ー第8話ー 『Z2』
目覚めたNNの身体を、心配しながらも俺はNNからFの居そうな場所を聞き出した。
「この辺りに隠しアジトがあった。」
船着場の街からだいぶ離れた、全く人の手が掛かっていない、自然の森。
木々が無造作に生い茂り、ジメジメしていて、食べたらヤバそうな茸が、そこら中に生えている。
「アジトの入り口は?」
「分からない。手探りで探すしか……」
そう言ってNNは近くの木に異常が無いか、調べ始めた。いや、この辺の木は全部異常だよ。茸いっぱいだから。
俺はさっさとアジトに入るために、魔力感知を発動させた。
はい、真下に部屋発見。
では、ここで先生として、一つNNに教えを説きましょう。
「いいか、NN。」
NNが此方を見て寄ってきた。
「なに?」
「入り口は探すものじゃない。作るものなのだ。」
「え?」
拳に力を込め、魔力も溜める。
「必殺!!破滅魔法、オラァッ!!」
思っきし力を込めた拳を、地面に叩きつけ地面を砕く。
バキッ!と一気にひび割れ、周囲の地面が大きく凹み広がる。
そして地面に穴が空いた。
落下した俺はNNを引き寄せ、軽く着地しまだ、降ってくる土や石を魔防壁で弾き治まるのをまった。
流石は俺の破滅魔法(物理)だ。
いい威力だったぜ!
「あの……ディラ先生……やり過ぎ。」
「ふん、こっちの方が手っ取り早いからな。」
さて、周りを見回すといかにも、研究施設って感じの設備がある。だが、ここはまだ入り口でしかない。
俺の魔力感知ではあと下に3階ある。
という訳で砕こう。そう思って拳を構えたらNNに抑えられた。
「これ以上は駄目。Dr.グロウの研究施設には全て、『魔導核』が備わってる。」
Dr.グロウって誰や、そう思っただろう。ホムンクルス作った人の名前だ。
そして、『魔導核』はアレだ……要するに核爆弾だ。
実際は魔力溜まりがどうにかなって、自然に存在する魔力が爆発的に増えて生物が耐えられなく環境になるらしい。それの爆発力が大陸ぶっ壊すレベルだっておっさんが言ってた。
あれだね、放射線みたいだね。違うな、まさに核爆弾だな。
なんか、魔王グリムが開発してたらしいんだけど、途中でヤバいから止めようってなったらしいんだが、どうやらDr.グロウはそんなものを作っていたらしい。
アホなのかな?
下手したら自分も死ぬのに……
でも、天才と馬鹿は紙一重って言うしな。
……そんな事はどうでもいい、こんな所でモタモタしていた所為で、警備が来やがった。
四方の鉄の扉が開き、Fと思われる赤ローブが俺たちを取り囲んだ。
「ディラ先生。どうするの?」
「勿論、全員殲滅だ。」
「分かった。」
俺はNNに背後を任せ、目の前の赤ローブ達と対峙する。見た所、全員ナイフしか持っていない。
さっさと魔法で殲滅しても良いんだが、ここは先生として、対多数の相手との戦い方をNNに魅せてやろう。
袖口から取り出した魔力樹を、剣に変え指先で剣を、ペン回しする様にクルクル回し右手で構える。
「水流剣」
剣に水魔法を纏わせ、剣を水の刃に変化させる。
斬れ味抜群、振れば水刃を放つ事が出来る。これをNNには覚えてもらいたい。まぁ、水流剣なんて言ったが、要は魔纏流。タリウスに教えたアレの応用みたいなもんだ。
軽く一振りして水刃を放つ、不意打ちかどうかは微妙だが、赤ローブの二人はそれに巻き込まれて首が飛んだ。
接近した赤ローブを切り捨て、水刃を放つ。ナイフを躱し水刃をお返しする。
弱い。
この程度では、対多数の練習にもならん。
ふと、後ろのNNを確認してみると
「クッ……Fの分際で……」
赤ローブ五人に囲まれ、かなり苦戦していた。
めんどくさいな。
軽く赤ローブ達の間をすり抜け、NNの横につく。
