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ー第1話ー 『便利なキャッスルコア』

お待たせしましたか?


俺は、おっさんにダルク達全員に人化の魔法を掛けてもらい。全員を、紫色のローブに着替えさせた。


「うぅ、窮屈です。バンシィ様。」


「知らん。慣れろ。」


あの巨大な犬の見た目だった割に、人化すると、小さな黒髪の少年風に変わったダルクを内心笑いつつも、適当に対応しておく。


「バンシィ様。楽しい事とは一体なんでしょうか?」


肩まで伸びた長い青髪に、鋭い眼つきの青年風に変わったシャンは、見た目通り、冷静な感じでそう聞いてきた。


「オレはバンシィ様の為なら、何処にでも行く。」


そう答える、二メートル強の身長はある。赤褐色の短髪、顔がゴリラの強面な風貌のベータ。


「私もバンシィ様の為なら何処へでも。」


と、いつも通りファンキーな見た目のガンマ。

全員の反応を確認してから、俺はいつも通り仮面を着け、全員にこれからの事を伝える。


「これから、おっさんを除くこの5名と、案内人一人を加え、計6名で、ちょっとしたお遊びをしに行く。」


そう言って俺は、おっさんが拡大した【ホムンクルス研究施設】の地図を広げる。


「今回のお遊びは、此処を襲撃して破壊する。」


「わぁ!遂に僕達の存在を世界に知らしめるのですね!!」


「…………」


違うけど?


なに言ってんだ?お遊びだぞ?んな、世界に戦線布告して何になるんだよ。

目的は、ホムンクルスの奪取。つまり、サラミスの意識をホムンクルスに移すための身体を頂きに参上するだけだ。ただ、その警備がどうも数千単位でいるっぽいから、俺が戦わんでも良い様に、お前らを連れて行くだけなのだが?


