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ー第29話ー 『衝撃 カミングアウト』

赤扉を開けると、チロリンと心地の良い鈴の音が始めに出迎えてくれた。


うん、もうなんだ。最悪だ。


凄く、恥ずかしい。


何故わざわざ自分の店に、客として入らないといけないんだ………恨むぞ、イグザ。


「おう!ドラグ!オレンジジュースお代わりだ!」


「あ"!?てめぇどんだけ飲むんだよ!金はあるんだろうな!?」


「無い!」


「ふざけるなよ!貴様!こっちは色々カツカツなんだよ!」


「フハハハハ!良いでは無いか、ドラグよ!今日はこの我が全員分、奢ってやろう!」


「おー!本当か!アムリタのおっちゃん!じゃあドラグー!オレンジジュースお代わりだ!」


「あら、サリフ♡今日はアムリタおじ様の奢りですって♡ラッキーね♡」


「そうだね♡ネル♡」


「マジで呪い殺すぞテメーら?」


なんてこった………


なんだこの混沌カオスな空間は………全員キャラ濃すぎだろ……

そしてドラグ……入客に気づけ。


「凄いですね………」


「………なんとも言えん。」


「…………」


しれっとNNが、行き遅れBBAこと『呪王』シロンの隣に座る。そして……


「私はりんごジュース。」


おい。


「わーたよ!りんごジュースだな!……って、え?」


「「へ?」」


「……何?今日は、そこのおじさんの奢りじゃないの?」


と言って、こっちを向くなNN。お前の所為で気づかれたじゃないか。

いや、客側だとしたら気づかれないといけないのだが、なんだ……この気まずい状態は………


「……え?バンシィ?」


「えぇ!?お知り合いなんですか!?」


イグザの驚きの声が、沈黙した店の中を響き渡る。


「はぁ………マスター、3人だ。この二人に何か飯を出してくれ。」


「えぇ?お、おう。適当に座ってくれ。すぐ出すから待ってな。」


NNの隣にイグザを座らせ、俺は奥のおっさんの隣に座る。

………あれ?ちょっと待って、ドラグって飯作れたっけ?


「バンシィ?なんじゃこれは?あの2人は一体誰じゃ?」


「俺の弟子だ。」


「弟子って……え?」


「弟子だ。」


「いやいや、聞こえておる、え?弟子?いたのか?」


「遡ると10年くらい前からいた。」


「えぇ……バンシィ……なぜ一人でそんな、楽しそうな事をやっておるのじゃ………」


我もやりかった。とか言ってるが、弟子を持つことは、遊びじゃないと思うのだが?


「えぇと。アムリタおじ様の知り合い?」


「うむ、儂の相棒じゃ!」


「バンシィだ。」


何故俺が自己紹介をしなければならんのだ………

相手は俺の事を知らんかも知れないが、俺はめっちゃ知ってるから凄い変な気分なんだが………


「へー、貴方がアムリタおじ様の相棒さんなのね、此方のお二人は?」


「俺の弟子だ。」


「おい、お前、強いのか?」


いつの間にか、俺とおっさんの間に割って入って来たのは、『破王』カイト。ドラグの話を聞く限りは、この『五王』の中で、物理的な破壊力はピカイチだとか。


「強い。と、自負するほどではない。」


「そうなのか。」


そう言って放たれた、拳を魔防壁でガード。

何こいつ、ヤバすぎ……いきなり殴ってくるとか………しかも凄え強いぞ………魔防壁が一枚割られた。

ん?あぁ、俺、魔防壁って常に二重に張ってるんだよね。保険として。


「すげぇ!アムリタのおっちゃんと似たような魔法だ!」


「見た所、結界魔法の最上級クラスの魔法ってところかしら?」


そう冷静に分析するのは『賢王』ネル。魔法・魔術の知識と才能が素晴らしいと、ドラグが言ってた。

まぁ、確かに才能はあるだろうな。魔力を見ただけでも、殆どおっさんと変わらない程の魔力を持っている。

強い事は確かだな。


「残念だが結界魔法ではない。俺のオリジナル魔法だ。」


「へー、オリジナル……流石、アムリタおじ様の相棒さん。と言うべきかしらね?」


今思ったが、アムリタおじ様って誰だよ。えぇ?なんでそんなに仲良くなってんの?