「え?ディラ先生!?」
はぁ……めんどくさいな。
「良いかNN。対多数の戦闘の場合、囲まれた場合に、逃げる手を一つ教えてやろう。」
「え?それってどうゆう……」
俺は右手を高々と上げ、その手に注目を集める。
魔力を流し、とある超簡単な誰でも使える、超お手軽魔法を発動する。
「『光の導き』!」
俺の右手が眩い光を放ち、赤ローブ達の眼を眩ませる。
その間にNNをひっ掴み、赤ローブの囲いから脱出。
「ディラ先生……今のって……」
どうやらNNも気づいた様だ。
「そうだ、初級魔法の『フラッシュ』だ。」
まぁ、なんだ……普通に一般人も使える魔法だ。一般が主に使う魔法、夜、一時的に明かりが欲しい時に役立つ魔法『ライト』。それを覚える為の一つ前の魔法、それが『フラッシュ』。眩い光を一瞬放つだけの魔法だ。
『光の導き』とか、カッコいい事言ったが、実際はただの『フラッシュ』だ。
ただの目くらましにしか、使えない魔法だ。
「いいかNN。対多数の戦闘において、常にこちらが不利だ。敵の数を減らす為には、遠距離、中距離の攻撃が必須だ。」
「うん。」
コクリとNNは頷く。
俺は剣を払い、赤ローブを切り捨てる。
「その攻撃に最も有効なもの、勿論それは魔法だ。NN、魔法を使え。そして感じろ、己の魔力がどう流れるのか、それを感じれば、次の一歩に踏み出せる。」
「分かった。破滅魔法……」
NNが、詠唱を開始している間は、赤ローブ達を俺が相手する。
飛び掛かってきた奴を、回し蹴りで突き放し、『ファイアボール』の強化版『フレアボール』とかの魔法は、剣でぶった斬る。
「ディラ先生。退いて。」
「ああ。」
「『ウォーターフロー』」
NNから放たれた津波の様な大量の水が、赤ローブ達を襲い飲み込んだ。
………遠距離型の広域殲滅魔法って分類だな。
……言ってみただけだが。
「フッ……どうだNN?何か感じたか?」
水が治まったので、NNにそう聞いた。
「…………私の中の魔力が動いたとしか……」
「それが分かれば十分だ。その内、分かる様になる。」
分かってもらわないと、魔眼なんて操らないし制御も出来ない。
今だって、魔力眼を常時発動させて、かなり身体に負担が掛かってる筈だ。
まぁ、良い。その内、制御できる様になるさー。
「さぁ、次行くぞ。」
近くのドアを蹴破り、中へと入る。
広いな。
そこは何も無い、ただ広いだけの部屋だった。
「ここは何だ?」
「実験室。」
NNが素っ気なく答える。
実験室か……まぁ、この広さだったら絶対、強敵みたいなホムンクルス出るんだろうな………
そう思っていると、部屋の奥に設置されていた扉が、プシューって煙出しながら開いた。
「そんな馬鹿な……」
ふむ、どうやら馬鹿らしい。
煙の中から現れた二人の人影、白髪の髪の青年。二人は瓜二つの顔をして、まるで双子の様に足並み揃えて現れた。
片方は左眼に紅の炎を灯し、もう片方は右眼が紫色に染まっている。
二人共、中々に高い魔力を持っている。当然こいつらは、強いんだろうな。
「お前達は……いや……貴方様がここに………」
NNが言い直した!?敬語!?何で!?
俺には敬語じゃないのに、この二人だけ敬語なんだよ!
「「NN。貧弱な裏切者が、ここまで来るとはな。Qはどうした?まぁ、あいつの事だ、どうせ、確認も無しに帰還したのだろう。後でお仕置きが必要だな。」」
一体誰だこいつ……無駄に強いですよアピールしやがって。
「ですがなぜ……『Z2』様がここに……」
へー、どうやらこの二人は、『Z2』って名前らしい。『Z』がつくからには、多分強い。
「「そんな事、決まっているだろう?」」
しらん、決まってないわ。
「「裏切者を排除する為だよ。」」