ー第25話ー 『面倒事の予感』
なんだかグダっている気がします。
「しかし、サラミス。お前がビビスだとは初めて知ったぞ。」
「ご存知なかったですか?」
「ああ、どういう仕組みだ?」
俺は、再び仮面を付けビビス姿のサラミスと話す。
「はい、簡潔に申しますとビビスは二重人格なのです。ビビスという意識と私、サラミスと言う意識で……」
「そうか、おっさん……アムリタは何て?」
「はい、私の意識を別の依り代に移せば何とかなると。」
へー、依り代ね。そんなもんあるか?
「成る程、見当はついているのか?」
「はい、ホムンクルスを依り代に使用してみるのはどうかと……アムリタ様は仰っておりました。」
ホムンクルス……か、NNならなんか知ってそうだな。
「所でバンシィ様、このお二人は一体……?」
ああ、紹介してなかった。
「……まぁ、俺の弟子だ。」
「なんとっ!お弟子様!それで、この剣を購入されたのですか!」
「そんな所だ。」
「……お二人ともとても良い魔力を持っておりますな!流石はバンシィ様のお弟子様!」
やばい、面倒くさい。
「其方のお弟子様の方は……素晴らしい、無属性の魔力の持ち主ですな?」
サラミスが得意げにイグザを指差しそう告げる。うわ、面倒くさい。イグザはなんか、カチカチに固まってるし、NNは俺が黙っていろと言ったせいか、ずっと黙っている。
「ああ、そんな事よりお前の話だ、たしか、ホムンクルス……と言ったな?」
面倒くさいので強引に話を逸らす。
「はい、左様にございます。」
「NN、あのFとやらは、たしかホムンクルスだったな?」
「……ええ。正確には〈h.c.-006-F.K.〉。」
「……詳しいですな。」
「ああ。」
流石のサラミスも引き顔だ。
「NN。そのホムンクルスを作っている所は知らないか?」
「……知ってる。」
「ほぅ。どこにある?」
「この街から出て北にある森の中。」
「ここから北?北には未開拓のフェルミト大森林しかございませんが、フェルミト大森林の中と?」
サラミスはどうやらそのフェルミト大森林を知っている様だ。
「そう。」
それだけ言って黙り込むNN。
「まぁいい。行ってみるか。」
「待ってください!」
軽い感じで言ってみると、ずっと固まっていたイグザが声を上げる。
「なんだ?」
「未開拓の森って、危険じゃないですか!?大丈夫なのでしょうか!?」
大丈夫なわけ無いだろ。未開拓だぞ?と、逆に言ってやりたいがサラミスに先を越された。
「バンシィ様のお弟子様よ。世界がいくら平和だからと、己の身の周りが安全だとは限りませんぞ、貴方は強い、流石はバンシィ様のお弟子と言える程に強い。自信を持ちなされ。」
「え……でも、私は……」
「イグザ。安心しろ、お前が危険な目に合うことはない。」
そう言って席を立ち、店員に会計を済ませ店を出た。
外は太陽の沈みかけた夕方だった。
「さて、どっちへ向かえば良い?」
「ここは私にお任せを!」
そう言って名乗り出る、ビビスの見た目のサラミス。
「ほぅ、どうするんだ?」
「はい!ここは私の『転移魔法』を使いましょう!」
「そうか、なら任せる。」
「お任せを!」
サラミスが指を鳴らし転移を行う為の詠唱を始める。
辺りの人がちらほら此方を見つめる中、サラミスは詠唱を続ける。
「_________行きます!帝級破滅魔法『強制転移』!!」
その瞬間、俺の視界は切り替わった。
目の前に現れたのは木。どうやら転移出来たようだ。
「こ……これが転移……」
イグザがなんか感動しているところを無視。全員いるか確認する。
「ふぅ、なんとか出来ました。」
「ああ、良くやった。」
さっきまでドワーフ姿だったサラミスが、いつの間にかあの白髪の魔族に変わっていたが、俺はあえて気にしない。
「えぇ!?サラミスさん!?」
と、大げさに反応するイグザを無視して、NNを探す。
「NN?」
「ここ。」
「……降りて来い。」
何故か木の上にぶら下がっていたNNを、さっさと降りさせ何処に行けば良いかを聞く。
「ここから直ぐ、着いて来て。」
「ああ、待てNN。」
俺は、さっきビビスから買い取ったサーベルの黒い方をNNに渡す。少し細工はしたがな。
「それとイグザ、お前もだ、持っておけ。」
「え……でも私は……」
「良いから持っておけ。」
なんかねちねち言ってくるイグザを無視して白い方のサーベルを渡す。勿論、ちょっとしたお守り付き。
「バンシィ様は、お優しいですな。」
「ふん、黙っていろ。」
流石はおっさんの二番手、とでも言うべきか、サラミスは二人のサーベルに俺が付与したものの効果が分かったらしい。
「さぁ、NN。案内しろ。」
「……こっち。」
サーベルを腰に付け歩き出すNNを俺たちはついていった。
十分程歩くと、NNが突然止まった。
「この下。」
「成る程。」
下は完全に土だが、何らかの魔力は漏れ出ている。
「NNは、開けれるか?」
「……出来ない。」
「そうか、じゃあ……」
こじ開けるしかないよな?
「サラミス!お前の力を見せてみろ!」
「はっ!畏まりました!破滅魔法!」
サラミスが跳躍し、魔力が一気に高まる。
「『破門』!!」
サラミスから波紋状に広がる魔力が、地面を刺激し、土だった地面が崩れた。
どうでも良いが、破門と波紋ってかけているのか?
土が抉れ、現れたのは鉄の板。それを開けると、地下へ繋がる階段が続いていた。
「よし、様子を見て来い!サラミス!」
「はっ!仰せのままに!」
やべぇ、面倒くさいけど此奴、めっちゃ使えるわー。
ハイテンションで階段を駆け下りていくサラミスを見つめ、待っていると声が上がった。
「バンシィ様!危険は無さそうですが、死体が大量にございます!」
うん、それは危険しか無さそうだな。
さらなる面倒事の予感に俺は少し帰りたくなった。