「おいおい、お前ら、バンシィ相手に喧嘩は辞めといた方が良いぞ。痛い目に合うからな。」


そう言ってこの場を収めた、見るからに高級そうな肉を、大量に乗せた丼を2つ持って来たドラグ。


「おい。その肉はなんの肉だ?」


見た事あるぞ。と言うか知らない訳ないぞ、クックロイだな?しかもSSS級。


「げ!?……えぇとだな!美味しい肉だ!」


「言っておくが、ドラグ。値段を盛っても無駄だぞ?俺はその肉が、何処から仕入れているのか知っているからな?」


答え。俺の家にうろつく、クックロイを捕獲しただけ。だから値段はタダ!俺がとって来たんだから間違い無いんだよ。


「クッ……ご自由にどうぞ!」


というかドラグは、俺相手に、俺の店のもの出して、金取れるとでも思っていたのか?馬鹿なのか?


「NN、イグザ。好きなだけ食べて良いぞ。」


「良いんですか!?じゃあ!頂きます!」


そう言って勢いよく丼にがっつくイグザ。お前、そんなに腹減ってたの?


「バンシィ、何を飲むんだ?」


目の前に立つタキシード姿のドラグが、しっかり店員している事に、少し見直した。


「ワイン棚の左下の冷蔵庫。」


そう言ってカウンター越しから指を指す。


「ん?ここにはグラスしか入っていないぞ?」


と、思うじゃん?


「グラスを退けて奥にある板を退かしてみろ。」


「板?板なんて無いぞ?……ん?なんだこれ?」


「それだ。それを退かせ。」


「わかった。ん!?これか?」


冷蔵庫の奥から取り出した、金色の箱。


「それだ。寄越せ。」


「あ、ああ。」


ドラグから手渡される金色の箱。

フッフッフッ………ずっと楽しみにしてたんだよなー、コレ!


「なんじゃ?高価そうなワインじゃな?」


「フッ……違うなおっさん。これはワインなんて言うしょぼいもんじゃぁーない。」


そう言って俺は金色の箱の蓋を開ける。


中には、丁寧にラッピングされた真っ白の液体が入った瓶。


「なんじゃそれは?酒なのか?」


「牛乳だ。」


「え?」


「牛乳だ。」


「え?……牛乳?」


そうこれは牛乳だ!!


「牛乳、と言ってもただの牛乳ではない。この牛乳は『天空の奇跡』と言う異名を持つ牛乳だ!」


「お、おう……」


「この、『天空の奇跡』はシストラ大陸北西に位置する『天空山』と呼ばれる巨大な山、その山頂で育てられた牛の乳から絞り、その徹底的な管理の元に製作された牛乳!それがこの!『天空の奇跡』なのだ!!」


「す、凄いのか?」


「飲めばわかる。」


心優しい俺は、グラスに牛乳を注ぎ、おっさんに渡す。

おっさんはそれを少し眺めた後、一気に飲み干した。


「ふむ……甘いの。これは、とても牛乳とは思えんな。」


「だろう!これがまた美味い!酒なんかよりもこっちの方が断然良い!」


決して酒が飲めないからでは、ない。決してっ!!


