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ー第2話ー 『少年』

モブ兵士視点です。

私がこの、双剣島に増強兵として『魔王の徒』本部より派遣され、早3ヶ月が経とうとしていた。

双剣島には、『魔王の徒』の新兵器を開発する施設が存在し、その護衛に私と私の他に、何百もの兵が派遣された。


しかし、この地は未だ、何処からも襲撃や、その兆候は見られず、恐らくこの地が最も安全で、暇な派遣先だと認知している。


ここの最高責任者である、Dr.グロウはワイプ族で非常に冷淡で、変わった男だ。

なにせ我々兵士をまるで使おうともせず、ホムンクルスと言う、人形で実務を全てこなしてしまう為、我々はただ、島の警備をするしか、仕事が無い。

故に我々は暇だ。


まさかあんな事態が起こるとは、誰もが想像出来なかった筈だ………



________________________________________________________________________________________________________________




早朝、私は何時もの様に同じ経路を同じ時間に、警戒任務に当たっていた。

そんな普段と何ら変わりのない、暇な1日が始まったのだと、私は気軽に警戒任務をこなしていたのだったが、そんな時、島中に鳴り響く警報。


《A22エリアにて、所属不明の帆船を確認。各員直ちに急行し、必要であれば撃滅せよ。》


そうマイク越しに伝わるアナウンスは、久々の戦闘かと、興奮状態にある仲間の声だった。

確かに、久々の戦闘だ。今まで何も無い平穏な時ばかりだったが、遂に力を振るう事が出来るのかと思えば、確かに興奮もしよう。

であるが、これはあくまで戦闘だ。命を落す事もあり得る。冷静さを取り戻しつつ、私も現場へと急いで向かったのだった。





「な………一体、何が……」


私が向かった時には、既に数十人の仲間の兵士がやられた後だった。全員が、魔装兵クラスのエリート。それが全滅していた。

全滅した兵の中で、たった一人、装備した鎧が砕け、意識を失っている者が生き残っており、救護に当たると、直ぐに目覚め、彼はこう語った。


「………紫のガキに………やられた……奴は………研究所に向か……た………」


そう言って再び意識をなくした彼を、駆けつけた救護班に託し、私は、私以外にも集まった他の兵と共に、侵入者が向かったとされる、研究所へ急行した。


研究所には、Dr.グロウが研究を行っている。侵入者の狙いがDr.グロウならば、我々は直ぐにDr.グロウを守らねばならない。


焦りと緊張に、普段よりも速く走れている気がした。


《緊急!!緊急!!総員研究所に応援を!!研究所に応援を!ぎゃぁぁぁぁ!!!……わーい!なにーこれー?あーあー。聞こえますかー?》


マイクから聞こえる声が、幼い少年の様な声に変わった。………まさか、管制塔を制圧したのか!?

そんな馬鹿な事があってたまるか!そう叫びたい気持ちが真っ先に浮かんだが、今は劣勢にある研究所へ向かわなければならない。


研究所へ近づくにつれ、倒れる兵が増え始め、我々は極度の不安と緊張に駆られていた。

これを、少年がやったのだろうか?

だが、何故少年がこんな所に?