「今回は、我の探しておったホムンクルスを手に入れる事が目的じゃ。世界に戦線布告などと言った意味はない。」


何も答えなかった俺の代わりに、おっさんが説明を入れてくれ、ダルク達の誤解は解けた様だ。


「では、質問です。案内人と言うのは一体誰なのでしょうか?」


「お前達は知らん、俺の弟子だ。」


「弟子っ!?バンシィ様の弟子!?良いなぁ!僕も弟子になりたい!」


まるで犬、いや犬。……の様に、はしゃぐダルク。少年姿がちょうど良い。これが、ベータみたいなゴツい奴がはしゃいでいたら、俺は吐いてそうだ……


「ダルク、お前は俺の部下、それで良いだろう?」


「………そうでした!!それで良いです!」


ビシッと敬礼を決めるダルクを無視して、質問したガンマが口を開く。


「分かりました。では、今から向かうのですか?」


「勿論だ。……おっさん。」


「うむ。では、『転移』!」


_________________________________________________________________________________________________________



転移した先は勿論。フレクトリアの王城。相変わらず、恥ずかしいおっさんの自画像がでかでかと飾られた謁見の間だ。

本当に、よくこんな物が飾れる……


「少し待っていろ、俺は直ぐに案内人を連れてくる。」


「はーい!」


本当に子供の様にはしゃぐダルクの声を最後に、俺は転移した。







『マギア』のタワー内。俺の執務室に転移すると、バズズ様が相変わらずお菓子を頬張っていた。


「うむ?ディラか、どうした?」


「バズズ様、NNは何処に?」


「隣の部屋じゃよ。あの獣人の四人と共に、秘書ビービの神官授業を受けておるのではないか?」


「そうでしたか、では失礼します。」


そう言ってそそくさと退出し、隣の部屋をノック無しで扉を開け入る。

中は、学校の様に黒板と教卓、それと対面する様な形で五人の机と椅子が用意され、NN以外の獣人達は真面目に授業を受けていた。


「……で、ありますから、私達神官は、神のご加護を受け、回復魔法という、祝福を授かったのですぅ………ふぇぇぇ?高位聖神官様ぁ……?」


「おい!テメェ!何様だ!?俺は今授業を受けてんだよ!?じゃましてんじゃねぇーぞオラ!?」


口は悪いが真面目だな、ギルディーク。


「ギルディークさん!駄目ですぅ………そのお方は、教会トップの最高聖神官様の次にお偉い、高位聖神官様ですぅ……」


「なにぃ!?それは!大変失礼したぜ!」


丁寧なのか、丁寧でないのか分からない言葉使いで、深々と頭を下げるギルディーク。

他の3人はどうすれば良いのか分からない様子で、おどおどしている。

NNは、机に伏して熟睡だ。

すげぇ、不真面目だな、お前。俺も授業中は寝てたけどさ。


「………構わん。ビービ特級神官。悪いがNNを連れて行く。」


「ひぇぇ?はいぃぃ……分かりましたぁぁ……」


俺があげたサーベルを枕にして眠るNNの寝首を、引っ掴み部屋からNNを引きずって退出する。サーベルを有効活用している事は嬉しい限りだが、こっちが引きずっているのに、起きないってどんな神経してるんだ?


冷たい廊下に突き離すが、今度はサーベルを抱き枕にしてスウスウと寝息を立てる。凄いな、ここまでくると感心しか出来んな。

だが、ここは可哀想だが起こさなければならない。


「起きろNN。」


肩を揺さぶるが反応が無い。屍か?ただの屍なのか?


「………私は……私……」


「…………」


そうだな。お前は、お前だ。………いや、待て凄いな、なんだそれ?寝言か?今のが寝言なのか?

生まれて初めて聞いたわ、寝言言う奴……居るんだな……


…………いやいや、感心してる場合じゃない。


「起きろ、NN。」


割と強めに肩を揺さぶってみたが、まるで意味がない。


「………なに、ディラ先生。」


と思ったら起きた。普通にムクッと起き上がりやがった。

なんなんだ、お前?

まぁいい、さっさと転移を発動させる為の魔力を練り上げる。


「……来い。」


「………分かった。」


NNが俺の肩を掴み、それと同時に俺は転移した。










再びおっさんの恥ずかしい自画像部屋に転移した俺。視線の先にはおっさん達が雑談を初めていて、俺の気配にいち早く察知したのはダルク。此方を見た瞬間、テケテケと走ってきた。

