ー第2話ー 『魔王グリム』
修行と勉強を始めて三週間、毎日同じことの繰り返しをさせられていた俺に一つ出来ることが増えた。
魔力操作だ!
俺はこれが使える様になった事により創造魔法以外の魔法を使える様になったのだ!!
え?今までちょっと使えてたじゃ無いかって?あれはな、ドラグが言うには創造魔法で空気中の魔力をそれっぽく変化させただけらしいよ。
それは置いといて、俺は今、異世界に来たら一番やりたい事をやっている。
それは……
空を飛ぶ。
あ?箒使って飛んでたじゃ無いかって?あれはダメだ速さが足りない!!
飛んでる事には変わり無いけどな……
アレだよ……風を感じたいのだよ……
「おい!バンシィ!!晩飯をさっさと作ってくれ!!」
「………チッ、わかったよ。」
ドラグがマジで邪魔でしかない…折角俺が頑張ってんのに…此奴飯の事しか考えてねえ………
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何と……聞いてくれ!!
我の呪、『大陸の呪縛』の発動範囲が分かったぞ!!
この無人大陸を中心に海を泳いでおったら大陸が見えなくなる程の距離になったら我が進まなくなってしまい。溺れてしまったのだ!
つまりだ…我は余り遠くでは無ければ海で泳げるのだ!!
「ヒャホホーーイィ!!!」
大魔王は一人で浅瀬の海水をバシャバシャやっていた。
そこにシャンが泳いでやってくる。
(やぁ!アムリタ!!)
「おお!!シャンでは無いか!!済まぬが早速乗っけてはくれんかの?」
(良いよ!乗って!!)
シャンは背を向け大魔王を座らせ広い海に泳いで行った。
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俺は洞窟の中で座禅を組んだ。その目の前にドラグが俺になって仁王立ちする
「さあ!魔力を練るのだ!!寝る前だけにな!!!
「………」
全然上手くも無いし、面白くない。まだおっさんが布団が吹っ飛んだって言った方が面白いぞ……
俺はドラグのギャグをスルーして魔力を練る。
何だろうな……身体の中に流れてるエネルギー的なものを胸に貯める感じかな?
すまんな、感覚派なもんで……
俺は座禅を組みジャンジャン魔力を練る。
練った後は貯める。つっても貯めたものをまた身体の中に流すだけなんだがな……
何だろう、ここは上手く説明出来ん。
「おうおう!良いぞ、良いぞ!莫大な魔力が溜まっているのが見えるぞ!!」
そう言えばドラグの『族王』の能力を教えてもらったんだがな、何だっけな……確か相手のステータスと魔力の流れを見る事が出来るらしい。
ただ、ステータスはほんの少ししか見る事が出来ないらしい。
あとなんかドラグが言うには魔力の流れを見る事が出来るのはめっちゃ良いらしい。
何か、相手が次に出す魔法とかが分かるんだってよ。ただ、格上とか同格とか結構強い奴のはあんまり見えんらしい。
そうなると俺が弱い様な事になるから付け足すが、魔力が莫大な量を持つ相手の場合もハッキリ見えるんだってよ。
イコール俺は弱く無い……うん。
「………よし、そろそろ良いだろう。もう流しても良いぞ。」
「ん。」
俺は座禅を崩し軽く肩を回す。結構座ってたからな。
「では、ランニングしてこい。」
「ああ。」
俺が洞窟から出ると外は真っ暗だった。
しかし空には白い月と青い月と赤い月が辺りをほんのり照らす。
と言う訳で軽く山?崖?の周りを一周してきます。
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んがぁ……疲れたよ……とゆう訳でお休み……
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「ではまたの、シャンよ。」
(じゃあね!)
シャンは海に潜り大魔王は転移する。
……ふむ、
大魔王はバンシィの作った家のドアの前で悩む。
(さて……今日はどうして、開けようかの……叩き壊すのも良いが…そうじゃ!)
大魔王はおもむろにドアノブに手を伸ばし思いっきり時計回りに回しドアノブを外すそのドアノブは握り潰し粉々にし空いた穴から手を通し鍵を開ける。
(侵入成功じゃ!)
おっさんは中に入るとちゃんと玄関で黒い靴を脱ぎ家に上がる。
因みに壊れたドアはこの家の素になった魔力大樹の再生能力によって元に戻っていた。
おっさんは真っ直ぐバンシィの部屋に入り机を退かし畳を外し階段を下りる。
部屋の灯りをつけ何も無いガラガラの研究室(笑)を見る
(本当に何も無いの……そうじゃ!!我がバンシィの為に色々本を用意しておいてやろう!!そうと決まれば明日決行じゃ!!)
大魔王は一人ガッツポーズをし階段を上がりしっかり畳をはめ机を戻し部屋を出て居間のソファに転がり寝息を立てた。
「ふぬぬぬぬ……」
「なあ、バンシィ。いい加減諦めな……」
「嫌だ!!俺は空を飛ぶんだぁ!!」
「そんな事を言っても向いてないものは向いてないんだよ。お前じゃ浮遊魔法は使えん。残念、他を見つけるんだな。」
「むむむ……」
空を飛ぶ事を目標に誓ったあの日から五週間くらいたったが俺は未だにジャンプしかできない。
浮くことが出来ないのだ。ドラグは魔法には人それぞれ適正があるからお前は無理だとか言ってくるし……
「そうだ!!バンシィ!回復魔法を覚えたらどうだ?色々使えるぞ!」
ドラグがドヤ顔で言ってくる。ドラゴンな顔だからドヤ顔かどうかは知らんけど。
回復魔法か………
待てよ……不死身が回復魔法覚えたら無敵じゃね?
