まぁ、良いよ。お前達は此処で死ぬんだからねぇ……ヒュー。」


ヒューヒュー、五月蝿えな。誰だったっけ?このバイザー男………


Qキュー……」


ああ、Qか。そうだそうだ。思い出した。さて、どうしたものか、めんど臭い事には変わりはない。ならば。


「ガンマ。任せた。」


「御意!」


軽く肩を回しながら前に出るガンマ。


「ヒュー。お前一人で僕を倒せるとでも思ってるの?ヒュー。おめでたい頭だね。」


お前がな。


「ガンマ。俺とNNは先に進む、お前はそいつと遊んでろ。」


「御意。ご武運を。」


「……ふん。いくぞNN。」


「…………」


先に進もうとする俺たちの進行方向をQが止めに入るが、ガンマがそれを邪魔する。

Qが応戦している間に俺とNNは、ホムンクルスが保管されているであろう部屋の前にたどり着いた。


鉄製の両扉を開け、中へ入るとそこは体育館ほどの広さで、筒状の水槽が沢山設置されていた。うん。研究所って感じだな。中に浮いてるのは気持ち悪い肉片みたいな何か、ばかりだけどな……


『キィーヒッヒッヒッ!!良く来たのぉ……NN、そして高位聖神官よ。キィーヒッヒッヒッ!!』


耳障りな男の声が、この部屋中に響き渡る。スピーカーだな。という事はこの声の主はまた別室にいるかな?


「良く来たねNN。それに高位聖神官。」


部屋の一番奥に設置されていた、筒状の水槽が開き中から現れる、白髪でエメラルドの瞳をした青年。

見た事あるな………えーと。


「貴様。Z4ゼットフォーか?」


「ご名答。だけど、私は二人目の方だけどね。」


二人目……ね。ホムンクルスと言い、凄くエ○ァの雰囲気が漂ってんな。全然違うけど。


「そうか。別に興味は無い。今回はお前らの造るホムンクルスを一体、拝借に参上しただけだ。ホムンクルスを一体貰おうか。」


まぁ無理だろうが念の為、交渉しておく。戦わなくても良いなら戦わない。無駄に血を流す必要は無いのだよ。あ?ダルク達は別だ。


『キィーヒッヒッヒッ!ど阿呆!誰がこの儂の最高傑作をくれてやるものか!』


五月蝿いな。マイクの向こうで高笑いは辞めてくんないかな?ハウリングが酷い。

もう耳が痛いぞ?

と言うかお前は誰だ。


「Z4、この五月蝿い奴は誰だ。」


「Dr.グロウ。偉大なる研究者さ。」


そう誇らしげに語るZ4。分かったからホムンクルスくれないかな?


『キィーヒッヒッヒッ!使えない魔人共だ。この儂の研究室まで侵入者を入れるとわ。まぁ良い。儂の最高傑作達で歓迎してやるわ!キィーヒッヒッヒッ!!』


Qと言いDr.グロウと言い、笑い方が独特だな。

凄くどうでも良いがな。


筒状の水槽が二つ開き、よく分からんが肉片みたいな何かがぼとりと床に落ち、それがもごもごと動き始めやがて二つの肉片が融合を始めた。


「………ッ。まさか……」


『キィーヒッヒッヒッ!NN!そのまさかだよ!!出でよっ!合成巨人キメラゴーレム!!キィーヒッヒッヒッ!』


「………グォォォォォ!!!」


「…………」


完成したのは人体模型で良くある、人の皮を剥がした筋肉だけの人の形をした巨人。

と言っても、2メートル程だがな。

魔力を見ても魔法を使う様には思えない、となると筋肉か。

つまり強いのは肉弾戦だけだな。

よし、なら相手は……


「NN。お前があれを倒せ。」


「えっ……」


「大丈夫だ。お前ならやれる。」


闇眼当てれば絶対勝てる。耐性とか持ってないぞ、多分。


『キィーヒッヒッヒッ!随分な自信だな!高位聖神官!自分の教え子・・・なら大丈夫だと?キィーヒッヒッヒッ!自身が阿保だった事に後悔すると良い!』


「何故貴様の様な者が、俺の事を知っている。」


『キィーヒッヒッヒッ!随分と情報を厳重に隠しておっても、関係者がペラペラと喋ってはそれも無意味だな!キィーヒッヒッヒッ!!』


関係者?


チラりとNNを見るが、とてもそんな雰囲気はない。むしろ頭にハテナが浮かんでいる。

一体、どう言う事だ?それとも、こいつはハッタリをかましているのか?


『キィーヒッヒッ!と言っても、記憶を見ただけだがね、儂は。』


「………」


ああ、そう言うことか。


少し、おっさんの言っていた事を思い出す。『精神魔法とは、その者の記憶を盗み見る事も可能じゃ。つまり、相手の情報を簡単に手に入れる事が出来るのじゃよ。』


「そう言う事か、ホムンクルスに用があるだけだったが、どうやらお前にも用があったようだ。」


『キィーヒッヒッ!どの道、お前は死ぬのだからその用、とやらは無意味になるぞ!やれ!合成巨人キメラゴーレム!!』


「グォォォォォ!!」


「NN。任せた。」


「………分かった。」


「大丈夫だ、お前ならやれる。」


そうNNだけに聞こえるように伝え、俺はZ4に向き直る。


「ふふふ、私の相手は君ということだね?」


「そうだ。だが、安心しろ。五分で貴様を終わらせてやる。」


「ふふ、その自信、いつまで持つかな?」


俺は魔力を2割程解放し、魔力樹を握りもう一度威嚇する。


「貴様こそ、その自信がいつまで持つか、楽しみにしておこう。」


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