そんな疑問が頭をよぎるが、直ぐに頭を切り替える。


一刻を争う事態だ。まずは本部への連絡が最優先と判断し、私達は兵の半分を少年が制圧している管制塔へ、向かう事にした。


管制塔は研究所の隣に設置され、二手に別れる形で我々はそれぞれの場所へ急行する。


管制塔に急行した我々は、連携を組み管制塔の裏口から進入する。

既に在中だった兵は皆、鎧を砕かれるなどして既に生き絶えていた。

余りにも一方的にやられている様子で、我々は動揺を隠せなかった。


「と、とにかく管制塔は取り戻す!通信室から優先的に進入する!私に続け!」


なんとか声を出し、私は通信室のある二階への階段を駆け上がった。


通信室から聞こえる話し声から、アナウンスから聞こえた少年の声と、もう一人、まるで獣が呻く様な低い声色の男の二人でこの通信室を乗っ取っている事が伺えた。

だった二人に管制塔が制圧されるなど……前代未聞だ………


『ねーねー、ベータ。バンシィ様がここならいっぱい敵が来るって言ってたのに、全然来ないねー。』


『オレはお前をミハッテオケと言われただけだ。別にテキがコヨウガ、コマイが、関係ナイ。』


『ふーん。じゃあ、今その扉の向こうで盗み聞きする、強そうな兵士達全員、僕が遊んでも良いよね?』


『………カマワン。』


その瞬間、中にいた少年が、私では計り知れない程の魔力を爆発的に放出し、その魔力の圧によって、我々と奴らを隔てていた扉が、勢いよく吹き飛ばされた。


「せっ……戦闘態勢!!」


極度の緊張を大声で誤魔化す様に私は、腰に装備した剣を引き抜き、通信室から現れた少年と対峙した。






思わず腰が引けるような膨大な魔力を、平然と放出する少年に恐怖を覚えた。少年は紫色のローブを身に着け、まるでピクニックを前日に控えた幼い子供の様な、可愛らしさを覚える表情で、我々の前に対峙する。


「お前達は、さっきの奴らよりは、遊べそうだ!そうだなー、誰かが援護に駆けつけて来るまで、遊んであげようかなー?」


「な、ガキが!ナメやがって!」


一人、若い兵が飛び出し、練度の取られた動きで、少年に向かい剣を振り下ろす。


「わーい!遊んでくれるんだー!」


そう嬉しそうに笑った少年は、振り下ろされる剣を避けようともせず、若い兵は剣を少年に振り下ろした。

様に見えた……


「なに……?」


「へー、お前、剣の扱いはそこそこ出来るんだなー。弱いけど。」


弱い?私の見た限りでは完璧とも言える剣の捌きだった。確実に、少年の首を刎ねる軌道だった筈……なのに何故、その剣が少年の真横を掠める形で、床に突き刺さったのだろうか?


全く訳がわからない。


一体何が?


「うーん。一人ずつじゃ、面白く無いから、皆んなで掛かってきて良いんだよ?」


「何を!このガキ!!」


そう言って少年に殴り掛かった若い兵は、私が瞬きをする瞬間に、少年によって地面にねじ伏せられていた。


「うぎぁぁぁぁ!!!」


「だーかーらー、一人ずつじゃ面白く無いのー!皆んなで掛かって来てよねー!」


若い兵の鎧を、脚で踏み砕きその小さな脚で押さえつけ、少年は不満げに口を尖らせる。

余りにも一方的………私は余りの恐怖に、足が竦んでしまった。


「は……破滅魔法!『アイスロック』!!」


「破滅魔法!『ニードル・レイン』!!」


「わー!冷た〜い!」


上級に当たる拘束魔法の『アイスロック』によって身体を固められても、少年はただ、ただ、無邪気にはしゃぐ。何なんだ一体……


拘束された少年の頭上に、大量の針の雨が降り注ぐが、しかし、少年は実に嬉しそうに笑い、呟いた。


「『八重の頭ドブルヘッド』」


その言葉と同時に、少年が魔力を放出すると、少年に降り注ぐ針が、一瞬にして消え去り、少年を拘束していた氷の塊が、まるで獣に噛み砕かられた様にバラバラに崩れる。

何なんだ………今の魔法は……聞いたことが無いぞ……


得体の知れない相手、さらに聞いたことのない未知の魔法……あの圧倒的な魔力……これを我々が……倒せるのか?まるでこの少年は勇者……いや、勇者にしては幼すぎる……だがしかし、此れほどまでの魔力………一体、何者なのだ?


「お前は一体……何者だ……」


「んー?僕はね、偉大なる主人、バンシィ=ディラデイル様に従うしもべ!ジャンヌ・ダルク!覚えておけ!でも、君達皆んな、此処で死んじゃうけどね?」


その少年の清々しいまでの笑顔は、

我々にとって、恐怖でしかないのだった……







その後彼らはどうなったのか……真相はダルクとベータしか分からない………


言ってみただけです……

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