「ふむ、一体いくらするんじゃ?」


「1000ルムンド。」


「…………せん……ルムンド?」


「一本1000ルムンドだ。因みにダースで買った。残りがこれだけだ。」


「ぼ、ぼったくられてはおらんか?」


「な訳無いだろ、大体、『天空山』だぞ?あの場所がどんなに険しいか、知らないだろ?」


彼処に行くまでが大変だった……何日も何日も山を越え、崖を登り、谷を飛び越えと………着いた時に、空飛んで行けば良かったと後悔した事を、今でも鮮明に覚えている。

今はなんかちょっとコアな商人が空飛んで買い付けに行ってるから、本当に稀だが、最近ではこの牛乳が市場に出たりもする。一本5000ルムンド近くで……


「確かに知らんが……「えぇーー!!!」


突然イグザの声が、店の中に響き渡る。なんだ、なんだ……今度は一体……


イグザは立ち上がり、凄い顔で俺の方に寄ってきてこう言った。


「ディラデイル様!この人達が『五王』って事知っていたんですか!?」


「『五王』?何のことだ?」


「とぼけないで下さい!この店員さんが言ってますよ!俺は『族王』で、ディラデイル様の知り合いだって!」


おい、ドラグ。


「そうだな。」


「そうだなって……知ってたんですね!?『五王』の居場所知ってたなら、初めから教えて下さいよ!?」


「イグザ。人生は、楽な事ばかりじゃ無いんだよ。」


「一番楽してる奴が何言ってやがる……」


「ドラグ、殴るぞ?」


俺はこう見えて、忙しいんだよ。毎日の様に迫ってくる書類に、判子を押す作業にな!


「もう!本当に!ディラデイル様、知ってたなら初めから仰ってくれれば良かったのに!」


「………そうか?ならイグザ。『五王』に協力をお願いしてみろ。」


「そんな事、簡単ですよ!………皆さん!これから来る『邪神』の討伐に力を貸して下さい!」


「「「「「嫌だ」」」」」


おぉ……ハモった。


「えぇーー!?なんで、ですか!?世界の危機ですよ!?」


「私たちはデートがあるから。ね?サリフ♡」


「そうだね、ネル♡」


ウザい。


「私は一人を呪い殺す方が好きだから。」


うん、BBA。お前は絶対暇だろ。


「『邪神』?美味しいのか?」


論外。


「ほぅ……『邪神』か、まだ居たのか……」


一人、ドラグだけがそう言った。


「……知っているのかドラグ?」


「ああ、勿論知っている。アレは規格外に強かった。」


あれ?強かった?


「え、なに、戦った事あるのか?」


「勿論だ。なんせ『邪神』を封印する為に、大きく貢献したのはこの俺様だからな!」


と、胸張ってそう言うドラグ。此奴が嘘つく様な事は無い。多分、本当の事だろう。

だが、ちょっと待て、『邪神』が居たのは今から400年前だぞ?………え?ドラグって何歳なんだ……?


「ふむ、邪神か。我が父上から、話は聞いた事があったが……しかし、滅ぼしたと聞いたぞ?」


そうだよな、一応大魔王のおっさんが産まれる前だもんな、流石におっさんも知らないようだ。


「ん?ああ、そうだな、確かに滅ぼした。ただ、それは『邪神』の分体だ。本体では無い。」


「ほぅ……成る程、つまり封印されているのはその『邪神』の本体。と、言う事じゃな?」


「そうだ。だが、復活した所で、手負いだ。アムリタ。お前一人でも余裕に滅ぼせるだろう。」


「なんじゃ。少し心配したぞ。なら問題ないの。」


そう言って、勝手に牛乳をグラスに注ぎ、飲むおっさん。

美味しかったのかよ……


「問題なく、ないですよ!?えぇ!?なんで3人で解決しちゃてるんですか!?大体『族王』さん!『邪神』が居たのは400年前ですよ!?貴方一体何者ですか!?」


それは確かに俺も気になる。ドラゴンってのは知ってるが、なんか、色々経験しすぎだろ。


「ん?俺か、お前は『邪神』を誰が封じたのかは知っているのか?」


「勿論です!初代ロトムス王国国王、チール・ロトムス・ハンバードと『熾天使』バンバーン、そして『槍使い』と『漆黒のドラゴン』が『邪神』を封印したんです!」


「そうだな。その、『漆黒のドラゴン』が俺だ。」


あ、やっぱりそうなんだ。


………待てよ、じゃあ『熾天使』のバンバーンってのはなんだ?バンバーンってなんだ?


ドラグの衝撃カミングアウトに、俺とおっさんとアホの『破王』以外は、開いた口が塞がらないことになっていた。


ども、ほねつきです。

この話……長くなりそうです……ひたすら説明回になりそうなので、予めご了承下さい。ではまた

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