あ、そう言えば『不死身』って全ての攻撃を激減するって効果なんだってさ。殴られてもノーダメっていう訳ではないらしい。
なんか、其処まで強くない攻撃だとダメージはゼロだけど大陸を一瞬で消滅させる位の力とかだとダメージは受けるんだってよ。
それでも骨が折れるくらいなんだってさ。
そこに回復魔法。
俺無敵じゃね?
「オーケーオーケーその回復魔法とやらを教えてもらおうではないか!」
「よく言った!では先ずは回復魔法の特性や効果を………………
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我は城へと戻った。
何故と言われると我の玉座の前に魔王が槍を構え待っていそうだからである。
我は今日は気分が良いので魔王の奴を少ししごいてやろうと思う。それと、バンシィの秘密基地の為の色々な本を手に入れてもらう為である。
我は城にある我の部屋に転移し取り敢えず新しい魔の黒コートを着る。このコートはだな、不思議な事にかなりの耐久性があってな燃えない破れないの優れものだ。まあ、我が全力で引きちぎれば破れるがの……
そんな事は置いておき、我は玉座まで今日は歩いて行こうと思う。
まあ玉座は隣だからな。
と、お前達は近いじゃんとか思っただろう?だがな、我の部屋の扉を開けて左に真っ直ぐ歩き5分掛かる距離なのだよ。
これはもう隣ではないな……だが、隣なのだよ。我の中ではな!
我は部屋の扉を開き赤絨毯の敷かれた廊下に出る、我は左に真っ直ぐ歩き始めたのだ………
ふむ、何もないな………
赤絨毯以外何もない長い廊下を歩き続ける。
……………………………転移!!
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我は相変わらず何もない玉座の前に転移する。我は玉座に腰を掛け肘をつき魔王を待つ……………
遅いな………
暇だから魔法で作って壊すか……
ああ、我、作る系の魔法使えんのじゃった………
仕方ない壁でも壊すか………
「…………破滅魔法。」
我は右手を上げ魔力を集中させる。
我の手の上に黒い塊が現れる。
「ワールド……「失礼します。」
その時グリムが扉を開き入って来た。
グリムは我が魔法を構えている所を見た瞬間扉を閉め逃げ出した。
逃がさんぞ!!
「術式変更。追尾式破滅魔法ワールドバード!!」
我は咄嗟に手に作っておいた魔力の塊を小さな鳥に変化させグリムの逃げた方に投げる。
その鳥はかなりの速さでグリムを追いかけた。
今の魔法は我が独自に開発した新魔法!追尾式破滅魔法ワールドバードだ!!
これはだな。破滅魔法のワールドバードを改良し狙ったものを追い続け拘束し連行する大して使えない魔法じゃ……
そろそろグリムが引っ張られてくるであろう。
おお、来た来た。ワールドバードはグリムを魔力で拘束し引きずりながら扉を壊し入って来た。
我の前まで引きずってくるとワールドバードは爆発してしまった。
その衝撃でグリムは気絶してしまった。
………ふむ、改良が必要だの………
***
「大魔王様、いい加減新しい魔法の試し撃ちを私に行わないでいただきたい。」
爆発でボロボロになったグリムを回復させた一言目からその様な戯言を吐くグリムを鼻で笑い、聞き流す。
「して、グリムよ。なに用で我を呼んだか?」
コンと水晶石で作られた膝掛けを手の甲で鳴らす。
水晶石の澄んだ音は玉座の間を木霊し静まる。
静寂の中に、グリムの息を飲む音が聞こえた。
「_____15年……15年の時間は、人族に対し攻撃を仕掛けないと、この場で誓う為にお呼びしました。」
「ほぅ……」
おかしな話だ。
怪しいにも程がある。
人族抹殺主義のグリムが突然、人族を攻撃しないだと?
何かあるのが丸わかりではないか。それでこの我を誤魔化せると思われているとはの………
まぁ良い。ここはグリムの茶番に乗ってやることにしよう。
「実に良いグリム。遂に考えを改めたか。それでこそ我が魔王に選んだ者じゃ。」
「はっ。やはり大魔王様の御意志こそ至高の考えであると実感致しました。」
「うむうむ!」
そんな筈がなかろう、下手な嘘を吐きおって。
「では、改めて此処に宣言させて頂きます。」
「うむ、よかろう。」
そう言うとグリムは右手を天に仰ぎ、宣言した。
「宣言。魔王グリム率いる魔王軍は、現時刻を持ち、人族への攻撃を停止し、以後15年間は人族への攻撃行動を行わない事を宣言します。」
「うむ。その宣言、我が耳にしかと聞き届けた。大義である。」
その瞬間、我はグリムの思考を読み取り、対策を講じることに決めた。
実に面倒な内容じゃ……まさか、あの兵器を作り出そうとはの……
ふむ、ならば此方も一手打っておこうかの。
それも取っておきの番狂わせ。
______バンシィをな。