NNは初めての場所に警戒し、キョロキョロ辺りを見回す。


「遅いですよ!バンシィ様!……そいつが、案内人ですね!僕はジャンヌダルク!偉大なるバンシィ様のしもべだ!僕は偉いからちゃんと敬語を使うように!」


冷たい視線で見つめるNNと、偉そうに胸を張り踏ん反り返るダルク。身長的にはダルクの方が小さいから、NNに見下されている形になっている。


「………そう。」


「なんだー?僕が自己紹介したのに、お前は自己紹介もないのかー?」


「私はNN。」


「へー、そうなんだー。」


なんだお前。


え?自分から名前聞いといて、聞いた瞬間興味なくしたのか?どんだけ気が変わるの速いんだよ。


「バンシィよ。意外に遅かったの。我は別に構わんがの。」


「すまないな。じゃあ、『双剣島』の場所を教えてくれ。」


「うむ、既に船着場にて船を用意しておる。まずはそこに行くぞ。」


「そうか。」


手回し早いな。船ってそんな簡単に用意出来るものなの?………まぁいいか。


「うむ。では転移じゃぁ!」


おっさんが、浮遊するキャッスルコアに触れると、キャッスルコアは光を放ち俺の視界は切り替わった。




そこは壁一面が木で出来た部屋だった。

おっさんと俺以外は、床で仲良く倒れて転移していた。


「ここは?」


「船着場にある宿の一室じゃ。」


「そうか。」


えー、なに、宿にもキャッスルコア繋げてたのね。だからキャッスルコアの力で転移したわけか。


「お前ら、起きろ。早く行くぞ。」


「はい………ですが、ベータ。退いて。」


「ム?すまん。」


ガンマとダルクはベータによって押し潰され、地べたを這いつくばっていた。

それを無視してさっさと部屋から出ると、直ぐ目の前に海が広がっていた。


「宿の一室ではなかったのか?」


「ふむ、どうやら、ただの小屋だったようじゃな。」


おいおい、知らなかったのかよ………


まぁいい。


「船は何処だ?」


「今出す。暫し待て。」


そう言ってよく分からん魔法陣を描き始め、黒コートの下から取り出した一枚の古紙を、その魔法陣に被せると、古紙に魔法陣が描き込まれた。

この場合、凄いと言えばいいのか?

おっさんが今やっているのは、今は廃れた昔ながらの魔術の陣を作り出している。

昔の魔術は魔法陣を描いた紙を投げると魔法が発動してたんだぜ?

火を出すのに、紙を投げつけて、その紙が一気に燃えがって火に変わるとか。


「『我が導となる古の箱船よ。脆弱なる我の元に光の導を。』」


出来立てホヤホヤの魔術が光を放ち、おっさんの前で浮遊を始める。


「『我を、我らを、我の導を我らに。進むべき道を行く箱船よ。今ここへ、我を再び歩む道へと導き給え。』」


おっさんが浮遊する魔術の紙を前方へと押すと、魔術の紙は海に着水し光を更に強め、破裂した。


大きな水飛沫が上がり中から現れたのは、全長10メートル程の大きな木の帆船。


「………思っていたよりも大きいな。」


「そうかの?……まぁよい。はよう乗り込め。」


「ああ。」


さっさと小屋で転がるダルク達を引っ張り出し、船に乗せる。

おっさん以外の全員が乗った事を確認して、俺も船に飛び乗った。

俺、船の運転出来ないけど、どうするのだろうか?


「全員乗ったの?……では、行って参れ。『我が導へと導き給え。』」


おっさんの詠唱とほぼ同時に、船が勝手に動き始めた。


「では、また後での〜」


「すごーい!動いてるー!」


船上でバタバタはしゃぐダルクを拳で鎮め、俺はおっさんがいつまで手を振るのかを、ジッと、千里眼を発動してでも観察を続けたのだった。



おっさんは船が見えなくなると手を振るのをやめ、さっさと転移して何処かに行ってしまった。


「ディラ先生。これから何処に行くの?」


NNが袖を引っ張り聞いてきた。

そう言えば、言ってなかったな。


「双剣島だ。」


「双剣島………」


NNの顔が、少し引きつった様な気がしたが、何も言わないので、何も聞かない。


それにしても、この船……どうやって動いてんだ?いや、魔法なのは分かるんだが、舵とか、針路はどうやって理解して進んでいるのだろうか?


はしゃぐダルク達、海が恋しそうに眺めるシャンを無視して、俺は船の中に入った。

NNも、流石にダルク達と一緒に居るのは気まずいのか、俺に付いて歩いてくる。


船の中は、特に何も無い。部屋が幾つか別れているくらいだ。

適当にウロウロしていると、船底に続く階段を見つけた。

その階段を降りると、一つの部屋が設置され、その部屋に入ると、其処には紅く輝く球体が浮遊していた。


「キャッスルコア?」


「…………」


浮遊するキャッスルコアに触れると、海図と船の位置、それと目的の島『双剣島』の位置が、しっかり記されていた。カーナビの様な機能だな……


少し、適当に弄り回してみると、どうやら、この船を動かしている動力も、全てがこの、キャッスルコアの魔力で、動かしている様だ。

何故分かったかって?


だって、そうやって書いてあんだもん。


しかし…………キャッスルコアって便利だなぁ………



特にやる事も無くなった俺は、風魔法で作り出した空気椅子に座り、NNと一緒に、キャッスルコアの投影する、魔王城でゴロゴロする、おっさんの姿をただ、観察する事にした。

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